参院法務委員会で7月16日、再審法改正案(刑事訴訟法の一部を改正する法律案)に対し「立憲民主・無所属」と公明党が修正案(下記PDF参照)を提出し、政府案及び修正案に対する質疑が行われました。修正案の趣旨説明は打越さく良議員が行い、質疑に立った牧山ひろえ議員は、えん罪事件の検証と実効性ある再審制度の必要性について、政府と修正案提出者の見解をただしました。
質疑終局後の討論には、「立憲民主・無所属」から泉房穂議員が政府原案に反対、修正案に賛成の立場から討論に立ちましたが、採決の結果、政府原案が賛成多数で可決しました。
牧山ひろえ議員
再審無罪を制度改革の出発点に 第三者を交えた検証を
牧山議員は冒頭、再審無罪が確定すると「無罪になってよかった」で終わってしまう傾向があると指摘し、「本来はそこからが制度改革の出発点だ」と訴えました。なぜ無実の人が起訴され有罪となったのか、なぜ無罪を示す方向の証拠が開示されなかったのか、なぜ再審開始まで数十年を要したのかを検証しなければ、同じ過ちを繰り返すことになると述べました。
その上で、無罪が確定し裁判が終結した重大事件について、国会や独立性のある第三者機関が原因と過程を検証し、法律や運用の改善につなげるよう要求。三谷英弘法務副大臣が、検察権の行使や司法権の独立の観点から慎重な検討が必要だと答弁したのに対し、牧山議員は、係属中の裁判への政治介入と確定後の制度検証は別問題だと反論しました。「裁判所が証拠の捏造や意図的な証拠隠しと認定した問題を立法府が放置する方が、国民の司法への信頼を損なう」と述べ、「えん罪白書」の作成も提案しました。
証拠開示を実効あるものに 検察官任せの制度を改める
続いて牧山議員は、政府案や衆院修正では、開示対象となる証拠が再審請求理由との関連性などで限定され、裁判所の勧告にも法的拘束力がないと指摘。修正案提出者は、修正案では、関連性を要件としない裁判所の職権による証拠提出・開示命令や弁護人への直接開示を規定し、「勧告」ではなく「命令」によって検察官に対応を義務付けると説明しました。
牧山議員は、検察官が保管する証拠の全体像を再審請求人や弁護人が把握できるよう、裁判所が証拠一覧表の提供を命じる制度についても質問。修正案提出者は、請求人側が立証を組み立て、真実を発見するために必要な仕組みだと答えました。証拠の廃棄によって再鑑定が不可能になる問題については、証拠の目録作成と適正な保管の在り方を施行後1年を目途に検討し、必要な措置を講じると説明しました。
「真実を求める国民のための制度に」
政府案が、開示証拠の目的外使用を罰則付きで禁止していることについて、牧山議員は、処罰対象が曖昧なままでは弁護活動に萎縮効果を生じさせると指摘しました。修正案は、一律の禁止規定と罰則を削除し、必要に応じて裁判所が個別に使用目的を制限するなどの条件を付す内容です。
牧山議員は「目的は真実を見つけ出すことだ。検察も裁判所も、みんなが真実を追求する。そのために目的外使用を全面禁止するのは極端ではないか」と述べ、えん罪被害者の救済と関係者のプライバシー保護は両立できると強調しました。
再審開始決定に対する検察官の不服申立てについても、政府案は「十分な根拠」があれば認めるため、従来の運用と大きく変わらないと問題視。修正案提出者は、再審開始後は速やかに再審公判へ移り、検察に主張があれば公開の公判で争えば足りるとして、修正案では不服申立てを禁止したと説明しました。
最後に牧山議員は、えん罪は無実の人の人生を奪うだけでなく、真犯人を逃し、犯罪被害者とその家族から真実を知る機会を奪い、司法全体への信頼を壊すと指摘。「えん罪被害者と犯罪被害者は、両者とも被害者だ。両者に共通する願いは、真実が明らかになることだ」と述べました。
その上で、「今回の法改正が、行政や捜査機関にとって都合のよい制度ではなく、真実を求める被害者、真実を求める国民のための制度となるよう、政府には当事者の声を正面から受け止めた対応を求める」と訴え、質問を締めくくりました。
泉房穂議員
質疑終局後の討論で、泉議員は、政府提出の原案には反対。「立憲民主・無所属」と公明党が共同提出した修正案に賛成の立場を表明。
今回の再審法改正は78年ぶりの見直しであり、再審手続の明確化や審理の迅速化など評価できる点はあるとした上で、「最も大事なことは、えん罪被害者を確実かつ迅速に救済できる制度となっているか」という1点だと強調。参考人として出席した袴田秀子さんが「この政府案では巌は助からなかったのではないか」と発言したことにも触れ、政府案にはえん罪にあった被害者、まだ苦しみ続けている被害者が多くの懸念を示していると述べました。
具体的には、政府案では、証拠開示に「関連性」という制約が設けられ、裁判所の柔軟な判断を狭めかねず、証拠一覧表の交付も制度として認めず運用に委ねており、弁護側が新証拠を発見するための実効性に不安が残ると指摘。さらに、開示証拠の目的外使用を罰則付きで一律禁止することも、被害者保護との調和は個別対応で図れることを考えれば過度な制約と言わざるを得ないと述べました。
修正案では、より幅広い証拠開示を可能とし、証拠一覧表の交付や目的外使用への個別対応を盛り込むほか、証拠保管の在り方も検討事項としているとして、「えん罪被害者の確実な救済を実現するためには、こうした内容こそ必要」だと訴えました。
泉議員は最後に、採決の結果にかかわらず、えん罪に苦しむ被害者がいる限り、立法府としてしっかり責任を果たしていくと表明。規定にある5年ごとの見直しを待つ必要はなく、与野党問わず、冤罪の被害者救済に向けてしっかり力を尽くし合うと誓い、討論を締めくくりました。
再審法改正案修正案要綱.pdf
再審法改正案修正案.pdf
再審法改正案対照表.pdf