参院本会議が5月13日に開かれ、「健康保険法改正案」等の質疑について立憲民主・無所属会派から小西洋之議員が質問に立ちました。予定原稿は以下の通りです。

                健康保険法等の一部を改正する法律案(質問全文)

                             2026/5/13 立憲民主・無所属 小西洋之

  立憲民主・無所属 小西洋之 立憲民主・無所属の小西洋之です。会派を代表して、健康保険法等の一部を改正する法律案について質問をいたします。

1.高市総理秘書による誹謗中傷の疑惑問題

 冒頭、法案責任者の高市総理の地位の正当性に関し総理に質問します。

 本法律案には、先の総選挙での与党の公約事項が複数含まれていますが、高市総理は、公設第一秘書の木下氏の総選挙等における批判・中傷投稿への関与疑惑について、我が会派の小島とも子議員、森ゆうこ議員の質問に対して、「高市陣営は、高市事務所が運営するアカウント以外でのSNS発信は行っていない」といったあからさまなご飯論法の答弁を繰り返しています。

 問われているのは、木下秘書が、第三者たる起業家の松井氏に批判・中傷動画の作成と発信を依頼していたかどうかです。高市総理は「週刊誌よりも秘書を信じる」とした上で、「木下氏と松井氏は面識がない」とまで答弁していますが、秘書を信じるのは結構ですが、秘書と一緒に国会や国民に対してご飯論法の説明をすることは許されません。

 木下秘書が松井氏に総裁選、総選挙で批判・中傷のSNS動画の作成と発信の依頼を本当にしていないのかについて、木下秘書が送受信していたとされる週刊誌報道にあるLINE、シグナル、ショートメッセージについて、高市総理自身の責任でその存否と内容の真偽を実際に確認した結果について具体的な説明の答弁を求めます。

 また、木下秘書は収支報告書によれば高市総理の二つの国会議員関係政治団体の会計責任者となっています。報道の動画の作成、発信に要した費用はこれら政治団体の支出なのか、松井氏側からの領収書の受領の有無、各団体の会計帳簿への記載の有無と収支報告書への記載の事実関係について、政治団体の代表者の立場の責任も含めて会計責任者の木下氏に確認した結果について答弁を求めます。

 高市総理は2023年に、総務大臣当時に主導した放送法の解釈改変について、その経緯を記録した総務省の行政文書を巡って、部下の官僚たちが悪意を持ってねつ造したなどと誹謗中傷し、ねつ造でなければ大臣も議員も辞職すると答弁しながら、当該文書を作成した三名の官僚全員がねつ造などしていないと本院に報告等をしても、なお、その地位に居座り続けました。 誠に保守政治家の風上にも置けませんが、週刊誌報道の内容に関する高市総理の関与の有無と、仮に、報道内容が事実であった場合は、総理総裁としてどのような責任を取る覚悟なのかについて、答弁を求めます。

2.医療基盤物資等の確保

 次に、医療基盤物資等の供給確保について、ナフサ供給に関する総理の説明に関わらず、医療現場などでの不安の声は止まず、拡大しています。 実効的かつ根本的な解決はホルムズ海峡の通航確保しかありません。在日イラン大使のセアダット氏は私に対して、高市総理とイラン大統領の首脳間の電話で日本とイランの個別協議で日本のタンカーの通航が可能である旨、高市総理に告げていると述べましたが、この事実関係について答弁するとともに、イランとの個別協議を実施する意思の有無とその理由について総理の答弁を求めます。

 また、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を掲げながら、首脳間の一方通行的な電話だけで、イラン友好国等の日本の独自性を活かし、パキスタンのような米国とイランの間の主体的な和平の仲介外交の努力をなぜ行わないのか、その理由を総理、答弁下さい。

3.高額療養費制度

 高額療養費について質問します。

 政府は、令和8年度予算において制度の見直しを行いましたが、一月当たり117円の保険料減額の対価として、高額療養費の患者の約8割が負担増、月額では最大で約38%の負担増などの事態を生じ、患者団体や医療経済学者などから強い批判、懸念の声が上がっています。

 本法案では、長期療養者の家計への影響への考慮事項が追記されていますが、 患者団体などからは、この改正115条のままでは、既に生じている受診断念や生活破綻の抜本改善にならないばかりか、長期療養者については考慮するが、そうでない患者の月額の上限はどんどん上げられるのではないかといった不安の声が上がっています。

 すなわち、この法案は、今回の見直しも含めた現行の高額療養費制度の構造的な問題を追認し、かつ、将来における改悪を容認するものになっているのです。

 まず、総理に今回の見直しの問題について質問をします。

 総理は衆議院において、今回の見直しによって、多数回該当の維持や年額上限の導入などを行い、長期療養者や低所得者に十分配慮したという官僚答弁を繰り返していますが、例えば、所得区分200万円から370万円の患者と、所得区分650万円から770万円の患者の年額上限は、同じ53万円となっています。年収200万円と年収770万円の年額上限が同じ53万円ということ自体が、見直し制度のずさんさと破綻を意味しているのではないでしょうか。

 総理は、年額上限が53万円の年収200万円、300万円、400万円等々の患者に受診断念や生活破綻が生じ得ないとお考えでしょうか。 また、これらの患者と年収770万円の患者の年額上限が同じであることに公的医療保険制度としての公平・公正性や合理性があるとお考えでしょうか。官僚答弁ではない総理の見解を求めます。

 また、この年額上限には更に深刻な問題があります。

 立教大学の安藤道人教授の分析をもとにした、衆議院における患者団体・全がん連の天野慎介理事長の陳述によれば、治療中における単純平均値38.5%、中央値28.6%の所得減少で、月額で見ると全ての所得区分において、WHO基準の「破滅的医療支出」に陥ってしまう、すなわち、医療費の支出が支払能力の40%を超える事態に陥るとされています。 政府は、私の質問に対し、治療期間中の収入減を考慮して年額上限の制度を設けたと答弁していますが、これは二重の制度の破綻ぶりを述べただけのものであり、全がん連の報告でも約3割減とされる治療期間中の収入減による「破滅的医療支出」を回避できる制度に抜本改善する必要があるのではないでしょうか。官僚に頼らない総理の見解を求めます。

 更に、見直しにおいては、患者に何人の子どもや親などの扶養家族がいるかなどの個別事情については配慮が措置されていません。要するに、現役世代が子育てや親の介護などを抱えて闘病を行っている生活実態が考慮されていないのです。 高市総理は衆議院において、厚労省の専門委員会では延べ二十を超える様々な事例や家計の収支状況に関する資料などをお示ししたとの官僚答弁を繰り返していますが、その官僚自身が厚生労働委員会における私の質疑において、こうした個別的要素について実質的な考慮と検証がなされたものではない旨の答弁を行っています。このような見直しが、患者や家族を守り抜けるものなのか、現役世代の負担減どころか許されない負担増なのではないかについて総理自身の見解を答弁願います。

 以上、政府の高額療養費制度の問題の一部について指摘しましたが、なぜ、このようなことになってしまっているのか。それには、高市総理及び自民・維新政権における高額療養費、更には、我が国の社会保障のあり方の本質への根本的な認識の欠如があるものと考えます。

 我が国の国民皆保険制度の趣旨は、病気などによって、自分の力だけではかけがえのない命、健康、尊厳、生活、家族を守り切ることができないときに、社会みんなの支え合いによってそれらを守り抜くものであります。私の父親も、かつて私が10歳の時に脳卒中で倒れ、21年余りの寝たきりの闘病人生を送りました。四人兄妹が育つことが出来たのは母親の懸命の努力とともに憲法25条に依拠した日本の社会保障のお陰です。

 ところが、この国民皆保険制度における高額療養費の位置付けについて、上野厚労大臣は去る3月の厚生労働委員会において、政府として初めて「中核制度」と答弁しました。また、高市総理は、4月の予算委員会における私の質疑において、高額療養費制度は「憲法25条の生存権保障の趣旨に適合しなければならない」と答弁されました。

 高市総理に伺います。政府の見直しは、そもそも高額療養費が憲法25条の生存権を保持するために必要不可欠の制度であり、公的医療保険の根幹の中核制度として間違いのない実効性を具備したものでなければならないという認識に欠けていたのではないでしょうか、答弁下さい。

 こうした政府の高額療養費の制度的本質についての認識の欠如は、見直しのプロセスにおいても重大な問題を起こしています。高市総理は衆議院において、「専門委員会で、患者団体の方を始め、・・・九回にわたり丁寧な議論を重ねて参りました」との官僚答弁を繰り返していますが、真実は、専門委員会に具体的な負担増の金額やその制度設計が示されたのは予算の閣議決定の前日の第九回目であり、事実上の事後報告でした。こうしたプロセスに、患者の当事者参画の観点において瑕疵はなかったと考えるのかについて、総理の見解を求めます。

 以上、高額療養費は殆ど全ての国民がそのかけがえのない生命・健康と人生を託するものでありながら、残念ながら、本法案は、その内容、基本理念、設計プロセスの全てにおいて深刻な課題を有する政府の制度を追認し、その将来の過った見直しのあり方を容認するものとなっています。 立憲民主党と公明党は、共に立案に参画した衆議院における中道とチームみらい、共産党の共同提出の法案も参考にしながら、より多くの会派の賛同を得られる修正案の検討を進めています。

 今般の高額療養費制度の見直しは、昨年の参議院の憲政史上初の予算修正によって可能となったものです。その見直しと将来のあり方が、良識の府の意思を反映し、憲法25条の生存権を具現化し、国民皆保険の中核制度としてその実効性と持続性を具備したものとすることが、この議場に集う先輩同僚の先生方の意思で実現することが可能なのであります。

 皆様からのご指導と協働について、心からのお願いと呼び掛けを申し上げます。

4.OTC類似薬の保険給付の見直し

 OTC類似薬の一部保険外療養創設に伴う受診抑制について質問します。 患者団体や医療団体から、特別の料金の加算によって、受診抑制とそれによる重症化などが懸念されています。一部保険外療養の創設により、どの程度の受診抑制が生じると見込んでいるか、お示しください。「必要な受診が抑制されることは想定していない」という逃げの答弁ではなく、どの程度の受診行動の変化を見込んでいるのかというデータに基づいた厚労大臣の答弁を求めます。

 一部保険外療養について、昨年12月の自民・維新の政調会長間合意では、令和9年度以降に、77成分、約1,100品目からの対象範囲の拡大と特別の料金の告示による引上げの検討が示されています。本来は、制度施行後の患者への影響などの慎重かつ十分な検証を踏まえるべきところ、不当にも方針は既に確定しているように思われます。

 範囲拡大や料金引上げありきではなく、客観的なデータと、患者側の状況や意見を十分に踏まえた上で、縮小や引下げという選択肢も排除せずに検討すべきと考えますが、高市総理の見解を伺います。

5.令和版社会保障と税の一体改革の必要性について

 最後に、本法案には周産期医療提供体制の確保や出産に伴う経済的負担の軽減などの評価すべき施策が盛り込まれていますが、本法案における高額療養費やOTC類似薬の歪んだ制度改正が明らかにしていることがあります。それは、全ての議論の基盤となる社会保障制度全体の改革の必要性です。 高齢者人口が増加し生産年齢人口の減少が加速する2040年に向けて、国民皆保険制度をいかに改善し維持していくか、不足する医療・介護従事者等の確保、医薬品の安定供給や創薬支援、基礎年金の給付水準底上げの財源確保等々、先送りできない課題が山積しています。 こうした重要課題に対処し、憲法25条の趣旨に適う社会保障制度を将来にわたって持続可能なものにするため、給付と負担の見直しによる令和版社会保障と税の一体改革が、今こそ必要なのではないでしょうか。

 総理の社会保障国民会議においては、その名に反して社会保障の全体改革は対象外とされ、また、この度の高額療養費の見直しの母体となっている全世代型社会保障改革は、我が国の社会保障の国家戦略に値しないことは明白です。 高市総理に、今と将来の国民のために、令和版社会保障と税の一体改革の必要性の認識があるか、それに取り組む使命感と決意があるかを問うて私の質疑を終わります。

 ご静聴、ありがとうございました。


20260513健康保険法等の一部を改正する法律案 小西洋之議員.pdf