参院本会議で6月5日、村田享子議員が「令和8年度補正予算」に対し、反対の立場から討論を行いました。討論後採決が行われ、「令和8年度補正予算」は賛成多数で可決しました。予定原稿は以下の通りです。
令和8年度補正予算2案に対する反対討論
立憲民主・無所属 村田享子
立憲民主・無所属の村田享子です。会派を代表し、ただいま議題となりました「令和8年度補正予算2案」について反対の立場から討論いたします。
中東情勢は、私たちの暮らし・職場に大きな影響を与えています。私たちが求めてきた補正予算が編成されたことは評価いたします。また、その中身として、私たちが求めてきた電気・ガス代への支援が盛り込まれたことも評価いたします。
しかし、ものが入手できない、物価が高騰している…目の前の不安に直面している国民の皆さまに、安心を与えるものにはなっていません。しかも、補正予算案について、議論するための時間も、衆参予算委員会で1日ずつという異例の短さであり、十分ではありません。与党には、今回の対応を前例としないよう、改めて申し入れます。
今回の補正予算の問題点、「遅い・足りない・分からない」。この3点です。
まず、遅い。2月28日の米国とイスラエルのイランへの攻撃を発端とした、中東情勢の緊張の高まり、ホルムズ海峡の事実上の封鎖による我が国への影響は、早くも3月に出始めました。国会では、令和8年度予算案の審議が行われていましたが、そもそも、令和8年度予算案が閣議決定されたのは、令和7年12月26日。中東情勢への対策が盛り込まれていない予算案に対し、立憲民主党は、公明党と共同で、「命と暮らしを守り抜くための緊急提案」として修正案を4月6日に提出しました。ガソリン・軽油・灯油・重油・航空機燃料への補助、電気・ガス代への支援、昨年の補正予算には盛り込まれていなかった低年金の高齢者の方や低所得世帯への給付金、ナフサの供給減・価格高騰を受けた医療機関への支援など、先手を打って、中東情勢の影響を最小限にしていく、まさに、今回、政府が掲げている「リスクの最小化」となる具体的な修正案を提出しましたが、否決されました。
その後も、補正予算の編成を求めましたが、6月3日の閣議決定ではあまりに遅すぎます。しかも、政府は、早く対策を打てるようにと、早期成立を求めていますが、であれば、もっと早く、補正予算案を国会に提出し、十分な審議時間をとって、成立を求めるべきではないでしょうか。
私のところには、4月3日にあるものづくりの会社からシンナーの入手ができず、休業に入るとの連絡がありました。あまりに遅い、今回の補正予算には反対です。
そして、足りない。今回の補正予算に対し、6月3日、立憲・公明・中道で、組み替え・修正案を発表し、本日、公明党とともに、修正案を提出しました。その理由の一つは、重点支援地方交付金が足りないからです。昨年の補正予算で、重点支援地方交付金2兆円を計上しているので、今回は1000億円との説明でしたが、物価高が長期化し、6月も1000品目を超える食料品が値上がりする中、低所得世帯やこれから夏休みを迎える子育て世帯への現金給付、価格転嫁ができない医療・介護・障がい福祉などへの経営支援、農林水産業の肥料・飼料・資材の価格高騰対策、中小企業への金融支援、雇用調整助成金の拡充などを行うため、重点支援地方交付金として修正案では9000億円計上しています。あわせて、雇用調整助成金の対象とならない、自営業の方、建設資材の供給不足で仕事があっても作業ができない一人親方の方などへの支援も急務です。
修正案は否決されましたが、その財源は、政府案が全額赤字国債の発行であるのに対し、「積み過ぎ基金」の返納であり、物価高につながる更なる円安や金利上昇に歯止めをかけるものです。政府は、税収増を受け、昨年度の赤字国債発行額の一部を減額し、市中への発行総額を増やさずに対応できるとしていますが、だとすれば、今回の補正予算の積算根拠は何なのか。「市中への発行総額を増やさない」ことが前提になっているのだとすれば、今後必要な支援のための予算は本当に足りているのでしょうか。
多くのナフサ関連製品も足りていません。「ものはある。供給の偏りや流通の目詰まりが生じている。」この「目詰まり」という言葉は、4月2日「第1回中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース」での経済産業省の資料の中に、シンナーについて、「川上の企業は国内供給を継続しているが、…川中のどこで目詰まりが発生しているかを特定すべく、事実関係を確認し、個別に目詰まり解消の対応中」とでてきます。そこから2か月。政府のご担当の皆さまが懸命に目詰まり解消に取り組んでいらっしゃるのは理解しておりますが、やはり、現場にはものがない。医療現場からの切実な声、予定通りに完成品を納入できず今期の売り上げや賃金・雇用への影響を懸念する声、たくさん届いています。政府は「ものはある」と言っているから、どこかにものがあるだろうと、必死にいろんなところに電話をし、ネットを検索し、遅くまで残業し、それでも、必要な資材を確保できない、と途方に暮れている調達担当の方がいます。また、目詰まり解消の手段として、取引先を政府に報告するという形になっていますが、中小企業の中には、今後の取引への影響を恐れ、社名を伝えることができない、情報の目詰まりも発生しています。
しかも、入手できたとしても、価格が高い。数倍もの値上がりも報告されています。代替品を使う際には、従来品と違うため、品質のチェック、検査も必要です。
総理は、調達価格の高騰について、価格転嫁が進むよう広く支援を行ってきたと答弁されていますが、中小企業庁による直近の「価格交渉促進月間フォローアップ調査」では、昨年9月時点で、価格転嫁率は53.5%。通常の価格転嫁ですら、ようやく50%を超えたところであるにもかかわらず、今回のような急激な高騰について、価格転嫁がスムーズにできるとお考えなのでしょうか。価格転嫁ができなければ、企業のコスト増となります。作っても赤字になるのなら…と休業を決めた会社もあります。仮に価格転嫁ができたとしても、最終的には、急激な物価高に消費者が直面することになります。連合の発表では、6月1日時点での今年の春闘の賃上げ率は、5・02%。労働組合のご奮闘もあり、高い水準での賃上げが続いていますが、中東情勢による物価高騰に対応できるのか。まだ交渉中の労働組合については、今年の賃上げにもすでに中東情勢の影響がでてきています。物価高を超える持続的な賃上げを実現するための対策も必要です。
「ものはある」「目詰まり」この言葉に隠れた、直視すべき現実から目をそらし、今取るべき対策がとられていない補正予算には、賛成することはできません。
では、政府はどんな対策を考えているのか。それがこの補正予算からは、まったく「分からない」。2兆5000億円の中東情勢等対応予備費。この予備費を活用した必要な対応策について、今後の物価動向や経済に与える影響を注視して対応するとのことですが、現段階でも「注視」でいいのでしょうか。本日のこの討論でも、今、国民の皆さまが実際に困っていること、将来への不安を具体的に挙げました。やるべき対策は明らかです。例えば、予備費ではなく、修正案のように、重点支援地方交付金の積み増しにもっと予算を計上した場合、本日、補正予算が成立すれば、地方自治体によっては、6月議会で、地域の実情に応じた対応を議論することもできたでしょう。いつから、何に、どんな対策がとられるのか。全くわからない予備費では、不安は払しょくできません。総額3兆1135億円の補正予算のうち、全体の97%を予備費が占めることは、財政民主主義の観点からも問題です。
遅い・足りない・分からない。私たちが編成を求めてきた補正予算ではありますが、この内容では不十分です。今目の前にある危機に具体的な支援で対応し、今回を機に、省エネの普及、バイオナフサなど石油依存からの脱却につながる技術開発の推進などにより、危機に強い経済をつくる。そして、一刻も早い戦闘の終結、ペルシャ湾内にとどまっている日本関係船舶と乗組員の皆さまのご帰国とともに、誰もが安心・安全に暮らせる社会の実現をめざし、反対討論といたします。