衆参両院の正副議長の主催する「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」が3月10日午後、衆議院議長公邸で行われ、13の政党・会派の代表者らが出席しました。

 立憲民主党からは、野田佳彦・党安定的な皇位継承に関する検討本部常任顧問(党代表)、馬淵澄夫・同本部長、田名部匡代・同本部長代行が出席しました。野田国義・同副本部長は参議院の公務のため欠席となりました。

 立法府の全体会議は、今年再開されて3度目の開催になります。前回2月の全体会議では「女性皇族の婚姻後の配偶者及び子の身分について」各党が自由討議を行いましたが、今回のテーマは、「皇統に属する男系男子を養子に迎えることについて」とし各党が意見交換を行いました。

 この論点に関して、立憲民主党は24年3月、当時の安定的な皇位継承に関する検討委員会において論点整理を取りまとめています。この中では、「現実的に養子の対象となり得る方がおられるのかを、その方の意思とともに、慎重に確認した上で、制度設計の議論に移らなければならない」として、対象者の調査と意思確認の必要性を指摘しました。また、憲法上の諸課題を議論する必要があるとして、「(政府の)有識者会議のヒアリングにおいて、憲法学者から提起された憲法上の諸課題をクリアにする必要がある」と強調しました。

 全体会議の自由討議において、立憲民主党の馬淵本部長は、まず、本日のテーマ「養子案」に関して、論点の整理を行いたいとして、①立法事実の確認、②先例主義との整合性、③憲法上の疑義、④事実上の不都合、の4点を指摘しました。

 馬淵本部長は、立法事実の確認について、政府が旧11宮家の方々の「子孫の現状を承知していない」として、養子案の対象となる方の存在もまたその意思も確認していないことを明らかにしており、「立法事実を確認しないで、どう制度設計を行うのか」と疑問を呈しました。

 また先例との整合性に関しては、馬淵本部長は、「歴史上、皇籍離脱後に、天皇や皇族と養子縁組をして皇籍に戻った事例は存在しない」と述べ、養子案は先例にない事実を指摘しました。一方で、側室制度を廃止したり、あるいは一般女性が婚姻により皇族の身分を得ることが制度化された例などを挙げ、「時代とともに変化してきたのが、皇室制度の先例だ」とも強調しました。

 憲法上の疑義については、馬淵本部長は、日本国憲法第1条に天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基く」とあるように、養子案が「国民感情に沿うかを考慮しなければならない」と述べました。また、第14条1項の平等原則に関して、内閣法制局が憲法は養子案を許容していると答弁したのに対して、衆・参議院の法制局は、門地差別に該当するとする有識者もおり、許容・違反両論とも成り立ち得る、と答えました。

 全体会議の終わりに、玄葉光一郎衆院副議長は、衆参正副議長において今回の議論を整理し、次回以降の会合を提案したい、とまとめました。

 終了後、野田常任顧問と馬淵本部長が国会内で、記者団に対し全体会議の内容などについて説明しました。

 野田常任顧問は、「まだまだ論点がてんこ盛りで、議論が必要だと感じた」と述べました。馬淵本部長は、「女性皇族が婚姻後も残る場合の配偶者や子の身分についてもまだ不十分だ。議論の頻度と密度を高めて、会合に参加していきたい」と意欲を語りました。