参院内閣委員会で5月12日、国家情報会議設置法案が実質審議入りし、「立憲民主・無所属」会派から塩村あやか、杉尾秀哉両議員が質問に立ちました。
本法案は、インテリジェンス機能の強化を目的に、今ある内閣情報会議・調査室を改組して「国家情報会議」および「国家情報局」を新設し、情報収集・分析するというものです。
塩村あやか議員
塩村議員はまず、既存体制のどこに限界、支障があって国家情報会議・国家情報局を新設する必要があったのか、不明確だと指摘。立法事実や必要性について、特に内閣情報調査室に総合調整事務がなかったことでどのような支障が生じていたのかを尋ねました。これに対し木原官房長官は、各省庁から提供される情報に不整合や重複があったという経験に触れ、「大きな支障になる前に、今回しっかりと体制改変を行いたい」と答弁しました。
塩村議員は、地方議員から「個人情報の収集範囲が拡大するのではないか」との懸念が寄せられているとして、第7条に基づく情報提供の範囲を追及。税務、医療、福祉、教育情報や、自治体や民間由来の情報も対象になり得るのかをただしました。これに対し政府側は、「法律上、何か制約を設けているわけではない。自治体から得た情報や、民間事業者から得た情報というのは含まれる」とした上で、必要な範囲に限定され、個人情報保護法に基づき提供側が適法性を判断すると答弁。塩村議員は「とても不安な答弁だ」と述べ、引き続きただしてく考えを示しました。
塩村議員はまた、政府批判のデモや集会、市民活動、労働運動、マイノリティ支援活動などが情報収集対象となる懸念について、「法文上の歯止めが必要ではないか」と指摘。木原官房長官は、「活動への参加のみをもって調査対象となることは想定していない」と述べ、新たな捜査権限や調査権限を設ける法案ではないと説明しました。塩村議員は、破防法や警察法にも歯止めが行われているとして、基本的人権の侵害防止や、恣意的解釈の禁止、対象外情報の排除などは、条文化する必要があるのではないかと指摘。第三者機関による監視や国会報告の制度化を求め、「参院で改善を図りたい」と述べました。
杉尾秀哉議員
杉尾議員は冒頭、「インテリジェンス強化の方針に異論はない。サイバー攻撃や偽情報、外国勢力による工作、国際テロなど、見えない脅威に対抗するために、情報の一元化や省庁横断の司令塔機能の強化が必要だという政府の主張そのものを否定する気はない」と強調。一方で、「本法案は組織法であり、国民の権利・義務を直接侵害するものではないとする政府の説明をうのみにはできない」として、「衆院での質疑を通しても国家情報局に予防的かつ秘密裏に広範囲に資料を集める任務や所掌事務が与えられるにもかかわらず、どんな時にどんな情報活動をどのように行うのか、プライバシーなどの個人情報をどこまで収集できるのかが全く明らかにされていない」と懸念を表明しました。
その上で、木原官房長官から「なぜ今国会なのか」という立法事実について明確な説明が得られないなか、唯一考えられるのは昨年10月に締結された自民・維新の連立合意書ではないかと指摘。「内閣法制局に原案が示されたのは令和7年11月下旬、連立合意書ができてから1カ月も経たないうちに回ってきたという。この1カ月の間でどんな議論をしたのか。専門家の知見がどこまで生かされたか」などとただしました。
さらに、連立合意書には、令和9年度(2027年度)末までの「対外情報庁創設」と「スパイ防止法の今年度中の検討開始・早期成立」も明記されているとして、世論の強い反対や省庁間の対立から何度も見送られてきたこれらの法案も同じスピードで推し進められるのではないかとただすと、木原官房長官は「まだ検討状況やスケジュールをお示しできる段階にない」と答えました。
また、杉尾議員は、政府はこれまで「組織法である以上、人権への配慮規定を書き込む必要はない」と繰り返し主張してきたが、内閣法制局に問い合わせたところ、「内閣官房からそういった相談を受けていないため、検討していない。お答えできない」との回答だったと明かし、「内閣法制局にも相談せず、自分たちで決めて法案を出してきたのではないか」と迫りました。
杉尾議員は、初代NSC(国家安全保障会議)局長を務めた元外務事務次官・谷内正太郎氏が「国民の理解と野党の理解が欠かせない。有識者懇談会で半年から1年かけてじっくり検討すべきだ」と提言していることにも言及。安倍元総理もNSC設置法案の国会提出前には有識者会議を6回開くなど慎重に進めたのと対照的だと指摘して、法案の作成過程についても制度設計についても、何ら説得力ある説明がなされていないと政府の対応を批判しました。