参院本会議で6月24日、「防衛省設置法等の一部を改正する法律案」に対する代表質問が行われ、立憲民主・無所属の会派から、青木愛議員が登壇しました。予定原稿は以下のとおりです。
防衛省設置法等の一部を改正する法律案
立憲民主・無所属 青木愛
立憲民主党の青木愛です。
私は、立憲民主・無所属を代表して、ただいま議題となりました防衛省設置法等の一部を改正する法律案について、以下全て防衛大臣に質問をいたします。
去る6月17日、トランプ米国大統領とペゼシュキアン・イラン大統領が軍事行動の即時終結を宣言する覚書にそれぞれ署名しました。今後、最終合意を目指して両国間で交渉が行われますが、イランの核問題は先送りにされており、いまだ予断を許さない状況が続きます。こうした中、高市総理はイギリス、フランス、ドイツ、イタリアの4か国の共同声明に参加することを表明されました。共同声明にはホルムズ海峡における「商業航行の安全確保や機雷掃海活動」が含まれていますが、日本は憲法の範囲内でどのような形態で参加するのでしょうか、ご説明ください。
ロシアによるウクライナ侵略は発生から5年目に入りましたが、いまだ終結への道筋は見えておりません。そうした中、18日にはモスクワへのウクライナ軍の大規模な無人機攻撃が報じられるなど、戦闘はなお激しさを増しています。
このような大国が思い通りにならない国際情勢を見るにおいて、国家のパワーを軍事力だけで測る時代は終わりつつあるのではないかと感じています。もはや「抑止力イコール軍事力」という発想だけでは十分ではなく、ソフトとハードの双方を組み合わせた安全保障戦略が必要だと考えます。昨年5月に逝去されたハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は、このソフトパワーについて「自国が望む結果を他国も望むようにする力であり、他国を無理やり従わせるのではなく、味方につける力」であると述べています。
そこで政府に伺います。現行の国家安全保障戦略をはじめとする安保三文書において、国家の安全保障に資するソフトパワーはどのように位置付けられ、具体的にどこに組み込まれているのか、ご説明ください。
日本は長年、各国の実情に応じたきめ細かな政府開発援助(ODA)や、現地の人々と生活を共にしながら技術や知識を伝える海外協力隊の活動を通じて、国際社会から厚い信頼を築いてまいりました。こうした積み重ねは、一朝一夕には得られない我が国の大きな外交資産であります。
先般のアジア安全保障会議(シャングリラ会合)では、中国が我が国を「新型軍国主義」と批判しましたが、多くの国々がそれに同調しなかった背景には、日本がこれまで平和国家として歩み、ODA等を通じて築いてきた各国からの信頼があったものと考えます。
開発援助の実績や海外協力隊の貢献が後に大きな力となって我が国の防衛に資することを確信します。今後の抑止力は軍事力に頼るだけではなく、こうしたソフトパワーによっても支えられるべきです。日本のODAと海外協力隊による外交上の意義と成果を次期安保三文書にも明確に位置付けるべきと考えますが、いかがでしょうか。ご見解を伺います。
次に、防衛力の整備についてお伺いいたします。
小泉防衛大臣は、本年3月24日の参議院外交防衛委員会における所信において、 「我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑」であるとした上で、ロシアによるウクライナ侵略を教訓に、無人機の大量運用を含む「新しい戦い方」や長期戦への備えを急ぐ考えを示されました。実際、ウクライナや中東においては、比較的安価な無人機が大量投入され、高価な戦闘機やミサイル、防空システムに打撃を与える事例が見られました。こうした戦い方の変化を踏まえ、我が国の防衛力を不断に見直していく必要があります。一方で、新たな能力を整備する際には、既存装備との役割分担や優先順位を検証し、限られた財源の中で防衛力全体の最適化を図ることが重要です。
そこで伺います。
政府は、「新しい戦い方」への対応を進める中で、既存装備の必要性や整備計画について不断の見直しを行う考えはあるのでしょうか。また、防衛費全体の効率化と重点化をどのように図っていくお考えなのか、ご見解を伺います。
次に、安全保障政策と経済成長との関係について伺います。
近年、安全保障政策が経済成長政策と結び付けて語られる場面が増えております。しかし、安全保障政策の目的はあくまで国民の生命と国家の独立を守ることであり、経済成長そのものではありません。防衛産業の振興は必要ですが、安全保障予算を増額する理由として経済成長を前面に出すことは好ましくないと考えます。安全保障政策はあくまで安全保障上の必要性に基づいて決定されるべきであると考えますが、政府の見解を伺います。
次に、本法案の内容について伺います。
本改正案では、自衛官の総定数を維持したまま、自衛隊サイバー防衛隊の体制強化等のために定数の振替を行うこととされています。
近年、少子化や人口減少の影響により、自衛官の募集環境は年々厳しさを増しております。自衛官定数の在り方そのものについて検討の必要はないのでしょうか。また、人工知能や無人機の活用が進展する中で、自衛官定数の在り方とともに、自衛官に求められる技術と能力の変化についてどのように考えておられるか、併せてご見解を伺います。
次に、陸上自衛隊第15師団の改編について伺います。
防衛省は、これまで南西地域の防衛体制を強化するため、与那国島、宮古島、奄美大島、石垣島に駐屯地を新設し、沿岸監視隊や警備隊等を配置してきました。 今回の改正案では、普通科連隊を増設するとともに、第十五旅団を第十五師団へ改編することとされています。南西地域は多数の島嶼から成り、その地理的特性を踏まえた部隊運用が求められます。
そこで伺います。
普通科連隊を増設し、第十五師団へ改編することによって、南西地域における指揮統制能力や即応能力はどのように向上すると考えているのでしょうか。南西地域において普通科連隊が担う具体的な役割について御説明ください。
さらに、今回の改編では、宮古島及び八重山諸島において沿岸部の警戒監視を行っていた宮古警備隊及び八重山警備隊が、西部方面隊直轄から第十五師団隷下へと移管されます。これにより指揮系統が一段階増えることとなりますが、警戒監視活動や情報共有、部隊運用の面でどのような効果が期待されるのでしょうか。また、運用上の課題についてはどのように認識し、対応していくお考えなのか、ご見解を伺います。
次に、航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への改編について伺います。
現在も自衛隊は宇宙領域において活動しておりますが、今回、航空自衛隊に「宇宙」の名称を加える意義について伺います。併せて、政府は「空」と「宇宙」の境界をどのように整理しているのかをご説明ください。
今回の法改正では多くの組織名称が「航空宇宙」に改められる一方で、 「航空総隊」は引き続き 「航空総隊」のままとされています。
政府は、自衛隊法上の「航空」と「航空宇宙」をどのように使い分けているのでしょうか。「航空総隊」が改称されない理由と、機能上の違いについてご説明ください。
宇宙空間は、国境の概念がないことから、人工衛星を活用すれば、地球上のあらゆる地域の観測、通信、測位などが可能となるとされています。このため主要国は、指揮、統制、通信、コンピュータ、情報、監視及び偵察の能力の強化などを目的とし、各種活動などを画像や電波として捉える情報収集衛星、弾道ミサイルなどの発射を感知する早期警戒衛星、武器システムに位置情報を提供する測位衛星、通信を中継する通信衛星など、各軌道に応じた各種衛星の能力向上や打上げに努めている状況です。特に、昨今は中国の増加が顕著であり、2012年からの12年間で約6倍に急増していると指摘されています。
一方で、人工衛星の増加に伴い、運用を終えた衛星や破片などのスペースデブリも増加しており、宇宙空間の安全な利用を確保する「宇宙交通管理」の重要性が高まっています。
このような状況を踏まえ、航空宇宙自衛隊は、各種衛星の能力向上や打ち上げ、そして「宇宙交通管理」にどのように取り組むのでしょうかご説明願います。
今回の質疑に先立ち、航空自衛隊府中基地を視察いたしました。
令和2年に発足した20名からなる「宇宙作戦隊」は、今年度末には880名の宇宙作戦集団として体制が整えられ、防衛省・自衛隊がはじめて自ら保有・運用する「SDA衛星」の打ち上げも予定されていることなどについて説明を受けました。
宇宙空間の掌握には、一国だけで対応することは困難であり、JAXAや米国をはじめとする同盟国・同志国と連携しながら、宇宙状況監視(SSA)を通じて、安全保障の最前線を担い、宇宙空間の安定利用に取り組んでいることも伺いました。
宇宙空間は、通信、測位、気象観測などを通じて、スマートフォンやカーナビ、天気予報を支えるなど、国民生活の基盤そのものとなっています。その安全を24時間体制で守る宇宙領域専門部隊の役割は、今後ますます重要になると考えます。
現在、隊員の皆さんは仮庁舎で任務に当たっておりますが、宇宙領域の防衛に携わる自衛官に対し、セキュリティーが確保された施設整備を含め、任務に見合った十分な処遇を図るべきと考えますが、防衛大臣の見解を伺います。
次に、防衛副大臣の増員について伺います。
政府は、副大臣を一名増員する理由として、政務レベルで対応すべき業務が量・質の両面で増大していることを挙げています。
業務量の増加については理解できますが、業務の質的変化とは具体的に何を指しているのでしょうか。
組織改革ではなく副大臣を増員することが最も適切な対応策であると判断した理由についてもご説明願います。
最後に、若年定年退職者給付金について伺います。
本制度改正の目的は、自衛官の生涯設計を支え、優秀な人材の確保を通じて防衛省・自衛隊の人的基盤を強化することにあります。とりわけ、多くの自衛官が50代半ばで退職し、公的年金の受給開始までの期間に収入の減少や生活上の不安に直面する現状を踏まえれば、その対策は重要な課題であります。
平成2年、本制度の創設された審議の際、衆参両院において「若年定年退職者給付金制度はやむを得ない特別の措置であり、将来は再就職の実態を踏まえて改めて検討すること」との附帯決議が付されました。
しかし、その後30年以上が経過し、自衛隊を取り巻く環境や再就職事情が大きく変化したにもかかわらず、制度の基本的な枠組みは今日まで見直されませんでした。
政府は、この附帯決議に対してこれまでどのように対応してきたのでしょうか。また、平成2年以降の本制度の運用について、どのように総括していますでしょうか。今回の法改正の給付水準引上げの効果を適切に検証することも重要です。今後の制度改正の効果の検証の必要性についてどのような見通しを持っておられるか併せて伺います。
以上、政府の明確な答弁を求め、質問を終わります。