参院本会議が5月29日に開かれ、政府提出の「健康保険法等の一部を改正する法律案」に対する採決が行われ、郡山りょう議員が反対の立場で討論を行いました。なお、本改正案は、与党などの賛成多数で可決・成立しました。

 郡山議員の予定原稿は以下のとおりです。

令和8(2026)年5月29日

「健康保険法等の一部を改正する法律案」討論

立憲民主・無所属郡山りょう

 立憲民主・無所属郡山りょうです。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。

 まず、本法律案は、OTC類似薬についての一部保険外療養の創設、後期高齢者医療制度における金融所得の勘案、出産費用の無償化や妊婦健診に関する見直し、国民健康保険の子育て世帯の保険料軽減の拡充、国保の各種制度見直し、高額療養費制度に係る考慮事項の明確化、医療機関の業務効率化や勤務環境改善、協会けんぽの国庫補助に係る時限措置など、それぞれ性格の異なる様々な項目をまとめて改正するものとなっています。

 改正項目についてはそれぞれ深い議論が必要であり、各項目に対して賛否が分かれる可能性のある内容のものを、全て一括りにして一つの改正案にまとめる必要があったのか、大きく疑問に感じます。施行時期が七段階に分かれていることからも、独立審議が可能な事項に分けて法案を提出することも可能だったと考えられます。

 政府は、今回の改正項目は全て、持続可能な医療保険制度の実現を目的とする点で共通するものだと説明しますが、ここまで性格の異なる内容の改正項目を、安易に一括りにすることは、結果的に賛否を封じることに繋がりかねず、丁寧で充実した審議を行う妨げとなってしまったのではないでしょうか。

 その上で、本法律案の内容において、特に問題があると考える点が二点あります。

 一つ目は、高額療養費制度に関する改正内容です。

 本法律案では、高額療養費の支給要件、支給額等を定める際に、特に長期療養者の家計に与える影響を考慮するよう、法律上明確化することとしています。長期療養者への配慮は当然ながら重要でありますが、それだけでは不十分です。

 高額療養費制度については、既に現行制度の下においても、経済的な負担から必要な治療を断念せざるを得ない方や、治療により生活の困窮に陥る方がいることが指摘されているところです。にもかかわらず、政府は、高額療養費制度の令和8年8月と令和9年8月における二段階の見直しを断行しようとしており、自己負担限度額の引上げ等により負担が増加する方が生じることが見込まれています。

 そもそも、高額療養費制度の見直しに関しては、昨年の見直し凍結を経て、当事者の方の声をしっかりと聴いて改めて検討するよう、社会保障審議会の下に専門委員会を設け、患者団体も参画した議論が行われてきました。ですが、専門委員会において、最終的な自己負担限度額の引上げ額などが示されたのは、予算の閣議決定前日であり、報告事項のような形でした。こうした検討プロセス自体に、大きな問題があったと言わざるを得ません。

 高額療養費制度は、憲法第25条が保障する生存権の趣旨を踏まえ、国民皆保険制度において、国民の生命及び生活を守る上で欠くことのできない中核的な役割を果たすものであるはずです。しかし、今回の高額療養費制度の見直し内容では、WHOの定義する破滅的医療支出の状態となる方が生じる可能性が指摘されています。受診抑制が増加するおそれも指摘されており、患者の方々からの不安の声が続いています。このような状況で、今回の見直し内容は高額療養費制度が果たすべき役割を十分に踏まえたものとなっていると言えるのでしょうか。

 また、高額療養費制度については、保険者が変更となった場合に多数回該当のカウントが引き継がれずリセットされてしまうことや、合算制度において70歳未満は21,000円以上でなければ合算ができないこと、新設される年間上限の仕組みにおいて当面は償還払いとなることといった、様々な課題も残されたままとなっています。

 政府は、令和8年8月と令和9年8月の段階的な見直しはパッケージで行うものと説明していますが、患者の方々の不安の声、研究者の方による指摘も踏まえ、少なくとも令和8年8月の見直し後に十分な検証、議論を行わなくてはならないと考えます。パッケージで行うことに固執することなく、今一度立ち止まり、本法律案の審議過程でも明確となった様々な課題に改めて真摯に向き合い、高額療養費制度について検討し直す必要があるのではないでしょうか。

 こうした課題への対応について、検討の方向性を法律案に明記することで、将来にわたって高額療養費制度のあるべき姿を保障する必要があると考えます。

 二つ目は、OTC類似薬の保険給付の見直しについてです。本法律案は、一部保険外療養を創設し、OTC医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養等について、その費用のうち一部を保険給付の対象外とすることとしています。しかし、本法律案では、この代替性を判断するための観点が不明確であり、一部保険外療養の対象となる薬剤の範囲がなし崩し的に広げられるのではないかという懸念があります。また、一部保険外療養の創設に伴い、必要かつ適切な受診の抑制が生じることがあってはなりません。さらに、本法律案の審議過程では、一部保険外療養の対象範囲について、薬剤費だけでなく、薬剤費以外の診療行為等の部分まで含まれてしまうのではないかとの指摘もありました。

 本法律案の審議においては、医療保険制度の持続可能性を高める観点から、所得把握の充実と応能負担の原則の徹底も重要な論点として議論されました。後期高齢者医療制度における金融所得の勘案は、その一歩ではありますが、株式等の配当や自営業者等の所得をより正確に把握し、負担能力に応じた公平な保険料賦課を実現することが不可欠です。さらに、現役世代と高齢者世代との間での費用負担の在り方、すなわち世代間負担の問題についても、医療保険制度単体ではなく、年金・介護を含む社会保障制度全体の枠組みの中で、応能負担を基軸に据えた議論を深める必要があります。

 こうした問題点を踏まえ、私たち立憲民主・無所属は公明党とともに、委員会において本法律案に対する修正案を提出しました。修正案の主な内容は、高額療養費の支給要件、支給額等を定めるに当たっての考慮事項として、療養を受ける中低所得者の家計に与える影響、療養を受ける者の必要かつ適切な受診に与える影響を追加すること、療養に必要な費用の負担が家計の負担能力に応じたものとなるように配慮する旨の規定を追加すること、高額療養費等の制度の抜本的な改革についての検討を加えること、一部保険外療養に係る薬剤についての代替性を判断するに当たっての観点を追加すること等であり、患者の方々や国民の皆様の不安を払拭し、より良い制度とするためのものでしたが残念ながら、賛成少数で否決となりました。

 また、本法律案の審議過程では、いわゆる攻めの予防医療をいかに担保するかという観点も重要な論点として提起されました。国民が積極的に健康増進に取り組める環境の整備こそが、医療費の増大を抑制する上で有効な手段であり、この視点を制度設計に盛り込むことが求められます。しかしながら、予防医療の充実を図るためには、国民が健康を維持できる働き方の実現が前提となります。長時間労働の蔓延や、裁量労働制の拡大に伴う労働者の健康への懸念など、労働環境の問題は、医療保険制度と切り離せない課題です。社会保障制度全体として、健康を守る働き方の確保と一体的に取り組む総合的なアプローチが不可欠です。

 国民皆保険制度は、国民の皆様の健康や安心した暮らしを支える、非常に重要で大切な制度です。この制度を次世代に引き継いでいかなくてはならないとの考えは、与野党ともに共通した認識のはずです。ですが、そのための手段として、高額療養費制度という国民皆保険制度の中核的な制度において、当事者の声を十分反映せずに患者の方の自己負担を増やすことは、大きく間違っていると言わざるを得ません。このような手段ではなく、医療保険制度、そして社会保障制度全体の枠組みや在り方について、与野党を超えて、議論を深めなくてはならないときに来ています。その際には、所得把握の強化と応能負担の原則の徹底、現役世代と高齢者世代との公平な世代間負担の配分、そして長時間労働の是正や裁量労働制への適切な対応を含む労働環境の改善や歯科検診の充実をはじめとした攻めの予防医療の推進などを一体として取り組まなければなりません。

 私たち立憲民主・無所属は、今後も、国民の皆様の命と暮らしを守り抜くため、皆様の声を反映した政策を全力で実現していくことをお誓い申し上げ、私の討論といたします。

 御清聴ありがとうございました。

健保法等改正案_本会議討論 .pdf