参院本会議で3月12日、勝部賢志議員が「所得税法等の一部を改正する法律案」について、石破総理と加藤財務大臣に質問しました。予定原稿は以下の通りです。

所得税法等の一部を改正する法律案に対する質問

立憲民主・社民・無所属 勝部賢志

 立憲民主・社民・無所属の勝部賢志です。
 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました「所得税法等の一部を改正する法律案」につきまして、総理並びに財務大臣に質問いたします。
 まずは、質問に先立ちまして、岩手県大船渡市の大規模山林火災で被害を受けられた皆さま方に衷心よりお見舞い申し上げますとともに、消火活動に当たられた方々のご労苦に心より感謝申し上げます。大船渡市も能登と同様に、二重三重の被災となり、被災者の皆さんのお気持ちを考えると胸がつぶされる思いです。政府におかれましては激甚災害の指定を含め、迅速かつ適切に対応して頂くよう強く求めます。
 さて、昨年秋の衆議院選挙を経て、大きく様変わりをした少数与党の衆議院では、「熟議と公開」を私たちは求め、その結果、29 年ぶりに予算案が修正され、「熟議の国会」は主戦場を参議院に移しました。
 元来、良識の府・再考の府・熟議の府である参議院では、修正も含めた深い議論が求められます。その意味で、私たち参議院でも覚悟を持って「熟議」に臨みたいと思います。

〇「高額療養費負担上限引き上げ凍結」について

 そこで、まず初めに「高額療養費負担上限引き上げ凍結」について伺います。
 総理は先週の金曜日、凍結を表明されました。これは、3月5日に行われた参議院予算委員会で、我が会派の田名部匡代委員が質疑の中で、当事者である患者団体の方々の声を聞いてもらい、患者団体との面会を総理に約束させたことが大きなきっかけとなり、頑として動かなかった総理に、凍結の決断をさせる事ができたものです。
 ひとまず、患者団体をはじめ、反対を表明されていた多くの方々の思いに応えることができたことは何よりです。
 しかし参院選後の秋までの先送りで、最適な解を見出せるのでしょうか。総理は参院選後の「強行は無い」と明言されましたが、政府の都合だけで事を運ぶようなことは、絶対にあってはなりません。患者団体や関係団体を必ず入れて、議論をすべきです。
 理解を得るための延期であるならば秋までという時限設定は設けず必要な 時間をかけて患者団体や医療、保健関係者などを交えた丁寧な議論をすべきと考えますが、石破総理はどのように議論を進めていこうとお考えか、見解を伺います。

〇「高額療養費負担上限引き上げ凍結」による「予算修正」について

 また、昨日、予算の再修正を行うという報道がありました。
 「高額療養費負担上限引き上げ凍結」を受けて、予算総額に変更が生じる訳ですから、当然、予算の再修正が必要です。これは、憲政史上初となるもので、まさに参議院での「熟議」がもたらしたものです。改めて、総理に伺います。
 当然、総理は国会法に定められた手続きを行うものと考えますが、見解を伺います。

〇総理標榜の「楽しい国」について

 次に、我が国が目指す社会のありようについて総理にお伺い致します。総理は所信表明演説で「楽しい国」と発言されました。
 頻発する災害や物価高が家計を圧迫している現状で、唐突に「楽しい国」と言われてもにわかにその意味合いを理解することができませんでした。現実からの逃避、現状認識のずれ、能天気にさえ聞こえました。
 しかし、「楽しい」という個々の内面に着目したことは、歴代の総理が言った「偉大な国」や「美しい国」よりは、まだましです。
 これまでの総理発言から、「楽しい国」の楽しさは、カネでは手に入れる事のできない「楽しさ」であって、達成感や自己実現、他者や自然との交歓、相互承認・社会承認などが満たされた状態を「楽しい」ということなのかとも思えます。
 私の理解について過不足あればご教示いただきたい。そして、その楽しさを多くの人が実感できる社会を作るために政治は何をなすべきとお考えか、総理のご見解を伺います。

〇「2024 年選挙の年」大変動の分析・認識について

 次に、激動する世界についての分析・認識について伺います。
 昨年は世界で選挙が行われ、我が国をはじめ、イギリス、アメリカで激動の年となりました。今年のドイツを見てもナショナリズム・ポピュリズムのさらなる台頭が起きています。これらの要因は、拡大する一方の「格差」とその固定化にあるとの分析もあります。我が国にとっても格差と固定化の是正は政府を挙げて取り組まなければならない重要課題です。
 世界の状況を踏まえ、格差是正と固定化の解消について、石破総理のご見解を お伺いいたします。

〇「森友文書開示」について

 次に、「森友文書の開示」について伺います。
 森友問題は、安倍政権の影と闇の部分であり、遅きに失した感はありますが、前政権までならできなかった事がようやく動き出しました。最後まで無理が道理をねじ伏せるようなことがあってはなりません。また、民主主義の基本である情報公開が文書の隠ぺい、改ざん、破棄などにより踏みにじられたことを放置してはならないのです。
 しかし、一歩踏み出したとはいえ肝心の開示文書が「のり弁」では話になりません。 (問 05)そのようなことがないよう石破総理には「徹底した開示」を改めてお約束していただきたい。
 そして、開示を決めたのであれば一刻も早く、少なくとも今の予算審議の最中には必ず開示すべきであることを強く求めます。
 加藤財務大臣には、今後の開示日程等についてお示しください。

〇自民党裏金事件・・・企業団体献金禁止と租特の見直し

 税の議論は国民の信頼が大前提です。
 自民党の裏金事件は、政治に対する信頼を著しく損ねました。その全容解明はまだ道半ばです。衆議院の予算委員会参考人招致で旧安倍派元会計責任者が証言したことは、これまで政倫審で説明してきた安倍派幹部の証言と大きく食い違います。
 旧安倍派元幹部の参考人招致への出席を含め、総理には、自民党総裁として、 全容解明に向けて責任ある対応を求めますが、見解を伺います。
 また、今後の参議院と衆議院特別委員会の審議に持ち越された最大の課題は、企業団体献金の廃止と政治がカネによってゆがめられる温床となってきた、租税特別措置が適用となった企業名の公表です。特に租税特別措置は税制を通じてなされる隠された政府補助金に外ならず、その優遇措置は政府によって行われる特権で、大多数の一般納税者から特定の受益者へ移転されるものである以上、受益者公開原則に付されるべきものです。
 企業団体献金全面禁止と租特適用企業名公表について、石破総理の英断を求 めます。

〇税制の「公平・中立・簡素」の原則について

 この度のいわゆる103万円の壁問題をめぐって、課税最低限の引き上げはステルス増税を回避するためにも必要とは考えますが、控除額が4 段階で上乗せになるなど、制度はさらに複雑化してしまいました。
 税の原則は「公平・中立・簡素」であり、その中でも国民の理解を得るには、「簡素」であることは極めて重要です。「簡素」でなければ「公平・中立」も納得も進みません。この改正で国民理解・納得が進むとお考えか。総理の見解を伺います。

〇いわゆる「1 億円のかべ」問題について

 次に、いわゆる「1億円のかべ」問題について伺います。
 格差是正策の根幹となる制度は税制です。令和 5 年度改正に基づき今年の所得から「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」が適用されます。まずは、第一歩として注視していきたいと思いますが、これは30億円以上の収入があるほんの一握りの人だけに適用されるもので、格差是正の本丸とはなりえません。
 さらなる格差是正策の必要性と制度化について石破総理の見解を伺います。

○高校授業料の無償化について


 次に、高校授業料の無償化について伺います。
 高校授業料の無償化は、私たちの前身である民主党政権時代から求めてきたものであり、所得制限などを設けずに国として制度化することには、異存がないところです。しかし、この間、先行実施してきた自治体では公立高校の定員割れの問題が惹起し、地域の公立高校が廃校に追い込まれる事態も起きています。また、公立高校の予算は設置者である自治体財政の影響を大きく受けるため、教育内容の充実や施設整備が十分に進まない問題も起きています。このままでは、公立離れが更に加速し、ひいては公教育の役割が果たせなくなる事態も起きかねません。
 政府の高校教育無償化の実施によって起こりうるこれらの課題に対して、今後とも遺漏なき対応を強く求めるものですが、総理の見解を伺います。

〇ガソリン暫定税率廃止について

 次に、ガソリン暫定税率の廃止について伺います。
 コメの価格急騰は社会問題化しています。平年比でキャベツが3倍、白菜が2倍をはじめ食糧費の高騰が国民生活を直撃しています。積極的な賃上げの動きはありつつも、物価上昇を補うには至っておらず、2024 年の実質賃金も前年比 0.3%減と3年連続マイナスとなっております。これほど物価高が収まらない状況の中で、やると決めているのになぜやらないのか?何を躊躇しているのか?全く理解ができません。
 今こそ、暫定税率関連規定を削除し、新年度(4月1日)からただちに1リッター当たり25.1円のガソリン減税を実現すべきと考えます。石破総理のご決断を求めます。

〇トランプ外交と国際課題対応について

 次に、トランプ外交と国際課題の対応について伺います。
 トランプ大統領の発言等に、条件反射的に一喜一憂する必要ないというのが対応の原則として必要だと思います。取り巻く状況では、安全保障、気候変動、AI規制等の重要課題が山積しています。税の分野でも国際課税の協力や関税問題などこれまでの各国の努力の積み重ねを無に帰すようなことがあってはなりません。
 そこで伺いますが、今後の国際的課題の協議における石破内閣の基本姿勢・行動原則を総理にお示しいただくとともに、その上で国際課税問題、関税問題に対する現状認識と対応方針について加藤財務大臣にお伺いいたします。

〇自民党の参院選公認候補者問題について

 最後に、自民党の参議院公認候補者問題について伺います。
 自民党は杉田水脈元衆議院議員を参議院比例区の公認候補として決定しました。先の衆議院選挙ではウラ金議員でもあり公認が認められませんでしたが、なぜ今回は参議院の比例区候補に決まったのでしょうか?
 また、アイヌ民族への差別的な発言では札幌法務局などから「人権侵犯」と認定された人物であり、そのような人の公認は、アイヌとの共生・アイヌ文化を郷土の誇り・財産として継承を進めて行こうとする全ての北海道民への侮蔑であり断固として抗議します。
 党総裁としてこのような決定を撤回するよう石破総理(総裁)のご決断を求めます。

 これで質問は終わりますが、最後に一言申し上げます。
 少数与党になったとは言え、この間の政府与党の対応は、二転三転、まさに迷走しています。重要広範議案の一つである「年金制度改革の関連法案」も未だに提出すらされていません。選挙に有利か不利かで法案提出を躊躇することなどあってはなりません。「熟議の国会」と言っても提出されなければ、議論すらできないではありませんか。政権与党として責任ある対応を求めます。
 今後も、私たち会派は、良識の府・再考の府・熟議の府である参議院として更なる熟議を尽くしていくことを表明して、私の質問を終わります。