参院予算委員会で8月5日、「米国の関税措置等内外の諸課題」に関する集中審議が行われ、立憲民主党から徳永エリ、村田享子両議員が質疑に立ちました。

■徳永エリ参院議員

 徳永議員は、日米通商交渉に関連し、赤澤経済再生大臣が「3カ月に8度の訪米。今日の夕方からまた訪米。2週間もたっていない状況でまた訪米する。何のために訪米するのか」と質問しました。

 赤澤大臣は、「具体的な合意文書がない中で、自動車に関する大統領令はいつ出るのかが共通の問題意識。一日も早く自動車関税、部品関税について、大統領令が発出されることを促す」と述べました。

 徳永議員は、「発令した大統領令の付属書に、わが国の記述がない。内容を精査しないといけないと先週の金曜日は役所が大混乱。齟齬(そご)があると分かった」と指摘。

 赤澤大臣は、「私どもは確認し、EUと同じ扱いになると確約を得ている」と答えました。

 徳永議員は、「口約束だが大丈夫なのか。発令までに2日しかないが、間に合うのか」「8月7日までに齟齬(そご)は解消される。日米合意の通りに進むでよいか」と確認しました。赤澤大臣は「私はそのように認識している」と応じました。

 自動車については、徳永議員は、「わが国の経済の屋台骨が揺らぐ」と強い懸念を指摘しました。

 赤澤大臣も、「わが国の経済に大変なダメージが生じている」「相手のあることなので、一刻も早くとしか言いようがない」と答えました。 

 2020年日米貿易協定について徳永議員は、「口約束だったが、日本は誠実に進めてきた。米国は守らなかった。241品目の撤廃を約束したのに、追加関税を課すと約束を反故にした。協定違反だ」と指摘しました。

 石破総理は、「重大な懸念をもっているが、日米の合意が着実に合意されるというのは日本だけの利益ではない。日米双方の利益が最大化されることを目指して、交渉の合意を実現していく」と答弁しました。

 コメについて、徳永議員は、「輸入枠77万トン、コメは聖域として守ると言ってきた。江藤前農水大臣は、コメを譲る気は全くないと言ってきた。今回、交渉のカードとして切った」「SBS10万トンは閣議了解があれば、拡大は可能なのではないか」と問いかけました。

 小泉農水大臣は、「可能とできるかは別。やるとは考えていない」と答えました。

■村田享子参院議員

 村田議員は、戦後80年談話の在り方やトランプ関税への政府対応等について政府の姿勢を厳しくただしました。

 冒頭、村田議員は「総理、戦後80年の節目に談話は出されるのか」と石破総理に問いました。石破総理は「形式も含めて断定はできない」と慎重な姿勢を示しつつ、「戦争を体験した世代がいなくなったときが怖い」という田中角栄元首相の言葉を引用し、戦後の平和への思いを語りました。村田議員はこれを受け、「今を生きる世代の責任として、政府は明確なメッセージを出すべきだ」と訴え、8月15日(終戦の日)や9月2日(降伏文書調印日)の可能性を問うも、石破総理は「内容と時期は慎重に検討する」と述べるにとどまりました。

 続いて村田議員は、トランプ関税による影響と、それに対する政府の対応への遅れを厳しく批判しました。米国による自動車・部品への追加関税により、日本国内の中小企業が打撃を受けているとして、「アメリカ現地での生産強化により国内発注が減り、仕事が激減するのではないか」と現場からの不安の声を紹介しました。
 石破総理は、省力化支援や多角的輸出支援、資金繰り支援などを挙げましたが、村田議員は「現場ではすでに限界まで努力してきた。『これまでどおり支援している』では間に合わない」と述べ、政府の対応の鈍さに強い危機感を示しました。
  さらに、政府が全国に設置したトランプ関税対応の相談窓口についても、「1千カ所に設置されたが、7月末までの相談実績は約5千件。1カ所あたり月1.2件でしかない」とその実効性に疑問を呈しました。また、「メール相談もできず、平日の昼間のみの対応。周知も不十分で、使い勝手も悪い」と述べ、政府の広報および実行体制の不備を訴えました。
  関税問題の波及効果として鉄鋼業界への影響にも言及。米国市場から排除された中国製の安価な鋼材が日本に流入し、国内価格を押し下げていると指摘しました。韓国やインドなどはすでにアンチダンピング措置を講じているのに対し、日本の対応は遅れており、「ようやく調査を始めたというが、現場はそれでは困る。なぜもっと早く手を打たなかったのか」と批判を強めました。 また、アンチダンピング措置を回避する「第三国経由の迂回輸出」を防ぐ制度が日本には存在していない点も問題視し、「必要なら法改正を」と訴えました。
  石破総理は、「アンチダンピング調査の結果を見て、必要があれば関税措置を講じる」と述べ、「関税定率法改正を視野に入れて検討する」と答弁。第三国経由の規制制度についても「対応を前向きに検討する」と応じました。

 最後に村田議員は、最低賃金の引き上げが決定するなかで「中小企業の体力は落ちている。トランプ関税の影響もあるなかで、賃上げを実現するには補正予算の早期編成が必要だ」と強調しました。さらに、近く赤澤大臣が訪米することを踏まえ、「その報告を閉会中審査でしっかりと行っていただきたい」と委員長に要望し、質疑を締めくくりました。