衆院予算委員会で12月10日、2025年度補正予算に関する基本的質疑2日目が行われ、立憲民主党から奥野総一郎、山井和則、酒井なつみ、稲富修二、今井雅人各議員が質疑に立ちました。

 ■奥野総一郎議員

 奥野総一郎議員は、(1)議員定数の削減(2)企業・団体献金(3)地方創生交付金と地域未来戦略交付金の関係(4)重点支援交付金のあり方――等について取り上げ、政府の見解をただしました。

 衆院の定数削減をめぐっては、今年初めから衆院議長のもと与野党各会派での選挙制度に関する協議会が開かれていることに、地方の声が政治に反映されないのではないかとの懸念があるなか、いかに民意を反映するかという観点で参院の選挙制度、定数と一体的に議論すべきだと主張。自民・維新両党が連立合意文書に基づき突如として提出した衆院議員定数の削減法案について、「衆院だけ自動的に削減する案はあまりにも乱暴だ」と批判しました。高市総理は定数削減法案について「コメントは差し控える」「国会審議の場で議論を」などと答弁を拒否。奥野議員が「(合意文書は)『成立を目指す』であって『成立』までは負っていないとの理解で良いか」と迫ると「成立させることを目指す」と答えました。

 企業・団体献金をめぐっては、受け皿を規制する、国民・公明両党が提出した法案を軸に議論を進めてほしいと要請。「これだけ問題が起きているのだから制度をしっかり考えないといけない。自民党案と、国民・公明案を中心に並行審議し、今国会中に結論を出してほしい」と求めました。

■山井和則議員

 山井和則議員は、補正予算における「医療・介護・障がい福祉等緊急支援」をめぐり、立憲民主党が取りまとめた支援策は、総額8.9兆円と規模を抑えつつも、医療・介護・障がい福祉に2.5兆円を重点配分。一方、政府案は21.3兆円と2倍以上の規模でありながら、同分野への支出は1.3兆円にとどまり、「命と暮らしへの支援が後回しだ」と批判しました。医療現場では病院や診療所の赤字・廃業が相次ぎ、介護や障がい福祉でも人手不足と低賃金が深刻化していると指摘。立憲民主党は、現場に直接届く支援と、医療・介護・障がい福祉分野で、他産業並みの賃上げを実現するための積極的な財政投入こそが不可欠だと訴え、政府に対し補正予算の組み替えと支援拡充を強く求めました。

■酒井なつみ議員


1. 高額療養費制度における外来特例の自己負担引き上げ
 酒井なつみ議員は冒頭、高額療養費制度の見直しについて取り上げました。政府が昨年末、がんや難病患者などの当事者の声を聞かず、国会審議も不十分なまま大幅な負担増となる制度改正を進めようとしていた経緯に触れ、本年1月の予算委員会で石破前総理に値上げ反対の質問を行い、衆参の熟議や患者団体の声により引き上げ凍結を実現したと振り返りました。
 70歳以上の外来特例の上限額引き上げについて、対象となる約600万人の高齢患者の実態把握をした上で検討しているのかと質問。上野厚生労働大臣は、専門委員会でがん患者やリウマチ患者の事例を示しながら議論しているとしながらも、「外来特例の利用者のみに特化したデータにつきましてはまだお示しができていないのが現状であります」と認めました。
 酒井議員は「そうであれば負担増額を決めるのは拙速ではないかというふうに思います」と指摘。高市総理大臣が年末の取りまとめに向けた議論を進める方針を示したのに対し、「昨年と同じ轍(てつ)を踏まないようにしていただきたい」と述べ、「家計の破綻や命に関わる治療の断念に追い込まれる患者は出さないと、お約束をいただきたい」と求めました。最後に「拙速に進めないこと、丁寧な検証と議論を深めるように強く要望」すると述べました。

2. 人身売買罪の厳罰化
 酒井議員は、先月発生したタイの12歳少女の人身売買事案を取り上げました。再発防止策として立憲民主党が提出した人身売買罪厳罰化法案について、「厳罰化することで、一般予防効果、その抑止につなげていくというところが第一の狙いです」と説明しました。
 2014年の児童買春・児童ポルノ禁止法改正に7年かけて取り組んだ高市総理に当時の思いを質問。高市総理は「児童の性的搾取というのは、児童の心身に重大な影響を及ぼします。それは将来にわたって残る影響です。そしてその人権を著しく侵害する、極めて悪質な行為ですから、断じて許されるものではないと考えて」法整備に関わったと答弁しました。
 酒井議員は、日本が先進国の中で人身取引への罰則が軽く米国務省からも処罰不十分と批判されていること、政府の人身取引対策推進会議が6年間開かれていないことを指摘。2024年に保護された被害者66人のうち日本人が58人(88%)、18歳未満が41人(62%)を占める実態を示し、「本当に人身売買根絶できるのだろうかというふうに思います」と述べました。
 高市総理は「この人身取引の根絶に向けては、精一杯取り組んでまいります」と答弁。法務省で現行法令の運用状況調査、国内の実態把握、諸外国の規制状況調査を進めていると説明しました。会議が持ち回りとの指摘に対しては「しっかりと実会議を開かせていただきます」と約束しました。

3. 障がい児福祉にかかる所得制限の撤廃
 酒井議員は、立憲民主党が12月5日に提出した障がい児福祉所得制限撤廃法案について説明しました。「親の収入によって手当や支援が受けられるかどうかが決まる不公平な仕組みであり、支援を受けられない子どもと、その家族が取り残されないようにしなければならないと考えています」と訴えました。
 当事者へのヒアリングで得られた声を紹介。重度障がい児を育てる母親からの「仕事を退職せざるを得ず、絶望しました」「きょうだい児(※)の学費すら貯められません」「私の人生はどこに行ったのだろうと考えてしまう瞬間があります」との声や、所得制限で放課後デイサービスを週1日に制限している母親から「夏休みなどの長期休暇は正直辛いです」「特にきょうだい児には我慢させてきたと思います。不甲斐ないです」との声を読み上げ、紹介しました。
 特別児童扶養手当と障害児福祉手当の所得制限撤廃に必要な経費330億円を補正予算に追加すべきと主張。高市総理が「安定的な財源が不可欠でございます」「補正予算での対応は、どうしてもこれ一時的なものとならざるを得ないので、慎重な対応が必要だと思っております」と答弁したのに対し、酒井議員は「330億円は今回の政府の補正予算案18.3兆円の0.18%に過ぎません」と指摘。「児童手当の所得制限は撤廃されたにもかかわらず、より子育てに苦労の多い障害児扶養手当に所得制限が残されているのはおかしくないでしょうか」と重ねて訴えました。
 さらに酒井議員は「家族のケアを女性が多く担っているという現状、そこをやはり私たちは重く受け止めていかなくてはなりません。子どもの福祉もそうです。減退させてはならないというふうに思っております」と述べました。
 ※障がいや難病を持つ兄弟・姉妹がいる子どものこと

4. 中低所得者層に対する支援
 酒井議員は、立憲民主党が提案する「物価高食卓緊急支援金」について説明しました。子ども全員に1人2万円、中低所得者世帯に1人3万円を給付し、ワーキングプアを含む低所得者層まで対象を広げ、国民の6割が対象となる内容です。政府の重点支援地方交付金では地域差が生じると指摘し、「政府の案より優れていると考えています」と主張しました。
 城内国務大臣は、立憲民主党の提言も踏まえて物価高対応子育て応援手当(1人当たり2万円)を盛り込んだとし、重点支援地方交付金を活用して地方公共団体のニーズに合った対策を講じる方針を示しました。酒井議員は質疑の最後に「われわれの方が優れている」と重ねて強調、予算案の修正を強く求めました。

■稲富修二議員

 稲富修二議員は(1)所得税(2)租税特別措置(3)賃上げ(4)食料品消費税ゼロ%(5)財政――等について高市総理に質問しました。特に所得に関しては、「高校生年代の扶養控除の見直し」「基礎控除引き上げ、給与所得控除引上げ」「令和7年度改正による基礎的控除引上げの問題点」「130万円の壁」等を取り上げました。

 「高校生年代の扶養控除の見直し」について冒頭で取り上げ、政府が検討していると報道されている点をふまえ、立憲民主党として提言も提出済である点も説明したうえで「高校生年代の扶養控除については、児童手当や子育て支援の観点から十分な額とならない限り、現行制度を存続させるべき」と指摘しました。継続か縮減か、総理の認識を確認したのに対し高市総理は「私から指示は出していない」「一昨年に児童手当の拡充が決定されて以降の検討事項となっている」などと答弁するだけで、自らの見解は示しませんでした。稲富議員は「物価高のなか高校生を扶養する家庭に増税はあり得ない」と強調し、見直すべきでないと指摘。また、ガソリンの暫定税率廃止の際に高市総理が明確に方針を示したのと同様に、明確な指示を出すべきと強く求めました。

■今井雅人議員

 今井雅人議員は(1)今後の予算編成においての財政の考え方(2)財政が金融に与える影響(3)補正予算の考え方(4)食料品の消費税(5)市場型資本主義の修正(6)その他(企業団体献金・定数削減・政治と金)――等について高市総理らに質問しました。

 今井議員は冒頭、自民党と日本維新の会が共同提出している衆院議員定数削減法案と、企業・団体献金の規制を強化する法案の取り扱いについて質問しました。いずれも衆院政治改革特別委員会で審議されます。

 企業・団体献金の規制を強化する法案については第三者委員会に再来年の9月までに検討を求めるとして、前提を何ら定めず、白紙での検討依頼をしていると説明。一方、自民と維新がまとめた衆院議員定数削減法案は、「現行の定数465から1割を目標に、45以上削減すると規定。具体的な検討は衆院議長の下の与野党協議会で選挙制度改革と併せて行う。実効性を担保する措置として、1年以内に結論が出なければ、公選法を改正し小選挙区25、比例代表20を自動的に削減する」などとする内容を盛り込んでいる点に今井議員は着目しました。

 今井議員は内容の詰め方がアンバランスである点を「おかしくないか。なぜこんなにバランスが悪いのか」として、見解を総理に質問しましたが、「議員提出法案の内容についてコメントするのは差し控える」との答弁を繰り返すだけでした。今井議員は議員定数削減は高市自民党総裁と吉村維新代表の連立合意文書から端を発したものであることから総理が見解を示すべきだと要求。「結論が出ない場合の自動削減案まで盛り込んで法律を成立させようというのはめちゃくちゃであり、民主主義に関わる問題だ」と指摘しました。