立憲民主党は5月20日、国民民主党・有志の会と共同で「政治資金規正法等の一部を改正する法律案」を衆院に提出しました。

 「政治資金規正法等の一部を改正する法律案」は、自民党派閥の裏金問題を受け、党政治改革実行本部(本部長・岡田克也幹事長)で決定した「本気の政治改革実現に向けて」の考え方に基づき、政治資金の透明化を図り、政治・政策決定を特定の企業・団体がゆがめるような状況を是正するために必要な措置を盛り込んだ法案であり、国民民主党との実務者協議を重ねて合意に至り、衆議院会派の有志の会の賛同も得て2党1会派で共同提出しました。

 本法案は、政治団体の収支報告の適正の確保及び透明性の向上により政治に対する国民の信頼の回復を図るため、収支報告書の不記載、虚偽記入等に関する政治団体の代表者に対する罰則の強化、政治資金監査の対象となる政治団体及び事項の拡大、収支報告書のデジタル化の一層の推進、政党から公職の候補者に対してされる寄附の禁止及び渡切りの方法による支出の禁止等の措置を講ずるものです。

 ポイントの第1は「政治資金収支報告に関する処罰の強化」です。秘書や会計責任者のせいにするのではなく、政治家本人の責任を問えるようにするため、政治団体の収支報告書について、会計責任者に加え、当該政治団体の代表者にもその記載及び提出を義務付けることで、代表者において、収支報告書の不記載や虚偽記入等に故意・重過失がある場合に処罰されることにしています。議員が直接的に収支報告書の内容に責任を負うことになり、「確認書」の作成を義務づけ、会計責任者が処罰されなければ政治家本人の責任に至らない自民党の法案よりも厳しくしています。

 「政治資金の隠匿」にかかる罰則の強化として、150万円を超える寄付に関する収支報告書等の不記載については、過失による場合についても罰則を新設しています。

 国会議員関係政治団体の代表者は、国会議員に限定することとしており、後援会などについても政治家本人の責任を問えるようにしています。あわせて、政党や政策研究団体なども寄附金控除の適用を受ける場合は、公職の候補者を代表者とするものに限定することで、政党や派閥の長の責任も問えるようにしています。

 第2は「政治資金収支報告の適正の確保・公開の充実」です。

 まず寄付金控除を受けられる国会議員関係政治団体で資金を集め、公開規制の緩いその他政治団体に資金を移動して規制を免れる「茂木方式」に対応するため、特定の国会議員に係る国会議員関係政治団体から年間100万円超の寄付を受けた国会議員関係政治団体以外の政治団体は、国会議員関係政治団体並の厳しい公開規制の対象とします。自民党案では年間で1000万円以上の資金を移した場合に限っており、規制の実効性に疑問があります。

 つぎに、登録政治資金監査人による外部監査の対象となる政治団体に、「政党本部」及び「政策研究団体」を追加するとともに、外部監査の範囲に、「収入」に関する事項を追加することとしています。

 そして、政党・政治資金団体・政策研究団体・国会議員関係政治団体の収支報告書の提出については、オンライン提出を義務化するとともに、総務大臣・都道府県の選挙管理委員会は収支報告書を、インターネットを利用する方法で公表しなければならないとしています。この場合、収支報告書に記載された個人の寄付者・政治資金パーティーの対価支払者の住所に係る部分を公表するときは、都道府県・郡・市町村の名称に係る部分に限って行うものとしており、プライバシーにも配慮しています。

 さらに、インターネットを利用する方法で国会議員関係政治団体の収支報告書を一元的に閲覧することができるようにすることとしています。なお、個人寄付者等の住所に係る情報の保護の観点も踏まえつつ、デジタルで提出された収支報告書につき、横断的な検索が可能となるような措置・運用を行うことにしています。

 オンライン化等の進展に鑑み、収支報告書の時期について、翌年の「11月末日」から「8月末日」に早めるものとするとともに、公表期間についても「3年」から「7年」に延長しています。

 第3は「政策活動費の禁止」です。政党から公職の候補者個人に対してされる寄附を禁止(選挙運動を除く)するとともに、役職員・構成員に対する渡切りの方法による経費支出も禁止します。今後、寄付をする場合は、政治家の政党支部又は資金管理団体に対して行われるようになり、収支がそちらの報告書で公開されます。また、政党による精算不要の経費(「渡切費」)として行われてきたものも禁止され、必ず精算が必要となり、最終的な支出先やその金額が政党の会計帳簿・収支報告書に記載されることになります。

 一方、自民党案は引き続き政策活動費の議員への支給を認めています。使途を党が項目ごとに公開するといっても抽象的なカテゴリーにとどまり、領収書の添付がないので証明にもなりません。1件50万円超でないとそもそも非公開のままであり、県連などの政策活動費は対象外となっています。

 最後に、2026(令和8)年1月1日から施行することとするとともに、政治家本人の自らの選挙区支部への寄附の寄付金控除の特例の適用除外、所属議員が政治資金または選挙に関する犯罪に係る事件に関し起訴された場合の所属する政党への政党交付金の停止の制度の創設、政治資金に係る第三者機関の国会への設置を附則に盛り込み、この法律の施行後においても、望ましい政治資金の収支の公開に関する制度の在り方について不断の見直しを行うこととしています。

政治資金規正法等の一部を改正する法律案 落合貴之 本庄知史 小沼巧

 法案提出後の記者会見で、筆頭提出者の落合貴之衆院議員は「自民党案とは中身が全然違う。われわれの案は抜け道をできるだけ少なくし、実効性も担保した案であり、特別委員会でしっかり審議して実現していくように力を合わせていく」、国民民主党の古川元久衆院議員は「国民の皆さんの政治に対する信頼が失墜しているだけでなく、その後の自民党の対応によって不信がかき立てられている。悪循環ではなく信頼回復のためにも改正案を実現しないといけない」「政治に対する信頼を回復する第一歩を踏み出すため、最低限でも今回提出した案は実現しなければならない」、有志の会の福島伸享衆院議員も「2党1会派でがっちりスクラムを組んで、国民の期待に応えるようともに戦っていく」などと述べ、2党1会派の共同提出の意義と成立に向けた意気込みを語りました。

 落合衆院議員は最後に「自民案ではダメだというのがスタートであり、国民にわかるよう審議時間をしっかり確保し、国民の声を反映した議論を進めていく」と改めて今国会での成立に意欲を示しました。

 今後、政治改革に関する特別委員会での質疑や各党間の与野党協議を通じて、実効性ある規正法等改正案の実現に向け、議論を主導していくことにしています。

 法案提出者は、立憲民主党が落合貴之(筆頭提出者)、渡辺周、本庄知史、長妻昭(欠席)、山井和則(欠席)、手塚仁雄(欠席)、後藤祐一(欠席)、吉川元(欠席)各衆院議員です。国民民主党は、古川元久、長友慎治各衆院議員です。有志の会は吉良州司衆院議員(欠席)です。また、法案提出には立憲民主党の笠浩史衆議院議員と小沼巧参院議員、国民民主党の竹詰仁参院議員、有志の会の福島伸享衆院議員が同席しました。

【法案資料フルセット版】立国有案(政治資金規正法等改正案.pdf

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