参院予算委員会で11月14日、総括質疑方式による集中的審議が行われました。立憲民主党からは古賀之士議員が質問に立ち、(1)賃上げ(2)中小受託取引適正化法の周知徹底と執行体制(3)電力・エネルギー料金の負担軽減(4)送電インフラ整備(5)半導体・AIロボット産業戦略――など幅広いテーマについて政府の見解をただしました。
古賀議員は冒頭「空前の物価高の中で、賃上げはどのように位置付けられるのか」と質問。高市総理は、物価上昇を上回る賃上げの必要性を強調しつつ、事業者に丸投げせず、政府として対応を図る考えを示しました。最低賃金や時給目標に関しては、古賀議員が「具体的な数字を示すべきでは」と指摘したのに対し、高市総理は現時点で明確な数値目標は示せないと回答。「物価高を超える賃上げを目指す環境を整えることが最優先」と、やや歯切れの悪い説明となりました。
続いて古賀議員は、下請法を改正した、来年1月1日施行の中小受託取引適正化法(取適法)について取り上げ、事業者への周知徹底と執行体制の不十分さを指摘しました。高市総理は、全国で説明会や広報活動を進めており、公正取引委員会や中小企業庁など関係省庁が一丸となって対応すると答弁。公正取引委員会の茶谷委員長は「法改正に伴い職員137人増員を要求しており、地方事務所も含めた執行体制を強化している」と説明しました。古賀議員は「企業数300万超に対して人員が不足しており、目安箱など意見受付窓口の設置も検討すべき」と提案。高市総理は、違反行為の通報や調査を通じて適正な協議を後押しする考えを示しました。
古賀議員は次に、厳冬期に向けた電気・ガス料金の負担軽減策について政府の最新方針を確認しました。高市総理は「寒さの厳しい冬に備え、これまでより支援額を深掘りする」と述べ、経済対策や補正予算で具体的な金額や対象を示す考えを説明しました。古賀議員は、電気・ガスだけでなく灯油を日常的に使う北海道など寒冷地にも十分な配慮が必要だと指摘。片山財務大臣は「灯油やLPガスも含め、漏れのないように検討する」と応じました。
さらに古賀議員は、電力の安定供給を支える送電網整備、とりわけ九州と本州を接続する関門連携線の複線化について取り上げました。単一ルートに依存する現状はリスクが高く、国策として進めるべきだと強調しました。赤澤経産大臣は、関門連携線の総事業費は約1兆円規模(工事費4412億円・維持費5384億円)になる見込みを示し、全国負担方式や公的貸付の活用によって電気料金への影響を抑える方針を説明しました。古賀議員は、電気料金値下げを進める一方で、インフラ整備の負担が国民に過度に跳ね返らないよう重ねて配慮を要求しつつ、建設業界全体の人手不足が送電網整備の遅れにつながりかねないと懸念を示しました。赤澤大臣は、制度改善や投資支援を通じて事業環境を整え、人員確保にもつなげると答弁しました。
日本の半導体産業やAIロボット分野の遅れを指摘した古賀議員は「『産業の米』である半導体を国内で活用し、量産体制を強化することが不可欠だ」と強調。高市総理は、赤澤経産大臣と小野田AI戦略担当大臣が連携し、需要喚起と投資促進策を進める方針を示すとともに、人型ロボットや介護・サービス分野でのロボット活用支援にも意欲を示しました。古賀議員は「産業競争力を高めるだけでなく、現場の雇用や待遇を守る施策が必要だ」と訴えました。