参院で2月27日、政治倫理審査会(政倫審)の設置以来、事実上初となる審査が行われ、自民党の裏金問題をめぐり立憲民主党などが21日に参院議員32人を対象にした審査の申立てをしたことを踏まえ、野党筆頭幹事の吉川沙織参院議員より説明を聴取しました。同審査会委員の蓮舫参院議員も出席しました。
冒頭、自民党所属で同審査会の野村哲郎会長が、「議員赤池誠章君に対する審査申立ての件」から始まり「議員吉川ゆうみ君に対する審査申立ての件」及び自民党を離党した「議員大野泰正君に対する審査申立ての件」まで、計32人の申立ての件を「一括して議題といたします」と発言しました。
その後、吉川議員が議題について、申立て委員を代表して趣旨説明を行いました。吉川参院議員の趣旨説明は以下の通りです。
■吉川沙織議員 趣旨説明
われわれは去る2月21日、参議院政治倫理審査会規定第1条及び第2条の規定に基づき32名の議員について、議長が定める法令に著しく違反する旨の文書を添えて申立てを行いました。
自由民主党が2月13日に公表した派閥による政治資金パーティーに関する全議員調査結果等によれば、今回、申立て対象となった議員は、派閥から政治資金パーティー収入の還付金等を受けながら、自らの支部、関係政治団体の政治資金収支報告書に収入として記載していなかった、または記載すべき項目に正確に記載していなかったことが判明しています。
政治資金規正法は、政治団体に一定の届出義務を課し、その会計処理に一定の定めを設け、収支に関する報告を求め、政治資金の授受に関する一定の制限を課しており、政治資金収支報告書への不記載等は法に反する行為です。
この事実は同党が所属議員に対して行った調査結果等として公にされたものであり、いわば公党として裏金の存在を認めたことに他なりません。
政治資金規正法はその第1条で、「この法律は、議会制民主政治の下における政党その他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の授受の規正その他の措置を講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。」と規定しており、政治資金収支報告書の適正な作成は同法の目的を達成する上での大前提です。
ゆえに一連の不記載等は、金額の多寡を問わず、政治資金の収支の状況を明らかにすることを旨とする同法の基本理念に反し、国民の政治への信頼を損ね、国会の権威を貶める行為であるのみならず、複数年にわたり、かつ、集団的組織的に行われていることは極めて悪質であり、政治資金規正法に違反していることは明白です。
よって今回、申立て対象の議員は「政治倫理綱領」にある「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない」との理念にのっとり、進んで政治倫理審査会に出席し、記載等の経緯とその使途等について、つまびらかに説明した上で立法に携わる一員として、政治的道義的責任を明らかにすることを要求するものです。
最後に、本院において共に活動している議員について、こうした申立てを行うことは必ずしも本意ではありません。しかし今回の一連の不記載等の事態が明るみとなり、しかも一定期間継続し集団的組織的に行われていたこともあって、国民の政治に対する信頼を毀損している今、実態の解明は政治への信頼回復のためにも必要です。
今回、申立て対象とせざるを得なかった議員の中には、心ならずも巻き込まれてしまった方もいらっしゃるのではないか、政治資金規正法に抵触するのではないかと考えたものの、立場上あらがえなかった方もいらっしゃるのではないかと推察いたします。
本院において、今回が初めての実質的な審査のための政治倫理審査会の開会となりますが、この場において個々人についてあげつらうのではなく、冷静な審査を行うことで今回の問題の構造を明らかにし、二度とこうした事態を発生させないことにつなげたいと考えております。
そのためには今回、申立て対象となった議員の皆さまに出席をいただきたく、本審査会としてただいま議題となっております各件、特に「議員赤池正明君他30名に対する審査申立ての件」は、一体として審査に入ることについて速やかに委員各位のご賛同を賜りますようお願いいたします。