衆院予算委員会で11月7日、予算の実施状況に関する基本的質疑が行われ、立憲民主党から本庄知史、岡田克也、長妻昭各衆員議員が質問に立ちました。
■本庄知史衆院議員
政務調査会長の本庄議員は、(1)アベノミクスの評価(2)責任ある積極財政(3)経済対策、消費税負担軽減(4)防衛費造成の前倒し――等について質問しました。
本庄議員は、アベノミクスの評価について高市総理が「デフレでない状況を作り出し、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向にもつながっている」との認識を示したのについて「ちょっと違和感がある」と指摘しました。
安倍政権発足の2012年と、直近2024年を比較し、「食料品価格は33%上昇し、食卓インフレの深刻化している。国債発行は370兆円で53%増加、実質賃金は6%低下、非正規雇用が310万人増加。一方で企業の内部留保は273兆円から588兆円へと倍増し、所得1億円超の人数も1万2000人から3万2000人増加。これがファクト。株価の上昇など一定のプラス面もあったが、円安・物価高・金利上昇・格差拡大・財政の悪化といった負の側面も顕著」と指摘。これらの真実を直視するところから日本経済の再生が始まると述べました。
高市総理は「アベノミクスがデフレでない状況を作り出した。一方で、新型コロナ感染症の影響で、アベノミクスそのものが失速し、雇用状況も悪くなった」などと答弁。本庄議員は「デフレではないということだが、コストプッシュ型の良くないインフレ状態。物価高・人件費の上昇・輸入価格の上昇など負の影響は看過できない」との認識を示しました。
本庄議員はアベノミクスの3本の矢、第1の金融政策、第2の財政政策、そして肝心要の民間投資を喚起する第3の成長戦略が泣かず飛ばずで、その間金融と財政をふかし続けた副作用がさまざまな形で経済社会を襲っていると分析しました。
どう改善を図るかの質問に対し、高市総理は「責任ある積極財政の考え方のもと、供給構造を強化しながら、物価高を加速させることをないように戦略的に財政出動をする、所得を増やす消費マインドを改善する、事業収益が上がる好循環を実現する」など列挙しましたが具体案は示されませんでした。
本庄議員は総括が不十分だと指摘するとともに、「アベノミクスからの転換が必要で、マクロで言えばやはり金利上昇引き上げ、財政の健全化、そして構造改革。こうしたことなくして新しい経済は難しい」と指摘しました。
■岡田克也衆院議員
岡田議員は、高市総理に対し、日米関係や外交姿勢について問いただしました。高市総理が発言した「世界で最も偉大な日米同盟」や「日本外交を取り戻す」といった表現の妥当性を指摘しました。
10月28日に行われた日米首脳会談後に高市総理が述べた「世界で最も偉大な日米同盟」という発言について、岡田議員は「英米同盟やNATOと比べても違和感がある」と述べ、その根拠を求めました。グラス駐日米大使が述べた「インド太平洋における米国の最重要同盟国」という表現を引用した上で、「このくらいなら分かる」と語りました。高市総理は「かつて戦火を交えた両国が信頼関係を築き、インド太平洋の平和と繁栄の礎となっている」と説明しました。
また、「日本外交を取り戻す」という表現について、岡田議員は「自民党政権が続いている中での発言は、前任者である石破氏、岸田氏、菅氏の外交を否定するように聞こえる」と指摘し、前任者への敬意を求めました。高市総理は「先人の積み重ねの上で今がある」と応じつつ、「時代の変化に合わせて外交を発展させたい」と述べました。
■長妻昭衆院議員
長妻議員は研究開発税制の企業名非公開問題を取り上げ、2兆円にも上る減税の透明性を追及、高市早苗総理に情報公開を強く求めました。
長妻議員は、研究開発税制が政府税制調査会で効果に疑問が呈されているにもかかわらず、減税額が拡大し続けていると指摘。トータルで毎年2兆円を超える額となっているものの、企業名が一切非公開となっている点を問題視し、欧州や米国の一部州では公表されている例を挙げて透明性向上を求めました。
高市総理は、連立合意において租税特別措置の総点検と政策効果の低いものの廃止が盛り込まれているとした上で、「企業がどういった分野でどの程度の規模の設備投資を行っているかといった経営戦略上の情報が明らかになり得ることから、国が一方的に明らかにするということは競争上の不利益が及ぶ恐れがある」と述べました。その上で、「そうした課題を上回る公益上の必要性があるかどうかといった観点も含めて検討する必要がある」として、慎重な姿勢を示しました。
長妻議員は、経済産業省が研究開発費や減税を受けている企業の増減を把握していないことを指摘し、「効果を検証せずに増額して続いている」と批判。補助金は企業名が全て公表されていることを引き合いに出し、「企業名と減税額だけでも公表したら、企業・団体献金やパーティー券を多く購入している企業がずらりと並ぶと思う。国民の皆さんも、これが金に歪められる政治なのだと実感し、企業・団体献金禁止の機運が盛高まる」と述べ、政治改革の必要性を訴えました。