野田佳彦代表は7月12日、SNSでのアンケート「野田代表に『街頭演説で話してもらいたいこと』」のリクエストに応える形で「共生社会・人権」「物価高・経済産業」について取り上げ、仙台市内での街頭演説会で訴えました。
以下、野田代表の演説内容です。
仙台の皆さん、こんばんは。「物価高から、あなたを守り抜く」――立憲民主党代表の野田佳彦です。どうぞよろしくお願いします。
わが党では今、「立憲ライブ」といって、YouTubeを使って視聴者の皆さんと議員とが意見交換をする場があるんです。昨日、この立憲ライブで、私・野田佳彦が街頭に立った時に「何を言ってほしいか」「何を演説してほしいか」というテーマを募集しまして、今日の朝9時に締め切りました。
驚きました。第1位は「共生社会・人権」について。第2位が「物価高・経済」についてでした。「物価高から、あなたを守り抜く」ということを1番の政策の柱にしていたので、それを抜いてしまった新しい争点が生まれているということを実感しましたので、まずはこの問題からお話させていただきたいと思います。
世界中で分断と対立が生まれています。その分断と対立が諍(いさか)いとなり、争いとなり、戦争の火種となっています。今、ものすごく危険な状態だと思います。
日本でも、残念ながら分断と対立を煽るような論陣を張るような政治勢力が出てきたのではないでしょうか。私はとても憂慮しています。外国人を排斥することによって得点を稼ごうという政治勢力があるならば、私は断固として戦っていきたいと思います。
そもそも、外国人と共生していかなければ、日本の社会は成り立たなくなっているのではないでしょうか。
例えば介護の分野。2040年までに270万人の職員が必要だと言われています。15年後です。今は210万人台ですが、待遇が厳しいため新しく人が入ってこない。辞める人も出ている。この60万人の差を埋めることは、とても困難です。
そんな時に、社会の基盤をなすようなエッセンシャルワーカーとして外国の方がやってきて手伝ってくれるならば、これはありがたいことではありませんか。今、インドネシアやフィリピンなどからも来てくださっています。
試験を見たのですが難しいんですよね、日本語の試験が。例えば「床ずれ」は専門用語で「褥瘡」(じょくそう)と言うんです。これ、ご存知ですか。「じょく(褥)」は「びょうじょく(病褥)」の「じょく」、「そう(瘡)」は「かさぶた(瘡蓋)」の「かさ」。言っているけれど、私書けません。
そんなの(専門用語)を読めるようにする、日本語の研修を終えてから職員になれるのです。志を持って介護のために来ている外国の皆さんがいらっしゃいます。これは嬉しいことではありませんか。
それだけではありません。私は昨日、愛知県でマイクを握りましたが、その前に製造業に関わっているさまざまな中小企業のオーナーさんと会いました。
日本一のものづくりの県は愛知県でしょう。トヨタを筆頭に有名なメーカーがあり、それを支える企業もたくさんあります。私がお会いしたのは西尾市で、鋳型の企業が多いんですよね。自動車の部品や一般機械の鋳型を作るような企業です。
その社長さんたちに聞いたら「社員が100人いるが、30人は外国人だ」と言っていました。外国の方がいないと、今、ものづくりもできないのです。だからこそ、独自に日本語の学習会を開いたり、相談ごとに対応したりして、懸命に支えてもらおうとしているのです。
働く現場では、外国人がいなければやっていけない、人手不足の時代です。2040年までには100万人の労働力が足りなくなると言われています。100万人です。
今までは、女性や高齢者にもっと働いてもらうことで労働人口を確保してきました。ロボットを使えばいいという意見もあるかもしれませんが、それでも100万人の労働力を作ることは困難です。
当然ながら、製造の現場も、介護の現場も、建設の現場も、公共交通の現場も、外国人の手を借りなければ日本社会は成り立ちません。だとするならば、排除の論理ではなく、しっかりと受け入れ、共に生きていく社会を目指すべきではないでしょうか。
われわれは、多文化共生社会をつくりたいと思っています。外国の方と共生できるだけではありません。多文化共生というのは、性別の差別をなくしていこう、男性と女性の差別をなくしていこう、そして当然、国籍の壁もなくしていこう。あるいは、価値観の相違を認めていこう、年齢差による差別もやめよう――そういうことが多文化共生社会なのです。
もう1つ、忘れてはいけません。障がいの有無によって差別がある。これもいけないのです。
そうした多文化共生社会を、立憲民主党はつくりたいと思っています。そのための骨太な基本法、多文化共生社会のための基本法を、つくりたいと思っています。
今、各党の個別の外国人政策は、排斥の論理ばかりではありませんか。自民党までも、「違法外国人対策」を政策の柱にしました。違法外国人って何ですか。違法なことは、外国人も日本人もやってはいけないんです。ルールは、みんなに同じように適用しなければいけないのではないでしょうか。
逆に、治安の問題や、心配される地域が出てきています。逆に「ルールを守ってもらいましょう」ということをやっていきましょう。
ある意味、宮城県は多文化共生社会の発祥の地だと、私は思っています。
32年前、宮城県の知事選挙がありました。そのとき、自民党は誰を立てたか。国土交通省のインフラ整備の局長級の大幹部でした。知事は橋をつくったり、道路をつくったりできる人がいい、それはみんな喜ぶじゃないですか。「これは強いな」と思いました。
私はそのとき、日本新党の1年生議員でした。非自民勢力は誰を担いだか。今お話がありましたが、浅野史郎さん。当時、厚生労働省の障害福祉課長でした。
国交省の大幹部に対し、若い厚労省の障害福祉課長を担いだ。勝てるわけないな、とみんな思っていました。ところが、マイクを持って訴えたら大違い。素晴らしかったのです。
彼が言ったのは、こういうことでした。「障がいを持っていらっしゃる方が住みやすい社会は、どなたにとっても住みやすい社会ではないか。重度の障がいを持っていらっしゃる方が生きていける社会は、誰にとっても生きていける社会ではないか」。
その通りだと思いました。宮城県民はその言葉を受け入れ、彼を知事にしました。残念ながら、彼は病に倒れて志半ばとなりましたが、その理念、多文化共生社会は、私は宮城県から始まったと思っています。宮城県民はその精神を、今回の参議院選挙でも、ぜひ投票行動で表していただきたいのです。
それが、石垣のりこさんではありませんか。
私はいま縷々(るる)申し上げましたが、多文化共生のような、多様性を認め合う社会を、一貫して訴えてきたのが石垣さんではありませんか。
例えば、選択的夫婦別姓。なぜ同姓でなければいけないのですか。同じ姓を名乗らなければいけないのは日本だけじゃないですか。不都合を感じている人がいるならば、別姓を認める。当たり前のことではないでしょうか。
同性婚も、認めるべきではないですか。多様性を尊重する社会を、立憲民主党はつくりたいと思っています。
その、まさに逆を行くような、「〇〇ファースト」みたいなものは、私どもはまったく相容れません。
われわれは極論ではなく、多文化共生社会をつくるために、全力を尽くしていくことを皆さまにお誓い申し上げたいと思います。
2番目のテーマは、やはり「物価高」でした。
私たちは「食料品の消費税ゼロ%」を訴えていますが、今、私は確信を持ってこれを言っています。なぜならば、4月だけで4,000品目の値上げ。7月は2,105品目。すごい数です。
その結果どうなっているか――特別養護老人ホーム、食材を集めるのが大変なんです。金がかかっていて。介護施設もそう。病院食も大変です。学校給食も大変です。「食卓の危機」、そして「施設の食材費の危機」です。
これに対して、石破政権は何もやっていないじゃないですか。物価高無策を許してはいけません。そのためにも、特に上がっている食料品にきちんと光を当てた「食料品消費税ゼロ税率」を実現しようじゃありませんか。
石垣さんはその先まで行ってしまっていますが、まずは「食料品ゼロ税率」。これは党一丸となって、ワンボイスで訴えています。ぜひ、これを実現するために、皆さまの応援をお願い申し上げます。
最後に、もう1つ言わせてください。
最近の自民党の質、ひどすぎると思いませんか。例えば、5月3日、あの京都選出の参議院議員・西田昌司さん。ひめゆりの塔のところで、とんでもない発言をしました。多くの女子学生が亡くなった、その歴史的な事実、女子学生それだけではありません。軍民あわせて20万人の人々が亡くなった、沖縄県民の感情を逆なでしました。傷跡の残っている地域に、寄り添う気持ちがまったくない。
前の農水大臣は、何と言いましたか。「私はコメを買ったことがない。皆さんからもらうから、売るほど自分の食品庫にある」。消費者も、生産者も、なめていませんか。消費者、生産者の気持ちが分かっていないと思いませんか。
極めつけは、7月9日。「運が良いことに、能登で地震があった」。なんですか、この発言は。運が良いことに地震があった?あの被害で、今も苦しんでいる人がいっぱいいるではないですか。しかも、われわれ全力を挙げて予算委員会で議論し、予算を修正しました。1千億円の能登復旧・復興予算を組みました。参院の予算委員長が彼だったんじゃないですか。参院の予算委員長だった人が、輪島の名前は出てきたけれども、「たまがなんとか」と言って「珠洲(すず)」が出てこない。無関心だったということではありませんか。
被災地に寄り添う気持ちがない。戦争の傷跡の残っている地域に寄り添う気持ちがない。コメが上がって苦しむ消費者や、生産者の不安に寄り添う気持ちがない。被災地に寄り添う気持ちがない。――そういう政党とは、きっちりもう決別しようではありませんか、皆さん。
そのためにも、まとめてそうした怒りを、ぜひ今回は「1票」を投じることによって行使していただきたいと思います。それが石垣のりこ、石垣のりこ、石垣のりこ。確信を持って応援していただきますよう、お願い申し上げ、マイクを置きます。ありがとうございました。