11月5日衆院本会議で、高市総理の施政方針演説に対する代表質問をおこない吉田はるみ議員が登壇し(1)物価高対策、(2)農業、(3)労働政策などについて質問しました。
予定原稿は以下のとおりです。
第219回国会における高市内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問(参考原稿)
2025年11月5日
立憲民主党・無所属
吉田はるみ
「立憲民主党・無所属」の吉田はるみです。会派を代表して質問いたします。 高市総理、内閣総理大臣ご就任、誠におめでとうございます。女性初の総理大臣として注目を集め、その重責は想像をはるかに超えるものとお察しいたします。男性中心の政治の世界に風穴をあけられました。政治への信頼を回復し、是は是、非は非、党派を超えて活発な議論をする国会に変える、その先頭に立ちリードされることをご期待申し上げます。
【 物価高対策 】
高市政権の最優先は、物価高対策。私たちも同じです。国民は今、何を望んでいるか、明らかです。直近のJNNの世論調査によれば、物価高対策で期待する政策として、「食料品の消費税ゼロ」が30%で、2位以下を引き離してトップです。 立憲民主党は、まさに「食卓の危機」とも言えるこの状況を乗り越えるため、10月31日「食料品消費税ゼロ」法案を衆議院に提出しました。 円安が物価高に追い打ちをかけており、命と直結する食料がますます値上がりしています。来年4月から小学校の給食費が無償になります。しかしその給食の食材購入には消費税が重くのしかかっています。その分を子どもたちの給食の質の向上に使いましょう。また子ども食堂では米の高騰もあいまって、食材購入費の負担が非常に厳しい状況です。直接くらしに届ける「食料品消費税ゼロ」法案の審議、是非やりましょう。 自民維新の連立合意に「飲食料品については、2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化につき検討を行う。」と書かれておりますが、「法制化につき検討」とは具体的にどこで何をすることなのでしょうか、総理、お答えください。
【 農業 】
米の価格高騰 食料品の値上がりで国民不安が高まっています。とりわけ、私たちの主食である米の高騰です。 時事通信の「スーパーでの販売数量・価格の推移」報道によると、11月2日現在、全国のスーパーで販売された米の平均価格は5キロ4,479円です。昨年の5月は2,122円ですから、わずか1年半で2倍以上に値上がりしています。これは異常事態です。しかし、多くの国民はその原因がよく分かりません。米価が2倍になった、その原因究明なくして、米の安定供給、そして消費者の望む価格実現はできません。この1年半で、米の価格が倍になった、その原因は何だと分析していますか、高市総理にお伺いします。 この米高騰の対策として、新しく農水大臣になられた鈴木農水大臣は、おこめ券を「明日にも配りたい」と意欲を見せていらっしゃいます。おこめ券を実施する場合、発行のための行政コストは気になるところです。そこで伺います。おこめ券の補助を、この臨時国会で補正予算に入れますか。配布する範囲はどこまでですか、全世帯に配布されますか。またその予算規模はいくらと見積もっていますか。総理にお伺いいたします。 米が高くなれば消費者は苦しい、一方で価格が下がれば生産者が苦しい。消費者と生産者を対立させてはなりません。実は私も鈴木農水大臣の選挙区と同じ、米どころ山形県の出身です。親戚に農家も多く、農業に携わる方々のご苦労を身近に見て育ちました。そして今は、お米の最大消費地である東京の衆議院議員として、消費者の切実な声を聴いています。 瑞穂の国である日本、価格が高いから買わないと米離れを起こしてはなりません。輸入米ではなく、国内で自給できる国産のおいしいお米を国民に届ける。これが政治の使命ではないでしょうか。わずか2か月前は米の「増産」を指示しましたが、鈴木農水大臣は「需要に応じた生産」を打ち出されました。これまで減反政策の際によく使われた言葉です。生産現場からはこの方針の大転換に、大きな混乱と先行きに対する不安が広がっています。米の価格の乱高下、増産、減産と消費者も生産者も振り回されてはたまりません。立憲民主党が提案している生産者の所得を保障する「食農支払い制度」を導入するなど、生産者に十分なセーフティネットの手当てをした上で、消費者が安定した適正な価格で国産米を入手できる施策を採るべきと考えますが、おこめ券と生産調整で対応するのでしょうか、総理の方針を伺います。
【 労働政策 】
残業規制の緩和は時代に逆行 高市総理は厚労大臣に対して、「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討を行う」ことを指示しました。いわゆる残業規制の緩和です。この方針は、過重労働や過労死を助長するおそれがあります。 そもそも、残業時間の規制は、2017年、当時の安倍総理が「不退転の決意で取り組む」とおっしゃった働き方改革です。過労死・過労自殺ゼロの実現への強い意志で、労働政策審議会において労使間で数多の厳しい議論を経てようやく到達した合意です。この合意を反故にして、際限なく残業し放題にすることは許されません。2017年合意で規定された過労死ラインといわれる発症前の直近1か月の時間外労働が月100時間を超える労働を、総理は良しとするのでしょうか。これは現代社会に、ブラック労働を推進するという、大きなマイナスのメッセージを発することになります。それでも総理は、過重労働や過労死を助長するおそれがある労働時間の規制緩和を進めるのでしょうか。総理のご答弁を求めます。
●裁量労働制は働かせ放題を助長
厚労省の労働政策審議会では、労働基準法改正に向けた検討が行われ、使用者側の委員から裁量労働制の適用範囲の拡大が必要といった意見が出されています。しかし、制度が悪用され、実際に残業代がつかない長時間労働に陥る危険性があります。裁量、という名の働かせ放題。安易な裁量労働の適用拡大はすべきではありません。総理が目指す労働時間規制の緩和には、裁量労働制の適用拡大も含まれているのでしょうか。総理の答弁を求めます。
現行の時間外労働の上限規制は過労死認定ラインであり、これを緩和することは「働き方改革」の逆行にほかなりません。本来目指すべきところは、仕事と生活の調和をはかりながら、働き続けられる環境整備と、基本給のベースアップ、賃上げです。
立憲民主党は、ワークライフバランスのとれた生活を支援するため、残業代割増率の引き上げ、勤務間インターバル11時間以上の義務化、自分の希望に応じて「短時間正社員」を選べる環境の整備などを提案しています。立憲民主党の提案に対する総理の見解を伺います。
●介護士、保育士の賃上げ
労働経済白書によると、介護士、保育士など社会を支えてくださっているエッセンシャルワーカーの平均賃金は、それ以外の職種と比べて100万円低く、50代後半ではその差が200万円に広がっています。賃金が上がらない一つの要因が、人材紹介会社に支払われる報酬です。 例えば、一人の保育士さんの紹介料で100万円近くが人材紹介会社に支払われていますが、この紹介料は4か月後にその人が辞めた場合、返金されません。4か月ごとに100万円を支払って、欠員の補充をしている保育園の運営者は、「この紹介料は、人材紹介会社ではなく、保育士さんのお給料として支払ってあげたい。」と嘆いていました。ハローワークなどの機能強化や、紹介手数料の高騰に歯止めをかける実効的な措置を講じることなどが求められますが、総理はどう受け止めていますか、お伺いいたします。
【 教育 】
日本の教育はどこに向かう 次に、高市総理の教育観についてお伺いします。総理のHPのコラムにおいて、国家の基本は教育であると述べられ、教育勅語を「見事」と賞賛され、次のように述べられています。 「現代においても尊重するべき正しい価値観ですし、子供も大人も覚えて繰り返し唱和することで、日本人全体が心を合わせて道徳を実践する空気を醸成したものだと思います。」しかし教育勅語は、1948年に、日本国憲法や教育基本法に反するとして、軍人勅諭とともに衆参両院の全会一致で排除・失効が決議されています。高市総理は、教育勅語を今の教育に組み込むお考えがあるのでしょうか、お伺いいたします。
【 ジェンダー・女性政策 】
固定的な性別役割分担意識の解消 総理は所信で、地方から人口流出が激しいのは、女性や若者世代であり住み続けたいと思えるかが重要だとご指摘されました。近年、地方から都市部へ転出する若い女性が増えています。この点、内閣府の調査では、「家事・育児・介護は女性の仕事」というような固定的な性別役割分担意識が、特に地方において強く、若い女性が地方から都市へ転出する要因の一つとなっていると分析しています。 これ以上地方から人が流出しないよう、固定的な性別役割分担意識を解消すべきと考えますが、高市総理の見解を伺います。また、その解消のための対策があればお聞かせください。
選択的夫婦別姓の実現 例えば、「結婚すれば女性は男性の名字になるのが当然」という意識が根底にある夫婦同氏から、夫婦の希望に合わせて同じ氏も別の氏も選べる選択的夫婦別姓制度を導入することは、固定的な性別役割分担意識を解消する一つの突破口になります。
選択的夫婦別姓制度は、法制審議会が1996年に制度の導入を盛り込んだ民法の改正案の答申を出しており、立憲民主党はその法制審の答申にそった民法改正案を本年4月に衆議院に提出し、現在、継続審議となっています。
選択的夫婦別姓は、女性活躍の一丁目一番地だと経団連は強く要請していますし、労働組合の連合からも各党が力を合わせて実現してほしいと要望が寄せられています。労使とも、旧姓の通称使用ではだめだと明言しています。しかし自民と維新は「旧姓の通称使用の法制化法案を26年通常国会に提出し、成立を目指す」と合意しています。総理は経済界、そして労働界の声を無視してこれを進めようとされているのでしょうか、お伺い致します。 選択的夫婦別姓は、同姓、別姓、どちらでもいい、という選択肢を広げるものであり、まさに多様な生き方を肯定し、そしてアイデンティティへの尊重を進めるものです。選べる道が多いほど未来は輝く、と日本弁護士連合会も後押ししています。自由と選択肢を増やす、選択的夫婦別姓の実現に向けて一緒に議論して参りましょう。総理の見解を伺います。
【 非正規雇用、人手不足問題 】
2024年時点で、不本意な非正規雇用労働者は女性が約91万人、男性は約89万人です。合計180万人で、規模からいうと福岡市の人口と同規模です。それだけ多くの労働者が、正社員になりたいと願いながらも非正規雇用の状態にあるということになります。一方で企業の内部留保は約638兆円と13年連続で過去最高を更新しています。大企業は十分に正社員の数を増やす、そして賃金を上げる体力があります。内部留保は、労働者に還元すべきです。
人手不足が大きな社会問題になっていますが、現在仕事をしていないが就業意欲のある男性は76万人、女性は149万人に上ります。この方々が就職できるように、正社員の採用を増やし、そしてリスキリングや学び直しへの予算を拡充すべきです。不本意非正規雇用の180万人と就業希望者を合わせて405万人、この雇用対策が急務と考えますが、総理のご認識を伺います。
企業の利益などのうち人件費に回る割合を示す労働分配率は24年度に64.2%と、ここ数年は下落傾向です。企業は株主へは手厚く還元し、株の配当金はこの10年右肩上がり、一方労働者の給与はこの30年横ばいが続きました。そして今は実質賃金がマイナスです。株価は先週5万円台を超え高騰していますが、株などの金融資産を持たない人にとっては恩恵はありません。金融資産を持ち収入がどんどん増えた人と、一生懸命に働いても収入がなかなか増えない勤労者との格差がより一層拡大しています。この格差を是正し、ぶ厚い中間層をつくることこそ、最大の経済政策です。高市総理は、この格差を是正するためには何が必要で、どんな政策を実行しますか。お伺いいたします。
●シングルマザーの貧困
日本の相対的貧困率は15.4%と、OECD加盟国の平均値より高く、7人に1人が貧困状態にあります。とりわけ、ひとり親世帯の貧困率は44.5%となっており、ひとり親の2人に1人は貧困状態です。特に、母子世帯では非正規雇用者が多く、低所得で仕事も安定していません。子どもの教育機会に格差が生じており、経済格差の再生産につながり、苦しい生活から抜け出せない構造になっています。 2021年の例で言うと、ひとり親家庭の半数近くが、等価可処分所得が127万円未満で暮らしており、厳しい生活実態です。その原因の一つに養育費の不払いがあります。母子世帯の約70%が養育費を受け取っていません。そんな状況を改善すべく自治体が養育費を一時的に立て替えている、さいたま市や明石市の例などもあります。養育費の一時的な立替払い、国として取り組みませんか。総理のご見解を伺います。
デジタル時代の性加害と教育 デジタル時代の今、若年層の性被害、そして性加害が拡がっています。生まれた時からスマホがある世代の若者たちは、簡単に写真や動画を撮り友人同士で交換し合っています。それが近年、非常に個人的な性的なものまでがその対象となっています。私自身も信じられない思いではありましたが、女子大学生数名にヒアリングしました。実際、隠し撮りをされて、それが恋人の男性からその友人に回っているケースは身近に多数にある、と皆声をそろえてその実態の深刻さを語ってくれました。こうして恋人同士で撮られた性的な写真や動画は、二人の関係が崩れた時にリベンジポルノとして脅しのツールになります。これまでの日本の性教育は、妊娠しないように、性被害に遭わないように、と女性の側に防衛を求めるものでした。しかし、このデジタルネイティブ、そしてAIネイティブの子どもたちの時代においては、子どもたちを守るためには、性暴力を個人の問題として片付けるのではなく、しっかりとした性加害は許されないという教育と、性暴力を生まない法整備が必要と考えますが、総理の見解を伺います。
【 福祉 】
総理はかつて、「さもしい顔して貰えるものは貰おうとか、弱者のフリをして少しでも得をしよう」という言葉を使われたと承知しています。この発言に深く傷つき、不安を覚える方々が少なくありません。今回、総理の所信演説の中に、障がい者、貧困、また弱い立場の方々によりそう政策への言及がありませんでした。障がい者支援や貧困対策、そして福祉政策に力を入れる方針はあるのか、総理に伺います。
【 憲法 】
次に、憲法の理念と総理の姿勢に関して伺います。 そもそも憲法とは、国民を縛るためのものではなく、権力の行使に歯止めをかけ、国民の自由と尊厳を守るための最高法規です。歴史を振り返れば、「国のため」の大義が掲げられたときほど、権力が暴走し、自由が奪われ、社会が戦争へと突き進みました。戦後日本が歩んできた立憲主義とは、この苦い歴史への反省に根ざした「二度と過ちを繰り返さない」という誓いそのものです。 憲法は、国家のためにあるのではなく、主権者である国民のためにあります。 総理は所信で、総理の在任中に憲法発議を実現したい、と述べられました。それは具体的に憲法の何を変えることを想定しているのでしょうか。連立政権合意書では「日本維新の会の提言「21世紀の国防構想と憲法改正」を踏まえ、憲法9条改正に関する両党の条文起草協議会を設置する。設置時期は、25年臨時国会中とする。」とされていますが、憲法9条改正に関する条文起草協議会をこの臨時国会中に設置するのでしょうか。維新の求めに応じるのでしょうか。総理の答弁を求めます。
【 副首都構想の是非 】
総理は所信演説で副首都構想に言及され「首都及び副首都の責務と機能に関する検討を急ぎます。」と述べられました。地方制度にも関わる問題であり、自民と維新の二党が協議して合意すればいい、という問題ではありません。総理の諮問機関である地方制度調査会などで丁寧に幅広い角度から議論すべきではないでしょうか。副首都構想の検討を急ぐ、とのことですが、どこの場で検討を行い、誰が参加し、いつ検討会が開かれる予定ですか。お伺い致します。
副首都という発想自体は、首都直下地震や大規模災害に備えたリスク分散の観点から一定の意味があります。ただし「大阪を副首都とする」ことだけを目的化すべきではなく、慎重な検討が必要です。副首都として想定されているのは大阪以外もありえますか。副首都は1つの都市とは限らず、複数の都市もありえますか。総理のご見解を伺います。
【 外国人、インバウンド関連 】
総理は所信で「インバウンド観光も重要です。」と述べられました。 昨年の訪日外国人の数は約3,687万人で、本年は伊藤忠総研の調査によると、4,623万人と予測されています。急増しています。政府は2030年までに訪日観光客6,000万人の目標を定めていますが、この方針は変わりませんか。総理にお伺いします。
このような状況で、観光公害とも言われるオーバーツーリズムの問題が顕在化しています。住民がバスや電車などの公共交通が利用できず日常生活に支障が生じています。ホテルや旅館など宿泊施設の人手不足、そして宿泊施設の不足により民泊が急増しています。民泊として稼働している件数は、2022年9月時点では18,190件でしたが、本年9月時点で特区民泊も含めると42,511件と、この3年で約2.3倍と急増しています。近隣住民の苦情や不安の声が聞かれるようになりました。こうした状況に、しっかりした対策を講じなければ、住民と外国人観光客の間でトラブルが生じてしまい、排外主義を助長しかねません。その事態は避けなければなりません。
受入体制が十分でないと、外国人に対していたずらに偏見や差別をあおってしまうことにもなります。2年前に出入国在留管理庁が行った外国人との共生に関する意識調査によると、普段の生活で外国人と交流する頻度が《ある》人は全体の約27%。一方で外国人に対する偏見や差別が《ある》と答えた人は約7割にのぼります。つまり、普段は外国人との交流はないけれど、偏見や差別を持っている人が多いという結果です。人は知らないことに対して恐怖を抱きます、遠ざけます。差別のない共生社会の実現は、まず相手を知り尊重することからと考えますが、総理はどのようなお考えをお持ちなのか伺います。
次に、外国人政策に関連し、総理は、土地取得等のルールの在り方について検討を進めるとおっしゃいました。私たちは、正確な事実関係に基づいた施策の立案・実行のために、まずは早急な実態把握が重要との視点に立った検討を進めているところです。 政府の検討の方向性について、また、検討の前提となる実態把握の重要性について、総理の答弁を求めます。
【 結び 】
立憲民主党は、一人一人との対話を通して実現する草の根の民主主義を掲げ、信頼の政治を取り戻します。科学技術・研究そして教育で人の力を引き出し、日本経済が再び世界の先頭に立ち、格差を是正し豊かな暮らしを実現します。安心の社会保障で国民を支え、平和主義を堅持し、ブレることなく、ひるむことなく、力強く前に進みます。立憲民主党は、全ての人が尊重され、あらゆる違いを力に変える、自由で寛容な、活力に満ちた日本をつくる、その決意を申し上げ質問を終わります。
ご清聴、ありがとうございました。