参院本会議において6月3日、「政府財政演説」に対して質疑が行われ、立憲民主党の高木真理議員が質問しました。予定原稿は以下の通りです。
政府財政演説に対する質疑【全文】
立憲民主・無所属 高木真理
立憲民主・無所属の高木真理です。ただいま議題となりました令和8年度補正予算に係る財政演説に対し、会派を代表して質問いたします。
今回の補正予算の提案につながる軍事衝突がイランとイスラエル・アメリカの間に起きたのは2月末のことでした。事態の鎮静化への働きかけが各方面からなされる中、攻撃の応酬はやまず、ホルムズ海峡のタンカーは留め置きとなり、原油等の供給不安から、瞬く間に経済への影響が出始めました。
例年より遅い日程で進んでいた参議院の当初予算の審議でも、この影響にどう対応するかとの問いが続き、立憲、公明は共同で修正案も提出しました。時間が経つにつれ、政府による代替調達、目詰まり解消の努力はなされたものの、値上げを余儀なくされる製品の数は増え、ナフサ由来等で欠品する棚の面積は広がるなど、事態は深刻になっています。
モノは足りているのだと目詰まりを強調されても、実際に手元にモノはない。これでは、政府の対応への不信感と、先行きへの不安が広がるばかりです。もっと早くに補正予算を編成して、国民の安心を確保すべきだったと思いますが、補正予算の編成が、今般の事態が起きてから3カ月も経つこの時期になったのはなぜか。高市総理、お答えください。
中東情勢の行方は、なかなか先が見通せません。いつまで続くかで経済への影響度は変わってきますが、総理は、今回の中東情勢が日本経済に及ぼす影響の規模をどう捉えていますか。第3次オイルショックの到来を懸念する声も聞こえてきますが、併せてご認識を伺います。
私たち立憲・公明・中道の3党は、高市総理が「大丈夫」「問題ない」を繰り返すばかりで現状を直視できているのか心配になる中、いち早く現場の実情を把握すべく、アンケートを実施し、1万2千件を超える個人・法人から回答を得ました。悲痛で切羽詰まった声がたくさん届きました。
そして、それらの声を集めて3党合同の集会を開き、関係省庁に事態を伝達すると同時に、何が今必要なのかを抽出し、「緊急経済対策」を政府に提言しました。この提言では、具体的に打つべき施策をリスト化して示しています。
一方、政府の今回の補正予算3.1兆円は、使用済みの予備費の埋め戻しの一般予備費0.5兆円と、中東情勢等対応予備費2.5兆円、加えて重点支援地方交付金0.1兆円となっています。要は、中東情勢に対応するためという枠ははめているものの、3兆円ものお金を予備費として、政府に自由に使わせてほしいという中身です。
憲法83条は財政民主主義を定めています。「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」予備費はこの例外として設けられたものであり、当然その使用は抑制的であるべきです。もちろん、これから起きる不測の事態もあるでしょうから、そこに予備費を使うことは否定しません。しかし、3兆円という巨額の予算をまるまる予備費とするのは、財政民主主義に反すると思いますが、総理のご見解を伺います。また、現時点で使用を想定している事業名と金額規模があれば、併せてお答えください。
次に、ガソリン等の価格引き下げについて伺います。今回の補正予算において、電気・ガス料金の引き下げ策を盛り込まれたことは、これから猛暑を控えるこの国において、適切な判断であると評価します。重点支援地方交付金で特別高圧電力やLPガスの利用者支援等に、支援を広げたことも歓迎します。
一方で、これまで続けてきたガソリン価格を170円程度とするために講じられてきた政策については、今後はどのような方針をお考えか、総理お答えください。
ガソリン価格を一定水準に保つための補助金をこのまま維持し続ける場合、財政負担に歯止めが掛からなくなる想定があること、元売り各社への支援方式について、会計検査院が指摘していることなど、問題がある一方で、物流関係者や車なしでは生活が成り立たない地域の方々などへの影響が大きく、難しい問題です。国民の非常に強い関心があるかと思いますので、総理、わかりやすくお答えください。
4年少し前から進行の見られる物価高ですが、今、中東情勢を受けて新たな局面に入っています。個人も企業も、この急速な物価上昇に対応するのは容易なことではありません。
そうした中で、一番打撃を受けるのは、低所得者であり、育ちのために削ってはいけない食材費や学習関連費がかかる子育て世帯です。食料品の値上がりが物価高の中でも群を抜いており、命を脅かす事態になっています。低所得者、子育て世帯のための給付金を支給すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
次に、政府が繰り返し説明している「目詰まり」対策について伺います。政府は、川上の供給量は日本全体として確保できており、市中でモノが足りないのは流通段階の目詰まりが原因であると説明しています。しかし、現実には供給不足感や品薄感はなお続いています。
私は建築関係者専用の大型店に足を運んでみましたが、接着剤、塗料、断熱材、塩ビ管など、実際に棚がガラガラになっていました。発注して問屋さんから買っている大工さんからも話を聞きましたが、モノは入ってこなくはないが、いつ来るかわからない、仕事の依頼は来ても、仕上げられる時期の見込みが立たないので、注文を受けられないとのことでした。
石油由来の製品は様々に形を変えているので、命にかかわる医療用の資材も含め、実に広範な分野に影響が及んでいます。実例を挙げていけば、本当にそれだけで質問時間がなくなるほどです。
そして、流通過程は極めて広範かつ複雑です。政府が相談窓口に寄せられた情報を1件1件解消を図っても、ごく一部しか解消されず、全体の解消にはならないのではないでしょうか。
モノがないのに、あるあると政府に言われると、国民は政府の言葉を信じなくなります。結果、先行きに不安を感じる。少しでもあるモノを多めに買ってしまう。悪循環です。
そこで、「目詰まり解消」一本足打法をやめて、供給不安心理そのものへの対策が必要なのではないかと思いますが、総理の認識を伺います。
原油について、代替調達を進めた結果、先日の総理会見では3月末を越えてもつと言える状態になったとのことで、努力を評価したいと思います。しかし、今までの通常時に中東から輸入していたのと同量が確保されているわけではありません。
ナフサについては、昨日の中東情勢の関係閣僚会議についての報道によれば、代替調達を含め、従来の85%の量が確保されており、川中の製品在庫の活用と川中の製品調達を含めれば、不足はないというのが政府の説明ですが、やはり通常時の85%の分量しか原料が入ってきていないというのが事実であって、それが不安を呼んでいます。
川中のものを計算に入れる説明とせず、早めの段階で、不安心理払しょくのため、一時的にしっかり全体量を通常時と同じように確保する策をとることはできないのか、総理に伺います。
なお、報道によれば、昨日の会議では、特に在庫が比較的少ない、塗料・シンナー用の原料(トルエン・キシレン)につき、石油化学メーカーに加えて石油元売りから、これまでを大幅に超える量をメーカーなどへ新たに直接供給すると説明されたそうです。今日行われる質問の通告をご覧になって、何か対応をということでご発言されたのではないかとも思いますが、塗料・シンナー以外にも影響は出ているので、一時的な通常時と同量の確保につき、お答え下さい。医療基盤物資を含むナフサ由来の基礎化学品は、安定供給がないと命にかかわる一大事です。目詰まりがあってはなりません。しかし、現在の混乱状況の中では、自然な経済活動にゆだねていたのでは、いつ流れが細くなったり止まってしまったりするかわかりません。優先供給のルートや仕組みを作る必要があると思いますが、総理の見解を伺います。
次に、節約について伺います。
総理は、「踏み込んだ節約」は要請せず、例年通りの節約を呼びかける旨を表明されています。そうした中、「足りている」という政府の説明に反して、モノがない現状を目の当たりにすると、どうしても国民は不安になります。そこで私は、国民が安心できる形の「節約」はどうだろうかと思います。先ほど不安回避のためには、代替調達を通常時と同量とできないかと伺いましたが、それが難しい場合に有効です。無理のない具体的な量の「節約」の呼びかけをし、その量さえ節約すれば、全体の計画が十分に足りることを緻密な計画に基づいて発表します。これには、命に係わる物資などへの優先供給も組み込まれることになります。政府が現実を的確につかみ、有効な対応策があることを示せば、国民の不安心理を払しょくできるのではと考えますが、総理いかがでしょうか。
次に、事業者支援について伺います。
コロナ禍の際のような人流が止まるというような事態ではないものの、経済活動には深刻な影響が出ています。モノがないから注文はあるのに仕事ができない。原材料が急騰しているが、思うように価格転嫁ができない。現下の人手不足状況もあるので、まさに企業は何重苦にもあえいでいます。
政府は日本政策金融公庫等、政府系の金融機関が実施するセーフティネット貸付の要件緩和を行っているとのことで、この点は評価したいと思いますが、加えて、雇用調整助成金の予算枠を増やし、要件緩和や助成率の引き上げなど、支援を拡充すべきと考えますが、いかがお考えか、総理に伺います。
物価の上昇スピードが速いと、価格転嫁ができない事業では、死活問題が生じてきます。公定価格でサービスを行っている、医療・介護・障がい福祉などの分野です。
昨年の補正予算において医療等の分野への緊急支援が行われ、診療報酬のプラス改定、介護報酬の臨時改定など、一定の目配りは評価しますが、今回の緊急事態はこれらの措置の後に発生しています。更なる支援策がなぜ、今回の補正予算に盛り込まれなかったのか、総理お答えください。
続いて、未来に向けてピンチをチャンスに変える方策について伺います。
過去のオイルショックでは、今回のような石油備蓄がなかった日本は大変苦しみました。しかし、その中で省エネ技術の開発を促進し、大いなる成果を生み出しました。
今回も、このピンチをチャンスに変えませんか。
それこそ、これからの日本列島を強く、豊かにする投資を、「省エネ」、そしてエネルギーを創る「創エネ」に、積極的に振り向けていきませんか。
まず、「省エネ」です。日本は石油ショックの時に世界に先駆けて大幅な省エネを達成し、その技術を生かして経済大国になりました。今回も、この機に省エネ機器や省エネ家電への買い替え促進、断熱住宅の普及促進、熱の有効活用などへの支援をより拡充する補正を組むことで、国民の意識を縮み志向から未来への攻めの志向へと変えていく。国民にとっても、行動に移す動機は十分です。総理会見にあった「例年通りの呼びかけ」では不十分です。省エネ技術の開発や普及についても、更なる促進へ支援は行わないのか、総理に伺います。
次に「創エネ」です。
再生可能エネルギーについて、今日本では、メガソーラーが自然環境を壊す、再エネ賦課金が高いなど、ネガティブな印象が強くなっています。しかし、世界ではこの10年で、太陽光が12.5倍、蓄電池が100倍以上、電気自動車が53倍と、エネルギー転換が加速度的に進んでいます。日本の再生エネルギー電気の割合は25%で、原子力大国と言われるフランスの35%より低い数値となっているという極めて情けない状況となっています。初期商用段階のペロブスカイト太陽電池にも期待しますが、既に実用化されているプラグインPVやコストの安いLFP蓄電池をもっと積極的に取り入れて、世界の常識の中で技術的に飛躍できる国へと推し進めていくべき転換点に今いるのではないでしょうか。今こそ化石燃料依存を脱却し、再生可能エネルギーの大幅導入を行うことは経済安全保障にも資すると考えています。総理会見でも、創エネに言及されていますが、本年度の予算の範囲でのご発言に留まっています。この緊急事態を契機として、「創エネ」を前に推し進めるための施策を補正予算に盛り込むべきではないでしょうか。総理のご見解を伺います。
ここまで、補正予算案の歳出面について伺ってきましたが、歳入面について伺います。
財源については、特例公債を活用する一方、市中への発行総額は増やさずに対応可とのことです。現政権の方針「責任ある積極財政」にあって、市中の発行総額を増やさずに補正予算が組めることは、増やしてしまうよりはまし、とは思います。
しかし、歳入には、「積みすぎ基金」を活用することで公債に頼らずとも十分な対応が可能ではないでしょうか。なぜ、これらの活用をせずに、特例公債に頼るのか、財務大臣に伺います。
今回補正予算編成のニュースが流れた日に、財政悪化を心配する向きからか長期金利の高騰が見られるなど、市場には敏感な動きがみられる中、債務残高への市場の敏感さに鑑み、公債依存度を下げる対応が必要ではないでしょうか、併せて認識を伺います。
続いて、総理と国民とのコミュニケーションの観点から伺います。
今回の補正予算編成に至るまで、多方面から編成を求める声が上がる中、総理は不要との立場を貫きました。国民からは、なぜそこまで意固地になるのか、わからなかったと思います。そして、補正予算案編成について説明された5月25日の会見で、総理は説明のあと、なぜか1社のみしか質問を受け付けませんでした。
なぜ、マスコミとの対話を避けるのでしょうか。
国民は、総理とマスコミとのやりとりを通じて、自分の中の疑問を解消することができます。
総理とマスコミとのやりとりは、国民とのコミュニケーションでもあります。
この危機を、総理が国民とともに乗り越えようと思うなら、国民と対話をする思いで、マスコミとも、双方向のやりとりで相互理解を深める必要があるのではないでしょうか。
総理はSNSでも発信していると官房長官は説明しましたが、SNSでの発信は基本、一方通行です。メディアを通じた国民との対話は重要と考えますが、総理のご見解を伺います。
国民とのコミュニケーションという意味では、国会審議が何よりも重要です。国会は、国民の声を集め、国民に代わって議論する場です。しかし、先の総選挙における自民党の大勝以降、与党から出てくる審議時間の提案は、びっくりするほど短いものが増えました。
今回の補正予算案につき、最初の与党提案は、衆参の予算委員会が半日ずつ。これまで通例2日ずつですから、きわめて異例です。
総理は、それは国会がお決めになることとおっしゃるかもしれませんが、これほど短い提案は以前なかったことを鑑みるに、やはり総理の意向ではと勘繰ります。
「ほぼ全部予備費だから、中身は答える必要がないので議論は不要」、とおっしゃっているのでしょうか。
あるいは総理は「自分は万事うまくやるので、国民は関心を持つ必要がない」とおっしゃるのでしょうか。
いずれにしても、今回の危機は、国民に説明せず、国民を蚊帳の外に置くような形で乗り越えられるものではないのですから、国民の代表たる国会への説明は必要なのです。衆議院では与党の数が圧倒的になっていますが、民主主義では、少数者も含めて、それぞれが納得するための議論と手続きを経ることが重要です。
これらの認識に立つとき、国会の審議日程の短縮化をどう受け止めているのか、総理の認識を伺います。
危機を必要以上にあおるつもりはありません。しかし、今は国難とも言える状況にあります。
だからこそ、対話の中で、より良き道を探り、政府の持つ機能をいかして、支えあい、乗り越える。これが必要です。
そして、経済活動をむやみに縮小させることなく、むしろ、新しい時代に向けて飛躍する体質へと、この国は生まれ変わる。そうした機会とするために、この危機を生かそうではありませんか。
今回の補正予算審議が、国難を乗り越えるための良き知恵を出し合う機会となることを願い、私の質問を終わります。