政府の少子化対策発表にあたって(談話)

令和5年3月31日
立憲民主党政務調査会長 長妻昭

 本日、政府は少子化対策のたたき台である「こども・子育て政策の強化について」を取りまとめました。

【立憲民主党の政策】
 立憲民主党は、3月16日にもっと良い「子ども・子育てビジョン」を発表しました。理念として、チルドレン・ファーストの考え方の下、分断をなくし、社会全体で子どもの育ちを応援すると掲げています。多様な生き方や人権を尊重するとともに、結婚や子どもを持ちたい人の希望を叶える社会をつくるため、児童手当の拡充や教育の無償化等による子育てにかかる経済的負担の軽減、選択的夫婦別姓制度の導入等による伝統的家族観の転換、保育士の配置基準の見直しや教職員の処遇改善のための給特法廃止等の政策を盛り込んでいます。

【政府の政策】
 政府は、今回の対策の基本的方向について、「多様な価値観・考え方を尊重しつつ」、「個人の幸福追求を支援することで、結果として少子化のトレンドを反転させる」、「社会全体で子ども・子育てを支えていく」などとしました。一見するとほぼ我々の理念と同じです。しかし、選択的夫婦別姓等には触れられておらず、伝統的家族観や固定的性別役割分担意識、自助や自己責任論について、本気で改める気があるとは思えません。うわべだけ取り繕っても、古い考え方のままでは政策実行には限界があります。

 我々はかねてより、未婚の増加を直視せよと指摘してきました。雇用や収入の不安定な状況が続いたことなどにより、未婚者の割合は、この40年間急速に増加しています。いまや、50歳時の男性未婚率は3人に1人となっています。また、30代、40代の独身者は、男女ともに6割以上が親と同居しています。住宅に対する支援を拡充するなど、結婚すると生活レベルが下がる問題に手を打つことが急務ですが、政府の対応は薄いままです。また、非正規と正規の雇用形態によって有配偶率に2倍の違いがあります。同一価値労働同一賃金を進め、正規との違いをなくすべきです。
 政府は、現状の課題について、若い世代が「所得や雇用への不安等から、将来展望が描けない状況」だと他人事のように分析しています。しかし、労働法制を緩め、非正規雇用を増やしたのは、政府・与党ではありませんか。その責任を棚上げにして改善策も示していないのは残念です。

 今回政府が示す具体策のほとんどは、立憲民主党がかねてから訴えてきたものであり、遅すぎて不十分と言わざるを得ません。政府は優先すべき政策として、「現金給付政策の強化」を挙げていますが、民主党政権の「子ども手当」についてバラマキ批判を繰り広げた反省と総括もありません。しかも、現金給付政策の基本であるはずの児童手当については、対象や金額などの見直しの具体的内容は先送りされており、不十分なものにとどまっています。
 「授業料後払い制度」は、結局卒業後に授業料を返還する必要があり、現在の貸与型奨学金の借金の考え方と変わりません。我々が提案している大学などの無償化を実現させるべきです。
 さらに、学校給食の無償化については、まだ「課題の整理」にとどまっており、検討のスタートすら遅すぎます。一刻も早く、我々が提出した「学校給食無償化法案」を成立させて、無償化を実現させるべきです。
 また、10年以上前に三党合意で見直しの合意がされた保育士の配置基準については、やっと改善の具体案が示されましたが、対応が遅すぎます。
 多くの人が、不本意非正規雇用や長時間労働、育児休暇の取りにくい職場環境に置かれています。また、「女性活躍」と言われても、すでに仕事と家事、育児の多くを負担して、疲弊しきっています。こうしたことへの対応策も十分には示されていません。
 地方自治体議員選挙の告示日に、具体的な金額や開始時期を示さずに政策項目だけを並べて発表することは、選挙目当ての手法であり、真摯な対応とは到底思えません。実際に国民のところにはいつ届くのか、その時期は全く明らかではありません。

 全体のスピード感についても、2030年を「分水嶺」として、これから「加速化プラン」に取り組むなどとしていることは遅すぎます。非正規雇用を増大させ、10年前に児童手当と高校授業料無償化の所得制限を導入し、さらに昨年10月には児童手当の特例給付5千円を廃止し、分断を作っているのは、今の政府です。これまでの10年は、まさに「失われた10年」であり、我々の訴えてきた政策が、我々が主張し始めていた時期に実行されていれば、違う現実がみえていたのではないでしょうか。今回、政府が、我々の理念や政策を不十分ながらも大幅に取り入れたのは、出生数が80万人を割り込むなどして追い詰められた結果であって、政府・与党の「政策的敗北」であるといっても過言ではありません。

【こども家庭庁発足】
 明日4月1日には、新しい行政組織である「こども家庭庁」が発足します。立憲民主党はこれまで、子ども・子育てに関する施策について、縦割り行政を排し、総合的な子ども・子育て支援を実施するため、「子ども省」の設置を提案してきました。
 「こども家庭庁」の令和5年度の予算は約4.8兆円であり、「こども家庭庁」に移管される厚生労働省、文部科学省、内閣府などの関連部局の令和4年度予算の合計額と比較し、わずか約1,233億円増、2.6%増止まりです。既存の省庁の寄せ集めと言わざるを得ず、総理が目指す「子ども・子育て予算の倍増」には遠く及びません。
 多岐多様な子どもをめぐる問題について、縦割り行政の弊害を超えて、「こども家庭庁」がどこまで対応できるのか注視していきます。立憲民主党は、結婚・出産・子育て・育ちや学びを阻む壁を取り除き、本当に子どもたち自身が優先されるチルドレン・ファーストの「子ども政策」を実現させます。

以上

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子ども子育て政策_政府と立憲民主党の比較.pdf