【コメント】日本銀行の「異次元の金融緩和」転換について
立憲民主党 ネクスト財務金融大臣
階 猛
日本銀行は本日の金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除と、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール:YCC)の撤廃等を決定した。昨年2月に策定・公表した「新しい金融政策」など、これまでの我が党の主張に沿った動きであり、日本の経済・財政に様々な弊害をもたらしてきた「異次元の金融緩和」の転換である。
マイナス金利政策は、我々が国会審議等で度々指摘してきた通り、2016年の導入以来、期待された効果を上げられないばかりか、地域金融機関の収益悪化、そして円安・物価高騰を招くなど、弊害ばかりが目立っていた。解除の遅れが国民生活に悪影響を及ぼしてきたことは明らかで、日銀はこの点を真摯に反省する必要がある。
YCCの撤廃は、従来の日銀の主張を踏まえれば、賃金の上昇を伴う形での2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現できると判断したことを意味する。しかし、足元の実質賃金は22カ月連続でマイナスを記録し、雇用の約7割を占める中小企業に賃上げが十分に波及するかは依然として見通せない。日銀は、政策転換の根拠について国民が納得できる説明をすべきだ。
また、指し値オペを含め、これまでと同様の長期国債の買い入れを継続するとのことだが、今後、当座預金の金利が上昇する局面で、日銀が大量の超低金利の国債を保有し続ければ逆ザヤのリスクが高まる。保有国債の安定的な処理に向けて、必要な方策を検討・実行する必要がある。
今回、ETFの新規買い入れの停止も決定された。株価がバブル期以来の史上最高値を記録する中にあって、中央銀行が株を買い支えるという異例の政策を継続する必要性は全くなく、当然の判断だ。
今後の課題は、簿価37兆円、時価71兆円と見られる保有ETFの取扱いだ。我々が主張してきたように、日銀のバランスシートから切り離すとともに、1兆円強の分配金収入は当面政府の子ども・子育て政策の財源に充てることが可能だ。金融政策の正常化と国民への還元を両立させる形で保有ETFを活用する必要がある。
今日に至るまで、前任者の負の遺産の解消に取り組んできた、植田総裁をはじめ関係者の努力には敬意を表する。しかしながら、今回の政策転換は、「異次元の金融緩和」の成功によるものではない。むしろその失敗により、財政と地域経済は悪化し、急速な円安と物価高騰が生じ、国民生活は窮地に陥った。その挙句の果ての撤退戦がこれからも続くことを肝に銘じなければならない。
立憲民主党は、10年以上の長きに渡る金融政策の失敗を教訓とし、今後も「新しい金融政策」の工程表に基づき、金融政策の正常化と賃金の上がる経済の実現に向けて、取り組みを続けていく。