野田佳彦代表は11月4日、衆院本会議において、高市総理の所信表明演説に対して(1)政治改革(2)経済財政政策(3)社会保障政策(4)外交・安保政策(5)クマ対策――等について質問しました。

 参考原稿は以下の通りです。なお野田代表は、自身の言葉で演説するため、参考原稿どおりには読みあげていないことをご承知おきください。


第219回臨時国会 総理所信に対する代表質問(参考原稿)

令和7年11月4日
立憲民主党・無所属 野田佳彦

(はじめに)
 立憲民主党の野田佳彦です。立憲民主党・無所属を代表し、高市総理に質問いたします。
 まず初めに、高市総理、大役へのご就任まことにおめでとうございます。ワークライフバランスに留意され、健康管理には十分お気をつけください。
 私は右にも左にも流されない中道路線の立ち位置から高市政権と対峙していく決意です。
 そして、連立政権の枠組みが変わり、ブレーキ役がなく、アクセルがふたつになった政権に対し、国民の暮らしを守り、自由を守り、平和を守る観点から、ブレーキ役を果たす責任を担ってまいります。
 高市総理が所信表明演説で掲げた、力強い経済と責任ある積極財政、そして力強い外交・安全保障政策などそれぞれの中身についてお尋ねしてまいります。
 日本が強くなっても、格差が大きくなれば生活が苦しくなる日本人は増えます。円安では本当に日本が強くなるかも疑問です。
 立憲民主党は、国民一人ひとりの暮らしや家計を基本に、政権と対立するためでなく、国民のために善政を競い合う論戦をしてまいります。


Ⅰ 政治改革について
(1) 総理が尊敬する英国の政治家は、「鉄の女」マーガレット・サッチャーだそうですね。私が尊敬する英国の政治家は、買収選挙の横行する金権風土を塗り替えようと立ち上がり、1883年、腐敗防止法をつくった立役者であるヘンリー・ジェームズです。
 政治家になるのなら、この人のような仕事をしたいなとの思いで、私は徒手空拳で千葉県議選に挑み、衆院選でも政治改革を掲げ、1993年に初当選しました。
 翌94年、細川内閣の下で連座制を強化した公職選挙法改正を含む政治改革関連法が成立し、尊敬するヘンリー・ジェームズに1歩近づけた高揚感を味わうことができました。
 しかし、自民党派閥パーティーのいわゆる裏金事件によって、時計の針を巻き戻すようにわが国の政治倫理は後退し、国民の政治への信頼は地に落ちています。
 総理は、旧安倍派幹部を党の要職に登用し、副大臣・政務官人事でも、自民党派閥裏金事件で戒告処分や幹事長注意を受けた旧安倍派の衆参両院議員7人の起用を決めました。
 政治とカネの問題について、決着がついたかの如く、人事を決められたことは大変遺憾です。
 衆院選、参院選で示された民意は、政治とカネの問題を解決し、政治への信頼を回復せよということです。「決断と前進」の前に信頼回復が必要ではないでしょうか。改めてお伺い致します。
 政治とカネの問題はけじめがついたとお考えですか。

(2) 自民党、日本維新の会の連立政権合意書には、「1割を目標に衆議院議員定数を削減する」とあります。また、報道によると維新の会は比例代表のみ削減と主張しています。
 2012年に私が安倍総裁と議員定数削減について党首討論で合意した頃と、多党化した今日とでは状況が大きく変化しました。
 定数は数の力で強引に決める課題ではありません。国勢調査や衆議院議長下の選挙制度に関する協議会での議論なども踏まえ、幅広い合意形成を目指し、一つの方向性を出すための議論を重ねていくことが必要です。
 総理は所信の結びで十七条の憲法の「事独り断む可からず。必ず衆と与に宜しく論ふ可し」を引用され、政治とは、独断ではなく、共に語り、共に悩み、共に決める営みですと語られました。改めて肝に銘じいただきたいと存じます。
 なお私は議員定数削減の方向性には賛成です。ただし、比例区だけ削減ではなく、小選挙区と比例区のバランスを考慮して削減すべきではないでしょうか。

(3) 企業・団体献金について、日本維新の会は一番厳しく廃止を訴えていたにもかかわらず、「高市総裁の任期中に結論を得る」という合意は、事実上の先送りに他なりません。
 去年の衆議院総選挙、今夏の都議会議員選挙、参議院選挙で、国民が「自民党にノー」を突きつけたのは、不祥事続きの自民党を許さないということであり、今は政治資金問題の結論を出すことが先ではありませんか。
 公明党が連立から離脱したのも、政治資金の問題で自民党の基本姿勢に疑問を感じたからであり、衆議院の議員定数削減をすることで、政治資金の問題を棚上げというのは、争点のすり替えに過ぎません。
 資金の流れの実態も把握できていない7800もの政党支部が企業・団体献金の受け皿になっているのはどう考えてもおかしいと思います。
 企業・団体献金の廃止に向けて膠着した議論を一歩でも前進させるために、公明党と国民民主党が提案している規制強化案について、まずは今国会で実現しましょう。
 企業・団体献金の受け取り先を、政党の本部と都道府県の組織に限定し、廃止にむけた第1歩を踏み出すべきではないですか。

Ⅱ 経済財政政策について
(4) ガソリンの暫定税率廃止、そろそろ決着をつけませんか。
 地方においては、買い物に行くにも、病院に行くにも、何をするにも車が必要ですから、近年のガソリン代の値上がり・高止まりは、大変な負担となっています。
 暫定税率を廃止すれば、1リットルあたり25.1円の値下げ、40リットル給油したら今より千円安くなりますから、極めて有効な物価高対策であり、地方経済の活性化にも繋がるものと思います。
 この間、立憲民主党は、政府が2月に提出した税法に対する修正案で、また、4月には単独提出の議員立法で、そして6月・8月には、野党7党共同提出の議員立法で、暫定税率の廃止を政府・与党に迫って来ましたが、自民党の強い抵抗にあって、その都度、廃止時期の後ろ倒しを余儀なくされてきました。
 年内の早い時期の廃止という公党間の合意を反故にすることは断じて許されず、我々がこれを強く押し返した結果、先週の与野党協議では、ここまで議論が遅延したことについて自民党から率直にお詫びがあった上で、12月31日の年内の廃止で合意されました。
 最終的には幹事長レベルで合意できると聞いていますが、これまで3か月以上にわたって自民党の党内の都合で暫定税率への対応が遅れたことについていかに考えますか。所信表明演説では、ガソリン税について「今国会での廃止法案の成立を期します」としていますが、年内に廃止するとここで明言すべきではないですか。併せて、軽油引取税の暫定税率についても、合意に沿って、来年4月1日から廃止することを明言していただけませんか。

(5) 参院選で公約した給付金を実施しないということですから、高市政権には、即効性のある物価高対策がないということになります。
 自民党内の権力闘争で政治空白を長引かせた上、物価高対策は無策というのは、到底許されることではありません。
 経済対策の策定は指示されたようではありますけれども、現状、それがいつ形になり、国民の懐に届くのか、全く分かりません。
 また、その規模も大きな論点です。
 内閣府が8月に発表した中長期の経済財政に関する試算では、来年にもプライマリーバランスが黒字化する見通しが示されていますが、仮に経済対策が昨年並みの規模となった場合、赤字に転落する可能性が高いと思われます。
 実際に、片山財務大臣は、補正予算の財源として、既に赤字国債の増発に言及されています。
 高市総理は「責任ある積極財政」を掲げておられますが、まずは政府自らが「骨太の方針」で定めたプライマリーバランス黒字化目標を達成することが「責任ある」姿ではないでしょうか。
 経済対策を取りまとめ、補正予算を国会に提出する時期はいつなのか。また、国・地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化をめざした予算規模に抑えるのかお伺いします。

(6) 食料品の高騰が家計を直撃しています。民間の調査によれば、10月だけで3千品目以上の値上げが行われており、今年1年間では2万品目を超える食料品の値上げが行われる見込みです。
 所得が低い人ほど食料品の支出割合が高い傾向にあることから、現下の食料品の高騰は極めて深刻であり、急ぎ対策を実行することが必要です。
 自民党と日本維新の会の「連立政権合意書」には、「飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討を行う」との記載があります。
 実施時期も明記されていなければ、「視野に」「検討」など、やる気の無さがにじみ出ている一文です。
 高市総理は今年5月23日、自民党税制調査会の勉強会が終了した後、記者団の取材に応じられて、「国の品格として、食料品の消費税率は0%にするべき」と発言されています。たった数カ月前、総理が「国の品格」とまでおっしゃった政策です。
 立憲民主党は「食料品消費税ゼロ法案」を先月31日に国会提出し、他党の理解と賛同を得ながら、今国会中の成立を目指していますが、ともに実現しませんか。

(7) 高市総理は、自他ともに認める「アベノミクス」の継承者です。
 私は、アベノミクスというのは、「デフレ脱却」のための壮大な社会実験であったと認識をしています。
 問題は、結果が出なかったにもかかわらず、止め時を見失い、だらだらと続けたことで、逆に様々な課題を引き起こしたことです。
 当初目指した「トリクルダウン」は起こらず、富める者が富んだだけで、非正規雇用の増加や実質賃金の低迷に象徴されるように、格差の拡大が進みました。
 2年で2%の物価安定目標達成を謳った「異次元の金融緩和」は、10年経っても目標を達成できませんでしたが、近年になって円安を助長する大きな要因となり、輸入物価の上昇を通じて家計の負担増をもたらしています。
 また、「異次元の金融緩和」の一環で買い入れたETFは簿価で37兆円以上に上り、その売却には100年以上も要する見込みですが、これはアベノミクスの副作用の大きさを端的に示すものです。
 アベノミクスをどのように評価しているのでしょうか。アベノミクスを踏襲するのか、または修正するのでしょうか。

(8) 高市総理は、安倍政権時代に自民党の政調会長を務められていた際、大規模な金融緩和の実行を迫るため、日銀総裁に対する解任権の導入を示唆するなど、日銀の独立性を脅かすことも厭わないほど強硬な金融緩和論者です。
 また、昨年、自民党総裁選に出馬された際も「金利を今上げるのはアホやと思う」「金融緩和はもう少し我慢をして続けるべきだ」と、やはり強い口調で緩和の継続を訴えておられます。
 もちろん、米国の関税政策の影響などは見定めなければなりませんが、今の状況で全く金利の引き上げを許さないということになれば、円安が進行し、インフレを助長する可能性があります。
 また、高市総理は、一貫して「積極財政」論者でもいらっしゃいます。これは今や全閣僚への指示を通じて、高市政権全体のスタンスにもなっているものと思います。
 しかし、これまで政府が財政出動の根拠としてきた需給ギャップは、足元で需要超過となっており、積極財政の結果として、かえってインフレが助長され、家計の負担増をもたらす可能性もあります。
 金融緩和と積極財政は物価高を助長するのではないでしょうか。

(9) 我々は、消費税の逆進性対策として、「給付付き税額控除」の導入を長年にわたって主張し続けてきました。所得再分配機能の強化、就労意欲の促進などの効果もあると思います。
 高市総理も「『給付付き税額控除』は私の持論」とおっしゃられ、政府として制度設計の導入に着手することを掲げられたことは率直に歓迎をしたいと思います。
 「給付付き税額控除」の導入に向けて、石破政権の下で立憲・自民・公明の協議体が立ち上がっていますが、他党にも呼びかけて制度設計を急ぐべきではないでしょうか。

Ⅲ 社会保障政策について
(10) 高市総理が所信表明演説で提案した、社会保障制度における給付と負担のあり方に関する国民会議について質問します。
 増える医療費と現役世代の保険料負担、医療崩壊につながりかねないほど深刻な医療機関の赤字、介護・障がい福祉従事者の人手不足、国民に信頼される年金制度の確立など、社会保障の課題は山積しています。
 国民の暮らしを支え、命と健康を守るため、国民的議論を行い、不断の改革をしていかねばなりません。ただし、国の根幹にかかわる社会保障制度については、政権が変わる度に制度をころころ変えるようなことがあってはなりません。
 ですので、与野党の垣根を超えて議論を行うこと自体は、私も賛成です。
 今年の通常国会で年金改革法案の修正について、立憲民主党、自民党、公明党の3党で合意した際、私は石破前総理に対して、今回の年金改革は一里塚でさらなる改革が必要であるため、超党派で年金に関して協議する場の設置を要請しました。
 私が要請したのは、国会の中で、政治家主導で協議する場であり、政府の中で、役所主導で議論する場ではありません。
 与野党で社会保障の給付と負担のあり方について議論することは重要ですが、国民会議を政府の下に置くのではなく、国会内に会議体を設置したらどうでしょうか。

(11) 私は9月に自治体病院を持つ首長の皆様から、危機的状況にある自治体病院の存続に向けた要請を頂きました。10月には、都内にあるJCHOの病院を訪問し、施設が老朽化し、手術室で雨漏りしてしまった深刻な状況を視察しました。このままでは、医療機関の経営は立ち行かなくなり、助けられる命も助けられなくなってしまいます。
 地域医療の最前線、最後の砦を守るため、医療機関への支援は最優先で取り組まなければならない課題であり、補正予算でしっかりと支援すべきです。
 高市総理も所信表明演説で「報酬改定の時期を待たず、経営の改善及び従業者の処遇改善につながる補助金を措置して、効果を前倒しします」と述べています。
 立憲民主党はまもなく取りまとめる経済対策に医療機関支援を盛り込む予定です。立憲民主党の提案も踏まえて、診療報酬の引き上げ改定前に病院・診療所への緊急支援を行うべきではないでしょうか。

(12) 政府は当事者の意見を聴かず、短期間で高額療養費の自己負担限度額の引き上げを決定しました。長期の治療を続けるがんや難病などの患者さんたちが治療の中断に追い込まれたり、生活できなくなることが危惧されました。
 当事者の皆様があきらめずに声を上げ続け、立憲民主党が予算の修正案や法案を提出して引き上げ凍結を要求した結果、石破政権は引き上げを凍結しました。
 高額療養費の自己負担限度額は、患者やそのご家族に深刻な影響を与えるため、引き上げるべきではありません。
 その代わりに命にかかわらない軽症患者の医療費を優先して見直すべきです。
 自民党総裁選の時に共同通信が行ったアンケート調査で、高市総理は高額療養費制度見直しについて、「患者負担上限額を引き上げるべきではない。医療保険制度改革全体の中で考える課題」と回答しています。「引き上げるべきではない」というのは立憲民主党と同じ考えであり、引き上げを完全にストップできるのではないかと期待しています。
 報道によると、上野厚生労働大臣から、高額療養費制度の見直しについて12月に方向性をまとめるという発言がありました。
 先月31日に全国がん患者団体連合会の幹部の皆様とお会いしましたが、負担増になるのではないかと、とても心配されていました。
 石破政権は高額療養費の引き上げを見送り秋までに再検討するとしていましたが、高市政権ではどうするのでしょうか。引き上げないという政治判断もあるのでしょうか。

(13) 高市総理が所信表明演説で述べた「攻めの予防医療」について質問します。
 予防医療を実現するための鍵は、自民党政権下でなかなか進まない、かかりつけ医の制度化であると考えます。
 一昨年の政府提出法案による法改正で、かかりつけ医機能の法整備が行われましたが、今までと何が変わるのか分からない不十分なものでした。
 立憲民主党は、医師が「かかりつけ医」として必要な知識・技能を有しているかの認定制、住民一人ひとりと医師とを結び付け、お互いの認識を一致させるための登録制を導入することを提案しています。「日本版家庭医制度」です。
 気軽になんでも相談できる「かかりつけ医」がいれば、健康に不安がある時に、「かかりつけ医」に相談し、適切なアドバイスを受けられるようになったり、適切な医療機関を紹介してもらうことができるようになったりします。
 結果的に、医療機関をたらい回しにされて無駄な診療を受けることが減り、薬の重複処方が避けられるようになる効果も期待できます。
 あえて「攻めの予防医療」と仰る高市総理ですが、「攻めの予防医療」の具体策は何でしょうか。「日本版家庭医」制度をとり入れたらどうでしょうか。


Ⅳ 外交・安保政策について
(14) 日米同盟はわが国の外交・安全保障の基軸です。先週総理は初めてトランプ大統領と会談をされました。満面の笑みで元気いっぱいおもてなしをされ、大統領もエネルギッシュな女性だと評価され、個人的な関係構築の良いスタートを切れたのではないかと拝察します。
 但し、トランプ大統領をノーベル平和賞に推薦すると伝えたとしたなら、それは行き過ぎたお世辞外交であり、軽率です。
 昨年、日本被団協がノーベル平和賞を受賞しました。今年は広島と長崎への原爆投下から80年という節目の年です。
 日本は唯一の戦争被爆国として1944年から核廃絶決議案を国連に提出し続け、今年は10月31日の国連総会で145か国の賛成多数で32年連続採択されました。昨年賛成した米国は棄権に回りました。
 トランプ大統領が核実験の再開を指示したことが背景にあるのでしょう。米国が1992年を最後に行っていない爆発を伴う地下核実験を行えば、ロシアや中国に同様の実験に踏み切る口実を与えかねません。
 総理はいまもなおトランプ大統領をノーベル平和賞の候補に推薦するおつもりですか。また、私は日本が核兵器禁止条約にオブザーバー参加すべきだと考えますが、いかがですか。

(15) 総理は主体的に防衛費の増額に引き続き取り組む決意を表明され、トランプ大統領は防衛力を大幅に強化していることを承知している、と応えました。
 これは、総理が所信表明演説で明らかにし、小泉防衛相が翌日にヘグセス国防長官に伝えた、防衛費の総額を2年前倒しで本年度中にもGDP比2%を達成するという姿勢についてのコメントでしょう。
 現在の防衛力整備計画は23年度から27年度の5年で43兆円の計画です。計画の3年目にあたる本年度の防衛予算は現在8.5兆円のところ、総理は就任後唐突に、残り数か月でGDP比2%約11兆円まで増額するとしました。このような重要な政治判断は総裁選中に明言しておくべきだったのではないでしょうか。
 岸田元総理は数字ありきではなく防衛費は積み上げた数字だという説明をしていましたが、初年度に約1300億円もの予算を積み残してしまいました。防衛費は増額ありきの前に、効率化や節約の努力も忘れてはなりません。
 防衛費をGDP比2%にするためには補正予算では追加的にいくら必要となりますか、なぜ今年度中に11兆円まで増額するのですか。急激な予算増はムダやコスト高につながると指摘しておきます。

(16) 中国の東シナ海や南シナ海における現状変更の試みや規制事実の積み重ねで覇権を拡大しようとする姿勢は国際社会の法の支配を脅かし、インド太平洋地域の平和と安定を妨げます。特に尖閣諸島周辺の一方的主張に基づく領海侵入などには毅然として対処し続けなければなりません。
 また、レアアースの輸出制限でしばしば圧力をかける中国に対し、わが国はじめ各国は供給を多角化しようとしていますが、依然として中国が圧倒的なレアアースの供給者であることは変わりません。
 所信表明演説では対中関係について「経済安全保障を含む安全保障上の懸案事項が存在する」と述べていますが、その懸念について日中首脳会談においてどのような議論があったのでしょうか。

(17) 日韓首脳会談において、「未来志向」の協力確認ができたことについては、一定の評価をしたいと思います。
 8月に李在明大統領が訪日された際、私も会談致しました。その際、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的・先進的な協定)への加盟をお勧めしたところ、強い関心を示されていました。
 今回のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳宣言は、自由貿易をめぐる表現が後退しています。こういう時こそ、日本はCPTPPやRCEP(地域的な包括的経済連携協定)の拡充の先頭に立ち、自由貿易の旗手をめざすべきではないでしょうか。

Ⅴ クマ対策について
(18) 近年、全国各地でクマによる人身被害も含めた被害が深刻化しています。過去最多だった令和5年度の人身被害は198件、被害者は219名、死者6名にのぼりましたが、今年度も同水準で被害が増加しており、死者数もすでに過去最多となっています。
 しかし、クマ被害がこれほど拡大しているにもかかわらず、国は自治体任せです。現場からは自治体職員、警察官、消防職員、猟友会が疲弊し、対応が限界に達していると言った切実な声が寄せられています。
 宮城県の村井知事は、クマ被害対策において猟友会の高齢化や人手不足を課題に挙げ、「自衛官、警察官のOB・OGを会計年度任用職員として活用できるか検討したい」と述べています。(秋田県知事は自衛隊の派遣を要請しています。)
 こうした人材活用を含め、自治体任せにしない体制を構築するのが国の役割ではないでしょうか。
 立憲民主党は、クマ被害対策に関する提言をまとめ、10月28日、鈴木農林水産大臣宛に提出しました。それに加えて、村井宮城県知事の提案を含め、クマ被害対策にOBを含めた自衛官、警察官を活用してはどうでしょうか。

(おわりに)
 いま求められているのは、右にも左にも偏らず、現実を見据えて国民の暮らしを守る政治です。
 国民が望んでいるのは、力の誇示、イデオロギーの対立ではありません。安心して暮らせる社会、希望を持てる未来なのです。
 物価高、格差拡大、地方の疲弊など、これらすべての課題に、私たちは、生活者の視点に立ち、一人ひとりの暮らしを支える政治で応えてまいります。

 私たち立憲民主党は、地に足の着いた中道の立場から、国民の暮らしの現場に届く政策を一つひとつ実行していくことをお約束し、質問を終わります。