立憲民主党は、4月9日午後、食料・農業・農村政策WT(座長・田名部匡代参院議員)・農林水産部門(部門長・金子恵美ネクスト農林水産大臣・衆院議員)合同会議を国会内で開催、農業政策に関する党内協議を行いました(司会:神谷裕農林水産副部門長・食料・農業・農村政策WT事務局長・衆院議員)。

 田名部座長は冒頭のあいさつで「新たな農業政策について党内議論を始めさせていただく。この間、役員が集まり、有識者のご意見も踏まえ、夜も議論をさせていただいた。ぜひ、皆さんからご意見をいただき、夏の参院選挙に向けて、われわれの農業政策を力強く訴えていけるよう整えていきたい」と述べました。

 金子部門長は「4月24日の次の内閣には、われわれの考えを示さなければならない。できるだけ時間を使ってしっかりと議論を積み重ねたい。先日、横沢高徳参院議員のご案内により、大船渡市の山林火災の現地視察を行った。参加された議員各位に御礼申し上げる。しっかりと再造林するにはどういう課題があるかを含め、明日の法案審議にぜひ生かしていただきたい。また、日米通商問題対策本部が立ち上げられている。農水の立場で部門長として入らせていただいている。基本は自動車の話だと言われているが、農産物輸出に取り組んでこられた方々には打撃になる話。米の問題をどう考えるか。対策本部では、私たちの知見をもって、米の問題をどう考えるか。対策本部では、私たちの知見を活かして中小企業を支える仕組みを検討すべきという議論になりつつある。ご関心のある議員には、ぜひ日米通商問題対策本部にご参加願いたい。必要があれば、この部会での議論もさせていただくこともある。よろしくお願いする」と述べました。

■農業政策に関する党内協議

 神谷副部門長・WT事務局長より役員で検討している段階の農業政策、すなわち、(1)消費者・国民へ農産物を安定的に供給する基礎となる農地を維持するための新たな直接支払である食料確保・農地維持支払(仮称)の創設(2)新規就農者に対する支援の在り方――について、説明がありました。また、公的新品種育成促進法案、ローカルフード法案を提出することにつき、改めて報告がありました。

 また、金子部門長から、検討中の食料確保・農地維持支払(仮称)の仕組みについて、補足説明がありました。

 検討中の食料確保・農地維持支払(仮称)は、(1)消費者・国民へ農産物を安定的に供給する基礎となる農地を維持するための農地維持支払(仮称)を創設(2)中山間地域等直接支払交付金、多面的機能支払交付金、環境保全型農業交付金を(1)の加算措置として再構築(3)主食である米の再生産を確保するため、米価が生産コストを割り込んだ場合に交付金を交付する仕組み(主食用米支払(米のトリガー)(仮称))を整備(4)食料自給率の向上に向け、主食用米以外の米粉用米、飼料用米、麦・大豆・飼料作物等に対し交付金(自給率向上支払(仮称)(水活交付金の後継対策))を交付――によって構成されるものです。

 検討中の新規就農対策は、(1)就農準備資金、経営開始資金、経営発展支援、雇用就農支援の強化・拡充(2)新規就農者の相談窓口の整備(3)「農業をやってみたい」――という人材の掘り起こしを柱とするものです。

 次いで、これらの政策について協議を行い、参加議員からさまざまな発言がありました。

 まず、検討中の食料確保・農地維持支払(仮称)の全体構成及び農地維持支払(仮称)については、次のような意見がありました。

(制度設計は妥当)

○全ての農地に支援を行い、環境、中山間をより手厚く支援するという三階建ての制度設計は良いと考える。(小山展弘議員)

○支払制度については賛同。(辻英之議員)

(制度の公益性を強調した広報が必要)

○農業基盤、食料安全保障を維持するもので、農家のためだけでなく、国民全体のための支払であるという公益性を強調して説明して良いのではないか。(小山展弘議員)

(農地維持支払の単価は手厚くすべき)

○農地維持支払の単価は、中山間地域等直接支払制度の急傾斜単価並みとすべき。小出しするよりもインパクトが大きい方がいい。(横沢高徳議員)

(農地維持支払の交付対象者-販売農業者の要件の考え方)

○一定のラインは引くべきと思うが、認定農業者など担い手に限ると自民党農政の方向性と全く同じになってしまう。基本法の議論でもわれわれは多様な農業の在り方を認めるべきと言っていた。(渡辺創議員)

○農地に対しての交付金なので、下限面積という線引きの形もあるのではないか。(神谷裕議員)

 主食用米支払(米のトリガー)(仮称)については、次のような意見がありました。

(生産コストが異常に増嵩した場合は別途対応でよい)

○生産コストをどうとらえるべきか。ある年に急激にコストが上がってしまった場合、生産コストを5年平均でみるのか。コストは単年度で見て、異常に上がった場合には別途対応するということでよいのではないか。(小山展弘議員) (本制度を農家の手取り確保に加え、米の生産量確保のために活用してはどうか)

○米問題がこれだけ議論されているので、米のトリガーを強調すべき。米の生産量は政府の公表よりも少ないのではないかとの指摘があるので、米の価格だけでなく、量を確保するためにも本制度を活用するというニュアンスをいれてはどうか。(篠原孝議員)

(米以外の作物に対する支援についての考え方)

○野菜や畜産にはいろいろ制度があるが、米のトリガーで米が強調されると、ほかの作物が軽視されるのではないかという話が出てきかねないのではないか。(小山展弘議員)

○米以外の作物については、農地維持支払で対応していると説明すればよい。(篠原孝議員)

 新規就農対策については、次のような意見がありました。

(制度の実効性への疑問)

○一般企業が初任給を上げている。若い人が農業に従事するに当たって、いろいろ見てきた中、インパクトに欠ける。新規就農して、トラクターや耕運機や設備などの支援金はあるとしても、2年、3年支援して本当に若い人が就農するのか疑問。(齋藤裕喜議員)

(制度の前身・旧民主党政権で導入した「青年就農給付金」の交付額、支援期間設定の経緯と年齢の考え方)

○現行制度の前身である青年就農給付金は、旧民主党政権で導入したものであるが、日本人の平均労働時間、平均最低賃金から、必要な年収を基に、交付額を年150万円と設定した。収益が上がるまでは大変だから、危険を冒して、40代までに仕事をやめて就農するので、5年間くらいは、最低賃金程度は確保しなければ、という考え。50代、60代の人への就農支援は、考え方を変えて説明しなければならない。今後も田舎で集落の維持に協力する人なので、ソフトランディングを。(篠原孝議員)

(就農先となる農業法人を支援、重視すべき)

○仮称「農援隊」構想と言っているが、滋賀県の野洲市に農作業の代行を事業とする農業生産法人がある。農地を借りて農業をやっていくのはリスクがある場合、農業法人に農家子息が就職する、半農半Xの「農」の部分は法人での就農というパターンが出てくるのではないか。法人による農業、農作業の事業を支援すべき。破綻する場合、債務整理をしてもらい、農機は新法人が買い取り、法人として経営していくこともあるべき。法人であれば金融機関も融資できる。こうした事業再生もある。法人のパターンも検討してはどうか。(小山展弘議員)

○農林水産キャラバンで宮崎県立農業大学校に行ったところ、卒業生の6割が農業法人に就職している。給料をもらいながら農業をして、良ければ独り立ちするなど、危険がない。法人も重視すべき。(野間健議員)

(親元就農、雇用就農による半農半Xを施策の対象とすることの意義)

○関係のない人を農業につなぐよりも、農業の周辺者-IJUターンの一部がそうかもしれないが-農村に一定の関与のある人たちをもう一回引き連れることが売り。ベースを作るべき。親元就農に支援がないことへの不満がすごく大きいところで、親元就農を差別しないのも大きな柱となると思う。農業法人に勤めながらの半農半Xは良い話だと思う。そういう層をきっちりケアすることが、農村で本当に農業のことを見つめている人には、自分たちに手が届いているという感じになると思う。(渡辺創議員)

(子どもや若者への食と農への学びを増やす必要)

○食に関する意識は高まっているが、農業に対する理解が非常に低い。これは、長年、子どもや若者と向き合ってきて感じており、データとしても表れている。子どもや若者の食に関する学びを増やすべきと思う。これが農村振興にもつながる。中学の段階から食の重要性を感じてもらう教育が必要。人に対して投資するというわが党の政策に合うと思う。(辻英之議員)

(二地域居住、関係人口の就農支援)

○大船渡市の視察で確認したが、二地域居住、関係人口、ワカメの収穫の時期だけ都市部から来て手伝う人もいる。地元の中山間地域の米作りをしているところで、田植え、稲刈りのシーズンに若い人が沢山集まっている。こういうところを後押しする姿勢は非常にいいと思う。(横沢高徳議員)

(外国人材の活用へのサポートが必要)

○外国人材を使いやすくしてほしいという意見をもらうことが多い。農業経営が忙しい中、海外人材の手配に手間を取られ、結局実現できず、機会を逸しているという現場の声がある。外国人実習制度が見直されているところであるが、農業分野でのサポートが打ち出されれば、検討でもいいので、入れていただきたい。(岡田華子議員)

 党内協議を終え、神谷副部門長・WT事務局長より「いただいたご意見をテイクノートさせていただいた上で、また、皆さんにお諮りしたいと思う」との発言がありました。

 最後に、金子部門長より「インパクトがあった方がよい。一方で、バラマキ批判に対し、きちんと説明ができるということが大事。認定農業者など特定の農業者だけでなく、多様な農業者をしっかり支える仕組みを作らないと、本当の食料安全保障は確保できないと思っている。その上で、更なるご議論をいただきたい。消費者の方々に農業に対し税金をこれだけ使っていいのだということをご理解いただけるような政策作りをしていきたい」との発言がありました。