立憲民主党は、11月5日午後、畜産・酪農政策WT(座長・渡辺創衆院議員)・農林水産部門(部門長・神谷裕ネクスト農林水産大臣・衆院議員)合同会議を国会内で開催、今シーズン初となる鳥インフルエンザの疑似患畜確認及び鶏卵価格の動向について、農林水産省よりヒアリングを行いました。(司会:西川将人畜産・酪農政策WT事務局長・衆院議員)

 冒頭、渡辺創座長より「今日は、第1回の畜産・酪農政策WTと農林水産部門会議の合同会議。このたび座長を務めさせていただくこととなった。課題が多い分野なので、よろしくお願いする。鳥インフルエンザは毎年大きな被害で出ており、自治体の皆さんを含め、負担感が大きくなっている。初発例も出ている。農水省からお話を伺い、今年度の考えを作っていく必要がある」との挨拶がありました。
 神谷裕部門長より「鳥インフルエンザ、鶏卵価格について、闊達なご議論をお願いする」との挨拶がありました。

■農林水産省の説明 農林水産省より、概略、以下の説明がありました。
北海道において、
○10月15日、野鳥における高病原性鳥インフルエンザの陽性事例確認。
○10月22日、白老町の養鶏農場(採卵鶏)で、令和7年シーズン初となる家きんにおける高病原性鳥インフルエンザの疑似患畜陽性事例を確認。
鳥インフルエンザの発生状況については、
○令和6年シーズンは、14道県51事例発生し、令和7年1月に発生が急増。
○令和7年シーズンは、これまで北海道において2例、新潟県において1例、合計3例の家きんの陽性事例を確認。
                                                                                                                                                                                    初発事例について、疑似患畜と確定する前日の10月21日、道庁の家畜保健衛生所が簡易検査を実施した結果、A型インフルエンザ陽性と判明した直後に、以下の「総理指示」あり。
(1)鳥インフルエンザと考えられる家きんが確認された場合、農林水産省をはじめ関係各省が緊密に連携し、徹底した防疫措置を迅速に進めること。
(2)現場の情報をしっかり収集すること。
(3)家きん業者に対し、厳重な警戒を要請するとともに、予防措置について適切な指導・支援を行うこと。
(4)国民に対して正確な情報を迅速に伝えること。 この総理指示を受けた対応として、①関係省庁と連携し、都道府県が実施する防疫措置について、職員の派遣等、必要に応じた支援を実施、②農林水産省政務による都道府県知事との意見交換を実施するとともに、疫学、野鳥等の専門家からなる疫学調査チームを派遣、③全都道府県に対し、鳥インフルエンザの早期発見・早期通報並びに飼養衛生管理の徹底を改めて通知し、家きん農場における監視体制の強化を実施。併せて、経営支援対策を周知、④消費者、流通業者、製造業者等に対し、鳥インフルエンザに関する正しい知識の普及等を実施。

鶏卵の卸売価格の推移については、
○令和7年11月4日時点の鳥インフルエンザによる採卵鶏の殺処分対象羽数は約132万羽で、全体の飼養羽数に占める割合は約1.0%。
○現在のところ、今シーズンの鳥インフルエンザにより供給に目立った影響がみられる状況にはない。なお、例年、年末は需要が高まる時期であり、鶏卵価格は上昇する傾向。

■参加議員からの質問と農林水産省の回答等
<感染の原因の解明状況>
 参加議員から「鳥インフルエンザがどこから入ったのか全く見当がつかない。これだけ注意していたのに、予防のしようがない、という状況があると思う。どこまでわかっているのか」(川原田英世衆院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「疫学調査チームを派遣し、情報を収集してきたところで、これから分析し、原因を究明していこうと思っている。農場の飼養衛生管理は、かなりしっかりしていたとの情報がある。ただし、すずめが農場の中にいた。北海道はカラスが非常に多く、農場の周りにもカラスが非常に多いことが確認された。カラスによって周辺のウイルスの濃度がかなり高くなっているのではないかと思われる。病気を完全に防ぐことは非常に難しいが、農場セキュリティーを上げていくことが重要と思っている」との回答がありました。

<鶏卵価格の動向分析>
 参加議員から「令和4年は殺処分数が多かったので鶏卵が不足し、鶏卵価格が上がっていったことは分かるが、令和6年の価格が高い時期から、ある意味高止まりしている状況にある。これは、不足感が続いているのか、いったん上がった価格は下がらない状況にあるのか。どのように分析しているか」(徳永エリ参院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「今年の1月末まで鳥インフルエンザの発生があり、回復途上で、供給も100%回復している状況ではない。そうしたこともあり、鶏卵価格は高く推移しているのかなと思っている。北海道のホクレンの相場は、発生前後で価格が変わっていない。今後、価格を注視していかなければと考えている」との回答がありました。

<養鶏場におけるワクチン接種>
 参加議員から「鳥インフルエンザのワクチン製造会社は日本に3社くらいある。家きんは何十万羽もいるので、ワクチンを1羽1羽打つのは大変。ワクチンを打っている養鶏場はあるのか」(徳永エリ参院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「ワクチンについては、メリットとデメリットがある。ご指摘いただいたように、打つ手間もあるが、我々が非常に大きいと思っているのは、ワクチンを打つとその鶏自体は元気だが、感染を完全に防御することができるわけではないので、ウイルスを持ったまま元気な状態になり、早期発見が難しくなること。我々は、早期発見し、早くつぶすことを主眼にしている。そのため、養鶏場におけるワクチン接種は実施していない。ワクチンが全く使えないのかどうかについて、現在、検証を実施しているが、実用という段階ではない」との回答がありました。

<ワクチン接種をめぐる世界的な状況>
 参加議員から「全羽殺処分は日本特有の対策であると聞いたことがある。世界的にはワクチン接種が主流なのではないか。どういう状況か」(岡田華子衆院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「鳥インフルエンザは世界的に流行している傾向にある。先進国においては最近の傾向であるが、途上国においては以前からの状況であり、いわば常在している。途上国ではワクチンを恒常的に使用しているが、先進国ではワクチンは使わず、日本と同様の対応をとるのが基本。唯一違うのはフランス。フォアグラに使うアヒルで3年ほど前に大流行があり、当時の農業省の大臣の判断でフォアグラ用のアヒルにワクチンを接種する方針に転換した。それ以外の鳥に対しては、ワクチンは使用していない。先進国では、ワクチンを打ったアヒルの農場を含め、感染が見つかれば全ての鶏を殺処分するという方針がとられている」との回答がありました。

<殺処分数の増加が価格上昇を招く可能性と対応>
 参加議員から、「発生事例数の過去の傾向をみると、初発が早ければ早いほど殺処分数が多くなっている傾向がみられる。令和7年シーズンが過去2番目に早いので、この先、過去2番目に多い殺処分数が予想され、そうなったときに、鶏卵価格は、令和4年レベルに上がっていく可能性があるのではないか。その時、とるべき対策はないのか」(岡田華子衆院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「ご指摘のように、初発が早いと長く続き、数が増えると思われる。こればかりは、どういう状況になっていくのか分からない。全国どこで発生してもおかしくないので、まずは発生予防をし、発生したとしても1か所で止める、これをしっかりとやっていきたい」「価格については350円がある程度の目安。あまり上がると需要も減るが、見通しづらいところ。どんどん殺処分されていくと生産が細っていくが、毎年、毎年、鳥インフルエンザが発生しているので、業者の方が夏場の不需要期に割卵し、冷凍保存して備える動きもみられる。そうしたことも活用しながら、価格の安定ができればと思っている」との説明がありました。

<感染経路とウイルス株の解明状況>
 参加議員から「2例目、3例目はどういう感染経路か。3事例のウイルス株はどういう状況か」(神谷裕部門長・衆院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「疫学調査チームを発生農場にそれぞれ派遣しているが、2例目は11月2日、3例目は昨4日で実施直後の段階であり、情報を整理しているところ。株については、1例目はH5N1の亜型。2例目、3例目はH5であることは分かっているが、詳細分析は現在進行中」との回答がありました。

<留鳥による感染が定着する中、対策の考え方を見直す必要>
 参加議員から「留鳥がやってきて感染させているということが定着してしまったという感じがある。かつては何年に1回であったが、常態化している。飼養衛生管理の高度化でなんとか対応しているが、抜本的に考え方を変え、いろいろなアプローチを考えなければならないのではないか」(神谷裕部門長・衆院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「アメリカやヨーロッパでは、渡り鳥だけでなく、留鳥により、夏の間も引き続いて発生している状況にある。日本においては、野鳥を調べているが夏の間は出てこない。そのため、継続してウイルスがいるという状態ではない。ただし、6年続いて発生しているので、発生することを前提としてしっかりと準備をすることが重要と考えている。発生を繰り返す地域が多いことから、過去に発生した地域に集中的に対策をとる。例えば、いつでも使えるよう消毒薬を備蓄しておく、野鳥を近づけないように、農場内に防鳥ネットを張ることはもちろんであるが、付近にため池があれば、了解が得られれば水を落とす、ため池の水面にキラキラのテープを張って野鳥が来ないようにするという取組を今年始めているところ。ワクチンについて、すぐに使うのは難しいところがある。病気が隠れて広がるおそれをどうしたら止められるのか、しっかり決めた上で使う必要があるので、現在議論を行っているところ」との回答がありました。

<渡り鳥の夏場の営巣地への対応>
 参加議員から「渡り鳥の夏場の営巣地がどこの国のどの地域であるのか、特定できるのであれば、そこに何らかの手を打つことができないか」(神谷裕部門長・衆院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「場所は分かっている。シベリア。日本に来る渡り鳥、中国や韓国にいる渡り鳥、アメリカにいる渡り鳥は、夏にはシベリアに帰っていく。ヨーロッパも同様。そこでウイルスが混ざって、次の冬になると、ヨーロッパ、日本、アメリカに飛んで持ち込まれることが分かっている。野鳥をどうするか、ということになると、非常に難しい問題。今できることは、連携しながら情報をとって警戒していくこと」との回答がありました。

<野鳥の死骸から高病原性鳥インフルエンザの陽性反応が出る割合>
 参加議員から「さきほど、山形県三川町の民家で野鳥のノスリの死骸が見つかり、簡易検査でA型鳥インフルエンザの陽性反応が確認されたとの報道があった。鳥の死骸が見つかり、検査をして、どのくらいの割合が高病原性になっているのか」(石垣のりこ参院議員)との質問がありました。
 農林水産省より「どれだけ死骸を拾い集めて、どれだけ陽性であったかという全体像はなかなか分からないが、検査をして陽性だった場合、A型インフルエンザ陽性は、高病原性鳥インフルエンザでないかもしれないが、インフルエンザであるというもの。その後、精密検査で高病原性であることが分かる。検査を何件やっている、という情報はある。令和4年シーズンでは家きんも野鳥も鳥インフルエンザの発生が多く、去年も同様。野鳥で見つかると、その周りについては養鶏場の監視を強化し、野鳥自体の監視を強化するという対応をとっている」との回答がありました。

<殺処分、埋却のマンパワー不足、埋却場所の不足への対応>
 参加議員から「今は発生の抑制に全力を注ぐ段階であるが、昨年、鳥インフルエンザが発生した千葉県から、処理のマンパワーが足りないので、殺処分、埋却について広域の連携体制を作ってほしいという要望があった。同じ農場で発生し、埋却する場所がないという話もあり、法的には処分した鶏の死骸を動かすことはできないが、これをやらないと対応できないという意見があった。個人的には、これには慎重な考えではあるが、昨年の事例を受けて、今シーズンの対処に関して、強化、変更した点があるのか」(渡辺創座長・衆院議員)との質問がありました。
 これに対し、農林水産省より「昨年1月に集中発生があったのは、千葉、愛知、岩手で、養鶏の密集地域。1月だけで34件、2月1日を含め35件、令和6年シーズンの51事例中35件が1か月の間に発生したという状況。千葉県から、家畜防疫員だけでなく県庁職員が総動員で防疫作業に当たっているが、人手が足りないということで要望をいただいた。これへの対応は、民間事業者の活用。人材派遣を行う民間事業者に、殺処分する、埋めるために運ぶという作業をしてもらう人を集めていただき、指示は家畜防疫員という専門家が行うという形で取り組んでいる。北海道の1例目も民間事業者を投入し、スムースに防疫作業を行うことができた。民間事業者の活用は徐々に取り組まれてきており、民間事業者も慣れてきている。県の負担を軽減しつつ防疫作業をスムースにということに取り組んでいる。殺処分した鶏の処理については、埋却した場所は3年間採掘禁止というのが法律上の規定。3年の間にもう一度発生した場合、別の場所を探さなければならないので、埋却だけでは限界がある。そのため、民間の産廃処理業者、地方の自治体のクリーンセンター、こうしたところと事前に協定、契約を結んで、そこで殺処分した鶏を焼却するということに取り組んでいただいている。千葉県は民間の産廃業業者と契約を結んでおり、大半が焼却での対応で、どうしても焼却できないところは埋却。去年発生した51事例の4割が焼却又は焼却と埋却の併用。年々、この数値が伸びている。焼却については、引き続き県に働きかけていきたい」との回答がありました。

■報告・協議事項  神谷部門長より、「前回部門会議で議論した経済対策について、政調に報告し、現在、取りまとめをいただいている段階である。次回以降、税制改正について部門会議で議論していくので積極的にご参加いただきたい」旨の報告がありました。