横浜市議時代から基地問題に取り組み、昨年9月の新立憲民主党の結党で、外交・安保・主権調査会長に就任した篠原豪衆院議員。政治を志した原点や政治のあり方、外交・安保・主権調査会の活動、今後の国会論戦の展望について聞きました。

高齢者の孤立問題で政治に覚醒

 1980年代後半、中学1年生になる頃だったと記憶していますが、老人の孤立問題を取り上げたドキュメンタリー番組をテレビで観ました。今振り返ると、その時に知った日本社会の負の側面を何とかしたいと思ったことが、政治を志した原点のように思います。80歳を超えたおばあさんが倉庫の一部に置かれた二畳ほどの物置のようなところで生活をしていました。年金額が5万円に届かず、支給日に2本の缶ビールを飲むことだけが人生の楽しみだと言っていました。財産も身寄りもない孤独なおばあさん。こういう方々が戦後の日本を支え、豊かな日本にしてくれたわけではないですか。その人たちの人生の最後が、こうなってしまう社会ではダメだ。社会の枠組みを変えなければいけないと思いました。

発展途上国までも視野に入れた政治へ

 社会への関心から大学では政治学を専攻しました。「国家とは何か」「パワーとは何か」「どこまで保障すべきか」などいろいろ勉強しました。国家は、自国民の福祉福利について考えます。それはもっともなことです。ただ、日本経済は、世界経済とつながっており、発展途上国の労働力などで私たちは豊かな生活を送っています。そうであるならば、日本のような先進国は、発展途上国の保障まで考える必要があるのではないでしょうか。ただ、単に発展途上国に資金を提供しても消えてしまう可能性があります。どのように分配するかの検討は必要だと思います。例えば、どの国に育っても、子どもが成人した時に自分の自由な意思に基づいて、自分の人生を選べるところまで保障することも一つの考え方です。

野党の第一の目的は政権交代

 一般企業での社会人生活を経て、横浜市会議員になりました。市議会では基地特別委員会などに所属しました。実は横浜市は、基礎自治体の中では、沖縄に次いで多くの在日米軍基地を抱えていたので、その実情を把握する必要がありました。その後、2014年の衆院総選挙で維新の党から立候補し初当選。維新の党が民主党と合併し民進党となり、2017年総選挙では党が分裂しました。昨年9月、バラバラだった野党が結集、新しい立憲民主党の結党に私も参画しました。野党の第一目的は、政権交代を目指すことにあります。衆院で100人超、衆参両院で150人規模の「大きな塊」ができたことによって、政権交代可能な政党を作るという目標がようやく達成されました。

外交・安保・主権調査会の活動

 新党結成とともに、外交・安保・主権調査会が設置され、若輩者の私がその会長に指名されました。政権交代を見据え私たちが政権を引き継いでも、現実的な外交安全保障を展開できるよう元外務大臣の岡田克也議員や玄葉光一郎議員、故羽田雄一郎元国交大臣、渡辺周元防衛副大臣ら外交安全保障に精通した議員に調査会役員をお願いしました。

 第1回の会合で私は、次のような考え方を示しました。「外交・安保・主権調査会が取り組む課題は、部会がその時々に生起する諸問題、あるいは、法案や条約等への対処を中心に議論するのに対して、もっと中長期的に、換言すれば、そうした個々の問題を包括するような枠組みを中心に据えて、議論することにあると考えております。私は、その枠組みを、わが国の外交・防衛が基軸とすべき『日米同盟』と『専守防衛』の二つであると考えております。例えば、北朝鮮のミサイル脅威、あるいは、中国の海洋進出への対処等を考えるにあたっても、外交・安保・主権調査会は、その二つの原理・原則を絶えず念頭に置いて、問題を吟味し、評価を下すことが肝要であると考えています」。

領域等の警備及び海上保安体制の強化に関する法律案

 「日米同盟」があってこそ、「専守防衛」ができるわけですから、「日米同盟」と「専守防衛」はセットで考える必要があります。外交・安保・主権調査会では、立憲民主党が基本とする「日米同盟」と「専守防衛」をベースにし、中長期的な課題を取り上げて検討を重ねてきました。特に米中対立に伴う安全保障問題にかなりの時間を割きました。また、在日米軍や航空自衛隊の宇宙作戦隊とも意見交換を行ないました。検討の成果の一つが、6月3日に衆院に提出した領域警備・海上保安庁強化法案(正式名:「領域等の警備及び海上保安体制の強化に関する法律案」)です。

 中国が尖閣諸島周辺域において、いろいろな活動を活発化させているし、武装漁民船が南沙諸島に多く出て行き、そこで威力を見せつけるようなこともあります。こうした事態に対して、海上保安庁が一生懸命頑張っていますが、それでも足りない部分について自衛隊が後方に立ち、(領域等の警備を)補完する能力を法的に担保するために立法したものです。

領域警備・海上保安庁強化法案を提出

平和を守るための現実的外交

 枝野幸男代表が9月24日、「#政権取ってこれをやる」の一環で「平和を守るための現実的外交」を発表しました。その下敷きになっているのが、外交安全保障分野の党基本政策です。立憲民主党は、「バラバラ」などと称されますが、実体は全く違います。基本政策の取りまとめでは、メンバー全員が一言一句で一致しました。先の領域警備・海上保安庁強化法案の作成過程でも、本当に多様な意見があり、さんざん議論しました。最終的に成案を得た時には、自然と拍手が出たくらいです。

 今後の国会では、敵基地攻撃論や経済安全保障など、国の将来に大きな影響を及ぼす問題が多く議論されます。戦後、日本の国会は国会論戦を戦わせながら、平和国家として歩んできました。立憲民主党は、その議論を最も忠実に受け継いでいます。それが党の外交安全保障政策に活かされています。防衛政策では戦後日本は、日米同盟を基軸とし、大国外交の道を敢えて放棄しました。立憲民主党は、健全な日米同盟、そして専守防衛を基軸にして現実的な外交安全保障政策の議論を深め、国際社会の平和と安定に寄与していきたいと決意しています。

枝野代表が「平和を守るための現実的外交」を発表 #政権取ってこれをやる Vol.5