参院本会議で6月10日「社会福祉法等の一部を改正する法律案」に対する代表質問が行われ、立憲民主・無所属の会派から、山内佳菜子議員が登壇しました。予定原稿は以下のとおりです。
社会福祉法等の一部を改正する法律案(全文)
立憲民主・無所属 山内佳菜子
立憲民主・無所属の山内佳菜子です。
ただいま議題となりました社会福祉法等の一部を改正する法律案に対し、会派を代表して質問いたします。すべての質問を、上野厚生労働大臣に伺います。
4月には84歳の夫が、長年介護してきた妻を殺害するという痛ましい事件も報じられました。介護離職。介護難民。老老介護。そして介護殺人。
介護をめぐる痛ましい出来事は後を絶ちません。
介護の問題は、もはや一部の家庭だけの問題ではありません。
社会全体の問題です。
2000年にスタートした介護保険法の第1条は、国民の共同連帯により必要な介護サービスを提供することを理念として掲げています。国民が保険料を支払い、必要なときにサービスを受ける。これが介護保険制度の約束です。
しかし制度創設以来、65歳以上の介護保険料の全国平均は約2倍と増加した一方、要支援者向けの一部サービスの給付外しなど実質的な給付削減が行われてきました。負担は増えた。だけど、受けられるサービスは削られる。これでは、国民との約束が揺らいでしまうのではないでしょうか。
はじめに、大臣に伺います。この負担増と給付削減の現状をどのように認識していますか。これから先も保険料は増え、サービスは減るという方針は続くのでしょうか。明確な答弁をお願いします。
次に、地域における介護基盤の崩壊について伺います。
要介護・要支援認定を受けている方は、2023年度末で708万人。介護保険がスタートした2000年と比べて約3倍に増えました。
一方で、その方々を支える介護職員は212万6000人で前年比2万9000人減。介護保険制度が始まって以来、初めて減少に転じてしまいました。
介護を必要とする人は増える。しかし、支える人は減っている。
ここでも、深刻な逆転現象が加速しています。
長崎県佐世保市の宇久島では5月、島内唯一の特別養護老人ホームが閉所となり、入所者27人が島外への転居を余儀なくされました。
人生の最後まで、住み続けたい。それは誰もが持つ当たり前の願いではないでしょうか。しかし今、その願いすらかなわない地域が生まれています。
地域介護の危機は深刻です。
大臣、住む場所によって介護を受けられる人と受けられない人が生まれる。
こうした地域格差について、大臣はどのように認識していますか。憲法第14条の法の下の平等、憲法第25条の生存権との関係も含めてお答えください。
今回の法案では、中山間地域や人口減少地域への対策として「特定地域サービス」が創設されます。しかし、その内容は人員配置基準の緩和です。これまでの「人を確保し、増やす」路線から、「少ない人数で対応する」路線への、大きな転換です。
さらに「特定地域サービス」でも対応できない場合は「特定地域居宅サービス等事業」を創設して、本来介護保険で支えるべきサービスを、市町村事業としてサービス提供を行う仕組みも盛り込まれています。
地域ごとの財政力や裁量に丸投げする形にならないのでしょうか。
住んでいる場所によって受けられるサービスが変わってくるのではないでしょうか。介護格差をさらに広げるのではないかと、懸念しています。
大臣は、この特定地域サービス等の創設が介護保険制度の公平性を損なうおそれはないと断言できますか。その根拠もお答えください。
人員配置基準の緩和は、介護職員の負担増や離職を招き、利用者の事故や虐待のリスクを高める懸念もあります。
大臣、利用者の安全とサービスの質をどのように確保するのでしょうか。実効性ある担保策をお示しください。
次に、ケアプランの有料化について伺います。
ケアプランは介護サービスを受けるための入り口です。
ところが改正案では、住宅型有料老人ホームにおけるケアプランの有料化に踏み切ろうとしています。必要なサービスへの入り口を閉ざし、利用控えや重症化につながる懸念があるとして、多くの団体から反対の要望書が届いております。
ケアプラン有料化は行うべきではないと考えますが、有料化によって利用控えや重症化が起きた場合、どのように対応するのですか。将来的に在宅を含めたケアプラン有料化へ拡大する考えはないと断言できますか。大臣の見解を伺います。
次に訪問介護について伺います。
訪問介護は、住み慣れた自宅で暮らし続けるための命綱です。しかし政府は2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬を引き下げました。その結果、東京商工リサーチの調査によれば、介護事業所の倒産件数は2年連続で最多となり、2025年においては業種別で「訪問介護」がその半数以上を占めるなど突出していました。
在宅介護の基盤が「国の政策」によって弱体化した、と言わざるを得ません。
大臣は、この2024年改定後の倒産急増について、どのように分析していますか。今後の教訓も含めてお答えください。
これ以上、国の政策によって介護の基盤を壊してはなりません。
そして、介護の問題の根本、人材不足から逃げることはできません。
介護人材は「いない」のではない。「続けられない」のです。
政府は処遇改善に取り組んでいますが、それでも令和7年の介護職員の平均賃金は、全産業平均より8万円も低いという大きな格差があります。
なぜ政府の賃上げ政策は現場に十分届いていないのでしょうか。少なくとも全産業並みの賃金を目標とすべきだと思いますが、大臣が掲げる介護職員のあるべき賃金額と、その達成に向けた具体的な取り組みについてお伺いします。
私が知る宮崎の訪問入浴の男性職員の方は、介護と居酒屋の仕事を掛け持ちしています。夜遅くまで働き、翌朝は高齢者の入浴介助に向かう。
「ありがとうと言われると疲れが吹き飛ぶ。この仕事が本当に好きなんです。お願いですから、介護の仕事を続けられる仕事にしてください」と言われました。
大臣、今も、志を持って、介護職員の皆さんが現場で汗を流しています。この男性の願い、全国の介護職員の願いをかなえませんか。大臣の御英断が必要です。
あらためて伺います。大臣は、介護人材不足の最大の原因は何だと考えますか。「続けられる介護」を実現するための具体策をお答えください。
現場では10万人を超える外国人が日本の介護を支えてくださっています。介護は、人の尊厳を支える仕事です。日本人も、外国人も、介護を支える人たちの処遇が低いままでよいはずがありません。その仕事にふさわしい敬意と対価が必要です。
大臣、介護職全体の処遇改善が必要ではありませんか。基本給の底上げと適切な労働条件の確保をどのように進めるのか、具体的にお答えください。
次に、介護福祉士養成施設卒業者に係る経過措置について伺います。
養成施設を卒業すれば国家試験に合格しなくても卒業後5年間は資格を取得できるという期間限定の「特例」ですが、改正案ではこの特例を延長することが盛り込まれています。
人材確保は必要です。しかし、国家資格の信頼性もまた極めて重要です。必要なのは経過措置の延長ではなく、合格に導くための環境整備ではないでしょうか。
働きながら学べる仕組みの充実。そして、国家試験の合格率が日本人に比べて低い外国人介護人材への支援強化です。
大臣、介護福祉士国家試験の経過措置は、予定どおり終了すべきではありませんか。必要なのは延長ではなく、資格取得支援の強化ではないでしょうか。大臣の見解を伺います。
次に日常生活自立支援事業について伺います。
認知症高齢者や障害者の地域生活を支える「日常生活自立支援事業」は、地域福祉の重要なセーフティネットです。利用は約5万6000人と横ばい、待機者は2800人を超えています。現場からは、「予算が足りない」「人が確保できない」から「希望者を受け入れられない」という切実な声が上がっています。国庫補助基準額の設定の低さ、都道府県の予算確保の不十分さも課題のようです。
そこで、事業に見合った基準額の見直しと財源確保を行うべきではありませんか。また、確実に現場へ届く仕組みを構築すべきと考えますが、大臣の見解を伺います。
さらに今回の改正案では、この「日常生活自立支援事業」を拡大する形で、身寄りのない高齢者などへの支援体制整備も盛り込まれています。入院や施設入所の手続き。金銭管理。そして死後事務まで。支援の範囲は極めて広範です。
この仕組みの必要性は明らかです。しかし、現時点ですでに待機者が出ている現場に対し、頼れる親族がいない高齢者は2024 年時点で790 万人と推計されています。制度をつくるだけでは不十分です。支える体制がなければ機能しません。
大臣、利用ニーズの拡大が見込まれる中、受け皿となる社会福祉協議会の体制強化に加え、市町村、都道府県を含めた役割分担と責任の明確化が必要ではありませんか。実効性ある体制整備について、大臣の見解を伺います。
政府は利用者のうち、生活保護の方など、資力が十分でない方に無料または低額の料金で提供する措置を設けますが、それ以外の利用者の多くを占める中間所得層は、高額な民間サービスを利用する余裕はないのではないでしょうか。「いわゆる中所得者層が取り残される危険性が高い」という指摘もあります。高額な利用者負担だけで制度を維持しようとすれば、料金が払えず利用できない方が増えてしまいます。一方で、料金を下げれば事業者が成り立ちません。
私は、「利用者負担」だけでこの事業を運営することは困難だと思います。
必要な方が利用できる料金設定や減免措置をどのように考えているのでしょうか。また、事業継続と必要な方への支援をどのように両立させるのか、大臣の見解を伺います。
最後に申し上げます。
高市政権は、コストカット型経済から成長型経済への転換を掲げています。
では、その成長を支える土台は何でしょうか。
安心して働ける社会ではないでしょうか。
介護や福祉は、高齢者だけのためにあるのではありません。
家族を支えます。地域を支えます。職場を支えます。働く現役世代を支えます。
そして、この国そのものを支えています。
「社会保障の良心」とも言われた、故・山本孝史参議院議員は2006年5月22日の参議院本会議の質疑の中で、皆さんに語り掛けられました。
「命を守るのが政治家の仕事」と、その上で「救える命があるのに次々と失われているのは、政治や行政、社会の対応が遅れているからです」とも訴えられました。
介護保険法も、社会福祉法も、家族でも、個人でも支え切れない命、暮らしを、社会全体で支えるという政治の役割を体現するものではないでしょうか。
大臣、最後に伺います。私たちは財源論から逃げることはできません。
どのように財源を確保し、どのような社会保障国家を目指すのか。給付付き税額控除や消費税のみならず将来にわたり持続可能な制度をどう構築し、国民の命を守ろうとしているのでしょうか。制度を守ることは大切です。しかし、それによって目の前の命がこれ以上ないがしろにされることがあっては断じてなりません。今こそ国民的な議論が必要ではないでしょうか。参議院議員の皆さんにご賛同いただきたく、そして大臣に明確な答弁をいただきたいとお願いを申し上げまして、私からの質疑を終わらせていただきます。
ご清聴いただきありがとうございました。