参院本会議で8日、石破総理大臣に対する所信表明演説に対する質問が行われ、田名部匡代参院議員が登壇しました。

■田名部参院議員

 総理、まずは総理ご就任おめでとうございます。与党内野党と言われながら、権力に厳しい姿勢を貫いてこられた総理に期待した国民もいたと思います。私も一瞬期待をしました。しかし手のひらを返す速さにビックリです。ちなみに総理は「自分が前に言ったことと違うな」と思いながら発言しておられるのか、それとも指摘されて「そうだったのかな」とお気づきになるのか、どちらですか?総理にお聞きします。

 人間ですから忘れることもありますよ。でも総理は忘れたのとは違うんです。信念が変わってるんです。ご自身の発言には責任をお持ちください。総理は就任の挨拶回りで「石破カラーを出すと国民は喜ぶ、党内は怒ると」と発言していました。党内から叩かれても国民が望むことをやる、そのために総理を目指されたのではないのですか。今日の答弁が、明日どうなるかと疑いながら議論することは、私も本意ではありません。ブレずに責任ある答弁を求めます。

1、解散権について

 予算委員会で、十分に議論してから解散すべき、と言った総理は、戦後最短、総理就任から8日間での解散を決めました。しかも総理は解散権のない総理就任前、当然内閣も発足していない中で解散に言及されました。「自治体の選挙準備の観点から判断」とのことでしたが、一政党の総裁に全国の選管を動かす権限はありません。フライングしちゃったでは済まされないんです。いまは陸上競技もフライングは一発退場です。そもそも、準備の心配するなら、予算委員会を開いて、時間に余裕持たせたらよかったのではないでしょうか。そしてこのフライング解散宣言で、何より問題なのは「国権の最高機関である国会の首班指名を軽んじ、天皇陛下による総理任命と、衆議院解散の国事行為を愚弄した憲法違反の疑いのある越権行為」だということです。総理にその認識はおありでしょうか。お答えください。

2、石川県能登半島地震の対応の遅れと大雨被害への対応及び予備費について

 ここであらためて石川県能登半島地震、及び豪雨災害でお亡くになりになられた方々に心から哀悼の誠を捧げますとともに、被災者の方々にお見舞い申し上げます。災害復旧に携わる全ての皆様に感謝申し上げ、今後も作業の安全を願います。

 先般、小泉進次郎衆議院議員は、野党が補正予算を求めていることに対し、「政権運営の具体的なところを分かっていない」と被災地で訴えたようです。過去の災害対応をみても、補正予算を編成せずに、今回のように、予備費の増額のみで対応していることの方が異例なのではないですか。熊本地震、北海道地震、東日本大震災、いずれも1ヶ月で補正予算を成立させています。今回大きな予算が必要となることを知りつつ、小出しの予算で対応してきたことは、政府の怠慢に他なりません。すでに元日の震災から9か月、予備費での支出を続けるのは、必要な予算の見通しがたてられないのか、国会審議を避けるためなのか、それこそ政権運営能力が問われるのではないですか。被災地の需要に応える形で補正予算を編成し、安心して復旧作業が進められるよう、財政措置するのが国会の責務ではないですか、総理の見解を求めます。

 また予備費では政策の有効性についてのチェックが、十分に働かない懸念もあります。財政に詳しい専門家からも「政権が便利に使うための常とう手段になっている」との指摘がありますが、予備費制度のあり方について総理の見解を求めます。

3、経済対策について

 災害だけではありません。物価高で厳しい企業や、人々の暮らしへの支援も必要です。全国中小企業団体中央会が10月1日に発表した調査結果によると、従業員300人以下の中小企業における価格転嫁は、前年と比較して進展しているとは言いがたい状況とのことです。立憲民主党では、これまで中低所得層に月額3千円のエネルギー手当の給付や、「中小企業 電気・ガス補助金」として月額最大50万円の給付を提案してきました。政府は現在10月分までを予定している電気料金の補助と、年内限り継続としているガソリン等の補助を実施していますが、さらに延長することも考えられるのか、延長されるとすればその際の判断基準は何か、総理のお考えをお聞かせください。

4、社会保障について

 待ったなしの社会保障制度改革についても、総理の演説の中身はスカスカでした。そこで確認します。「次の時代に負担を先送りしない。それが今を生きる我々の責任です」とおっしゃいましたが、負担を先送りしないためにどのような見直しをお考えですか、また今の時代にあった社会保障へ転換とも仰いました。今の時代に必要な制度改革とはどのようなものか、総理に伺います。

5、防衛費について

 次に、防衛増税についてです。防衛増税は「令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施する」と令和5年度税制改正大綱に明記されています。つまりどれだけ遅くとも、令和8年度から実施しなければならないことになりますが、一般に、国民に具体的な負担を求める法律案であれば、少なくとも1年程度の周知期間を設けるべきであり、逆算すると、来年の通常国会で増税法案を提出しなければならないことは、ほぼ自明でありますが、未だに政府は実施時期を明言していません。来年の通常国会に増税法案を提出するのか、しないのか総理お答えください。

6、拉致問題への対応

 拉致問題について伺います。第1回日朝首脳会談から22年がたちました。5名の拉致被害者とご家族が帰国、来日して以降、時が止まったままになっています。立憲民主党も、関係機関・関係各国と連携しつつ、北朝鮮との直接交渉に向けて日本政府自ら打開策を見出すよう、問題解決に最大限の努力,協力をして参ります。

 総理は日本と北朝鮮との窓口となる連絡事務所の開設を検討するよう指示されたそうですが、拉致被害者家族会の方々は反対されたとの報道がありました。総理に対してどのようなよう要望があったのでしょうか?ご意見を受けて今後の対応について再検討されますか、それともこのまま連絡事務所の開設は検討を進めるのですか、総理お考えを伺います。8

7、ウクライナ侵攻・ガザ侵攻について

 所信表明演説の中で、ロシアによるウクライナ侵略について触れ、今日のウクライナは明日の東アジアかもしれないと、危機感を示されました。さらに何故ウクライナにおいて抑止力が効かなかったのかに、強い思いを持っていると述べられました。総理は何故抑止力が効かなかったと分析されておられるのかを伺います。

 イスラエルとハマスの間の衝突が始まってから1年。先日はイランがイスラエルへミサイル攻撃を行い、報復の応酬が止まりません。イランのイスラエルへのミサイル発射に対しては、外務大臣談話で非難した一方、イスラエルによるガザ地区の学校への攻撃に際しては、イスラエルを非難しませんでした。ガザ地区全体でも罪のない多くの命が犠牲になっています。イスラエルの行為が国際人道法等の国際法に明白に違反していれば、同様に非難すべきではないですか。

 即時停戦に向けてイスラエル、中東諸国と関係を築いてきた日本こそが、紛争関係者の利害をまとめ、停戦協議を開催していくべきと考えます。ガザでの恒久的停戦とすべての人質解放に向けて、日本としてどのような外交努力を行っていくのでしょうか。総理に伺います。

8、米兵の犯罪の通報手続きの形骸化について

 米兵による犯罪の通報手続きについて伺います。残念ながら、在日米軍による犯罪は後を絶ちません。2023年12月、沖縄でまたもや米兵による、未成年に対する性的暴行事件が発生しました。1997年の日米合意で確認されている手続きに反し、外務省は事件を把握していたにも関わらず、防衛省へ通報しませんでした。結果として防衛省も沖縄県も事件の把握が遅れ、被害者の救済や再発防止の対策も行われず放置されていまいた。しかも、外務省は「問題があったと考えない」と強弁し、自ら通報手続きを形骸化させています。関係自治体に通報されていなかったケースはほかでも散見され、改善を求める声が上がっています。外務省は被害者のプライバシー保護を理由にしていますが、プライバシーに配慮した形で、行政間で情報を共有することは可能なはずです。今後、同じことが繰りかえされないよう対応していただくことを約束いただけますか。総理、お答え下さい。

 さらに、昨年末の米兵による性的暴行事件で、外務省は米国からの通報時期を明らかにせず、また防衛省は米軍から日米合意に基づいた、沖縄防衛局への通報がなかったと答弁されています。日米同盟の重要性とは別に、言うべきことは言わねばなりません。政府はなぜアメリカ政府、米軍に対し、抗議しなかったのですか。事件・事故が発生した場合、合意に基づき速やかに通報をするよう強く、改善を求めるべきです。日本政府としてどのような努力を行うのか、総理お答え下さい。

9、日米地位協定

 日米地位協定については、昨日も衆議院本会議で質問がありました。総理は一朝一夕にできるものではないと答弁されていましたが、それはそう思いますよ、でもそういうことを聞いているわけではないことはお分かりですよね。立憲民主党では改定を目指しつつも、日米の外相と防衛相による会合、「2プラス2」の活用を図り、まずは直面する問題に対し、現実的な解決を急ぐべきと考えています。総理はこれまで日米協定を改定すべきとの見解を示されてきましたよね、演説では言及されませんでしたが、日米地位協定について総理の見解を伺います。

10、地方創生について

 所信表明演説にありました「地方を守る」について伺います。総理は初代地方創生担当大臣を務められました。演説の中で、「地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指す。」とおっしゃいました。これまで移住促進や子育て支援事業、地域産業振興などに使われ、地方にとっては非常に喜ばれていますが、一方で人口減少や、地方からの若者の流出は続いております。倍増ありきでなく、地方の課題解決に繋がっているか、交付金の効果をしっかり検証する必要があるのではないですか。総理は、「地方創生をめぐる成果と反省を活かし」と述べられましたが、成果は何か、反省は何か、この間、地方創生が実現してこなかった理由をどう分析されておられるのか、総理のご所見を求めます。

11、女性活躍推進

 女性活躍について伺います。総理は「先進国中、最下位に甘んじている女性活躍の指標の迅速かつ大幅な改善を図る」と総裁選で掲げておられました。しかし石破内閣で女性閣僚は僅か2人。残念です。政府は来年2025年までに衆参両院それぞれの議員の候補者に占める女性の割合を35%とする目標を掲げています。来年は参議院選挙です。現在立憲民主党の参議院議員は4割が女性です。女性候補者発掘、擁立には様々な壁がありますが、立憲民主党はクオータ制を導入し男女半々の議会「パリテ」の実現を目指しています。はじめに総理はどうしたら女性候補者を増やしていけるとお考えですか?クオータ制の導入には賛成ですか。お答えください。

12、同性婚について

 同性婚に関して伺います。総理は今年9月11日のラジオ番組で、「世の中にLGBTの方々が相当数いる。同性婚が認められないことで不利益を受けているとすれば、救済する道を考えるべきだ」とおっしゃっています。また、総理のご著書『保守政治家』で、「あくまでも基本的人権の保障という観点から、権利を阻害されている国民が存在する以上は、最高裁の判決を待つまでもなく早急な法制化が必要ではないでしょうか」と述べています。総理、同性婚実現に向けて取り組むということでよろしいでしょうか。お答えください。

13、農業者の所得向上

 農業の現場では生産コストを価格転嫁できず、生産者が営農活動を続けることが非常に厳しくなっています。しかし生産コストを価格転嫁だけに頼ることになれば、国内農産物の需要を減少させるおそれもあります。価格転嫁が必要な生産者の適正価格と、家計の厳しい中で安価な食料品を求める消費者の適正価格を、市場原理だけで解決することは困難ではないでしょうか。だからこそ、「価格は市場で、所得は政策で」切りわけて考えるべきではないでしょうか。

 総理の所信表明演説からは、日本の食料安全保障が最も重要な課題の一つである、と認識されていることが伝わってきませんでした。残念です。そして総理がこれまで発言されてきた所得補償の必要性についても、全く言及されませんでした。残念を通り越して幻滅しました。石破総理と谷口信和東大名誉教授の対談記事を拝見しました。その中で総理は「民主党が戸別所得補償を出した時にさんざん罵倒したのは私たちなので、その反省も踏まえ」と前置きし、農業者の所得増大と自給率の向上に資するものに国費を投入すべき、との見解を示されています。そこで、総裁選での総理のご発言も含めて確認します。コメの生産調整を見直し、米を増産し、輸出拡大をする。所得補償は必要、そして自給率向上を目指す、これが総理が目指される、農政の未来ということでよろしいですか。総理の決断で前に進めることができるのです。ぜひ明確な答弁をお願いします。

 ところで、自民党が2012年に約束した「農業所得倍増10カ年計画」はどうなったのでしょうか。私、忘れてないですよ。結果を出せたのかどうか総理に伺います。

 自民党が政権を取り戻されてから今日まで、所得倍増どころか高い離農率、担い手不足、農地の減少に歯止めがかかりません。結果が出ていないことに対し、真摯に政策の検証を求めます。と言うか、もう私たちに任せて下さい。

14、選択的夫婦別姓制度について

 選択的夫婦別姓について伺います。総理は8月24日の出馬会見において、「姓を選べないことによる不利益は解消されなければならない」と述べておりました。総理、選択的夫婦別姓制度に賛成、反対どちらですか。
 平成24年2月2日の予算員会で総理は「検討しますと言う文章はつくらないでくれといってきた」。「検討し、いつまでに成案を得るとしないと、やらないこととほぼ同じ」というようなご発言されています。当時は野田総理、石破総理は委員として質問されています。総理、検討するならばいつまでに結論をお出しになるのか。どのようなプロセスを経て、いつまでに実現させるのか。検討すらしないというなら、その理由を総理にお伺いします。

15,安定的な皇位継承に向けた取り組みについて

 皇位継承について伺います。石破総理は総裁選前の8月、あるインターネット番組で「男系の女性天皇の可能性、女系の男性天皇の可能性、これを全部排除して議論するのはどうなのだろうか」と述べ、「女系天皇」の可能性も含めて議論する必要性に言及されました。しかしその後、「男系男子の伝統は大切にしないといけない」と発言を後退させています。どちらが石破総理の真意でしょうか。皇位継承について総理の考え方をお聞かせ願います。

16、裏金問題・裏金議員の公認について

 裏金問題ついて伺います。政治改革を前に進めるためにも、国民の信頼を取り戻すためにも、まずは真実を明らかしなければなりません。総理は「新しい事実が判明すれば再調査をする」と繰り返してきました。
 安倍派の会計責任者の有罪判決で、裁判所によってなされた事実認定が、これまでの安倍派幹部の国会での説明と食い違っていることを調査してください。また、毎日新聞の報道によれば、麻生派も2017年まで、手渡しの裏金のキックバックを行っていた、と派閥幹部らが証言し、そのことは、薗浦健太郎元衆院議員の刑事裁判記録でも明らかになっています。麻生派の裏金の実態解明を行わずに、公認を出すのですか。明確にお答えください。
 そして石破派の裏金疑惑、事務的なミスだと言うだけで、信用しろというのはあまりにも不誠実ではありませんか。総理、ご自身の派閥の疑惑について、きちんと説明責任を果たしてください。
  総理は不記載および脱税疑惑議員に下された処分が妥当だったとお考えなのでしょうか、前回の処分は500万円未満の人はお咎めなしでした。やったことは同じじゃないですか。調査もせず、処分が妥当だったと言うなら、ここでその理由を説明して下さい。
 自己資金の一部と認識していた、寄付金や借入金で裏金を扱っていた、キックバックを認識していた、そのうち収支報告書に記載がないことも認識していた、還付金を本人が管理していた、収支報告書がデタラメ、修正した収支報告書が今もって使途不明のままなど、金額とは別に問題はあるのです。その議員の聴取もせず、そのまま公認されるのですか。まさか当選の可能性で判断されることはないと思いますが、説明責任が果たされているかどうか、と言いますが、それはだれがなにをもって判断するのでしょうか。「問題を指摘された議員一人一人と向き合う」とも仰いました。いつ一人一人と向き合うのですか。選挙前ですか後ですか?「反省を求め」とも仰いました。反省しているかどう判断するのですか。明確な答弁を求めます。
 来年予定されている参議院選挙についてはどうされるのですか。全国比例名簿に記載しないことをはじめ、衆議院同様の対応をお考えなのか総理に伺います。
 新たな疑惑も「見て見ぬふり」をし、裏金隠しであわてて解散。これでは、信頼を取り戻してもらいたい、と辞任された岸田さんがお気の毒にさえ思えてきます。調査をしないことは国民を欺く行為であると断じざるを得ません。

17、政治改革について

 改正された政治資金規正法の徹底的な遵守とも仰ってましたね。天下のザル法を遵守することで、国民は納得するでしょうか。長年守らずにきたルールをこれらは守る、「ルールを守る自民党」と言われてもそれだけでは信用できません。政策活動費、「可能な限り使途を明らかにする」と言ったり、「やめるのも一つの考え方だ」と語ったり、どっちですか。昨日は将来的な廃止も念頭に、そのあり方や透明性の確保に取り組む」と言及されました。政策活動費はきっぱり廃止すべきではないですか。総理の見解を伺います。

18、解散について

 最後にもう一度お聞きします。被災地では雪が降れば復旧作業はさらに遅れ、複合災害が発生する可能性もあります。立憲民主党では国会閉会中も災害対応の委員会開催を求めてきました。しかし自民党は全くこれに応じませんでした。石川県出身、我が党の近藤和也議員が、「被災した人たちの心が折れかけている」「小さな光でもいいから見せて欲しい」と言われたそうです。政治家を目指した原点に立ち返れば、命と暮らしを守ることを最優先に、復旧のメドをつけてから解散し、信を問うという判断があっても良かったのではないでしょうか。それでこそ、納得と共感内閣なのではないですか。被災地を置き去りにして、命を守ることよりも解散が優先される理由は一体どこにあるのでしょうか。総理の説明を求めます。

 国権の最高機関であって、国唯一の立法機関である国会の議場で、国のトップリーダーが、「ルールは守ります」と約束する日本。子どもたちから、そして世界からはどう見られているのでしょう。「ルールを守る」当たり前じゃないですか。ついでに「約束を守る」も入れたらどうですか。ようやく総理になられたのに、なぜ信念を貫こうとされないのですか。総理が守るべきは国民との約束なんです。それができない以上、政権を担う資格はないと申し上げ質問を終わります。

■牧山ひろえ参院議員

 続いて同日、牧山ひろえ参院議員も代表質問を行いました。

牧山ひろえ代表質問(全文)20241008.pdf