参院本会議で5月22日、政府提出の「防災庁設置法案、防災庁設置法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」に対し、立憲民主・無所属の会派を代表して小沢雅仁議員が質問しました。

 小沢雅仁議員の質問原稿は以下のとおりです。

令和8(2026)年5月22日

防災庁設置法案、防災庁設置法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

立憲民主・無所属 小沢雅仁

 立憲民主・無所属の小沢雅仁です。

 防災庁設置法案及び防災庁設置法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、会派を代表して質問します。

 まず冒頭、昨年の自民党総裁選や今年の衆議院総選挙で、高市総理の陣営が他候補や他の党を誹謗中傷する動画を作成し、交流サイトに投稿していたと週刊誌が報じた件であります。

 高市総理は、我が党の議員に重ねて問われ、「週刊誌を信じるか、秘書を信じるか。私は秘書を信じる」と述べました。SNS上の偽情報や誹謗中傷は投票行動を左右しかねず、選挙の公正性や結果の正当性を揺るがす民主主義の根幹に関わる極めて重要な問題です。(1)週刊誌で続報が報じられていますが、事の重要性を認識されているのなら、自ら徹底的に調べ、事実と異なるのであれば根拠を示し、週刊誌側を名誉棄損で訴えるなど然るべき措置を取るべきではないですか。総理いかがですか。

 しかも、動画の作成に関わったとされる松井氏が18日のネットの公開ニュース番組に出演し、高市総理の公設第一秘書である木下秘書とは「共通の知り合いを介して知り合った」、対面ではなくオンラインで会議をしたと証言しました。高市総理はこれまでも「私自身も秘書も面識のない方」と松井氏との関係を否定してきました。改めて総理にお聞きします。(2)木下秘書と松井氏とはオンライン上でのやりとりがあったのか、お答えください。(3)やりとりがあったのであれば、これら週刊誌報道の疑惑を総理自らが再度徹底的に調査して、国会と国民に説明する責務を果たすべきと考えますが、そのお考えがあるのか明確にお答えください。

 それでは、法案の質疑に入ります。

 わが国では、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、能登半島地震など、多くの自然災害に直面してきました。そして、気候変動により風水害が頻発化・激甚化していることに加え、今後、南海トラフ地震、首都直下地震、富士山噴火など、甚大な被害が想定される大規模災害の発生が懸念されています。 こうした中、石破内閣において発足した防災庁設置準備室で検討が進められ、今般、本法律案の提出に至ったと理解しています。 今まさにスタートラインに立つ防災庁が、実行力のある組織となれるよう、以下、質問いたします。

 (4)防災庁においては、定員を現行の内閣府防災の1.6倍に拡充するほか、統括官4名の体制とする予定ですが、これらの体制強化による具体的な効果について、確認の意味も込めて高市総理に伺います。

 そして、防災庁は「徹底した事前防災」と「発災時の対応から復旧・復興までの一貫した災害対応」の司令塔機能を担うとしています。

 災害対応においては、きめ細やかな被災者・被災地支援の総合調整を行うとともに、被災地の「ワンストップ窓口」として、継続的・包括的な被災地伴走支援体制の構築など、早期の復旧とより良い復興を推進するとしています。

 総理は昨年10月の就任時の記者会見において、復興庁が蓄積してきた経験やノウハウを最大限生かさないともったいないと考え、復興大臣と防災庁設置準備担当大臣を兼務させたと述べています。

 (5)防災庁の設置に向け、復興庁に関する検証は行われたのでしょうか。また復興庁の経験や教訓は本法律案にどのように生かされているのか、高市総理に伺います。

 続いて、防災庁に置かれる防災大臣について質問いたします。

 有識者による防災庁設置準備アドバイザー会議の報告書において、防災庁が司令塔機能を発揮し、府省庁間等の縦割りによる対策の抜け・漏れ・分断を排し、各府省庁等が個々の行政分野において実施している事前防災に係る施策を統一的かつ着実に推進するため、防災庁においては、内閣総理大臣を助ける専任の大臣を置き、勧告権等を付与するとしています。

 しかし、(6)国務大臣の数は、内閣法に規定があり、最大で18人以内とされています。

 現在、高市内閣において国務大臣は18人。単純に考えれば、防災大臣は他の国務大臣と兼務することが想定されます。もちろん大臣の数を増やせば良いというものではありませんが、これで本当に「専任の大臣」と言えるのでしょうか。高市総理の認識を伺います。

 防災大臣は尊重義務付きの勧告権を有するということですが、復興庁やデジタル庁において行使された例はなく、その実効性について、これまで数多くの議論が行われてきました。

 この尊重義務規定について、復興庁設置法の制定時には、勧告権を必要に応じ行使して、ほかの各省庁に対して強いリーダーシップを発揮してもらいたいとの趣旨で、衆議院修正によって追加された経緯があります。加えて、参議院の附帯決議では、「復興大臣の勧告権について各府省の尊重義務が明記されたことを踏まえ、復興大臣は、勧告権を背景とした強力な総合調整を行い、縦割りの弊害を打破し、迅速かつ円滑に復興を推進すること」とされていました。

 復興庁においても、勧告権による縦割りの打破が期待されましたが、行使されていない現状を踏まえると、防災庁においては、勧告権の実効性の確保と勧告権を行使する前段階で各府省庁への総合調整権限の十分な発揮を適切に行っていただきたいと考えます。

 防災庁では、各府省庁の施策の進捗状況について、適時フォローアップを行っていくとのことですが、進捗が思わしくない施策には、予算や人員が足りていないなど、何らかの原因があるのではないでしょうか。防災大臣には、こうしたフォローアップや調整の段階でリーダーシップを発揮し、各府省庁と共にボトルネックを分析し、施策を前に進めるために知恵を絞っていくことが求められます。

 赤澤前防災庁設置準備担当大臣も、新聞報道において、防災庁を成功させるポイントは何かという問いに対し、重要なのは大臣を誰に据えるかだと答えています。

 (7)これらを踏まえ、防災大臣に求められる役割について、高市総理はどのようにお考えか、伺います。

 国民の一人ひとりが災害を我が事として捉え、防災に関する行動変容を促すためには、防災教育も極めて重要であります。

 令和4年に閣議決定された「第3次学校安全の推進に関する計画」において、地域の災害リスクを踏まえた実践的な防災教育の充実が挙げられており、手引きの作成等も行われています。

 しかし、慢性的な教員不足や膨大な業務量が課題となっており、実践的な防災教育の実施は各学校や教員の関心・意欲に左右されています。

 このような中、国土交通省も防災教育ポータルサイトを開設するなど、各種の支援を行っています。防災庁がふるさと防災職員を活用しながら、こうした各省の取り組みをコーディネートし、学校現場につないでいくことは、教員の負担軽減にも資すると考えます。

 また、有識者会議において、幼保時代からの防災教育についてはポテンシャルが高いとされていましたが、文部科学省、厚生労働省、こども家庭庁など所管省庁の縦割りが課題となっているとの指摘がされており、防災庁の司令塔機能の発揮が期待されます。

 (8)これらを踏まえ、防災教育において防災庁が担う役割について、牧野防災庁設置準備担当大臣に伺います。

 次に、防災技術の研究開発・社会実装の推進について質問いたします。

 過去に幾度も大災害を経験した我が国の知見や優れた技術を生かして防災産業を発展させていくことは極めて重要です。こうした防災技術が社会全体に浸透するには、フェーズフリーの観点が非常に重要です。

 身近なもので例えますと、液体ミルクは熊本地震の際に海外から支援物資として届いたことをきっかけに国内で製品化されました。液体ミルクは普段の外出時の持ち運びにも便利で、ローリングストックがしやすく、いざというときにもスムーズに使用することができます。

 いくら優れた技術であっても、厳しい財政状況にある自治体では、防災のためだけに導入を決めるのはハードルが高いと思います。また、普段から使っている技術でなければ、災害発生後の混乱した状況下で速やかに活用することは困難です。

 しかし、フェーズフリーの技術は、様々な場面で活用できるがゆえに、縦割りの中でどこが予算をつけて推進するかが課題です。防災庁において積極的に推進するには、日本成長戦略の「危機管理投資」・「成長投資」の戦略分野にも「防災・国土強靱化」が挙げられていることから、この点もしっかり連携するべきと考えますが、(9)フェーズフリーの観点を重視した防災技術の研究開発・社会実装の推進に関する高市総理の見解を伺います。

 東日本大震災および原子力災害を経験した自治体職員へのヒアリングで共通して指摘されたのは、災害対応が法律や計画で想定された役割分担どおりには進まなかったという現実です。

 震災当時、県・市町村の職員は、法制度上の役割分担にこだわる余裕もなく、現場判断でチームを組み、避難所運営、物資確保、住宅確保、被災者対応など、多岐にわたる業務を担ってきました。特に市町村職員は、住民の顔や生活状況を知るがゆえに、避難所運営や被災者支援の最前線に立たざるを得ず、職員自身も被災者でありながら支援者でもあるという二重の負担を抱えてきました。

 また、国や県からの「指示」が、市町村の制度や実務を十分に理解しないまま出され、最終的に業務が末端の自治体や現場職員に集中する構造が浮き彫りになりました。これは、能登半島地震の被災自治体にもあてはまり、いまだなお継続している課題です。

 衆議院での審議を通じて、防災庁の必要性や、市町村の厳しい実情については一定の共有がされたと受け止めていますが、一方で、市町村の脆弱性を前提とした国・都道府県・市町村の役割分担、とりわけ県における人材育成や、県による市町村支援のあり方については十分に整理されていません。

 (10)市町村が判断や実施能力を失う局面を制度としてどう想定するのか、その際に県がどのような役割を果たし、国がどこまで関与できるのかは、防災庁の実効性を左右する重要な論点であると考えますが、高市総理の認識を伺います。

 (11)また、発災時の国・自治体間、民間事業者やNPOの役割分担と責任の整理をどのように考えているのかについて、防災庁設置準備担当大臣にお伺いします。

 平時の備えについても多くの課題があります。備蓄物資は市町村の財政力に左右されており、数量確保や更新、保管、輸送訓練に予算を割けない実情があります。広域災害においては、各自治体が計画どおり備蓄してもなお不足が生じ、県や国による調整や支援が不可欠であることが明確になっています。

 人材面でも、防災担当職員は兼務が常態化し、異動により知見が蓄積されにくい構造があります。防災の専門性を高めようとすれば、他部署が手薄になるというジレンマも抱えています。多くの自治体で、「平時に専任を置く余裕がないが、有事には明らかに人が足りない」という矛盾が存在しています。

 (12)これらの現状を踏まえ、平時からの人材、訓練、計画、備蓄の実効性をどのように担保されるのか、防災庁設置準備担当大臣に伺います。

 アドバイザー会議報告書が強調するように、防災庁の設置は「出発点」であり、設置後も、定期的な政策の見直しや制度改革を重ね、実効性を高めることが必要です。防災庁の役割分担や運用を、防災庁の設置時点の整理だけで完結させることは困難であり、むしろ、防災庁発足後も現場の実態に即して検証・見直しを重ねる仕組みを法的に担保することが不可欠であると考えます。

 (13)政府として、防災庁発足後に、市町村の脆弱性を踏まえ、現在の国・都道府県・市町村の役割分担のあり方について、検証や見直しを進めるための具体的な考えはあるのか、高市総理に伺います。

 最後に、わが国が直面している、東京一極集中、急速な少子高齢化・人口減少、これらに伴う地域コミュニティの弱体化、地方における医療・看護、福祉・保健、交通・流通等の社会基盤サービスの縮小、インフラ・ライフラインの老朽化、地方公共団体の人員不足など、こうした平時から社会に内在する脆弱性が、災害発生時に尊い人命が失われる事態につながります。徹底した事前防災とは、わが国全体の急所を捉え、各省の垣根を越えて解決への道筋をつけていくことだと考えます。

 (14)国民の皆様が安心して暮らすことのできる、人命・人権最優先の防災立国の実現に向け、わが国が抱える課題に本気で向き合うという高市総理の覚悟を伺いまして、質問を終わります。 御静聴ありがとうございました。

以上

【参院本会議】防災庁設置法案に対する質問原稿 小沢雅仁議員(2026年5月22日).pdf