衆院厚生労働委員会で11月16日、政府提出の「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律案」(障害者総合支援法などの改正案)と、立憲民主党提出の「重度障がい者就労就学支援法案」(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の一部を改正する法律案)」の参考人質疑が行われ、ネクスト厚生労働大臣の早稲田ゆき衆院議員が質問に立ちました。
政府は今回、束ね法案として障害者総合支援法などの他の法案との一括審議を求めている中、早稲田議員はまず、精神保健福祉法改正案について質問。前回改正の議論(2017年)では、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」での殺傷事件(2016年7月発生)がきっかけとなった経緯があったことから、措置入院した患者の退院後支援に警察が関与するなど精神障害者の人権を著しく侵害する恐れがあるとして参院で徹底した審議が行われた結果、最終的に廃案になった経緯を振り返り、この議論を踏まえての厚生労働省のこの間の取り組み、今回の法案改正の評価を、全国「精神病」者集団運営委員の桐原尚之さんに尋ねました。
桐原さんは、「廃案になってからは措置入院運用のガイドラインと地方公共団体による精神障害者の退院後ガイドラインの2つのガイドラインで運用される運びとなり、退院後支援ガイドラインは法案審査上での指摘を反映し、医療保護入院や任意入院を対象としている」とした上で、この5年で整備された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築推進事業」と診療報酬では、措置入院者の退院後支援だけを対象とし、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築のための手引き 2019年度版」にモデル事例として紹介された、鳥取県措置入院解除後の支援体制に係るマニュアルは、廃案になった改正案に即して治安的な印象が否めず、冒頭には「津久井やまゆり園事件の再発防止を受けて作成された」とあり、退院後支援ガイドラインも個別支援の警察参加を例外的に認めているなどと指摘。今回の改正案については、「5年前と比較して改善された事項もあるが、今回の法案では解決されなかった課題も残っていると考える。障害者権利条約政府審査に係る総括所見に基づき、関連法制度の見直しをはじめ必要な措置を構築していくことが不可欠だと考える」と述べました。
早稲田議員は次に、重度訪問介護を就労と就学に拡大する議員立法「重度障がい者就労就学支援法案」に対する評価について質問。これに対し桐原さんは「成立を強く望む」と答え、特別事業については使いにくさが指摘され、地域の介護体制が不十分であることから地域生活を続けていくために自ら事業を立ち上げて利用者兼管理者になっている例が多くあると述べました。「重篤な障がい者が管理事業者になることは社会参加の1つだが、所得の有無に関係なく就労しているとみなされ、重度訪問介護の支給が認められない問題が各地で生じている。管理者をやめて社会参加の機会を失うか、管理者を続ける代わりに特別事業と重度訪問介護のそれぞれの請求事務の負担を負うかの二択を迫る状態になっている」と指摘。「重度訪問介護は、見守りを中心とした唯一の制度であり介護保険では提供できないサービスのはずだが、重度訪問介護のニーズに対して介護保険を優先して適応する自治体が散見される。介護保険を優先原則により重度訪問介護の利用が妨げられている。まだまだ必要な人が使えていない問題はあるが、この法案は大きな前進だと考えている」と評価しました。
早稲田議員は、桐原さんの発言を受け「成立を目指して頑張っていく」と述べました。