立憲民主党・中道改革連合・公明党の合同法務部会は5月26日、国会内で会議を開催。1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)であった一家4人強盗殺人事件で再審無罪が確定した袴田巌さんの姉のひで子さん、袴田事件弁護団事務局長・小川秀世弁護士らを招き、同日衆院で審議入りした、刑事訴訟法の一部を改正する法律案(再審法改正案)の課題などについて話を聞きました。

 会議は、袴田巌さんの近況も含めたこれまでの戦いの歩みをまとめた動画の上映から始まり、続いて袴田ひで子さんがあいさつしました。

袴田ひで子さんあいさつ(本人の発言のまま)

 袴田ひで子でございます。
 私の弟は、殺人犯、死刑囚として47年7か月、拘置所に収監されておりました。冤罪を訴えて、弁護士さんや支援者と共に見えない権力と58年戦って、真実を求めてまいりました。

 2024年10月9日に再審無罪が確定して、無罪になりました。なぜこんなに長くかかるのでしょう。再審の扉というのは、「開かずの扉」と申しまして、それと再審法に不備があるということでございます。
 巌はちょっと精神を病んでおりまして、ちょっと、とんちんかんではございますが、今では大変幸せだと思っております。巌の獄中生活というですね、長年の拘置所生活で精神を病んでおり、死刑制度があるので、いつ処刑される(か)と思って生活を強いられておりました。それでとうとう精神に異常をきたしております。

 釈放されて12年になりますが、いまだ拘禁症(拘禁反応)は治っておりません。やっぱり長年の苦労というものがそうさせるのだと思います。
 私が巌の死刑が確定した時に面会に行きまして、半年ぐらいでしたかね、その時に面会に行きましたら、どたどたとこう出てきましてね、「昨日処刑になった。隣の部屋の人だった。『お元気で』って言ってった。みんながっかりしてる」って、一気に言いましたの。私は何がなんだか分からないで、ただふーんって言ったきりで、誰がとも、どうしてとも、聞くことができませんでした。それからは「電気出すやつがいる」とか、「痒みの電波を出すやつがいる」とか、そういうことを訴えるようになりました。
 やっぱり長年拘禁されておりますと、電気出すやつなんかいないのに「電気出すやつがいる」とか、「看守が(電気を)出す」とかね、そういうこと言うんですよ。だけど私はそんな馬鹿なこと言うんじゃないとは言えないから、「ああそう、電気風呂があるから大丈夫だよ」って言っていましたが、巌はきょとんとしておりました。
 その頃の巌は、自分自身で妄想の世界を作っておりましてね。その妄想の世界で生活をしておりました。強いられていたということでございます。

 釈放されて12年目ですが、全然治っていない(と言うと)ちょっとおかしいですが、多少は良くなりましたが、今でもとんちんかんな話ばっかりいたします。今はちょっと足がよくなりまして、出かけるには車椅子で出かけております。見守りたいという人たちのお力をお借りして、介護ですね、そのお力をお借りしまして、午後1時頃から4時頃までドライブに行っているんです。
 拘置所から出てきた時にはね、やっぱりね、ちょっと、ちょっと足を引きずっていたんですね。うちの中に閉じこもったきりで2か月間どこも出なかったんですよ。それで私ね、これじゃしょうがないと思いましてね、「私買い物があるから、重い物があるから、ちょっと手伝ってよ」って言って買い物に連れ出しました。それで外に出るようになりました。それでその頃は私と巌と2人で街を歩いておりました。街を歩くと言っても真っ直ぐに歩けないんです。ちょっとこう、はすかいになるんですね。それですから掴まってね、私に掴まってね、こう真っ直ぐに歩くようにしてたんです。
 それもだんだんと良くなりまして、自分では「今度は1人で行く」と言うんですね。ああ、じゃあ1人で行ってきなって言って、それからしばらくしたら、「ランニングをする」って言って、ランニングをし始め出したの。それは5年間ぐらいでしたかね。だからやっぱりね、5年ぐらい前からちょっと足が弱くなりましてね。それで車椅子という、今現状はそういうことでございます。

 巌を元の体に戻してくれとは申しません。巌の身に起きたことが、この世界から、冤罪をなくすことにつながるように、切に願っております。
 巌だけが助かればいいと思っていません。冤罪で苦しんでいる方は大勢いらっしゃいます。その方も、お助けしなくてはいけないと思っております、私は。

 再審法の改正を、国会議員の皆さま、どうぞ、お力をお貸しください。期待しております。よろしくお願い申し上げます。
 ありがとうございました。

 小川弁護士は、再審法改正の論点として、(1)抗告(検察官の不服申し立て)の全面禁止(「原則禁止」ではなく)(2)証拠の全面的な開示(3)目的外使用禁止の削除――を列挙。「今回の政府案は、検察官主導でやったもの。実際に検察官がいろいろな問題を起こしたのに『検察官は、嘘はつくことはない、間違ったことは絶対にしない』ことを前提とした改正案は根本的におかしい」と指摘しました。

 出席議員からは、証拠開示のあり方や目的外使用禁止規定、証拠保全などについて質問が相次ぎました。

 無理して今国会で成立させずに、継続審議にして十分納得できる内容にした方がいいという意見があることについての所感を問われた小川弁護士は「私は、とりあえず今回はなしでもいいかなと思っています」と述べ、慎重な姿勢を示しました。袴田ひで子さんも「58年戦って、長く戦うことには慣れているので、急いで変なものを作られるよりはよっぽどいい」と語り、十分な見直しの必要性を強調しました。小川弁護士はまた「冤罪の原因というのは捜査が問題」「支援者の力はすごく大きい。一緒になってやるのがわれわれのスタンスで、証拠開示が非常に重要」と述べ、全面的な証拠開示こそが冤罪防止につながると訴えました。

 最後に、中道改革連合の西村智奈美衆院議員は、今回の再審法改正について「冤罪をなくし、再審無罪を一日も早く勝ち取れる制度にすることを主眼に検討してきた」と強調。同日の衆院本会議で審議入りした超党派議連の法案について、「100点満点ではないが、与党も含め現時点で合意できる内容だ」と説明しました。今後に向けては、証拠開示の徹底や再審請求審での抗告禁止などの実現を掲げ、「国会の矜持を示す時だ。一緒に頑張りましょう」と呼びかけました。

 立憲民主党は、抗告の全面禁止および証拠の幅広い開示を実現できるよう審議に臨みます。