参院本会議で6月17日、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部改正案」に対する代表質問が行われ、立憲民主・無所属の会派から、徳永エリ政調会長が登壇しました。予定原稿は以下のとおりです。

令和8年6月17日

主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部改正案

立憲民主・無所属 徳永エリ


 立憲民主・無所属の徳永エリです。
 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました、「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」の一部を改正する法律案について、全て農林水産大臣に質問します。

 「日本書紀」には、「豊葦原の千五百秋瑞穂国」という記述があります。葦が豊かに生い茂り、長い年月が経っても永遠に、秋になるとみずみずしい稲穂が実る国という意味で、日本を神話的な豊穣の国と象徴しています。我が国は瑞穂の国、稲作は、日本人の主食というだけではなく、生活・精神・社会に大きく根付き、豊かな文化を形成してきました。
 しかし、今、農家の平均年齢は67.7歳、稲作単一経営では半数以上が70歳を超えています。高齢化、担い手・後継者不足、温暖化による被害や鳥獣被害、生産資材価格の高騰による厳しい経営など、多くの苦難と直面し、この5年間で総農家数は20%以上も減少しました。生産基盤の脆弱化が進行しており、瑞穂の国が危機に直面しています。
 今般、令和の米騒動を教訓に、流通実態把握の強化、備蓄制度の見直し、これまでの需要減少を前提とした「生産調整」規定の廃止など、主要食糧法を改正するということですが、本来であれば、令和9年度から行われる水田政策の抜本的見直しと食糧法の改正案はセットで審議すべきものであり、また、改正案には看過できない点が多く、以下質問致します。

1、予算について
 令和9年度からの新たな水田政策は、水田活用の直接支払い交付金の抜本的な見直し、米、小麦、大豆、飼料用作物など、作物ごとの生産性向上等の支援への転換、産地交付金の見直し、中山間地域等直接支払・多面的機能支払いの見直し、新たな環境直接支払いの創設など、水田政策のいわば大改革が行われようとしていますが、そのためには、農林水産関係予算の増額が必至です。
 しかし、令和7年4月11日に閣議決定された食料・農業・農村基本計画には、「予算は、現行の水活の見直しや見直しに伴う既存施策の再編により得られた財源を活用する」と記されており、既存の施策の予算の範囲内でしか対応できないことになっています。また、農林水産省は、見直し後の作物ごとの具体的な支援水準を明らかにしていませんし、8月の概算要求でも単価は示さないということですが、なぜですか。農林水産関係予算が増額されなくては、この水田政策の抜本的な見直しや新たな支援の実効性は担保されないのではないですか。

2、流通実態の把握の実効性
 令和の米騒動の根本的な原因は、農林水産省が、多様化する流通実態を的確に把握できていなかったことです。改正案では、外食・中食を含め流通業者の取引実態を把握するため、届出事業者の拡大、定期的な報告の義務化、罰則の強化を行うこととしています。
 民間事業者に事務負担を強いて、罰則を強化してまで報告義務を課したとして、複雑で多様化している米の流通実態を、どこまで把握することができるのか疑問であり、そもそも農林水産省が自らやるべき実態把握の責任を、報告義務という形で民間に押し付け、責任を放棄するものにほかなりません。しかも、対象事業者はおよそ2万事業者、毎月、定期的な報告を求めるのはおよそ3千事業者。すべての事業者からきちんと報告を得ることが不可欠だと考えますが、流通実態の把握の実効性をどのように確保するのかお伺いします。

3、民間備蓄の創設
 民間備蓄制度の創設について、政府は令和の米騒動を検証し、政府備蓄米の売渡手続きに時間を要し、機動性を欠くという課題が明らかになったとして、備蓄米の機動的放出を可能にするために、民間備蓄制度を法定化するということですが、備蓄は、食料安定供給、食料安全保障を支える柱であり、国の重要な責務です。まずは、政府備蓄の運営上の課題を改善するべきであり、その上で、補完的に民間備蓄を活用するべきなのではないか。「官民を挙げた備蓄体制を構築」という言葉には、国としての役割、責任を後退させようとしているかのように感じられます。新たな備蓄体制においても、運営には、国が責任を持つ、国の役割が後退することはないことを明言していただけますか。

4、備蓄の適正水準について
 その上で、政府備蓄は、10年に1度の不作や通常程度の不作が2年連続した事態にも、国産米をもって対処し得る水準として100万tとされていますが、令和6年11月の財政制度等審議会の建議では「現在の適正備蓄水準が、大不作の場合などに備え、平成13年に当時の年間需要量900万tを前提に設定されたものであることを踏まえると、まずは700万t程度まで減少している現在の需要量を前提に設定し直す必要があるとして、適正備蓄水準を下げる必要性に言及しています。さらに、令和7年12月の建議では、売買差損や保管経費により、毎年度400から600億円程度の財政負担が発生している。備蓄運営のあり方については、こうしたコストを国民に明らかにした上で、検討されるべきである」としています。つまり、国の財政負担が重たいから、備蓄水準を下げよと言っているわけです。改正案では、生産量の減少による供給不足に加えて、需要量の増加等による供給不足にも備えて保有できるよう、備蓄の目的を見直すとしています。備蓄の目的、役割が拡大するのですから、適正備蓄水準は、最低でも現行の100万tは維持し、食料安全保障を確保するためには、さらなる拡大が必要なのではないでしょうか。
 今回の見直し後、適正備蓄水準について、農林水産省はどのように考えているのでしょうか。政府備蓄、民間備蓄、それぞれについて適正と考える備蓄水準を、その根拠とともにご説明ください。

5、民間備蓄事業者に対する支援
 また、民間備蓄を担う事業者は、本来、国が行うべき備蓄の一端を担う重要な任務を負うことになります。そのため、保管経費や掛借り増し経費が発生し、備蓄米の放出に際しては、差損が発生する場合もあります。これらに対し、民間事業者が不利益を被ることのないよう充分な財政上の支援が必要と考えますが、いかがですか。

6、需要とは具体的になにか
 改正案では、米の需要減少を前提とした生産調整方針に関する規定を廃止するとともに、需要に応じた生産にかかる責務規定の新設、「生産者は需要に応じた生産に主体的に努力すること」「政府は需要に応じた生産を促進すること」等を明記することとしています。この「需要に応じた生産」とは具体的にどういうことなのか。すなわち「需要」とは、現在の需要、トレンドやブームによる需要、そして国内需要だけではなく海外需要も含まれるのか、政府の考え方をご説明ください。

7、出口対策についての政府の責務
 また、政府がやるべきことは需要に応じた生産の「促進」というよりむしろ、出口対策、需要の創出拡大に取り組むことではないでしょうか。府が先頭に立って取り組むこと、その責務の重要性について、大臣のご所見をお伺いします。

8、生産者の努力義務を規定した理由について
 改正案は、「米穀の生産者は、米穀の生産を行うに当たっては、主体的に、第2条第1項に規定する見通し、その他の情報を踏まえて需要に応じた生産を行うよう努めるものとする」との規定を新設するとしています。新設される規定は、努力規定であって、昨年施行された食料供給困難事態対策法のように、農家に罰則を課すというものではありません。しかしながら、仮に、供給不足、過剰作付けが生じ、需要に応じた生産が実現されなかった場合、この新たな努力規定を根拠として、生産者に対し、何らかのペナルティ、また、行政上の不利益が科されるというようなことがないのか。なぜ、努力規定を新設したのか、その理由についてお伺いします。

9、精緻で正確な需要見通しについて
 生産者が需要に応じた生産をするためには、政府による正確な需要見通しが欠かせません。需要に応じた生産を実現させる前提として、需要見通しは精緻で正確なものでなければなりません。
 農林水産省は、令和の米騒動の検証において「需要(消費)見通しは、過去の需要実績ベースのマイナス・トレンドに基づき、1人・1年あたり消費量を推計した上で、総人口を乗じることで算出してきたため、減少傾向でした。また、家計調査やインバウンドによる需要増等の実態を踏まえた直近の消費動向を考慮してこなかった」などとしていますが、これらの反省を踏まえ、今後、どのようにして精緻で正確な需要見通しを策定するのか、具体的にご説明ください。

10、種苗の育成、公的研究機関への支援
 昨年改定された、食料・農業・農村基本計画では、「米については、国内外の需要拡大策、大区画化、スマート技術の活用、品種改良等の生産性向上策を強力に推進する」としています。品種改良については、「多収性・高温耐性を備えた品種の開発・普及」とあり、目標・KPIについては「多収化や高温耐性などに資する品種の育成」として、2030年35品種を掲げています。新たな品種が育成されれば、その種子の生産、供給が安定的に行われる必要がありますが、種子生産の担い手の減少と高齢化の進展により、種子生産体制の脆弱化が懸念されています。また、これまで、民間企業では、2000年に三井化学が「みつひかり」という米の多収性品種の種苗の登録販売を始めましたが、今年3月末をもって事業から撤退しました。民間による、米、麦、大豆といった主要農作物の種苗の育成は、2018年の4月の種子法の廃止以降、この例など、ごく限られている実情にあります。このことからも、主要農作物については、農研機構や都道府県の農業試験場など、公的試験研究機関での育成を、財政面も含めて国が支援する必要があるのではないでしょうか?また、種苗の生産に係る技術を継承するための人材育成の必要性についてもお伺いします。

11、米以外の作物の生産に関する施策を削除した理由
 食料・農業・農村基本計画では、水田政策の見直しについて、水田活用の直接支払い交付金を「作物ごとの生産性向上等への支援へと転換」するとし、「麦、大豆、飼料作物については、食料自給率向上の費用効果を踏まえて、水田、畑に関わらず、生産性向上に取り組む者の支援へ見直すべく検討する」などとしています。つまり水田における米以外の生産についても見直しつつ、支援することになりますが、なぜ、水田における稲以外の作物の生産の振興に関する施策についての現行法第2条第2項の規定を改正案では、削除するのでしょうか。水田政策の見直しに先行して行おうとしているこの改正について、生産者が不安になり、意欲が削がれることがないように明確にご説明ください。

12、再生可能なセーフティネットについて
 中東情勢の先行きが不透明です。長期化すれば、過去最高となっている農業資材価格がさらに上昇して、生産コストが増加し、しかも農産物の価格転嫁は難しく、農業生産はコスト割れとなり、赤字経営に陥ってしまい、再生産ができなくなります。収入保険などの現行の経営安定対策は、収入の減少を補うものでしかなく、コスト上昇による採算割れにはセーフティネットとして機能しません。こうした現下の問題も踏まえ、再生産可能なセーフティネットのあり方について政府はどのように考えているのかお伺いします。

13、所得補償制度の必要性
 農業は、工業製品と違い必ずしも計画通りの生産はできません。災害による農業被害リスクも、常に付き纏っています。そんな中で、国民の食料安全保障を守るためには、何があっても農家が安心して経営を続け、農畜産物を生産し続けることができる欧米のような手厚い所得補償が必要です。立憲民主党は、生産費と販売価格の差額を埋める赤字補填という従来の考え方ではなく、国民の食料安全保障を確保し、生産基盤である農地を守り、環境保全など農業の多面的機能の維持・発揮のために尽力されている農家に対する直接支払い「食料確保・農地維持支払い」制度を提案しています。都市部に食糧を提供しているのは、地方であり、農家です。しかし、農家に対するリスペクトが政策から感じられません。欧米のように、政府が農家の経営を強く守り、農家が安心して、誇りを持って、国民の食糧を作り続けられる、所得補償制度の創設の必要性について、大臣の考えをお伺いします。
 日本と南米のメルコスール、EPA。G7がフランスで行われておりますが、交渉入りをするという報道がありました。日本の農業に大きな影響があります。ぜひとも国益に資する、そして日本の農業を守り、つないでいける、そんな交渉にしていただきたい。そのことを最後にお願い申し上げまして私の質問とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。


20260617食糧需給価格安定法改正案 徳永議員.pdf