参院本会議において5月27日、「経済安全保障推進法及びJBIC法改正案」について質疑が行われ、立憲民主党の杉尾秀哉議員が質問しました。予定原稿は以下の通りです。
経済安保推進法改正案 本会議質問
2026年5月27日
立憲民主・無所属
杉尾秀哉
立憲民主・無所属の杉尾秀哉です。
会派を代表して、ただいま議題となりました、経済安全保障推進法及びJBIC法改正案について質問します。
令和4年(2022年)に経済安保推進法が成立して4年が経過しました。
当時は、未だ収束しない新型コロナ禍に、始まったばかりのウクライナ戦争と、日本はまさに「内憂外患」の状況にあり、私は経済安保法制定時の本会議代表質問で、当時の岸田総理と小林担当大臣に対して、物流の課題など政府の取り組みを質すと共に、過度な規制がもたらす企業や国民への「委縮効果」について懸念を表明しました。
あれから4年。
今度は日中関係の悪化や、イラン情勢を始めとする中東情勢の緊迫化により、レアアースの供給途絶リスクのほか、原油や石油化学製品の調達不安に見舞われています。第三次オイルショックの到来を予想する向きもあり、法制定時よりもさらに日本を巡る状況は厳しさを増していると言ってもいいでしょう。
そこでまず、小野田経済安保担当大臣に、4年前と比較した経済安全保障環境についての日本政府の認識と、今回の法改正の目的を伺います。
それでは、本論に入ります。
最初はイラン情勢と経済安全保障推進法に基づく取り組みの成果について。
経済安保推進法では、国民の生存に必要不可欠であるか、または広く国民生活・経済活動が依拠している重要な物資を『特定重要物資』として指定し、民間事業者を支援することを通じて、サプライチェーンの強靱化を図る制度を設けています。
今般のイラン情勢を受けて、国内では、国民の命に直結する医療関連物資のほか、建築用資材、塗装用シンナーや印刷用インクなど、石油由来の様々な物資の供給が滞り、製造業や建設業、それに食品産業や医療現場、農業などなど、深刻な影響は各方面に広がる一方です。
こうした深刻な状況になっても政府は、「原油やナフサを含む石油製品については、日本全体として必要となる量を確保できている」として、原因は「供給の偏り」や「流通の目詰まりにある」という説明を繰り返すばかり。
これでは、政府と現場の認識の乖離が埋まるはずもなく、世論調査でも中東情勢の不安定化による生活への影響を「心配」と回答した人は実に85%に上り、また「ナフサの供給に問題はない」という政府の説明に「納得できない」と回答した人も64%と、「納得できる」の25%を大きく上回っています。
こうした不測の事態に備え、経済安保推進法に基づきサプライチェーン強靱化のための制度を実施したことで、イラン情勢を受けたサプライチェーンの混乱にどのような効果があったのか、それともなかったのか。小野田大臣、具体的にご答弁下さい。
原油の特定重要物資への指定について、3年前、当時経済安保担当大臣だった高市総理は「他の制度により措置が講じられている場合、本制度で措置する必要性は小さい」「(原油の場合)石油備蓄確保法で措置できるので対象にしていない」などと答弁していました。
また、ナフサについても政府は「民間による中間段階の化学製品の在庫備蓄があることに加え、供給源を多様化する余地があることから、特定重要物資には指定をしてこなかった」と説明しています。
ところが、原油の中東依存度は、第2次石油危機を経て一時は7割を切っていたものが、再び上昇し、一昨年度には過去最高の95.9%にまで達しています。これでは、原油や原油由来の製品のサプライチェーンの多様化を進める取組が不十分であったと言わざるを得ません。
かかる現状を踏まえれば、特定重要物資の指定の在り方について見直しを行うほか、調達の多角化についても、何らかのインセンティブを付与するなどの検討を行うべきと考えますが、小野田大臣及び赤澤経済産業大臣の答弁を求めます。
さらに経済安保をめぐっては、情報システムの脆弱性を見つけ出す能力が飛躍的に向上しているとされる最新型AIモデル、「クロード・ミュトス」が開発されたことを契機として、高性能なAIの悪用による基幹インフラへのサイバー攻撃への懸念が、ここに来て急速に高まっています。
当初、政府が提出した法律案では、施行後3年をメドとして改正規定の施行状況などを踏まえ検討を行うことが規定されていましたが、イラン情勢やクロード・ミュトスへの対応など目下の課題に対して直ちに検討を行うため、衆院段階で中道改革連合の議員が中心となり、政府が国家や国民の安全を損なう事態を防ぐための必要な措置を、速やかに検討する法案修正が行われました。
この修正の趣旨を踏まえ、政府は直ちに経済安保に関する有識者会議の議論をスタートさせ、対策に当たるべきと考えますが、検討の必要性について小野田大臣の答弁を求めます。
次に、基幹インフラ役務の安定的な供給に関する制度について伺います。
本法律案では、基幹インフラ制度の対象となる事業分野に、医療を追加することとしています。以前から懸案になっていた分野です。
こうした制度の対象事業をめぐっては、前回の法改正で「港湾運送」が追加された際、行政機関も対象にすべきではないかという議論がありましたが、当時、担当大臣だった高市総理は、「政府におけるシステムの調達は、サイバーセキュリティ対策のための統一基準を策定し、この中で必要な対策を政府機関に求めるので、対象にする段階ではない」と否定的でした。
ところが、昨年9月の会計検査院の報告で、中央省庁や出先機関が運用する重要な情報システムのうち16.3%は、統一基準群に準拠したソフトウェアに関する脆弱性対策が講じられていなかったことが明らかとなりました。
基幹インフラ制度は民間事業者に対して負担を強いる制度であるにもかかわらず、政府自らルールを守らないなど言語道断です。改めて、行政機関を基幹インフラ制度の対象事業にしなくても行政サービスを維持できるのか、小野田大臣お答えください。
先端的な重要技術の開発支援に関する制度についても伺います。
経済安保推進法の指定基金と協議会の枠組みを活用して「K Program」というのが実施されていて、これまでに40の協議会が組織され、研究開発が進められてきました。
しかしながら、このうち、ドローンや空飛ぶクルマが活躍するエアモビリティ社会の実現を目指す「小型無人機の飛行経路の風況観測技術」 の研究開発は、去年3月の中間評価において中止が決定されています。
当該事業では約11億円の予算が確保されていましたが、研究が中止に至った経緯と、これまでに支出された予算額について小野田大臣の説明を求めます。
この特定重要技術の研究開発等の促進を図るために指定される基金について、本法案では、設置主体及び使途の対象を拡大する改正が盛り込まれています。
これについて、衆議院での質疑で、対象とできる基金を広げすぎではないかという懸念が示され、小野田大臣は「指定しようとする基金が特定重要技術の研究開発を行うことが確かに予定されているかなどをしっかり精査し、無限定に指定することは想定していない」と答弁しました。
しかし、そもそも対象として指定したい基金があるのであれば、その都度法案を提出して、国会に必要性を諮るのが筋ではないでしょうか。
令和4年の制定時の議論でも、政府に委任する規定があまりに多いことが問題視されましたが、なぜ個別の基金を条文の中で規定するのではなく、対象を広げる規定とする必要があるのか、小野田大臣、ご答弁下さい。
ところで、今回の法改正では、特定海外事業の促進に関する制度が創設されることになりました。
経済安保上、重要な海外事業を支援するため、国際協力銀行(JBIC)が劣後出資等を供与できる規定が設けられていますが、これによりリスクテイクが可能となる一方で、損失の発生も心配されます。
これについて衆議院での質疑で政府は、どの程度のリスクまでが許容されるのかについて明確に示さず、JBIC法の条文の規定に沿ったあいまいな答弁にとどめました。
新たな業務の資本金は、今後一般会計予算から支出することが検討されているようですが、一体どれほどの予算を確保しようと考えているのか、想定される支援対象事業の規模の見通しを含め片山財務大臣、お答えください。
また、この資本金等の中には、JBICに極めて有利な条件で貸し付けられる劣後的政府貸付けも含まれますが、どのような基準で貸付けを行うことになるのかについても片山大臣の答弁を求めます。
JBICによる海外事業の促進業務において損失が発生した場合の対応について、小野田大臣は「企業の個別情報等への配慮の必要性や国民への説明責任の在り方とのバランスを考慮しながら、どのような公表のやり方が適切であるかを検討していく」と答弁しました。
経済安保は、高市内閣の看板政策である危機管理投資・成長投資とも密接に関連する分野でもあり、支援実施の判断が恣意的に行われ、モラルハザードを引き起こす懸念が拭えません。
制度の実施状況を適切に検証することができるよう、少なくとも国会に対しては具体的な情報開示を行う必要があると考えますが、小野田大臣、賛同していただけないでしょうか。
さらに、本法案では総合的な経済安全保障シンクタンク機能が創設されることになります。
これまで政府は、この新設のシンクタンクとは別に、「重要技術戦略研究所」の設立に向けた準備を進めてきました。この研究所は、経済安全保障推進法に基づく特定重要技術の調査研究を担うシンクタンクとして期待されていたはずで、令和4年の法案審議でも、小林経済安保担当大臣はその旨答弁していたものです。
それがなぜ、新たなシンクタンク設立なのか。
政府の有識者会議の委員からも、「重要技術戦略研究所となぜ一本化できなかったのかと言われると忸怩たるものがある」、とか「経済安保の焼け太りと言われかねない」などと厳しい意見が投げかけられており、議事要旨にもはっきりと残されています。
こうした専門家の厳しい指摘にもかかわらず、政府は重要技術戦略研究所と総合的な経済安全保障シンクタンクが併存する形となる法案を提出した訳で、今回なぜ特定重要技術の調査研究を行うシンクタンクの規定を削除し、重要技術戦略研究所とは別に新たなシンクタンクを設ける必要があったのか。
また、有為な人材の奪い合いや分散となり、かえってマイナスにはならないのか、など疑問は尽きません。
こうした背景に省庁間の権益拡大や、権限争いがあれば言語道断ですが、小野田大臣に納得の行く説明を求めます。
最後に官民協議会の設置についてお尋ねします。
本法律案では、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止するため、情報共有や対策の協議を行う官民協議会を設置することとしています。
一方で、昨年成立したサイバー対処能力強化法でも、官民連携の強化を図るため、情報共有・対策のための協議会を設置することとされていて、本法律案に基づく官民協議会で扱う内容と重複する部分があると考えられます。
いずれの官民協議会も構成員に対して情報提供を求める規定があり、特に基幹インフラ事業者は、関連したテーマを扱う複数の協議会に参加を求められ、過度に負担が増すことにもつながりかねません。
小野田大臣は、これらの懸念払しょくのため、どのような取り組みを行う方針でしょうか。
我が国を取り巻く経済安保環境が厳しさを増す中で、政府の取り組みが「的外れ」で、しかも行政組織の「焼け太り」と言われるようなものであっては断じてなりません。
我々は経済安保法制が真に実効性があり、また国民の幸福と生活の安定、将来への不安払しょくにつながるものとなるよう、法案の慎重審議を進めると共に、今後もしっかり監視を続けていく事をお約束して質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。