立憲民主党ジェンダー平等推進本部は、「女性に選ばれる地域をつくる~地方からの女性流出を考える連続勉強会~」の第3回勉強会を開催しました。

 第1回では地方を離れる若い女性たちの声から背景や実態を学び、第2回では兵庫県豊岡市など、地域で先進的に取り組む事例を紹介。最終回となる今回は、「『地方からつくるジェンダー平等』~国や自治体で実現できる政策は何か~」をテーマに、株式会社ウィルラボ代表取締役の小安美和さんから、地方でジェンダー平等を進める具体的な方法や海外の事例についてお話を伺いました。

 冒頭、党ジェンダー平等推進本部の辻元清美本部長は、今回の勉強会について「地域から変えていこうというテーマ」で取り組んできたと紹介。小安美和さんと地方女子プロジェクト代表の山本蓮さんを「企業や自治体、国への提言、それからメディアでも発信をしていただいて、今の状況を何とか動かしていこうということで最先端で頑張っていただいているお2人」と紹介し、活発な議論を呼びかけました。

 山本蓮さんは、「地方の女性流出という議論に当事者の声が届いていないのではないか」という問題意識から活動を始めたと説明。今回の勉強会が、課題を知るだけでなく「何かアクションにつなげたい」という人たちをつなぐ機会になっていることへの期待を語りました。

豊岡市の経験から学ぶ「5つのステップ」

 小安さんは、兵庫県豊岡市のジェンダーギャップ解消の取り組みに8年間アドバイザーとして伴走してきた経験を紹介。各地域で取り組みを進める際には、次の5つのステップが重要だと説明しました。
1.現状をデータで可視化する
2.自分たちの地域と似た自治体の事例を集める
3.市民、行政、経済団体など当事者・ステークホルダーを巻き込む
4.継続して取り組むためのネットワークをつくる
5.メディアと連携し、発信する

 その前提となる「ステップ0」として、小安さんが「最も大事」と強調したのが、「そもそも、何のためにジェンダー平等を目指すのか」を地域ごとに定義することです。

 豊岡市では、若い女性の流出を止めることそのものではなく、「そもそも若い女性の暮らしや存在に価値を感じていないこと」が問題だと捉え、それを「公正さと命への共感」に関わる問題として位置づけました。小安さんは、「企業業績にマイナスだから」だけでは人は動かないと指摘し、地域が目指す将来像の中で、なぜジェンダー平等が必要なのかを言葉にする重要性を強調しました。

まずは「データを見る」――地域の課題を可視化する

 小安さんが自治体での取り組みを進める上で重視しているのが、データによって地域の現状を可視化することです。

 豊岡市では、市が持つ税情報などを活用して男女の所得差を可視化し、地域に大きな男女格差があることを明らかにしました。また、地域企業を対象に男女間の格差を調査し、ジェンダーギャップの小さい企業を表彰するなど、企業の取り組みも後押ししています。

 小安さんは、こうしたデータは特別な自治体だけが持っているものではなく、どの自治体にも税データなど、地域の実態を知る材料があると指摘。女性の就業率、管理職比率、議員比率、男女の賃金差、家事・育児時間などをデータで捉えることが、具体的な政策や取り組みにつながると語りました。

「女性が声を上げたから、社会が変わった」――アイスランドから学ぶ

 小安さんは、ジェンダー平等を進めてきた国としてアイスランドの事例も紹介しました。

 アイスランドでは、男女それぞれに6か月の育児休暇が付与され、男性の育休取得率が85%に達しているほか、企業の役員に女性40%のクオータ制が義務付けられています。こうした政策の背景には、女性たち自身の行動がありました。1975年には、女性たちが仕事や家事、ケアなどを一斉に休む「女性のストライキ」を実施。これを契機に女性の政治参加も進み、世界初の女性大統領や女性首相の誕生につながっていきました。

 現地の人々から小安さんが聞いたのは、「政策が進んだのは、女性たちが声を上げたから」という言葉だったといいます。自分たちが声を上げ、政治や地域の意思決定に参加する。その積み重ねが社会を変えていくことを、アイスランドの事例は示しています。

日本でも始まっている、地域からの変化

 続いて小安さんは、日本各地で進む取り組みを紹介しました。

 自治会に女性が極端に少ない現状を変える富山の取り組みを紹介。「防災を男性だけでやっている地域もまだまだあって、本当にリスク」「女性がやっと自治会に行っても、給仕ばかりさせられる現状を変えるべき」と述べ、地域運営への女性参画を進める必要性を訴えました。

 また、「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」を活用して地域課題を分析する長野の取り組みを紹介。行政・教育・経済・政治のデータから、自分たちの地域の課題を具体的に見つけることを呼びかけました。

 さらに、埼玉の「ジェンダー主流化」の取り組みも紹介。男女共同参画の担当部署だけの課題とせず、「あらゆる部局の中で」ジェンダーの視点から事業を点検し、その結果を翌年度の予算に反映させる取り組みです。

 小安さんは、こうした日本各地の実践をヒントに、「自分の住んでいる自治体ではどうか」と考え、自分たちの地域で何ができるのかを見つけてほしいと呼びかけました。

「あなたにも地域を動かす責任もパワーもある」

 最後に山本さんは、ジェンダー平等は「関係のない分野がない」テーマであり、人口減少や女性流出はあくまで一つの切り口にすぎないと指摘。「ジェンダー平等は命に関わる話」と述べ、男性の生きづらさや、子育て・介護などのケアを女性に偏って担わせている社会のあり方など、さまざまな問題につながっていることを強調しました。

 そして、「あなたにも地域を動かす責任もパワーもある」と参加者に呼びかけ、「自分で立ち上がるのも大事ですけど、立ち上がった後に孤立しないで仲間を集めていくことも大事」と、地域で声を上げ、仲間とともに行動することの大切さを訴えました。

女性に選ばれる地域を、誰もが生きやすい地域へ

 3回の勉強会を通じて司会を務めた小島とも子・ジェンダー平等推進本部事務局長は、ジェンダー平等を地域づくりの中心に据える「ジェンダー主流化」によって、誰も取り残されず、暮らしの中で「しんどい」と感じる人を減らしていけるのではないかと締めくくりました。

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勉強会を通じて話された「地域からジェンダー平等を進める10のポイント」

1.「なぜジェンダー平等を進めるのか」を地域で言語化する
「女性の流出を止めるため」だけではなく、「誰もがその人らしく生きられる地域をつくる」など、自分たちの地域にとっての意味を明確にする。小安さんは、政策として取り組む際には、この「ステップ0」が最も重要だと指摘している。

2.地域のジェンダーギャップをデータで「見える化」する
女性の就業率、管理職比率、議員比率、男女の賃金差、家事・育児時間など、地域の実態をデータで把握する。「この地域は女性が活躍しているから問題ない」と決めつけず、データから課題を発見することが重要。

3.自分の地域と似た自治体の成功事例を探し、政策化する
全国の「有名な先進事例」をそのまままねるのではなく、人口規模や産業構造などが似た自治体の取り組みを探し、「自分の地域ならどうできるか」に置き換える。

4.女性や若者など「当事者の声」を政策形成の中心に置く
「女性は地域に参加したがらない」と決めつけず、なぜ参加できないのかを当事者に聞く。例えば、会議の時間帯や、参加しても女性が「台所仕事」を担わされるといった、参加を阻む構造そのものを可視化する。

5.行政だけでなく、市民・企業・経済団体などを巻き込む
行政に加えて、商工会議所・商工会・金融機関・企業、市民団体、自治会、学校など、地域のステークホルダーを特定し、一緒に取り組む仕組みをつくることが必要。

6.地域の中小企業の「職場改革」を進める
地方では中小企業・小規模事業所が多いため、自治体が経済団体や金融機関などと連携し、長時間労働の是正、柔軟な働き方、休暇の取得、ハラスメント防止などを進める。これは女性だけでなく男性にとっても働きやすい地域づくりにつながる。

7.保育・学童・介護・家事支援など「ケアを支える地域」をつくる
企業だけに働き方改革を求めても限界がある。保育、学童、介護、家事代行など、ケアを社会全体で支えるサービスを量・質の両面で整備することが重要。

8.固定的な性別役割分担を前提にした制度・仕組みを見直す
意識啓発だけでは限界がある。社会保障制度、税制、企業の家族手当など、固定的な性別役割分担を前提としてきた仕組みそのものをアップデートする必要がある。自治体議員は、地域の制度・条例・行政施策についても、この視点から点検することが求められる。

9.意思決定の場に女性を増やし、「実践する人」を増やす
女性議員を増やすことはもちろん、自治会、地域づくり、企業、学校など、あらゆる意思決定の場に女性が参画できる状態をつくる。首長・議会のコミットメントに加え、庁内横断の推進体制を整えることも重要。

10.「難しい」で終わらせず、仲間を増やし、発信し続ける
「この地域では難しい」「この業界では難しい」と言わず、「では、どうしたらできるか」を考える。そのために議員、市民、企業などが孤立せずネットワークをつくり、実践例を発信する。メディアも巻き込み、社会的な理解を広げていくことが重要。