衆院憲法審査会が3月13日、「国会機能維持」のうち「選挙困難事態の立法事実」をテーマに開かれ、立憲民主党の山花郁夫、柴田勝之、武正公一、米山隆一の各議員が党を代表して意見を述べました。 山花議員は、選挙困難事態の具体例として、まず東日本大震災を取り上げました。東日本大震災のタイミングで仮に総選挙を実施したとしても、8割強の議員は選出できるとの試算を示しながら、この場合に衆院議員の「任期延長を行うことは、8割強の有権者の選挙権を行使し得る機会を制限する」こと意味していると指摘しました。つまり、「一部地域で選挙を行うことが困難であることをもって、より多くの地域の選挙権を制限することは、比較衡量、比例原則の観点からも明らかにバランスを失している」と述べ、「大規模災害」のケースは選挙困難事態の立法事実として想定し難い、としました。

 次に山花議員は、「感染症の全国的な蔓延」のケースを検討しました。この場合一部地域だけなく全国において選挙が困難になる可能性があるものの、「インターネット投票などの方法で公正な選挙が確保できるような仕組みを追求することを論理的に先行すべきだ」と述べ、公職選挙法の改正などによって憲法の求める選挙権保障を実現するのが立法府の役割だと強調しました。山花議員は、いずれにしても「現時点では立法事実が確認できない」と意見表明しました。

 柴田議員は、選挙困難事態の要件について、他党に質問しながら見解を述べました。選挙困難事態を肯定する立場からは、国政選挙を実施する際、「選挙の一体性が害されるほどの広範な地域において」(広範性要件)、「70日を超えて困難であることが明らか」(長期性要件)な緊急事態が発生した場合は、選挙困難事態に該当する、との主張がなされています。これに対して、柴田議員は、民主的正当性を確保するには選挙を実施することが重要であり、「選挙の一体性や70日を根拠に国民の選挙権を制限する、しかも憲法に定められた国会議員を選ぶ権利を、投票可能な地域も含めた全国の選挙区で一律に停止してしまう」ことになるとして、選挙困難事態の2要件を批判しました。

 武正議員は、他党からの質問に答えつつ、阪神淡路大震災や東日本大震災の際の自身の政治活動や選挙運動を振り返り、「有権者の皆さんの参政権それから投票権、国民主権であれば第一に考えるべきである。早くそうした代表を選んで、それぞれの復旧復興のための具体的な手続きを進めてほしい」、という有権者の思いを受け止め、選挙権保障の重要性を主張しました。

 米山議員は、選挙困難事態の条項が仮に創設された場合、例えば「インフルエンザが流行しているから十分な対応ができない。では国会で3分の2を持っている多数派がひたすらこの条項を使い続けて、ずっと権力を維持するということが可能になってしまう」として、この濫用事例の危険性を指摘しました。