衆院予算委員会で8月4日、「米国の関税措置等内外の諸課題」に関する集中審議が行われ、立憲民主党から野田佳彦代表、渡辺創衆院議員が質疑に立ち、石破総理に厳しく質しました。

■野田佳彦代表

 野田代表は(1)企業・団体献金の禁止(2)ガソリン税の暫定税率の廃止(3)日米関税交渉に関して(4)参院選の自民党の公約の物価高対策(5)戦後80年にあたって――等について石破総理と質疑を行いました。

 冒頭、野田代表は「石破総理は続投の意思が固い」と指摘し「続投する理由を物価高、自然災害、日米交渉など、まだやり残したことはあるか。参院選で示された民意を踏まえて、これまで主張してきた政策を反省して変更する」「そういう観点から質問させてほしい」と述べました。

 (1)企業・団体献金禁止について、野田代表は「裏金問題の解明、不祥事を根絶するための処方箋として政治資金規正法改正案として議論している」、今の状況を「延長戦の前半戦が終わって、PK戦で決めるしかない状況」「自民党の政党支部が全国で7800もあるのは多すぎる。個人の財布になっている可能性がある。制限すべきが妥当な考え。具体的に協議していきたい。他党に賛同を呼びかけるのがあるべき姿。決着をつけていきたい」と訴えました。

 (2)ガソリン税の暫定税率の廃止について野田代表は、11月1日実施の中身で野党7党で共同提案し、与党も合意文書を交わしたことをあげ、「年内の早期に成立させるということを確約すべき」「財源、地方への影響、流通への影響など、死に物狂いでその課題を乗り越えて、早期に実施する」と石破総理に迫りました。
 石破総理は「実施ができるように私どもとしても務めていきたい」と述べました。

 (3)野田代表は「国難だと思ってきた」と述べ「あえて政局にしようと思ったことは一度もない。足を引っ張るのではなく、お尻を叩く」スタンスと述べ、「文書を作らなかったことによる齟齬のほうが、マイナスが大きいのではと懸念をもっている」と指摘しました。
 さらに、野田代表は「ブロック経済化が先の大戦につながったことを踏まえ、自由貿易体制の再構築に動いてほしいと思っている」と強調しましたが、石破総理は「どうやってアメリカも巻き込んでいくのかをあわせて考えないといけない。WTO改革も議論すべき」「公正な貿易のルールを作らないと悪い意味で歴史が繰り返す」と述べました。
 野田代表は、「行動してください」と重ねて石破総理に求めました。

 (4)参院選挙で訴えた物価高対策に関連して、消費税減税について野田代表は「他の野党も消費税については多くは減税を主張している。やり方や規模感の違いはあるが、野党として最大公約数で揃えていきたい。消費税の問題も野党間の協議を進めていきたい」と意気込みを語りました。
 立憲民主党が目指す給付付き税額控除について野田代表は「制度設計中。なるべく早く提示したい」と述べ、協議を始めることを求めたところ、石破総理は「答えを出さないといけない」と述べました。

 (5)野田代表は戦後80年に関連して、「日本被団協がノーベル平和賞を受賞」した一方で「分断と対立が起きて、核兵器の使用をほのめかす発言が出てきた。参院選挙では核武装が安上がりとの発言」「自民党の参院議員が沖縄で暴言があった」ことに触れて、「きわめて憂慮すべき事態」と強く懸念を指摘しました。「過去の歴史に向き合う必要がある」「歴史を忘れた。歴史の風化の発言が多いので、談話、何らかの総理のコメントを出すべき」と述べました。
 石破総理は「二度と戦争を起こさないためにどうするか。単なる思いの発出だけでなく、何を誤ったか、70周年談話では、歴史の評価とは政治システムが歯止め足り得なかったと言及したが、では何故歯止め足り得なかったのか考えるべき。強い思いがある」と述べました。
 野田代表は「帰らぬ人となった人たちがたくさんいる。その犠牲の上に今の国が成り立っている。戦争、大空襲、家族、帰らぬ人がたくさんいたということをしっかりもう一回思いを致すということが大事。これこそ、総理が一番やりたかった真骨頂ではないか。やり遂げるべき」と石破総理に求めました。

■渡辺創議員

 渡辺議員は、(1)参院選での与党の敗因(2)与党の物価高対策(3) 関税措置等を巡る日米協議――について質問しました。

 まず渡辺議員は、先の参院選で与党が大敗したことについての敗因を石破総理へ質問。2010年の参院選後、当時野党だった石破総理が、民主党政権に対して「参院選は政権の是非を問う選挙」「選挙をなめるな」と強い言葉で迫った国会答弁を引用し、「今回の参院選も、まさに国民が石破政権の是非を問うた結果だ」と指摘しました。さらに「裏金問題など政治とカネへの不信が根強く影響したのではないか」と問いただしました。
 これに対し石破総理は、「負けに不思議の負けなしという言葉がある」と述べつつも、「党として期限を切って選挙結果を総括し、次につながる分析を行う必要がある」と述べるにとどまりました。
 自民党内では、石破総理の進退を巡る議論が続いており、渡辺議員は、総理の続投を疑問視する声の中に、裏金問題で責任を問われた人物が含まれていることにも触れ、「このような姿勢が国民にどう映っているかを考えるべきだ」と批判。選挙総括において、政治資金問題への対応を正面から検証すべきだと訴えました。

 また、渡辺議員は、参院選で自民党が公約に物価高対策として掲げた「2万円・4万円の現金給付」について、「投票の判断材料となったはずだ。今どう実現するのか、国民に明確にすべきだ」と石破総理に対し明確な実施の意志を問いました。
 石破総理は「目的は困っている方へ早く支援が届くこと。その目的が果たせるのであれば、他の手法でもよい」と述べ、給付実施に必ずしも固執しない考えを示しました。その上で「政府だけで決められる話ではない。各党の協議の中で議論し、予算措置も必要だ」と述べ、明確なスケジュールや方法の提示は避けました。

 さらに関税措置等を巡る日米協議について渡辺議員は、政府と米国側のファクトシートに大きな乖離(かいり)があることを指摘。政府の説明が簡略化され過ぎており、交渉の具体的な内容や合意の詳細が不透明であるため、国民や関係業界が正しい理解を得られていないと問題視しました。

 質疑終了後、野田代表は記者団の取材に答えました。

 政治改革については、「政治資金規制法改正については、比較第1党と第2党で真摯(しんし)に協議をして、お互いにトップ同士で膝突き合わせて協議しようという姿勢があったので、これは前進だと思う」と述べ、早期実現に意欲を示しました。

 ガソリン税の暫定税率廃止については、石破総理にはやりたいという意思があったと思うと述べた上で、「年内に実現するというところが、合意の基本。そのことを今日確認をしたかった。党内に指示として徹底されるかどうか、役所がきちっと協力するかどうか、それをよくチェックしていきたい」と答えました。

 日米関税交渉について、合意文書を作らないということに、「向こうの閣僚が勝手に物を言って、そうではないみたいな言い訳を日本がするみたいなことも続いている。日米交渉のトンネルの出口まで来たのではなく、ようやく入り口だったのではないか。まだまだ多難な状況続く」と厳しい見方を示しました。