立憲民主党農林水産キャラバン(隊長・田名部匡代参院幹事長)は2月20日、21日の両日、鹿児島県の沖永良部島(大島郡和泊町、知名町)を訪れ、養蜂とマンゴーのハウス栽培、さとうきび圃場、ハーベスタによるさとうきび収穫、花き専門農業協同組合、花き集出荷施設、JAあまみ和泊事業本部、ばれいしょ集出荷施設、沖永良部島漁業協同組合、畜舎、じゃがいもの圃場などを視察するとともに、意見交換を行いました。また、前登志朗和泊町長と意見交換を行い、地元のERABUサンサンテレビでは番組の収録を行いました。今回の農林水産キャラバンには、事務局長の徳永エリ参院政審会長、岡田華子衆院議員が参加しました。

■養蜂とマンゴーのハウス栽培を視察(和泊町)

 一行は、和泊町の東マンゴー園を訪問し、生産者・養蜂家の東孝一さんの案内で、養蜂の現場、マンゴーのハウス栽培を視察し、東さんと意見交換を行いました。

東さんは、マンゴーのハウス栽培と養蜂業を営むほか、農業のアルバイトなどのために全国各地から沖永良部島にやってくる若い人の宿所として、シェアハウスを運営しており、こうした若者との交流にも力を注いでいます。

 東さんは、養蜂を始めてから15年になり、はちみつの販売のほか、ミツバチの販売、リースも行っています。現在、全国で、ダニによるミツバチの被害が相次いでいる中、沖永良部島では被害がないこともあり、同業者からのミツバチの注文が多い状況にあるとのことでした。

 また、東さんから、ミツバチの餌である砂糖水、代用花粉の価格が高騰しているので、農産物の受粉交配で重要な役割を果たすミツバチについて、出荷分だけでも餌代の支援があればありがたいとの要望がありました。

 マンゴー栽培については、始めてから25年になり、個販と農協出荷を行っています。東さんは、マンゴーと養蜂のそれぞれに収入保険に加入しており、経営上、とても助かっているとのことでした。

 一方、島内で生産されるマンゴーの出荷には船舶を利用していますが、しばしば、鹿児島と沖縄を結ぶ航路で、沖永良部島、徳之島、与論島が抜港されてしまうため、冷蔵庫を用意するとともに、台風来襲による停電に備えた発電機が備えなければならず、経費が掛かりましになるとの指摘がありました。また、マンゴーは贈答品、嗜好品であることから、景気の動向によって売り上げが左右されることが懸念材料であるとのことでした。

■ハーベスタによるさとうきび収穫の視察(知名町)

 一行は、知名町の奥村ヨシオさんのさとうきび畑を訪問、ハーベスタによるさとうきびの収穫を視察しました。

 奥村さんからは、沖永良部では、生産者の高齢化による離農に伴うさとうきび経営の大規模化の進展と、国営畑かん事業の用水確保による単収向上が図られる中、製糖工場の処理能力が低いことが課題となっているとの説明がありました。さとうきび生産者としては、製糖工場の一日の処理能力に合わせて収穫しなければならず、収穫が長期化し、次期作に影響するため、製糖工場の処理能力を上げてほしいという要望がありました。

 また、さとうきびの価格が上がらない中、資材費の高騰が重荷になっているとの説明がありました。

■沖永良部花き専門農業協同組合を視察、意見交換(和泊町)

 一行は、和泊町の沖永良部花き専門農業協同組合を訪問、泉義仁参事の案内により施設内を視察、説明を伺った後、意見交換を行いました。

 沖永良部島では、明治時代よりテッポウユリの球根を生産し、欧米に輸出していましたが、変動相場制に移行してから輸出が難しくなり、現在は国内仕向けの切り花が中心となっているとのことでした。同専門農協は、平成10年代に真空予冷装置や冷蔵コンテナを導入して遠距離輸送の課題を解決し、令和4年からは、茎の短いスマートフラワーの生産出荷を開始し、コスト低減を図っています。

 円安が進み、輸出に取り組む好機であるものの、輸出に対応できるだけの生産者が確保できないという状況にあるとのことです。

 また、収入保険に加入している花き農家が多く、単価が下がったとき、出荷できないときに役立っていますが、高い収益を上げている花き農家の保険料負担が重く、分割払いなどの仕組みが用意されているものの、農家には厳しいようだとのお話がありました。

 さらに、台風シーズンで海が時化ると船が来ないため、輸送が途絶え、出荷ができない状態が何日も続くことが一番の問題であり、輸送体制を何とかできないか、との要望がありました。

■JAあまみ和泊事業本部バレイショ集出荷場を視察、意見交換(和泊町)

 一行は、和泊町のJAあまみ和泊事業本部バレイショ集出荷場を訪問、沖田幸治営農販売課長の案内により施設内を視察した後、意見交換を行いました。

 沖田課長からは、集出荷場の建物の老朽化、機械の不具合がみられ、更新が必要となっているとの説明がありました。また、台風の時期には輸送手段である船が来ないため、出荷する農産物の保管施設が十分とは言えず、島民の食料が枯渇してしまうため、停電にも対応できる貯蔵施設の整備が必要であるとの指摘がありました。

 また、資材価格の高騰に野菜価格が連動していかないことから、農家所得の向上が課題であるとの指摘がありました。

■沖永良部島漁業協同組合を視察、意見交換(和泊町)

 一行は、和泊町の沖永良部漁業協同組合を訪問、中田隆洋組合長・和泊町議会議員、前田翔清和泊町役場経済課水産林務係主事の案内により施設内を視察、説明を伺った後、同漁協の役職員、漁業者の皆さんと意見交換を行いました。

 意見交換では、漁協役員、漁業者から「ソデイカの漁獲量が減ってきており、危機感を持っている。日本全国でソデイカ漁の規制をすべき」、「イセエビはプランクトンとしての期間が2年あり、漁協単位では管理ができないため、広域の資源管理が必要」という指摘がありました。

 漁協の職員からは「素潜り漁でイセエビの漁獲量が目に見えて減っている。夜光貝は沖縄向けに高値で出荷できるので、多く漁獲されている。国として資源保護に力をいれられるのであれば、素潜り漁師の将来のために資源保護の活動に取り組みたい」という意欲的な発言がありました。

 資源管理を実効あるものとするため、漁業者から「資源回復のためには休漁期間を設け、その間の漁業者の生活が成り立つように、国から支援があるとよい。全額補償は難しいと思うので、貸付という形などで」との意見が述べられました。

 また、餌代の高騰が養殖業者の撤退を招くとして、「せっかく確立したクロマグロの完全養殖の仕組みがうまく利用できなくなるのではないか」との懸念の声もありました。

 海洋ゴミについて、漁業者から「ボランティアで海洋ゴミの収集活動をしているが、焼却施設の許容量いっぱいで、処理に困っている」、「マイクロプラスチックやPFASが魚に蓄積されるので、対応を考える必要がある」との指摘がありました。

 また、30年ほど前に設置した浮魚礁の係留索が切れて流れてしまったものがあるとして、「浮魚礁により、食物連鎖が活発となって、マグロの漁場を確保できる。再度整備してほしい」との要望がありました。

 さらに、「離島が国防上に果たす役割の重要性を考え、漁業者を保護してもらわないと大変なことになる」という強い指摘もありました。

 鹿児島県の農林水産技術系職員が108人いる中で、奄美大島地区を管轄する水産担当職員は4人という現状に鑑み、漁協役員から「資源管理の指導など県の役割は大きい。国として水産技術系職員を養成していただければ」との意見があり、町役場の職員から「どこの市町村も、水産担当は一人しかいないが、全力で期待に応えたい」との力強い発言がありました。

 徳永事務局長からは、今国会に提出される予定の漁業災害補償法改正案の概要について説明をするとともに、現場の実情を発信することが必要であることを指摘し、いただいた宿題については、確認の上、ご回答する旨お約束しました。

■前登志朗和泊町長と意見交換(和泊町)

 一行は、和泊町役場を訪問、前登志朗(すすめ・としろう)町長と意見交換を行いました。

 徳永エリ事務局長より、農林水産キャラバンの趣旨を説明し、沖永良部島内での視察の印象などをお話ししました。

 前登志朗町長からは、「ここは離島で、周りは海だが、農業が盛んで、遊休農地はない。畑が空いたら、次々と欲しい人ばかり。今、さとうきびのシーズンで、ちょっと遅れるかもしれないが3月いっぱいまでが収穫の時期。それが遅れてしまうと、次への準備が遅れてしまうので、製糖会社に、3月までに終わらせてくださいねとお願いしているところ。また、今は、じゃがいもの出荷時期。じゃがいもというと北海道のイメージがあるが、沖永良部島から最初に出荷され、順次北に上がっていく。例年は1月に入るとすぐ出荷が始まるが、去年11月、植え付けたすぐ後に大雨が降り、種が流れてしまったり、腐ってしまったりして、植え付けをやり直したため、ひと月くらい後にずれている。例年では4月まで出荷であるが、今年はもう少し伸びる。幸い値段が良くて、良い感じでスタートしている。また、この島はもともとユリの球根を作って世界に売って稼いできた。為替の影響もあり、輸出はだめだということで国内仕向けの切り花に切り替わった。出荷しているのは、スプレーギク、ユリ、グラジオラス、ソリダゴ。ピーク時には和泊町で30億近くあったが、今は20億くらい」との説明がありました。

 畜産については「ここ数年、苦しい状況。離島で頑張っている我々に、離島で畜産をしていてよかったなと思えるような何かをいただけないか、と関係方面にお願いしている」とのお話がありました。

 さらに、「ここは鹿児島県であるが、琉球文化圏。島内で生産されるじゃがいもなどの農産物を琉球圏というくくりで、一大マーケットである沖縄に出荷できたらと思う」と述べるとともに、農産物の輸出にも意欲を示しました。また、沖永良部島は隆起サンゴ礁の島であり、島内にある鍾乳洞のケイビング、農業体験、漁業体験など観光にも力を注ぎたいと語りました。

■ERABUサンサンテレビを視察、番組収録(和泊町)

 一行は、和泊町のERABUサンサンテレビ株式会社を訪問、森栄興部長から説明を伺い、社内を視察した後、スタジオにて、徳永エリ事務局長と岡田華子衆院議員が、立憲民主党農林水産キャラバンの目的、沖永良部島を訪れた経緯と所感をお話しする番組を収録しました。

 ERABUサンサンテレビは、平成8年に開業した和泊町のケーブルテレビで、小学校の入学式・卒業式をはじめ町内の行事やイベント、行政からのお知らせ、町議会の中継などを放映しています。

■伊村農園にて畜舎、マンゴーハウス、じゃがいも圃場を視察(和泊町)

 一行は、和泊町の伊村農園を訪問しました。伊村農園の代表である伊村達児さんは、大手広告代理店に勤務した後、沖永良部島に帰郷、家業の農業を継ぎ、琉球大学大学院で農学を研究し、博士号を取得したという経歴の持ち主。黒毛和牛の繁殖農家であるとともに、マンゴー、じゃがいもを栽培しています。令和4年より、奄美群島振興開発審議会委員を務め、農家の立場から意見を述べています。

 伊村さんの案内で、畜舎、マンゴーを栽培するハウス、じゃがいも圃場を視察し、説明を伺いました。畜舎には、消臭ミスト噴霧装置、子牛用の哺乳ロボット、セリに出す前の牛の運動スペース、牛の様子を監視する赤外線カメラなどが整備されていました。

 マンゴー生産は沖永良部島ではさほど多くないとのことですが、伊村さんは、栽培技術を共有すれば、いい産業となるのではないかと期待感を示しました。

 伊村農園では、生食用のじゃがいもの生産のほか、自らが生産したじゃがいもに加計呂麻島の塩を用いたポテトチップスの製造にも取り組んでいます。

 じゃがいも圃場には、干ばつ対策として埋め込み式のスプリンクラーが設置され、効果をあげています。伊村さんは、補助事業を活用したスプリンクラーの設置を島内で進めていくことが必要、と強調しました。

 伊村さんは、資材価格が高騰し、経営が苦しい中にあっても、経営の見通しをシミュレーションした上で、施設等に投資を行い、規模拡大、効率化を図るなど積極的な経営を展開しています。

 視察後、地元メディアの取材に応じた徳永エリ参院議員は、「沖永良部島は若い人が元気で希望が持てた。しかし、離島特有の問題として航路が止まると農水産物が送れなくなってしまう。これをどう解決するか、大きなテーマだと思っている。老朽化した施設を高度化する必要があり、そのための国の補助の必要性について訴え、農林水産関係予算を増やして、皆さんのご努力を支えていく環境を作っていきたい」と述べました。

 同じく、メディアの取材に応じた岡田華子衆院議員は、「人口が少なく、農協も漁協も規模は大きくないが、伸び代がある地域であり、できることはたくさんある。一つ一つ支援することが大事」と述べました。