重徳和彦政務調査会長は1月28日、衆院本会議で政府四演説に対する代表質問に立ち、「『失われた30年」は、次世代への責任と長期的視点に欠けた政治の結末。国民の皆さまからの信頼と負託をいただきながら、この国を立て直していく」と表明しました。

 「いま国民の皆さまが直面する物価高にどう対処すべきか、経済と財政をどう両立させるのか、そしていかにして『失われた30年』に終止符を打つのか」との観点から、 (1)物価高対策(2)ジェンダー政策(3)エネルギー政策(4)デジタル化(5)社会保障――等について取り上げ、日本でデジタル産業が伸び悩んでいるのも「失われた30年」の象徴の1つだと指摘。「本来、行政DXは、デジタル情報の活用は、それを取り扱う政府が、国民から全幅の信頼を置かれていなければ実行できない。立憲民主党は、政治改革を断行し、政権交代によって、クリーンで公正かつ透明な政府をつくり、国民からの信頼を基盤とする政権をつくりたい」と述べました。

 重徳議員の予定原稿は以下の通りです。


政府四演説に対する代表質問

立憲民主党・無所属 重徳和彦

 立憲民主党政務調査会長の重徳和彦です。 会派を代表し、政府四演説に対して質問いたします。

<フジテレビの会見について>
 本論に入る前に、昨日行われたフジテレビの記者会見に関連して質問いたします。

 会見は10時間以上にわたりましたが「人権侵害が行われた可能性のある事案」に対し、港社長から「人権への認識が不足していた」との発言はありましたが、説明が十分だったとは思えません。識者からは「経営陣の体質、人権意識の欠如という根本から出直す決意表明がなければ、スポンサーも視聴者も納得できない」という声も出ています。
 総理はこの会見で公共メディアとしてのフジテレビが、十分に説明責任を果たしたとお考えですか。

 また、会見では今回のトラブルが同社のコンプライアンス推進室へ共有されていないことが明らかになりました。厚生労働省の定めるコンプライアンス指針が守られていない可能性があります。
 総理は昨日、放送業界全体で人権に関わる問題が起きてこなかったか把握するべきではないかとのわが党の亀井亜紀子議員の指摘に対し、「放送事業者で構成される民放連の取り組みを注視する」と答弁されましたが、セクシュアルハラスメントについての指針が守られているかどうか、業界に任せるのではなく政府として調査し必要があれば改善を求める必要があるのではないですか。

<豪雪地域の被害について>
 昨年末から記録的な大雪による甚大な被害を受けている地域の皆さまに心よりお見舞い申し上げるとともに、政府に対し、豪雪地域への支援を強く要望いたします。
除雪作業中の死亡事故等の人的被害が発生したほか、交通障害や農業施設への被害が発生するなど、住民生活に多大な被害が生じています。青森県では、災害救助法が適用されました。
 例年、雪本番はこれからです。
 豪雪地域からの強い要望に応え、国と県・市町村が連携した道路除排雪の継続的な実施や、農業被害への対応を含む特別交付税の増額など、さらなる財政支援に特段の配慮が必要です。石破総理の見解を伺います。

 さて当初予算は、政権の姿そのものです。
 立憲民主党は、政権奪取を目指す野党第一党として、国民の皆さまからの信頼を基盤とする安定した政権運営、そして自民党が置き去りにしてきた様々な課題に真摯に取り組む姿勢をお示しし、自民党との違いを明確にして、政権交代の意義を国民の皆さまに明確に示す責務があります。
 いま国民の皆様が直面する物価高にどう対処すべきか、経済と財政をどう両立させるのか、そしていかにして「失われた30年」に終止符を打つのか。
 立憲民主党の考え方をお示しします。

<物価高対策>  はじめに、物価高対策についてです。
 立憲民主党は、国民のさまの(1)負担を減らすこと(2)収入を増やすこと――の2つの側面から物価高対策を強力に進めてまいります。

(1)負担を減らす
 まず、負担を減らす政策です。
 昨日、わが党の野田佳彦代表が提案したように、政府の補助金政策の失策により高止まりするガソリン・軽油価格にかかる上乗せ税率を廃止すべきです。そのための法案を準備しています。
 また、次世代を担う子どもたちには思い切った投資を行い、若い子育て世代の負担を減らすべきです。
 学校給食の無償化と、高校授業料の無償化については、昨日野田代表から提案しました。 学校給食無償化は、日本維新の会・国民民主党とともに法案を共同提出し、他の野党の皆様にも賛同いただけるよう呼びかけています。
 学校給食においては、あわせて地産地消で地元農業の振興、オーガニック給食の普及を進めるべきと考えますが、石破総理はいかがお考えですか。

 政府は、今年4月から多子世帯の大学授業料無償化を実施するようですが、対象者は、扶養される子どもが3人以上いる場合のみであり、非常に限定されています。大学進学の希望者や、大学に進学した方の何%が無償化の対象となるのですか。
 所得や子どもの数にかかわらず、国公立大学の授業料を無償化し、私立大学生や専門学校生に対しても国公立大学と同程度の負担軽減を行うべきではありませんか。
 また、幼児教育・保育のうち、0歳から2歳の年齢区分は、現行では住民税非課税世帯では無償化されていますが、それ以外の世帯は自治体の独自施策に委ねられており、地域格差が生じています。0歳から2歳の幼児教育・保育は、所得によらず、全国一律に無償化すべきではないでしょうか、石破総理のお考えを伺います。

(2)収入を増やす

 〇公定賃金の改善
 次に、収入を増やす政策です。
 物価以上に賃金を上げることが不可欠です。その主役は民間企業であり、具体的な賃上げの幅や内容は、労使交渉に委ねられます。公務員給与は民間に準じて改定されます。
 しかしながら、政府が定める公定賃金でありながら、全産業の平均賃金に比べて月額7〜8万円低い水準に置かれた職種があります。
 介護・障がい福祉・幼稚園・保育といった分野の職種です。
 国民の暮らしを支えるベーシックサービスであるだけでなく、介護職にあっては今後増え続ける高齢者の暮らしを支えるため、2040年までに約60万人増やさねばならず、人材確保が必須です。
 長らく続いてきたこの処遇の問題に終止符を打つため、立憲民主党は、他の野党と共に、法案を提出する予定です。介護・障がい福祉・幼稚園・保育といった重要な職種を担う方々の処遇改善について、石破総理の見解を求めます。

〇もっと働きたくなる社会
 収入を増やすため、私たち国民は、働きます。働いて、収入が増えた分の一部を税金や社会保険料として応分の負担をするのは当然です。
 ところが、今の社会保険料の仕組みでは、年収が130万円を超えた途端に、社会保険料が一気に30万円程度かかり、手取りが大幅に減るのです。いわゆる「年収130万円のガケ」の問題です。壁ではなく、ガケです。
 年収130万円の手前で、それ以上働くのを控えたくなる。この制度の理不尽をなくすのが、政治の仕事です。
 立憲民主党は、年収が130万円を超え200万円に至るまで、給付で収入を補うことによって、手取りを減らさず、働き続けられるようにします。そのための法案を提出しています。  「130万円のガケ」を解消すべきと考えますが、石破総理いかがでしょうか。
なお社会保険料については、事業者側の負担軽減も、昨日野田代表が提案しており、立憲民主党はそのための法案提出の準備を進めているところです。

〇物価高手当
 立憲民主党は、昨年10月に発表した「緊急総合対策」において、中低所得世帯の所得に応じて「物価高手当」を支給する仕組みを提案しました。
 物価高はすべての国民の暮らしに影響しますが、所得の低い人ほど家計に占める生活必需品にかかる経費の比率が高いことに着目し、中低所得世帯の方々の所得に応じた手当を支給し、生活に必要な可処分所得を底上げするものです。
 政府として、物価高の所得層ごとへの影響をどう分析しているのか、いかに対策を講じるのか、石破総理の見解を求めます。

<当初予算の修正要求>
 物価高の中で、国民の皆さまの負担を減らし、収入を増やす。
 立憲民主党は、政策実現のために当初予算の修正を求めるとともに、責任ある政党として、そのための財源も確保します。
 先週、国会開会前日、国会議員70人規模の「本気の歳出改革」作業チームを編成しました。国民の皆さまからお預かりする税金の無駄遣いを1円たりとも許さない姿勢で、各省庁ごとの予算を厳しくチェックし、基金や特別会計、予備費などの使途やあり方を検証します。
 今国会では、国会改革の一環として、与野党が合意し、予算委員会に「省庁別審査」を新たに設けることになりました。この「省庁別審査」の場でも、作業チームの検証結果に基づく事業内容の見直しを求める方針です。
 また、かねてより指摘してきた金融所得課税、租税特別措置の見直しなどの税制改革に着手し、恒久財源の確保にも取り組みます。
 石破総理に伺います。当初予算には、立憲民主党をはじめとした野党各党の修正要求を取り入れて、より多くの国民の意見を反映させるべきと考えますが、いかがでしょうか。

<本格的にジェンダー平等の時代をつくる>
 さて“失われた30年”に終止符を打つ、そのための重要テーマの1つは、ジェンダー平等です。
 私は、立憲民主党政調会長として、本格的なジェンダー平等の時代をつくりたい。性別にとらわれず、誰もが自分らしく生き、活躍することができる社会をつくりたい。
 当たり前ですが、日本の政治や経済の担い手は、男性だけではありません。
 日本社会は長らく男性優位の社会と言われ、国際的にも世界経済フォーラム発表のジェンダーギャップ指数は146カ国中118位と低迷し続け、いつまで経っても上位に浮上できません。
 とりわけ政治分野と経済分野の順位は低い。
 それでも政治分野は、昨年の総選挙で、女性が史上最多の73人、うち立憲民主党が最多の30人当選を果たすなど、国会の議席に占める女性の割合は若干ではありますが改善の兆しがあります。有権者の意識も着実に変化していると言えましょう。
 一方、経済分野については、進展しているようには見えません。
 30年前、共働き世帯が専業主婦世帯の数を上回るようになり、今や2.5倍となりました。しかし、働く女性のうち非正規雇用の割合は5割強と多くを占め、収入は男性の水準の7割台にとどまります。
 非正規雇用で働く人が、希望すれば正規雇用で働けるよう、派遣労働を真に労働者の専門性を発揮できる職種に限定したり、契約社員を臨時的な雇用等に限定するなど、雇用制度の抜本改革が必要と考えますが、政府の取り組みを伺います。
 誰もが多様なライフスタイルを選択できるジェンダー平等社会の実現には、例えば子育て支援において、育児休業や保育所、学童、不登校などに関し、制度やハード面を整備するだけでなく、その運用にあたって、周囲の理解を得るためのきめ細かな配慮が欠かせません。
 最近では、育児休業をとる若い社員が増えていますが、育休中の仕事を補完する周りの社員への適切な配慮や、臨時的な雇用、育休社員の職場復帰を円滑にするための支援が必要となります。政府の取り組みを伺います。

<第7次エネルギー基本計画>
 政府から第7次エネルギー基本計画案が示されました。
 立憲民主党は、国民生活と経済活動の礎であるエネルギーとりわけ電力の需要が増加する見通しの中、その安定供給が最優先と考えています。
 将来的な脱炭素社会を見通すとともに、貿易赤字の一因ともなる、化石燃料にできるだけ依存をせず、エネルギー自給率を高めることが国家安全保障上も緊要であります。
 一方、原発については、福島原発事故の教訓を踏まえ、地震大国のわが国においては立地周辺地域の安全を第一に考え、厳しい条件をクリアすることなくして原発の再稼働を認めることはできません。政府はこれまでのエネルギー基本計画で明記してきた「可能な限り原発依存度を『低減』する」という文言については、今回の案では削除し、「再生可能エネルギーと原子力をともに最大限活用していく」という文言を新たに記述しています。これまでの「低減する」という方針を転換したのですか、ご答弁願います。
 公明党は、従来より原発依存度を低減する姿勢だと認識していますが、今回の文言削除を了とされるのでしょうか。国交大臣として福島復興にも注力しておられる中野洋昌大臣にお伺いします。
 立憲民主党は、再生可能エネルギーを最大限活用し、地域分散型エネルギー供給の仕組みを構築していく中で、電力の安定供給を前提に、脱炭素化を目指していくことが、わが国のあるべきエネルギー政策と考えています。
 しかし、今回の計画で示された電源構成の政府目標では、前回記載していた「再エネ最優先の原則」が削除され、2040年に再エネ4〜5割とされています。
 国内の再エネ技術は、ここ数年で急速に開発が進んでいます。熱エネルギーを活用するヒートポンプはすでに世界市場を席巻し、地熱発電では強化地熱システム(高温の岩盤に水を人工的に注入する方式)、風力発電では浮体式洋上風力、そして太陽光発電ではペロブスカイト。日本国内に本拠地を持つメーカーの製品を、それぞれ国内各地に普及させるのはもちろん、世界に向けて輸出する野心的な目標を掲げ、さらなる技術開発や生産体制の構築を強力に支援し、日本の再エネ産業の基盤を確立させていくための戦略を組み立てるべきと考えますが、いかがでしょうか。
 脱炭素化によるエネルギーの構造転換は、日本最大の基幹産業である自動車産業そして多くの関連産業に影響を与えます。EVをはじめとした電動化に加え、自動運転技術の実装、慢性的な人手不足、米国トランプ大統領の関税引き上げリスクなどにさらされる自動車産業が進む道について、石破総理の見通しを伺います。

<デジタル化>
 日本でデジタル産業が伸び悩んでいるのも、「失われた30年」の象徴です。
 30年前、デジタル化が日本でスタートし、電話やFAXがメールに置き換わり、ワープロがパソコンとプリンタに置き換わり、金融機関にはネットバンキングが導入されました。
 当時の基幹系システムの構築は、外部事業者に丸投げのケースが多く、いまや8割の企業が老朽化・ブラックボックス化したシステムを抱えますが、システム改革を担うIT人材は退職・高齢化で43万人不足し、2025年以降、毎年最大12兆円の経済損失が発生すると言われています。
 いわゆる「2025年のガケ」と言われる問題です。
 いまや製造業でも、有形の製品をつくりあげるだけでなく、完成後も無形のデジタル領域がクラウドサービスやアプリによって更新し続ける姿に変化しています。こうしたビジネスモデルへの対応には、多額の投資と、デジタル人材への社員のキャリアチェンジも必要です。
 現在、ほとんどの国民が扱うスマートフォンやパソコンも、2050年には消え去り、スマートメガネやスマートコンタクトレンズに置き換わるとも言われ、デジタル分野は永遠の学び直しが必要です。
 国を挙げて、リカレント教育・リスキリングによるデジタル人材・ITエンジニアの育成が急務と考えますが、いかがですか。
 他方、行政が所管するデジタル情報が、国民生活の利便性向上などに十分活用されているかと言えば、まだまだ実感がありません。
 そこでお尋ねしますが、まずデジタル庁自体、民間人の登用や縦割り行政の打破をして、各省庁のデジタル部門の従来の予算や事業の寄せ集めでなく、それらを統合し効率化した効果がどのぐらい出ているのか。効率的で新しい行政モデルへ、どんな進化を果たしたのか、お尋ねします。
 また、マイナンバーカードやマイナ保険証の普及策において、費用対効果が疑われるデジタル政策も多いことをどう考えているか、お尋ねします。
 これまで行政が扱う個人情報の保護の概念は、広く国民に浸透した一方、所得や金融資産の把握といった国家統制的な色彩の強い分野でのデジタル情報の活用には国民からの拒絶感が強いと感じます。
 本来、行政DXは、デジタル情報の活用のメリットを国民に理解いただき、デジタルのインパクトを医療や教育といった身近な分野にもブレイクスルーすることであるはずです。
 現に、立憲民主党は、インターネット投票を導入するための法案を提出するなど、民主主義の最重要基盤のデジタル化に取り組んでいます。
 医療における電子カルテの共通化や、学校教育における1人1台のタブレット端末を活用した個別最適な学びなど、DXが各分野に浸透することは、ひいては日本の経済活性化につながると考えます。
 ただ根本的には、こうした情報の活用は、それを取り扱う政府が、国民から全幅の信頼を置かれていなければ実行できません。
 そのためにも立憲民主党は、政治改革を断行し、政権交代によって、クリーンで公正かつ透明な政府をつくり、国民からの信頼を基盤とする政権をつくりたいのです。
 デジタル情報の公共分野における活用をどう進めていくのか、方針をお尋ねします。また、その前提として、行政分野のDXへの国民からの信頼を得るため、石破政権として、政治改革を含め、どう取り組んでいくのか答弁願います。

<社会保障>
 日本人の平均寿命は、この30年で男女とも5年伸びました。
 ただ「人生100年」時代と言われますが、若い方々から100歳まで生きたいという声はあまり聞きません。100年健康で生きられる気がしないのだと思います。「健康100年」、健康長寿のための制度をつくらねばなりません。
 日本人の死因の上位は、半世紀前、現在の医療制度ができた頃は結核などの感染症が多くを占めましたが、昨今では生活習慣病が圧倒的に増えました。
 この疾病構造の変化に伴い、時代に合った医療制度に改革する必要があります。
 かかりつけの家庭医制度を導入し、治療から予防へと制度の主眼を転換すべきです。平時から家庭医を登録し、医師の仕事は病気になってから治療するのでなく、人が病気にならないようにすることを目標とします。食事・運動など各分野との協力体制も必要です。フリーアクセスを維持しつつも、総合診療医として日常的な観察や相談を行い、高度医療にもつなげる仕組みです。
 普段から本人の病歴や家族・仕事の環境も知る家庭医ならば、対面でない遠隔診療でも適切な診断が可能となります。
 いざという時に身近に相談できる医師がいれば、救急車の頻回利用や、搬送先の勤務医の過重労働も緩和されるでしょう。
 かかりつけ医を登録する「家庭医制度」の法制化について、石破総理のご見解はいかがですか。

 政府は、患者の窓口負担を一定額までに抑える高額療養費の上限額引き上げを決定しました。当事者のがん患者の方々からのヒアリングも一切行われなかったと聞きます。当事者の方々からは『今回の引き上げが実現したら、経済的な理由から、今受けている投薬やがん治療を断念せざるを得なくなる。命を奪われかねない自己負担引き上げはやめて頂きたい』との切実な反対意見が続出しています。
 高額療養費の自己負担引き上げについては、令和7年度は、今年8月から始まり、国の予算削減は200億円ですが、来年度はいったん凍結し、がん患者などの方々のご意見をよく聞いた上で、その対象や方法を含め、再検討すべきではありませんか。

 昨今、医薬品不足が、医療現場に深刻な影響を与えています。その根本原因の1つが、薬価の過度な削減です。
 薬価の見直しは従来、診療報酬改定に合わせ、2年に1回行われてきました。しかし、2016年の4大臣決定を契機として、その中間年にも薬価が改定されるようになりました。その結果、薬価は毎年引き下げられ、医薬品産業が予見性を持った投資判断や十分な収益を確保できず、賃金の低下、離職者の増加といった事態まで招いています。
 立憲民主党は、国民民主党と共同で法案を提出し、医薬品不足を解消するため、中間年改定を廃止し、原則通り2年ごとの改定とすることを求めています。石破総理の見解を求めます。

<新しい公共、インパクト投資>
 30年前の阪神淡路大震災は、「ボランティア元年」と呼ばれ、災害時の日本人の底力が示されました。そして、それまで公の仕事は行政が担うものとされていた常識が、志を持った市民が集い、行動し、お互いに助け合って地域社会をつくるという新たな常識に塗り替えられました。
 その流れが1998年のNPO法の制定、そして2009年に民主党政権が打ち出した「新しい公共」という政策につながっていきました。
 石破総理は、「ボランティア元年」以来のこうした社会の変化や、民主党政権が進めた「新しい公共」の政策をどう評価していますか。
 日本は、経済は発展しましたが、夏場の異常な気温、少子高齢化社会、地方の再生、多文化共生など数多くの社会的課題を抱える“課題先進国”でもあります。
 これからの時代は、資本主義経済の中にあって、経済成長と、社会的課題の解決との両立が求められます。企業経営者は、経済的リターンのみでなく、社会貢献的な影響、社会インパクトを重視する経営が求められます。これを促すのが、投資家による「インパクト投資」です。いわば経済版の「新しい公共」です。
 若い起業家は、経済的利益とあわせ、必ずと言って良いほど社会貢献を経営目標としています。若い世代は、社会ニーズに敏感なのです。 インパクト投資を促進するための市場環境づくりが必要と考えますが、石破総理はいかがお考えですか。

 最後に、外交・安全保障について質問します。
<防衛>
 5年間で43兆円にのぼる防衛費は、規模ありきであり極めて問題があります。来年度当初予算案でも過去最高の8兆4748億円の防衛費が計上されています。
 今後、米国トランプ大統領がわが国の防衛費のさらなる上乗せを求めてくる可能性もある中、国会での丁寧な説明もなく防衛費を際限なく増やし続ける政府の姿勢は、到底国民の納得が得られるものではありません。
 まして予算執行段階においても、防衛産業と防衛省との不適切な関係など納税者が疑念を抱く事態が発生しています。
 厳しい安全保障に置かれるわが国の現状において、防衛費増額の方向性は理解しますが、その原資は国民の税金である以上、予算規模ありきでなく、必要経費の積み上げについて十分な理解が得られるだけの説明責任が伴います。石破総理の答弁を求めます。
 まして東日本大震災の復興を支えるために国民の皆さまにご負担をお願いしたはずの復興特別所得税を防衛増税に流用するなどということは言語道断です。今回政府が先延ばしにした2千億円の所得税増税は撤回すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 今国会に能動的サイバー防御に関する法案が提出される予定です。
 立憲民主党が一昨年末とりまとめた「外交・安全保障戦略の方向性」では、能動的サイバー防御の重要性に触れ、国民の権利を最大限に保障しながら、包括的な立法を早急に検討すべきとしています。
 企業や官庁などに対する外国勢力と見られるサイバー攻撃は年々増加しています。社会混乱や経済損失だけでなく、ハイブリッド戦などと称される、平時と有事の境目のない安全保障の観点が必要とされることからも、法整備の必要性は十分理解しています。
 他方、憲法の「通信の秘密」との関係や、アトリビューション(攻撃元の特定)の法的根拠、目的外利用の禁止、国会または第三者機関による監視など、多くの懸念される論点があり、丁寧な国会審議が必要です。
 能動的サイバー防御に関する法案の審議における政府の姿勢を問います。

<外交(日韓関係)>
 国交正常化60周年を迎える韓国の政界が揺れていますが、北東アジアの安全保障環境への対応のため、良好な日韓関係は何としても継続しなければなりません。
 今月17日、私は、立憲民主党の党外交として、大西健介議員、源馬謙太郎議員とともにソウルを訪れ、数年来、親交のある与野党の主要な議員と面会してきました。朱豪英(チュホヨン)副議長や与党議員とも両国の友好関係を確認しましたが、ユン大統領と対立する野党議員も、これまで日本に対して厳しい一面がありましたが、最近の韓国の国民世論の動向も踏まえ、対日関係の重要性を強く認識している感触を得てきました。
 訪日者数が年間800万人にのぼる韓国国民が日本に好意的な印象を持つようになってきた世論も、与野党双方の認識を支えていると感じました。
 先日訪韓された岩屋外務大臣や、同副議長の訪問を受けた石破総理も日韓関係の重要性の認識について同様の感触を得たのではないでしょうか、石破総理と岩屋外務大臣ご答弁願います。
 また、60周年の今年、日韓の信頼関係を強化するため何らかの事業を検討していますか。
 特に、日本における韓国国民の入国手続きを円滑化する措置の検討を行っていると承知しています。飛行機の待ち時間を利用して、指紋や顔写真による本人確認など一部手続を済ませるプレ・クリアランスを実施してはいかがでしょうか。また、日本から韓国への渡航者にも適用すべきではないでしょうか。

<長期的・大局的視点。これこそ政治家の仕事>
 以上、内政と外交について質問させていただきました。
 特に内政については、政権交代によって 「失われた30年」に終止符を打ち、多くの国民が希望を持てる、長期的・大局的な国家ビジョンを示すことこそ、政治家の仕事です。
 現在、物価高の中、日々の生活や事業運営の窮状を訴える声を聞く一方、コロナ以来続く巨額の歳出予算に対して「財政が心配」という声も聞こえてきます。
 昨年夏に岸田内閣が行った大規模な経済対策に対しても、「後で増税が待ち受けているのだろう」と冷めた声も少なくありませんでした。
 有権者は、黙ったまま、でも、よく見ておられます。
 「失われた30年」は、事ほど左様に、次世代への責任と長期的視点に欠けた政治の結末だと考えます。
 立憲民主党は、政権を担う責任ある政党として、次世代への投資を積極的に行うと同時に、次世代へのツケ、すなわち次世代からの搾取は厳に慎む姿勢で今後の審議に望む決意です。
 国民の皆さまとりわけ将来を担う若い世代からの信頼と負託をいただきながら、この国を立て直してまいります。

【衆院本会議】第217回通常国会政府四演説に対する代表質問原稿(案)重徳和彦議員(2025年1月28日).pdf