自治体議員ネットワーク・女性議員ネットワークは7月31日、夏季合同研修会の分科会として、4つの分科会をリアルとオンラインと併用で開催しました。
包括的性教育をテーマにした分科会では、講師に産婦人科医で埼玉医科大学医学教育センター・地域医学推進センター助教の高橋幸子さんを迎えました。
今回の開催は、女性自治体議員などから包括的性教育について学びたい、特に高橋先生の話を聴きたいとの声が多く寄せられたことを受けたもので、自治体議員が地域で取り組むべき課題について学ぶ機会となりました。
高橋さんは、「サッコ先生」として年間200回以上、全国の学校などで性教育に関する講演を行い、性教育の普及啓発に取り組んでいます。
包括的性教育とSRHR
高橋さんは、「性教育」「ユースクリニック」「産婦人科診療」の3本柱で若者を支援していると説明しました。その上でを意味するSRHR(性と生殖に関する健康と権利(『セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ』の略)」について、妊娠、避妊、中絶、出産、子育てなどを一人ひとりが知識に基づいて選択できる権利だと述べました。
また、性教育は、「いけない」「怖い」と脅すものではなく、選択肢を知り、自分で選ぶ力を育むものだと強調しました。若者が必要な知識を得ることに加え、避妊や医療、相談先など必要な支援につながる環境を整えることが重要だと指摘しました。
プレコンセプションケアとHPVワクチン
「プレコンセプションケア」は、WHO(世界保健機関)では「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義していますが、高橋先生は「将来子どもを持つかどうかにかかわらず、若い世代の健康を支える取り組み」だと説明。一方で、女性に「産め」という圧力として受け止められないよう「SRHRと包括的性教育を土台に進める必要がある」と述べました。
HPVワクチンについては、海外では男性も接種対象となっている国があるなか、日本では男子への定期接種が進んでいない現状を紹介しました。子宮頸がんなどの予防につなげるため、自治体においても、男女を問わず正確な情報提供を進める必要性を訴えました。
学校教育と自治体の役割
包括的性教育については、国際セクシュアリティ教育ガイダンスが、人権とジェンダー平等を土台に、人間関係やコミュニケーションを含めて段階的に学ぶ考え方であると紹介しました。
日本の学校教育では、性行為や妊娠の経過について学校で教えることを制限する、いわゆる「はどめ規定」によって、性行為や妊娠の経過などについて教えることに現場が慎重になり、子どもたちが必要な知識にたどり着きにくい状況があると指摘しました。高橋先生は「18歳の時点でどのような判断や行動ができる大人になってほしいのかという共通のゴールを、家庭、学校、地域で共有する必要がある」と述べました。
また、国際セクシュアリティ教育ガイダンスと日本の学習指導要領を照合して作成された教材『まるっと まなブック』を紹介し、学校での活用が難しい場合でも、自治体が医療・保健の文脈で活用できるのではないかと提案しました。
ユースクリニックと命の安全教育
高橋さんは、若者が性について相談できる場が不足している現状にも言及しました。中学生への調査で、性に関する相談先として「相談しない」と答える生徒が多いことや、特に男子にとって相談先が少ない実態を紹介しました。
その上で、若者が性や体の悩みを気軽に相談できるユースクリニックの必要性を説明しました。東京都の若者ヘルスサポートや、埼玉県内でのユースクリニックの取り組みを紹介し、全国の自治体で相談支援の場を広げることの重要性を訴えました。
命の安全教育については、性暴力の加害者、被害者、傍観者にならないための教育として、「プライベートゾーン、SNSによる性被害、デートDV、性的同意」などを段階的に学ぶ取り組みだと説明しました。子どもたちがSOSを出した時に、大人が「よく相談してくれた」と受け止め「児童相談所や警察、ワンストップ支援センターなどにつなげられるよう、地域の大人が準備しておく必要がある」と強調しました。
高橋さんは、包括的性教育は子どもたちの命と権利を守るための基盤だとして、自治体議員に対し「地域で学びと相談支援の仕組みを広げていくことが重要だ」と呼びかけました。
講演に続いて、令和6年度(2024年度)からすべての中学校で高橋さんの性教育を受けている、ふじみ野市議の民部佳代市議がこれまでの経緯や現状について報告。「ふれあい人権講座」として昨年度から自治体として予算を付けたと紹介し、大事なのは校長先生など現場の理解、理解のある産婦人科医や助産師、養護教員など教えられる人の確保、継続していくための予算の確保だと話しました。