衆院政治改革に関する特別委員会が6月5日開かれ、自民・公明・維新が合意した自民党の再修正案の趣旨説明と質疑が行われ、太栄志議員が質問に立ちました。同日午後には、修正案をめぐり自民・維新の党首間で文書を交わしたにもかかわらず調整不足が露呈する形で与野党で合意していたはずの昨日4日の総理入り質疑が一日遅れで行われ、岡田克也幹事長が質問。質疑終局後には吉田はるみ議員が討論に立ち、その後に採決の結果、自民党提出の政治資金規正法改正案及び修正案は賛成多数で可決。立憲民主党・国民民主党・有志の会提出の「政治資金規正法等の一部を改正する法律案」と立憲民主党提出の「企業・団体献金禁止法案」「パーティー開催禁止法案」は賛成少数で否決されました。
■太 栄志議員
冒頭で太議員は連日行っている街頭活動や地域でのタウンミーティングでの受け止めについて、「国民の皆さんが怒っている。政治への不信は頂点に達している」と述べ、国民の怒りを代弁するために質問を行うと宣言しました。また、自民党による裏金問題が発覚し、「火の玉になって信頼回復につとめる」と岸田総理が発言した昨年12月13日から半年近くが経過したが、真相は一向に分からないままであるうえ、国会として開催を決定していた昨日4日の総理入り質疑が行われなくなるといった前代未聞の混乱が起こったことについて懸念を示しました。
太議員はまた、「法案の中身がころころ変わって腰を据えて審議できない」と問題視するとともに、政策活動費に関する領収書の公開基準について「本日出された法案を見てもやはりブラックボックス」「一昨日の審議を聞いても、結局、黒塗りで大量に10年後に出てくる可能性もある状況だ」と指摘。まさにこの期に及んでもなぜ政策活動費を廃止しないのかと迫ったが、自民党答弁者の鈴木議員は明言を避けました。
政策活動費に関する領収書の10年後の公開に関して、「10年間どう保存されるのか法律のどこで担保されているのか」と太議員が質問したのに対し自民党答弁者は「今後、各党の協議ということだが、現行法上の制度を勘案しながら、なるべく早期に具体的な内容を検討してまいりたい」と答弁。「結局何も決まってない」ことが露呈しました。
太議員は企業団体献金についても取り上げ、今回の裏金問題は企業団体献金に起因するところが大きいにも関わらず今回の法案ではなぜここに踏み込まないのかとの認識を示し、参考人質疑でも「失われた30年間の日本の衰退の原因の一つは企業団体献金によって政策決定が歪められ、本当にお金が必要なところに予算投資できなかったことが問題だ」との指摘があったことにも触れ、アメリカ・フランスは廃止、カナダ・スペイン・韓国なども廃止する流れで、イギリスもさまざまな規制を行っている状況だと説明し、「これが今の世界的な大きな流れ。そうしたなかでなぜ企業団体献金を放置しているのか、なぜやらないのか。これは30年前(の政治改革の際)に国民の皆さんとも約束したこと。それに全く触れてない。これでは残念ながら国民的な理解は得られない」と断じました。
■岡田克也議員
同5日午後、総理入りで質疑が行われ、岡田克也幹事長が、(1)調査研究広報滞在費(旧文通費)、(2)登録政治資金監査人による外部監査、(3)「茂木方式」(公開規制の緩い「その他の政治団体」への付け替え)、(4)政治資金の独立機関による監視――等について、岸田総理の認識をただしました。
(1)調査研究広報滞在費(旧文通費)
衆参両院の議長のもとでの協議が合意されている旧文通費について岡田幹事長は、今国会中に結論を得るべきだと岸田総理に迫りました。これに対し岸田総理は、「早期に結論を出すべく自民党として貢献する」と答弁しました。
(2)登録政治資金監査人による外部監査
岡田幹事長は、立憲民主党など2党1会派で提出した政治資金規正法改正案が「ほとんど無視された」と強調。その上で、登録政治資金監査人による監査は、現行法では「国会議員関係政治団体」の「支出」を対象としているが、「収入」も対象にすべきだと指摘しました。自民案では、収支報告書と通帳を比較するだけであり、「そもそも通帳に入ってなかったおカネが裏金」だとして、「裏金対策」にはならない「羊頭狗肉」だと批判しました。
(3)「茂木方式」(支出公開規制の緩い「その他の政治団体」への付け替え)
岡田幹事長は、自民党の茂木幹事長が、国会議員関係政治団体以外の団体に寄附をし、厳しい支出公開規制の適用を免れていた問題(茂木方式)についても追及。自民案では「1000万円以上の寄附を受けた団体を、国会議員関係政治団体とみなして」収支を公開するとしていることについて、(1000万円未満の)団体をいくつもつくれば何千万円も公開を免れることができるとして、「脱法行為そのものだ」と批判しました。これに対し岸田総理は、1000万円未満の基準額にすると「事務負担が重くなる」との認識を示しました。
(4)政治資金の独立機関による監視
自民案では政策活動費の使途について、その領収書が10年後に「黒塗り」で公開される可能性があるとして岡田幹事長は、「誰が黒塗りの範囲を、どういう基準で決めるのか」と岸田総理に迫りました。これに対し岸田総理は、「具体的なルールはこれから作っていくことになる」とあいまいな答弁に終始しました。
その上で岡田幹事長は、仮に「政策活動費」を認めるにしても、それが「政策活動費」としてふさわしいか独立した第三者機関が「一定の基準に基づいてチェック」すべきだと強調。しかしながら自民修正案では、その第三者機関の設置時期が明確でないとして、来年度の収支報告書から適用できるよう、年内に設置し「先送りすべきでない」と強調しました。これに対し岸田総理は、「どのような機関を作るかなど、これは簡単な議論ではない」と述べ、またしても明言を避けました。
最後に岡田幹事長は、自民修正案の「政策活動費」に関する規定では、地方組織が含まれていないと厳しく指摘。参院の審議で「修正してもらいたい」と迫りました。
■吉田はるみ議員 討論
採決に先立ち吉田はるみ議員は立憲民主党・無所属を代表して、立憲民主党・国民民主党・有志の会提出の「政治資金規正法等の一部を改正する法律案」、立憲民主党提出の「企業・団体献金禁止法案」「パーティー開催禁止法案」に賛成、自民党提出の「政治資金規正法の一部を改正する法律案」及び「修正案」に反対の立場で討論に立ちました。
吉田議員は「立憲民主党案は、今回の自民党派閥の政治資金パーティーの裏金問題に端を発した政治不信を払拭するため、企業・団体献金の禁止、政策活動費の廃止、連座制の導入、政治資金パーティー開催禁止など、政治資金の透明化を進め、『抜け道』を塞ぐ、自らを厳しく律する本気の政治改革であり、賛成いたします」と表明。一方で自民党案及び修正案への反対の理由について以下を列挙しました。
(1)維新を含め野党が禁止を主張する企業・団体献金は全くのゼロ回答。
(2)政策活動費は領収書を公開するとあるが、黒塗りの可能性を否定していない。そして公開は10年後。そもそも不記載や虚偽記載の罪に問われ得る公訴時効が5年であり、10年後に公開されたところで罪に問えない。責任を免れる。その上、この使途不明のブラックボックスである政策活動費には上限額が示されておらず、今後も何十億と言う使途不明の政策活動費が許され、10年もの間、国民が見ることはできない。第三者機関の設置が謳われたが、独立性はどのように担保するのか、一番重要なところが何も決まっていない、「なんちゃって第三者機関」。
(3)確認書の提出を義務付けても、国会議員は「私は知りませんでした。悪気はありませんでした」という逃げ道が確保されている「なんちゃって連座制」。
(4)政治資金パーティーの企業・団体による購入は温存されており、公開基準を1件5万円超に引き下げても、複数回開催し、購入者を分ければ分散でき、現状と変わらない。その他、茂木方式や岸田方式の穴は塞がれておらず、今後も継続できる。「施行後3年をめどに見直す」というのも、ザル法案、ザル合意と断ぜざるをえない。
最後に吉田議員は、「自民党案と修正案は、衆参に裏金議員82名が判明した異常事態を引き起こし、国民の信頼を失墜させたにも関わらず、反省が見られない。『抜け穴』だらけ、『検討ばかりの問題先送り』、『逃げ切り』の自民党案では、到底国民の理解は得られない。『そうではない、この自民党修正案こそが、国民の皆さまに胸を張れる内容だ』と言うなら、総選挙で主権者たる国民に信を問うべきである」と強く求め、討論を終えました。