衆院予算委員会が12月9日に開かれ、2025年度補正予算の基本的質疑では、立憲民主党からは後藤祐一、下野幸助、松尾明弘、源馬謙太郎各議員が質疑に立ち、高市総理をはじめ関係閣僚に質問しました。
■後藤祐一議員
1. 補正予算額 と国債発行額の規模
後藤議員は冒頭、今回の補正予算額18兆3000億円(国債発行額11兆7000億円)について、東日本大震災時の4回の補正予算合計額15兆1000億円を上回る規模であることを指摘。「ちょっとやりすぎじゃないかという規模感をぜひ国民の皆さんも感じていただければと思います」と問題提起しました。
公共事業予算については、令和5年度補正と令和6年度当初予算の合計額と、令和6年度補正と令和7年度当初予算の合計額を比較したパネルを示し、道路(約37%)、河川(約21%)など各インフラのシェアがほとんど変わらないことを指摘。「補正予算というのは緊急性に応じて年によって変わるはずなんですよね。なんで補正予算と次の年の本予算を合計した額がこれほど左様に一致しちゃうんでしょうか」と疑問を呈しました。
片山財務大臣は「これは私も長年この予算をやっていて、非常にびっくりした部分もあるんですが」と率直に認め、「今回予算と補助金とさらに見直しということで、租税特別措置のことについて相手官庁も入れて大規模な会議をつくりますので、ご指摘の面も踏まえてより適切な補正と本予算の在り方等について十分に参考にさせていただきたいと思っております」と答弁しました。
2. 基金への巨額積み立てと金利負担
後藤議員は基金の問題について厳しく追及しました。宇宙戦略基金について、令和5年度補正で積まれた3000億円のうち2年たった現在も約2593億円が残り、令和6年度補正の3000億円は民間企業への支払いがゼロである実態を明らかにしました。基金残高の最小額でも約2900億円が塩漬け状態で、運用益はわずか6億円(約0.2%)であり、国債金利(約2%)との逆ざやが発生していることを問題視しました。
経産省関係の基金についても、グリーンイノベーション基金が2年間にわたり2兆円以上の現金が塩漬けになっている実態、特定半導体基金(4700億円)は民間への支払いがゼロであることを指摘。「今回の補正で基金に2兆5000億円積む。2%で調達したら年間500億円の金利だ」と警鐘を鳴らしました。
高市総理大臣は「個々の支出のタイミングに紐づけて財源を調達するといったような運用は、実際にこの基金について行われておらず、また実務上も難しい」と答弁しましたが、後藤議員は国土交通省の公共事業では四半期ごとに支払いタイミングを把握し適切な時期に財務省から資金を受けていることを確認した上で、「公共事業ではもっとはるかに多い企業数でできている。基金は緊急性の説明が立たないから補正予算に乗せる理屈のために合理的な仕組みができないのではないか」と本質的な問題を指摘しました。
さらに後藤議員は、同日閣議決定された令和8年度予算編成の基本方針に「補正予算については近年は常態化すると同時に規模は拡大している。こうした予算の在り方についても議論を進める」とあることを紹介し、「こういうことを議論してくださいよ、総理」と求めました。高市総理がうなずいたのを受け、「そこはどうなっているかはまたチェックしてまいりたいと思います」と述べました。
3. 企業団体献金
後藤議員は、高市総理が代表を務める自民党支部で、政治資金規正法の上限を超える寄付を受けていた問題を追及。
高市総理は「令和6年中、資本金10億円未満の企業から誤って寄付額の制限750万円を超える1000万円の寄付がなされたというものでありました。支部におきましては、判明後直ちに250万円を返金いたしました。支部を代表する者として、申し訳なく存じます」と陳謝しました。小泉防衛大臣も同様の違法献金について「今後はしっかりと寄付を受ける際の確認作業を徹底して再発防止に努めたいと思います。すいませんでした」と謝罪しました。
企業団体献金関連法案の審議について、与党側が「新しい法案を出すので待ってほしい」と先延ばしにしてきた経緯を批判し、国会のルールである「先入れ先出し」に従い企業団体献金法案を先に処理すべきだと主張。
高市総理は「内閣総理大臣として口出しをいたしません」「自民党総裁としても別に議案の順番については口出しをいたしません。国会でお決めいただくことだと考えております」と答弁。後藤議員は「重要な答弁だ」と評価しました。
4. 防衛費と米国からのGDP3.5%要求
後藤議員は、12月6日にヘグセス米国防長官がレーガン国家防衛フォーラムで「NATOはGDPの5%を防衛費に充てることを約束しました。3.5%を中核軍事費に、1.5%を安全保障関連投資に充て、世界中の同盟国に対し大統領が設定したこの新しい世界基準を満たすよう圧力をかけています」「私たちは他のインド太平洋同盟国もこれに追随すると楽観視しています」と発言したことを紹介しました。
後藤議員は「GDP3.5%は約20兆円。現在の防衛費約10兆円を倍にするイメージで、消費税8%分、国民1人当たり月7千円が1万4千円になる計算だ」と分かりやすく説明した上で、「アメリカから3.5%を求められていますか」と質問しました。小泉大臣は、10月29日の日米防衛相共同記者会見でヘグセス長官が「アメリカから日本に対して何か要求したことは一切ない」「日本に何をすべきか指示する必要はない」と発言したことを紹介し、「この発言以上のことはありません」と答弁。
後藤議員が「今日までの間に、水面下も含めて、部下の接触も含めて、3.5%という数字を上げて要求されたことは全くありませんか」と重ねて質問すると、小泉大臣は「日本が必要な防衛力は主体的な判断で積み上げた結果が今のGDP比の2%だ」と述べました。後藤議員は「言われている可能性は高いですよね」と指摘しました。
■下野幸助議員
下野議員は、(1)予備費の規模と使途の妥当性(2)公立病院等の経営支援(3)公立学校施設の整備支援――について質問しました 。
下野議員は、今回の補正予算案で残り3カ月の期間に対し約7000億円、残額と合わせ約1兆円もの予備費が計上されている点を問題視。「平成28年の熊本地震においては予備費は緊急支援として23億円が充てられています」と過去の事例と比較し、「残り3カ月予備費1兆円積み増す根拠は何でしょうか」と片山財務大臣に迫りました。
また、全国の公立病院の83%が赤字である現状を示し、政府案の支援が不十分だと指摘。立憲民主党案では1床あたり136万円の支援を見込んでいるのに対し、政府案は19.5万円にとどまるとして、「予備費を削ってでも、命を守る国民を守る、そして現場の声を反映した医療への支援を手厚くするべき」と高市総理に訴えました。 さらに、公立学校施設の施設整備について、補正予算待ちで工事が止まってしまうという現場の声を届け、当初予算での対応を求めました。
■松尾明弘議員
松尾議員は、財政法29条が定める補正予算の「緊要性」の観点から、法務省所管予算についてただしました。
松尾議員は、補正予算案に電子渡航認証システム開発や施設改修費などが計上されていることについて、「なぜこれらが補正予算の対象とされているのか」と疑問を呈しました。平口法務大臣が訪日外国人の増加を理由に挙げたのに対し、「数字の根拠がない」と批判。またシステムの整備や施設改修についても、「IT人材も建築現場も人手不足なのに3カ月でできるのか」、「緊要性をもって対応できるのか」と重ねて疑念を示しました。 また、在留外国人政策については緊要性が低いと思われるものの約83億円が計上されている一方で、多文化共生に関連する予算は約5.5億円と少ない点を指摘し、「適法に滞在している在留外国人もこれまでになく増えており、多文化共生の必要性も増しているのではないか」と訴えました 。
■源馬謙太郎議員
源馬議員は、(1)防衛費対GDP比2%達成の中身(2)馬毛島基地整備予算(3)防衛増税と非核三原則――等について質問しました 。
源馬議員は、今回の補正予算で防衛費がGDP比2%に達したとされる点について、計算方法が変更され米軍関係経費などが合算されたことを指摘。「計算の仕方も変えてとうとう2%に達成したと言うが、一体それにどんな意味があるのか」と疑問を投げかけ、「アメリカに見てもらうためにも計上する中身を変えてまで日本はGDP比2%を達成しましたよ、というポーズではないか」と総理の見解をただしました。
また、馬毛島における滑走路などの施設整備事業に2751億円が計上されたことについて、「あと3カ月では使い切れないのではないか」と指摘。同事業についてはこれまでも補正予算に計上したものを執行し切れていない現状を指摘しつつ、「最初から当初予算にしっかり必要な額を積むことが大事だ」と主張しました。 最後に、非核三原則の見直しに関する報道について確認を求め、高市総理から見直しを指示した事実はないとの答弁を引き出しました。