立憲民主党は、1月31日午前の衆議院予算委員会開会前、農林水産部門会議(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)を国会内で開催。令和7年度農林水産関係予算及び組織・定員、内閣提出予定法案、高病原性鳥インフルエンザの現状について、農林水産省からヒアリングを行いました。
冒頭、金子恵美部門長より、「重要な予算の審議に入っていく中、内閣提出法案は4法案あり、これに加え、日切れの議員立法の提出が見込まれる。われわれも、しっかりとスケジュール感を持ちながら進めてまいりたい。また、鳥インフルエンザが拡大し、過去最悪の状況になりつつある。この対応等をしっかりとしたい」とのあいさつがありました。
■令和7年度農林水産関係予算の概要、令和7年度組織・定員について
会議ではまず、農林水産省より、令和7年度農林水産関係予算の概要、令和7年度組織・定員について説明を聴取しました。
参加議員からは、「令和7年度当初予算は、前年度当初予算から20億円増となっている。食料・農業・農村基本法の改正を受け、これから基本計画が策定され、大きな構造転換をするという方向が示されている中、この規模でずっと行くのか。これで満足ということでよいか」(金子恵美部門長)、「予算を減らせと言われるが、少なくとも、物価高の分は予算が増加していなければおかしい。森林整備などの林野公共事業が落札できない事態も起きていると聞いている。資材費、人件費も上がっている。この予算でやっていけるのか」(小山展弘衆院議員)などの質問、意見がありました。
農林水産省からは、「改革に必要な予算をしっかりとっていくという気持ちには変わりがない。今回、補正予算もしっかりと確保できており、当初予算も、対前年比20億円増とは言え、財政事情が厳しい中、しっかり確保できたと思う。引き続き頑張ってまいりたい」、「予算額の伸びが小さいとの指摘はそのとおりであるが、公共事業については、労務単価を物価上昇に合わせた見直し措置などを講じており、不落とならないように事業実施をしていく」との発言がありました。
■内閣提出予定法案について
次いで、農林水産省より、第217回通常国会に政府から提出が予定される法案として「土地改良法等の一部を改正する法律案」、「漁業災害補償法の一部を改正する法律案」、「森林経営管理法及び森林法の一部を改正する法律案」、「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案」の概要について、説明を聴取しました。
参加議員からは、「森林経営管理法及び森林法の一部を改正する法律案」について、「太陽光発電設備の設置等において、許可条件に違反する林地開発行為が散見されるため、法律案は、条件違反者への処罰、開発行為の中止・復旧命令に従わない者の公表を措置することとされているが、他との連携はどうなっているのか」(篠原孝衆院議員)、「法律案は、森林の集積・集約化を進める新たな仕組みとして、市町村は、単独または都道府県と共同で、川中・川下を含む地域の関係者で協議し、受け手となる林業経営体や路網整備等の方針といった森林の将来像を定める『集約化構想』を策定することとされている。地元では森林組合が解散しており、市では農業土木の担当者が森林関係業務を勉強して担当している状況。県には森林のスペシャリストが多いので、もう少し関わってもらえたらと思っている。今回の改正で、集約化構想の策定等に係る市町村の取組に対し、都道府県がどの程度責任をもって、補完、助言などをすることとなるのか」(おおたけりえ衆院議員)といった質問がありました。
農林水産省からは、「太陽光発電設備の設置に係る林地開発許可については、経済産業省とも連携して対応している」、「集約化構想については、複数市町村の共同や都道府県と市町村が共同して策定する仕組みにしている。従来よりも都道府県にしっかりと入っていただけると考えている」との回答がありました。
「土地改良法等の一部を改正する法律案」について、参加議員から「法律案は、基幹的な農業水利施設について、農業者の申請に拠らず、国・都道府県の発意で更新事業を実施できる制度を創設することとしている。これは素晴らしいと思う。農家の方が大規模でがんばっていらっしゃるところで、今までのやり方で更新事業をやろうとして計画も作っていたところ、開発の話があったため、事業がつぶされてしまったという事例がある。本件措置は、担い手の営農を損なうような開発を防ぐ意味でもよいと思う」(小山展弘衆院議員)との発言がありました。
「食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案」について、参加議員から「法律案は、合理的な費用を考慮した価格形成の仕組みを創設することとし、JAなどの売り手には持続的な供給に要する費用の説明、スーパーなどの買い手には持続的な供給に要する費用の考慮の状況についての見解の提示といった努力義務を措置することとの説明があった。個々の茶農家は茶商と相対で取引をしているおり、茶商も大小さまざまであるが、こうした場合、新たな仕組みの対象となるのか」(小山展弘衆院議員)といった質問がなされました。
これに対し、農林水産省からは、「説明では、わかりやすい例ということで、JA、スーパーと申し上げたが、お茶も当然対象となる。お茶の場合、小規模農家が生産コストを把握できるかなど、さまざまな課題があると考えているので、取引、コストの状況を調査し、合理的な費用を考慮した価格形成が促進されるよう、サポートしたい」との回答がありました。
■高病原性鳥インフルエンザの現状について
さらに、農林水産省より、高病原性鳥インフルエンザの現状、すなわち、今シーズンの発生状況、過去シーズンとの比較、発生予防・まん延防止対策、生産現場の対策強化、発生の増大を受けた対応の強化等について、説明を聴取しました。
参加議員からは、「農水省の予算を使って完璧に対策を講じていたという養鶏場で発生した。これまでと違う発生原因が考えられるのではないか。原因究明についてどういう認識をもっているのか」、「殺処分し、埋却ができず、焼却しようとしても施設がいっぱいで、営農再開に時間がかかる。都道府県をまたいでも焼却できるようにしてもらえないか」、「殺処分の補償額はどうなっているのか。農家のみならず、飼料業者や運送業者などの関連事業者も大きな損害を被っており、何らかの支援ができないか」(以上、谷田川元衆院議員)、「焼却用のトラックを集めて現地で焼却することは可能か」、「県職員だけでは処理が無理。殺処分支援はどうなっているのか」(以上、安藤じゅん子衆院議員)といった意見、要望があり、農林水産省からは次のような回答がありました。
「最近は、ウイルスは鳥や小動物のみならず、塵埃により隙間から入りうるので、ハード面で完全に防ぎきることは難しいことが示唆されている。これからも検証が必要な部分があるが、今シーズンの特徴として風によって塵埃がウイルスを運んでいるのではないかと言われているので、塵埃を落とすため、液状成分の消毒薬の使用、鶏舎の入気口に不織布シートを張るなどの対策を呼び掛けている。新しい知見が出てくれば対策に生かしていきたい」。
「営農再開に向けての埋却が難しいという問題はどこでも抱えている。焼却するという取組が徐々に浸透してきている。一方で、羽数が多いとキャパシティ的に難しいので、一自治体の焼却炉だけで早期の処分は難しいというのが現状。自治体の協力なしにはできないので、我々も広域的な取組を呼び掛けている。一方、殺処分した鶏を遠くに持ち運ぶということ自体に周辺の住民の方の理解が得られないなどの難しさがあるのが現状。やらなければならないので、粘り強く、われわれも関与しながら呼び掛けていく。」
「処分に対する手当金が法律に基づいて支給されるが、疑似患畜については一羽当たりの上限の規定はなく、個々の鶏について評価をして、評価額の10分の10をお支払いしている。管理に不備があったり、通報に遅れがあったりした場合は減額する。法律で負担するのは発生農家の殺処分、汚染物品の処分、防疫措置にともなう費用である。関連事業者に係る二次被害、三次被害などの損失については、法律の枠組みの中で損害補償はなく、セーフティーネット資金や雇用調整助成金など他省庁での枠組みを活用しただき、あるいは業界の中での相互支援をお願いしているところ。」
「発生時の埋却地の確保は、法律上、農家に対して義務付けられており、現在、発生事例のほとんどで、埋却処分をしているが、掘ったところ、水が出て使えないという事例もあるので、焼却という選択肢もある。今は、トラック、バックホーという重機を使って掘削し、殺処分した鶏を投入し、埋却を進めている」との発言がありました。
「埋却、殺処分に要する人員はかなり投入しなければならないが、県職員のみならず、団体や民間事業者も活用して相当な人数を投入して処分に当たっている。昨日、千葉県知事から国からの人的支援をお願いしたいとの申入れがあった。本日より、国から一日当たり25名体制で投入している。また、殺処分の指揮に当たる獣医師の資格を持った防疫官を現地に派遣し、支援をしている」といった回答がありました。