立憲民主党は、11月26日午後、コメ政策(水田政策)WT(座長・神谷裕衆院議員)・農林水産部門(部門長・神谷裕ネクスト農林水産大臣・衆院議員)合同会議を国会内で開催、コメの需給・価格の安定に向けた短期の対応策について、農林水産省よりヒアリングを行いました。(司会:岡田華子コメ政策(水田政策)WT事務局長・衆院議員)
■コメの需給・価格の安定に向けた短期の対応策についての農林水産省の説明
農林水産省より、概略、以下の説明がありました。
<コメ政策の推進状況>
〇令和7年産の主食用米の作付面積は、前年実績(125.9万ha)から10.8万ha(6月末時点の作付意向から0.4万ha)増加し、136.7万ha。
〇戦略作物等の作付面積は、いずれの品目も減少。畑地化面積については、0.8万ha。
○令和7年産の水稲の10月25日現在の生産者が使用しているふるい目幅1.85mm、1.90mm等ベースの予想収穫量(主食用)は718.1万トンで、前年産に比べ66.2万玄米トン増加と見込まれる。これは、新規需要米や備蓄米等からの作付転換等と豊作による。
○令和7年産の水稲の10月25日現在のふるい目幅1.70mmベースの予想収穫量(主食用)は746.8万トンで、前年に比べ67.6万トン増加と見込まれる。
○令和7/8年産の主食用米の需給見通しは、令和7年6月末民間在庫量155万玄米トン、主食用米等生産量748万玄米トン、需要量697~711万玄米トン、令和8年6月末民間在庫量215~229万玄米トン。
○令和8/9年の主食用米の需給見通しは、主食用米等生産量711万玄米トン(需要に応じた生産量として設定)、需要量694~711万玄米トン、令和9年6月末民間在庫量215~245万玄米トン。これは国産主食用米の需給見通しで、これ以外に枠外輸入米もある。
○農水省が令和8年産について、減産に転じたとの報道があるが、そうした説明はしていない。7年産生産量748万玄米トンに対し、8年産生産量を711玄米トンと設定していることから、そうした表現が使われているが、減産にはなっていない。7年産は備蓄米の買入れを行わなかったので、21万トン程度が主食用米に回っていること、7年産については豊作であったため収穫量が15万トン上振れしていることを合わせると、ほぼ同水準。減産を打ち出したことはない。
○令和8年産の備蓄米の政府買入れは、年明け1月以降、一般競争入札により、21万玄米トンを予定。
○政府備蓄米の放出(全体で約59万玄米トン)に係る買戻し・買入れは、今後の需給状況等を見定めた上で行う。
○政府備蓄米の在庫状況は、売渡し前(7年3月末)96万トン、7/8年買入・買戻し前32万トン、9年6月末は53万トン±α。
○令和8年度概算要求で、実需者ニーズに応えるための新市場開拓用米等の生産性向上に向けた支援として、①酒造好適米の安定供給を図るため、酒造好適米を支援対象に追加、②多収品種を作付けする場合の加算を新たに措置、③米粉用米について、パン・麺専用品種以外にも対象品種を拡大。
○畑地化促進事業について、令和8年産の支援の単価を、先に取り組んだ者との公平性に観点から7万円/10aとし、産地化を進めるための定着促進支援の単価(2.0万円/10a×5年間)は維持。
<コメの安定供給に係る短期的な対応>
(1)コメの安定供給に係る消費者・国民の安心を確保する、(2)より精度の高い情報に基づき市場関係者が経営判断を行うことで結果として適正かつ円滑な流通を推進する、(3)国が流通状況に応じて適確な措置を講じることができるようにするため、以下の対応策を講じることとする。
(1) 生産量に関する統計調査の精度向上
①ふるい目幅の見直しや白未熟粒等の割合の公表、生産現場からの情報収集の強化(R7年度〜)
②生産者等の収穫量データの活用(R7年度〜)
③人工衛星データ・AIの活用(将来)
(2) 需給の変動に柔軟に対応できる需給見通しの作成
①需給見通しの算出・設定方法を見直す(R7/8需給見通し〜)
②生産・消費の最新の動向に応じて、需給見通しの各数値に適宜反映させる(R7/8需給見通し〜)
(3) 流通構造の透明性確保のための実態把握の強化等
①在庫量、出荷・販売取扱量等の流通情報の把握など実態把握強化を検討する
②届出事業者等の違反を抑止し、是正するための適確な情報把握を担保する措置を検討する
③ 産地から消費者まで冷静に判断するための材料として、市場動向について、より密に情報発信を行う (4) 今後の備蓄政策について、さらに早急に検討を進める
①生産量の減少以外の不足要因にも対応できるよう、備蓄の定義(目的)を見直し、食糧法の改正をするととともに、その水準について、③・④の制度設計も踏まえつつ、検討する
②事前契約による令和8年産備蓄米の政府買入れは21万玄米トンを予定。政府備蓄米の放出(全体で約59万玄米トン)に係る買戻し及び買入れは、今後の需給状況等を見定めた上で行う
③政府備蓄について、今般の備蓄米の売渡しにおける課題の検証を踏まえ、備蓄期間、売渡しの方法、倉庫の地域偏在等について、より円滑な備蓄米の供給の観点から、その運営を見直す
④民間備蓄について、官民の役割分担と運営方法等につき、民間事業者の意見も踏まえた上で、その具体的な仕組みについて検討する
■参加議員からの質問と農林水産省の回答
<備蓄米の買入れ・放出の基準を価格に基づき明確にすべき>
参加議員から「適正民間在庫量が200万トンである中、これをはるかに上回る民間在庫となる。価格に対する不安定が出てくる。政府備蓄米には需給をコントロールする重要な役割があると思う。来年不作となるかもしれない。南海トラフ、首都直下型地震などが起こりうる中、30万トンでは心もとない。万全な備えが必要。備蓄米の買入れ・放出の基準を、価格に基づいて明確にすべき。例えば、1万円台後半を下回ったら買い入れするとか、基準を作っていただきたい」(緑川貴士衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「備蓄米の買入れ基準等について、予測可能なものとしなければならない。価格に基づく発動基準とのご指摘について、備蓄はあくまでも量的なものであり、需給状況に鑑みて行うもので、価格がいくらになったら買い入れるということは備蓄の目的ではないことをご理解いただきたい。買戻しについて、価格が高い水準にあるが、大幅な下落を心配する声もある中、買い入れるタイミングによって、需給が締まって米価が上がってしまうということになってもいけない。これについて、需給状況をみていきたい」との回答がありました。
<主食用米以外の用途のコメ生産の確保、畑作への支援が必要>
参加議員から「主食用米への揺り戻しが出てきて、飼料用米を作らなくなった。麦・大豆も、食料安全保障の強化といいつつ、減っている。畑作の支援、交付額を削ると、主食用米への揺り戻しが強化されてしまう。ゲタ対策も交付単価を上げるというが、主食用米の価格の魅力にはかなわないのではないか。畑作をちゃんと支援し、水田の汎用化の予算をつけていく必要があるが、どう考えるか」(緑川貴士衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「主食用米以外の加工用米等のニーズがあるところで足りなくて大変という声も聴いている。需要に応じた生産といっているが、これは主食用だけでなく、飼料用、輸出用について、需要をきちんと開拓し、そこに向けて生産していくことをしっかりやっていく。水活も使いながら、需要に応じた生産をしていただくようインセンティブをつけていく」との回答がありました。
<食糧法の「需給及び価格の安定」の考え方-価格安定に向けた施策の在り方>
参加議員から「食糧法では、『米穀の需給の価格の安定』と法律に書いてある。前々農水大臣の江藤大臣は、『価格の安定など法律に書いてない』と国会で言い放ち、現大臣の鈴木大臣は『マーケットで価格が決まるからコミットしない』と大臣会見等で発言されている。『需給及び価格の安定』という食糧法の文言について、どう理解すればいいのか。『価格にコミットしない』ということは、食糧法の条文からどう導かれるのか」(川内博史衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「過去の国会答弁はおいておくとして、鈴木大臣の表現でいうと、価格にコミットしないということは、価格がこうなったからこうするなど、直接的に価格に政策を打つというのではなく、あくまで、需給の安定を図ることで、結果として、価格も安定するということを言っている。価格がどうなってもいいと言っているわけではない。食管制度から変わって自由化してきた流れからいうと、農政全般からもそうだが、需給の安定についてはやるが、これを通じて価格は最終的にマーケットで決まるという市場原理は大事にして政策を進めていくということ。この考え方は鈴木大臣も前の大臣も変わることはない」との説明がありました。
これに対し、参加議員から「『需給及び価格の安定』と書いてある。需給を安定させることをもって価格の安定を図るということであれば、『及び』という言葉は、法律上『もって』を意味するということか」(川内博史衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「法律のタイトルが『主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律』。第2条に需給と価格の安定を図るため、需給見通しを策定するとあり、需給見通しでは量を出している。これに基づいて生産し、結果として価格が安定していくという流れになっている。価格に直接コミットはしないが、量を安定化させることによって価格を安定させる、現行法はそのような体系となっている」との回答がありました。
さらに、「そこが無責任だと思う。需給及び価格の安定を図るため、需給について正確にやるよと書いてあるが、価格がこれだけ暴騰することを、今の説明では正当化できない。主要食糧だから法律を作っている。価格が倍になっているのを需給の結果だからいい、というのは違うのではないか」(川内博史衆院議員)との質問がありました。
農林水産省から「食糧法は先ほど申し上げたとおり。需要については、反省点があると率直に考えている。これを正確に出したいと考えているところ。無責任とのご指摘については、現行法がそうなっている。我々の責務として、需給見通しをしっかりと作る。もう一つの反省点として、現場とのやりとりが少なかったのではないかと思っているので、もっと密にして、需給安定に資していくことが重要と考えている。今できる答えはこのくらいになる」との回答がありました。
<需要量の見通しと価格の関係> 参加議員から「鈴木大臣は所信の中で、『コメの価格は市場に委ねられている』と需要に応じた生産を推進する」と言われている。この2つは良く理解できない。価格が市場で決まると言いつつ、需要に応じた生産、供給を調整していくといったら、価格も含めて調整されることになると受け止めるのではないか。今回、主食用米等の需給見通しの中に需要量が書かれているが、需要量は価格によって上下していくと思う。需給見通しの中で需要量はどのように定義されているのか」(平岡秀夫衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「価格と短期的な需要量について、コメについては、価格弾力性が低いということもあるので、価格が2倍になったから需要が2分の1になるということにはなっていなかった。ただ、近年の傾向をみるとパンや麺の消費量と比べると値ごろ感によって、コメの消費量が若干増えたり減ったりする。そういうところも分析しようと思えばできるが、短いスパンで、今の価格がこうだから、来年の需要は減るだろうというモデルは持っていない。5年くらいの需給の中で見ている。短期的な計算方式になっていない」との回答がありました。
<概算金、買取価格等の調査頻度>
参加議員から「食糧法に基づく流通把握について、概算金、買取価格等の調査頻度を毎月とした理由は何か」(西川将人衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「概算金については、今年から調査を始めた。今年、こういう状況になったので、まずやってみたところ。毎月というのは12か月全部ということにはおそらくならないと思う。取引が始まるのが7月、11月くらいに終わる。例えば、7月の概算金の平均をご報告することによって、影響を与えるようになるのか。概算金は取引の一つの方法であり、あまり公表しないでほしいという現場の声もある。概算金の調査をどのように使っていくのか、これから考えなければならない」との回答がありました。
<食糧法を改正し、備蓄の定義(目的)を見直すとともに、その水準について検討することとした背景>
参加議員から「『食糧法を改正し、備蓄の定義(目的)を見直すとともに、その水準について、検討する』とある。これは、我々が提出した法案への配慮の言葉なのかなと思う。あるいは、食糧法を改正しないで備蓄米を放出したことは問題だということを認め、反省し、それに基づいて動いているという理解でよいか」(金子恵美衆院議員)との質問がありました。
農林水産省より「今般の備蓄米放出は食糧法第29条に『備蓄の円滑な運営』と書いてあり、これに基づき、基本指針を書き換えた上で実施しているので、法的に問題はない。ただ、主たる目的を、生産量の減少によりその供給が不足する事態に備えると書いてあることで、適切な判断が遅れたのではないかということを課題として認識している。今回のように、生産量は増えていても放出できるタイミングがあるということをきちんと書こうということ」との回答がありました。
<消費者、生産者双方が納得する価格の実現は疑問 かつての戸別所得補償のような制度が必要>
「言われたように、コメ政策は基本的に需要量をいかに確保するのかということが基本であると。価格はおのずと需給バランスの中で決まるが、その価格であれば、消費者にとって手頃な価格なのか、生産者にとって魅力ある、収入になる価格になるのか。両方を満たす解は出てこない。そうすると、コメの政策は、かつての戸別所得補償制度のようなものが必要ではないか」(平岡秀夫衆院議員)との指摘がありました。
農林水産省から「いつもいただく質問。次の国会の議論に委ねたいと思う。前半の部分について、個人的な見解であるが、マーケットが正常に機能していれば、価格はある程度のところで収まっていくが、今回の価格はマーケットで決まっているからそれでいいんだ、ということでは全くない。消費者にはなかなか買えないという話になり、生産者には一時的な手取りとはなるが、一方で外米が入ってくるという副作用もある。今の価格水準が全くいいと思っているわけではない。具体的にどの水準がいいのか、これからコスト指標ができてくるので、取引の中で、双方が納得できる価格に誘導されていくように…」との回答の途中、参加議員から「そのようなものがあるのか。生産者も消費者も納得できる価格はありうるのか」(平岡秀夫衆院議員)との質問があり、農林水産省から「取引が成立するということは、原則、そういうことであろうが、制限された環境の中で成立した取引価格が本当に正しいのか、一部で取引されている価格がマーケット全体で見たときに適正な価格か、いいと思っている人が多いとは思えない。コスト指標はコスト割れした取引を防ぐもの。価格が高い段階で、どこまでの価格が許容される範囲かということで使われることもあるかもしれない。コスト指標については、これからうまく使っていきたい」との回答がありました。
■報告・協議事項
<衆参農林水産委員会報告>
金子恵美衆院農林水産委員会筆頭理事より「昨日の衆院農林水産委員会では質疑者に頑張っていただき、大臣所信に対する素晴らしい質疑ができた。次は、一般質疑を強く求めているところで、厳しい協議を重ねており、応援をお願いする」との報告がありました。
石垣のりこ参院農林水産委員会筆頭理事より「参院農林水産委員会は、先週大臣所信に対する質疑を終え、一般質疑を求めている。衆参とも一般質疑を勝ち取るべく頑張るので、よろしくお願いする」との報告がありました。