立憲民主党は7月に行われた第26回参議院選挙で「女性候補者比率50%」の目標を掲げ、公認の女性候補者比率51%、当選者比率53%と、候補者・当選者ともに目標を達成しました。
今回、目標達成に向け、それぞれの立場で取り組んだ、選挙対策委員長の大西健介衆院議員、ジェンダー平等推進本部長で今回の選挙で再選した徳永エリ参院議員、ジェンダー平等推進本部長代行で女性候補支援チーム長の岡本あき子衆院議員、ジェンダー平等推進本部・女性候補支援チームとも事務局長を担う桜井周衆院議員の4人が集まり、これまでの取り組み、そしてこれからの展開を語りました。
■政治分野で男女共同参画はなぜ必要か
桜井)議員は国民の代表なので、男女性別を問わず能力と気持ちのある人がやればよいと言われることもあります。ことさらに女性を強調する必要はないという意見を聞くこともありますが、政治分野で男女共同参画は必要なのか、あえて女性候補を半分以上にするということの意味は何でしょうか。
徳永)国会で1、2割ぐらいしか女性議員がいないということは、女性の声が政策・制度に反映しづらい環境だということです。世の中も男女半々いるわけですから、政治の世界も半々いるのがある意味当たり前ではないかと。パリテ(男女同数)は、しっかり目指していかなければいけないと思います。同数になって男女平等が当たり前になると、これまでと違う視点で制度を変え、社会を変えることにつながります。女性も男性も、みんなが生きやすい社会づくりへとつながります。
桜井)立憲民主党の執行役員は男女半々です。党運営の意思決定において、男女共同参画を実践していますが、執行役員の岡本議員は実際にどんな効果を感じていますか。
岡本)役員会や常任幹事会、さまざまな場面があります。私も役員に初めてなったので、それまでどうだったか分からないですが、自由に意見交換ができる場面が多いというのは率直に感じています。政治って、事前にとか、水面下でとか、夜の文化で動くものだというのが、なんとなく歴史的にあったと思うのですが、新型コロナの影響もあり、日中の会議で堂々と議論をすることが実践できていると感じています。これが結果にも良い形で現れていると思っています。
■今回の選挙ではどうだったか。次の国政選挙、来年の統一地方自治体議員選挙に向けて
桜井)候補者の男女比率半々を言うことはたやすいですが、実現するのは大変だったと思います。特に現職で立候補される方は男性が多く、その中で女性を半分以上にするには、新しい女性をたくさん探さないといけない。しかも、誰でもいいわけではなく、国会議員としてふさわしい人、何より国民のために働くという強い気持ちを持った方に立候補していただくのは大変だったと思います。いかがだったでしょうか。
大西)いま執行役員の半数が女性という話がありましたが、これは党代表選挙の時に泉健太代表が「代表就任後に実現すること」として明言したものです。「言い切らない方がいいのではないか、『目指す』くらいにしておきませんか」と言ったのですが、泉代表は「それはできるし、言わないと進まない。だからこれはやります。言い切ります」と言って、代表就任後に泉代表はその言葉通り執行役員の半数を女性にする形をとったのです。
参院選挙についても、ちゃんと明確に目標を掲げないとできないからということで目標を掲げました。ただ責任者としては非常に重いプレッシャーでした。
女性候補者を求めているのですが、勝手に手をあげて来てくれるわけではないので、女性候補者支援チームの皆さんや、ジェンダー平等推進本部の皆さんにも協力をいただきました。女性候補者をターゲットとした公募もやりました。ジェンダー平等推進本部顧問でもある西村智奈美幹事長が、女性候補者公募ページの作成や党の姿勢を示すメッセージ動画の作成などで指揮をとるなど、女性議員増に向けたさまざまな取り組み強化に尽力されました。
候補者公募については実際にその中で手をあげていただいた方が、板倉京さん。栃木で新人候補としてチャレンジをしていただきました。県連も非常に素晴らしい候補を得ることができたと喜んでいました。
ただ公募だけでは次の国政選挙、統一地方自治体議員選挙を考えた時には難しいと思っていますので、常日頃から総支部長や現職議員が地域でいろいろな活動をしていくなかで、自分たちの仲間を増やしていくために、政治の世界に加わってほしいという人たちにアプローチしていくこともやっていかないと目標達成するのは難しいと感じています。
それから、参院選挙の惜敗者のヒアリングをしている中で、例えば宮城の小畑仁子さんは子どもが8人いる候補者でしたが、朝8時から夜8時まで、もっと言えば朝8時の前から終電まで駅に立たないと勝てないという選挙では、子育て中の女性には挑戦できない仕組みだとおっしゃってました。
ですから、逆説的な話ですが、女性議員が増えることで、今の選挙の仕組みでは女性はチャレンジしないという声が増えてくれば、選挙制度や選挙のやり方そのものを変えようということにもつながっていくと思います。
本当に女性候補者を増やして、女性も男性も生きやすい社会づくりに繋げていこうと思ったら、ここまで変えていかないといけないと感じています。
桜井)普段の活動で、特に女性が課題として感じていることに熱心に取り組むことで、同じ問題意識を持って活動している方々との接点が生まれ、政治分野で頑張ってみませんかという声かけにもつながっていくと思いますが、統一地方自治体議員選挙に向けて、どうつなげていけばよいでしょうか。
徳永)党本部の意識改革はだいぶ進んだと思います。泉代表が目標を掲げ、大西選対委員長や桜井事務局長など、男性が一生懸命声を上げてくれるようになったことが大きいと思います。
候補者を探すにも、いつもの人間関係だけではなくて、いろいろなイベントや催し物や活動に国会議員も自治体議員もどんどん顔を出していって、人脈を広げていくことによって、より多くの人と接点を持つことで、「この人いいな」「この人にお願いしよう」という機会ができるのですが、そういう活動も十分できているかというと、まだまだだと思います。
立憲民主党もようやくここまで来たので、さらに都道府県連の取り組みを後押しするよう頑張っていかないといけないと強く感じています。
桜井)岡本議員は、女性候補者支援チームの責任者として女性候補者を支えてきました。今回の取り組み、そして今後についてお聞かせください。
岡本)政治に関心はあったけれど選挙は初めてという方が大半でしたので、まずその研修プログラムを作りました。街頭演説のやり方や、政策のアピールポイントなど、すぐに使える技を身につけてもらうことに取り組みました。
それからメンターをつけたこと。そしてケアラー支援ということで、家事、育児、介護を担っている場合にサポートする具体的な支援メニューを用意しました。いま感想を聞いているところですが、一定の成果はあり、支援している側も、こういうことはやはり必要だという実感があります。できれば仕事と家庭の両立は、女性だけではなく、男性の候補者も含めてサポートしていく形に持っていきたいと思っています。
もう1つは、今回、候補者の選出にあたり女性の視点も入れてほしいと各県連に頼みました。これは統一地方自治体議員候補者の選出の時にも、その視点があると変わる可能性が大きいと思っています。
政治は男性がやって当たり前、女性はサポートなんだという考えがなんとなく残っている方々がいる、それを変えていく力になればと思っています。
■政治分野の男女共同参画の先にあるもの
桜井)立憲民主党は男女半々を今回の参院選で達成することができました。ただ政治分野の男女共同参画はあくまで手段、通過点であり、目的は社会全体の男女共同参画、ジェンダー平等を実現することだと考えます。そして男性も女性もその他のすべての方々が生き生きと暮らせるような社会を作っていく、それが最終的な目的だと思います。党として政治分野の男女共同参画を社会全体の幸せにどうつなげていくか、意気込みを教えてください。
徳永)世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数、新たな指数が発表されましたが日本は今回116位。前回は120位なので、良くなったと思ったら大きな間違いで、前回は156カ国中120位。今回、146カ国中116位と後退する形になっています。これは先進国の取り組みから、わが国が遅れているのではなくて、こうした問題を置き去りにし、どんどんギャップが開いていってるのだと思います。真剣に取り組んでいかないといけない。そのためには、ジェンダー政策に関心をしっかり持って国会で取り組む人たちを増やしていかなければいけない。
いま男性が多い国会では、残念ながら関心の薄い方が多いように感じています。だからこそ、まずは女性の議員を増やしていく、関心のある人を増やしていく。そして障がいのある方や、LBGT、性的マイノリティの方、いろいろな方々が政治に参画をして、それぞれの思いや経験や立場を政策制度にしっかり反映させていく、その環境を作っていく。
そこに向かうための第一歩はまず女性を増やすこと。最終的にはダイバーシティ、多様性がしっかり発揮される、そんな国会にしていかなければいけないと思っています。
大西)これも選挙後の総括のヒアリングで、女性候補者支援チームも作り候補者のフォローをしているということがもっと伝わることで、立憲民主党が本気で女性候補者を増やそうとしていると、そういう政党であれば支持しようという人も増えていくのではないかという話がありました。わが党は、やったふりではなく、本気で取り組んでいます。その姿勢を示すことが重要だという意見もいただいています。
徳永)女性の候補者を半数用意することができ、支援体制もでき、さらにこれから拡充していかなければならないという課題もしっかり把握できました。この先にあるのは、いかに当選させるかということ。そうなると次の衆議院選挙までには、是非クオータ制を導入可能とするため公職選挙法改正を実現したい。
立憲民主党は、衆議院の比例代表でクオータ制を導入可能とする公職選挙法改正案を議員立法として提案していますが、他党の賛同は得られていませんので、これは相当ハードルが高いと思います。その議員立法を成立させた上で、政党で初めてクオータ制を導入した政党になれるよう、尽力していきたい。
岡本)今回、泉代表や大西選対委員長が党をあげて女性の候補者を立て、当選に向けて努力するという姿勢が見えたのが非常に大きな効果をもたらしていると思います。ジェンダーの問題は女性がやっていればいいというのが何となく全体に他の党でも見受けられるところを、立憲は払拭する努力をしたと自負していいし、自信を持ってさらに強めていきたいと感じました。
桜井)最後に、男女共同参画、ジェンダー平等、女性活躍、言っているだけの政党はたくさんあるけれども、本気でやってるのは立憲民主党だということを皆さんにお伝えさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。
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