参院本会議で4月13日、「経済安保法案(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案)」についての趣旨説明と質疑が行われ、杉尾秀哉参院議員が質問に立ちました。
(1)岸田政権半年

 杉尾議員は冒頭、政権発足後半年が経った岸田政権について、新型コロナにウクライナ危機、まさに「内憂外患の中で、緊張感をもって政権運営を続けておられる事に敬意を表します」としつつも、「岸田総理は社会的に重要な課題について聞かれても、『緊張感をもって注視する』」と答えるだけだと指摘。その上で、「目玉の政治スローガンである『新しい資本主義』の全体像を早く示すべき」と迫りました。岸田総理は、 「6月までに、新しい資本主義の基本的な考え方をまとめたビジョンと、その具体策と工程表を含む実行計画を取りまとめてまいります」と述べ、いまだ具体像がないことが露呈しました。

(2)ウクライナ危機

 杉尾議員は、ウクライナに平和を回復させるために、「日本ができることは、まだまだあります」と述べ、原油と天然ガス開発の「サハリンⅠ」「サハリンⅡ」からのエネルギー輸入を停止すべきと強調。他方、岸田総理は「国民生活や事業活動にとって重要なため、今後も権益を保有していく」として停止しない意向を示しました。

 また杉尾議員は、政府がウクライナからの「避難民」と言う言葉に固執し、「難民」と峻別する事には違和感があると表明。国際社会から「難民鎖国」と批判されないためにも、「一過性の政治的パフォーマンス」ではなく、「これを機に難民認定の拡大に、大きく舵を切るべき」と迫りました。岸田総理は「法務省において難民に準じて保護する仕組みの検討を進めております」として、なお慎重姿勢を崩しませんでした。

(3)イベントワクワク割

 政府がワクチン3回接種済の人を対象に、ワクチンの名を使用しネーミングした「イベントワクワク割」を来月から始めると報じられていることについて杉尾議員は、「感染が再拡大しているのに、本当に来月から始めるのか。そもそも、行政サービスをワクチン接種の有無で差別するのはおかしくないですか」と追及。岸田総理は、「慎重に検討していくこととしており、現時点では直ちに始めることは考えてはおりません」と述べ、またもや「朝令暮改」の姿勢が露呈した格好となりました。まん延防止等重点措置については、「ただちに必要な状況ではない」との認識も示しました。

(4)経済安保法案

 以上も踏まえ杉尾議員は、「経済安保推進法案」は、仮に成立すれば、岸田政権にとって発足以来、唯一と言ってもいい「具体的業績」となりうると指摘。

 その上で立憲民主党は、(1)自由で開かれた経済活動(2)民間活力と経済の成長(3)経済安全保障の実効性確保の観点から、「自由と規制」「経済と安全保障」のバランスを最重要視し、「経済安全保障の基本理念」を新たに条文として盛り込んだ「修正案」をまとめ、衆院に提出したと述べました。衆院で否決された立憲民主党の修正案について岸田総理は、基本理念などについて「大きな違いはないと考えております」と答弁しました。

 最後に杉尾議員は、食品製造に欠かせない噴霧乾燥装置で知られる「大川原化工機」という町工場が、中国に輸出した装置が「武器転用可能だ」として2年前に社長ら3人が逮捕され、初公判直前になって突然、「起訴」が取り消される事態となった冤罪事件を取り上げました。杉尾議員は、「『経済安保』は企業活動や市民生活にも、重大なマイナスの影響を与えかねません」と述べ、参院での法案審議では、岸田総理自身の「慎重に検討」「ていねいに説明」との言葉に象徴される曖昧な答弁をしないよう求め、釘をさしました。

経済安全保障法案趣旨説明質疑(杉尾秀哉議員).pdf