野田佳彦代表は10月6日、福岡市内で開催された「毎日・世論フォーラム」にて「内外情勢について」講演しました。講演では、(1)高市早苗自民党新総裁(2)臨時国会の開催遅れ(3)アベノミクスの総括(4)外交・安全保障――等について話しました。

(1)高市早苗自民党新総裁

 野田代表は、4日の自民党総裁選で新総裁となった高市早苗衆院議員について、「自民党総裁では女性初。ガラスの天井を破ったという意味では、期待を持たれる方もたくさんいるのではないか」と述べました。
 一方で、「政治家の資質を最初に問われるのは人事」だとし、唯一自民党内で派閥を解消していない麻生派から、多くの議員が党要職に起用されることをけん制しました。野田代表は、「派閥を解消していない人の力が、裏どころか副総裁のようなポストで発揮される状況は、『解党的出直し』と言えるのか」と述べ、「まさに古い自民党の復活になりかねないのでは」と批判しました。
 また、野田代表は税制調査会長人事についても言及。石破前総裁の下で税調会長を務める宮沢洋一参院議員は、「財源論の立場の強い人。高市さんがやりたい積極財政論とは違う。宮沢さんが変わるとガソリン暫定税率の廃止についても柔軟になるのではないか」と一定の期待を示しました。

(2)臨時国会の開催遅れ

 野田代表は参院選後から続く自民党の党内抗争で、70日以上政治空白が続いていることを批判。石破執行部が臨時国会の開会日として提示した10月15日もさらに遅れる可能性があるとして、「臨時国会を早く開かないと、物価高対策を含めた補正予算の審議ができない」との危機感を示しました。
 また、自民党が新たな連立政権の枠組みを模索している点を踏まえ、「そう簡単に連立を臨時国会前に作るということはできないと思う。そうだとすると臨時国会の開会が遅れ、政治空白がさらに長引くことになりかねない。極めて憂慮している」と述べました。

(3)アベノミクスの総括

 野田代表は、アベノミクスの「異次元の金融緩和」により円安が進み、輸出型の大企業は利益を上げた一方、地方や中小企業への「トリクルダウン」は起こらなかったと指摘。その結果として生じた格差を是正することが、「分厚い中間層を再生させるためには不可欠だ」と述べました。
 その上で、高市総裁について「安倍さんの弟子だと自任している高市さんに、アベノミクスの総括ができるのか」と疑問を呈しつつも、所得の再分配につながる給付付き税額控除を総裁選公約に掲げたことを引き合いに「ある種アベノミクスの総括につながることだ。高市さんが覚悟を持ってチャレンジしてほしい」と述べました。

(4)外交・安全保障

 野田代表は、10月末に開催予定のASEANプラス首脳会議やトランプ米大統領の来日を念頭に、「どうなるのか注目したい」と発言。自身が総理大臣に就任する際に中曽根康弘元首相からかけられた、「一国のトップの仕事は外交だ」という言葉を引用し、「わが国の首脳が、各国首脳とどういうやりとりができるかということは注目される」と話しました。特に韓国との関係は重要だとし、「日韓がうまくいっていないといけない。そこにアメリカを巻き込むことによって、東アジアの安全保障、抑止力というのは高まる」との見解を示しました。
 さらに、野田代表はパレスチナの国家承認問題にも言及。国連総会における石破総理の演説に触れ、「ガザ地区に対するイスラエルの対応について厳しく批判したが、なぜ批判だけではなくてパレスチナの国家承認まで言わなかったのか」と現政権の姿勢を批判しました。その上で、「分断と対立が進んでいる時代だからこそ、平和創造の役割を日本はもっと主導的に果たしていかなければいけない」と述べました。
 最後に、保護主義が台頭する国際経済の中で、日本は自由主義の主導的な役割を担うべきだとし、「東アジアの連携もアジアの代表として日本がやっていく。EUとも連携して自由貿易の基地として日本が頑張らなければいけない。そういうことを『善政競争』の一環として高市さんとはやっていければ」と話しました。