前頁< ヒアリング・第1部(前半) ヒアリング・第2部(前半) >次頁


 

認定NPO法人 DPI日本会議 事務局長  佐藤聡さん
特定非営利活動法人 日本障害者協議会(JD)理事  太田修平さん
DPI女性障害者ネットワーク 代表  藤原久美子さん
特定非営利活動法人 日本アビリティーズ協会 会長  伊東弘泰さん
一般財団法人 全日本ろうあ連盟 事務局次長・本部事務所長  倉野直紀さん
一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事長  新谷友良さん
社会福祉法人 日本視覚障害者団体連合 情報部長  三宅隆さん

コメント
障がい・難病PT 副座長  金子恵美  衆議院議員

国政報告
障がい・難病PT 座長  山花郁夫  衆議院議員
障がい・難病PT 事務局次長  横沢高徳  参議院議員

総合司会
障がい・難病PT事務局長  早稲田夕季  衆議院議員


国政報告


早稲田  それでは国政報告に移らせていただきます。障がい福祉3法案について障がい・難病PT座長の山花郁夫議員よりお願いいたします。

障がい福祉3法案

山花郁夫  みなさんこんにちは。今日はご参加ありがとうございます。衆議院議員の山花郁夫でございます。障がい福祉3法案について報告させていただきます(※広報紙号外参照)。
 2020年の通常国会にこの3法案を衆議院に提出をいたしました。1つ目は「介護・障がい福祉従事者処遇改善法案」です。介護、あるいは福祉の従事者の賃金は他の産業と比べても低いのではということは以前から指摘があったところであります。特に今年はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大に伴いさらに厳しい状況にございます。ケアマネージャーさんや事務職も含めて賃金の引き上げを求めるということが法律案の内容です。
 もう1つが「重度訪問介護就労支援法案」です。いま重度障害の訪問支援サービスでは、通勤とか、通学には使ってはいけないという通知がなされています。これは、個人の経済活動に対して税金を投入することはできないということが役所の理屈ですけれども、しかしGoToトラベルではキャンセル料に税金を活用するという実績がございますので、絶対的な理由ではないと私たちは考えております。むしろ憲法に謳われた勤労の権利であるとか、教育を受ける権利などが実質化するという意味からすれば、こうしたことを可能にすることこそが必要なのではないかと考えております。
 3つ目は、障がい者の事業所などでの食事提供や送迎をしているところがございますけれども、この報酬が加算されるという制度に対して当事者に不利益な変更はしてはいけないということを内容とする法案です。私自身地元の事業所からも、ただでさえ工賃が安いのに利用者さんにこの食事代や送迎代を請求するなんてことは考えられない、というようなお声もいただいております。食事提供加算については維持される方向で検討されることになったと承知をいたしておりますが、この法律により報酬改定のたびに利用者の方々が心配しなければならないということがなくなると考えております。
 この3法案ですが、ずっと継続審議の状態で審議が滞っております。今日のヒアリングは自治体議員のみなさんも参加されていると思いますので、3法案の成立を求める旨の意見書などを議会から上げていただくということを取り組んでいただけないでしょうか。各団体ご参加のみなさんも自治体議会に意見書を提出してくださいということを働きかけていただけるとありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

早稲田  それでは続きまして、バリアフリー法改正の効果について障がい・難病PT副座長であります、横沢高徳議員よりお願いいたします。

「バリアフリー法」改正

横沢高徳  みなさんこんにちは。参議院議員の横沢でございます。私も23年前に脊髄損傷して車いすで生活をして今は国会で活動させていただいております。私からは「バリアフリー法」の改正についてご報告させていただきます(※立憲民主党広報紙号外「バリアフリー法案」参照)。
 今回「バリアフリー法」が改正になりまして大きくは3点、まず公共事業者の取り組みとして、ソフト面の基準遵守義務が課せられました。これはスロープ板の適切な操作、そして明るさの確保とかですね、今まではどちらかというとハード的なところが多かったのですがソフト面でも充実しました。今までは交通事業者単体だったんですが、交通事業者と交通事業者への乗り継ぎの応諾義務とされ、乗り継ぎの円滑化が1歩進められました。
 もう1点は国民に向けた啓発活動の取り組みです。心のバリアフリーを進めましょうというところが一歩進みました。これは車いす駐車場であったり、身障者用トイレの適切な使用等、あとは学校では学習指導要領に心のバリアフリーという教育が入りました。小学校では2020年度から、中学校では来年度から心のバリアフリーの教育が進められます。
 3点目は、バリアフリー基準の適合義務の対象が拡大になりました。避難所等にも使われる公立の小中学校が「バリアフリー法」の適合義務の対象になります。また、最近高速バス等の利用者も増えまして、バスタ新宿のような旅客特定車両停留施設も「バリアフリー法」の適用になります。
 そして、今回の「バリアフリー法」の改正では付帯決議も多く盛り込まれました(※立憲民主党広報紙号外「バリアフリー法案」参照)。衆議院では14、参議院では18、これが今後の課題となると思います。先ほどご指摘のありました情報のバリアフリーであったり、小規模店舗の入り口のバリアフリーであったり、あとは地方部のバリアフリーがまだ日本は進んでおりません。現在、1日の平均的利用者数が3000人以上の駅などが対象となっていますが、これを2000人以上に緩和するなど、地方部のバリアフリーを進めなければなりません。それに、視覚障がいの方が転落して命を落としてしまう事故も多く、ホームドアの設置なども進めていかなければいけないと思います。
 まだまだたくさんありますが時間も限られておりますので私からの報告は以上にさせていただきます。ありがとうございます。

※バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標についてはバリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(最終とりまとめ)(概要)・抜粋をご覧ください。


【第1部各団体からの意見・提案内容】

※当日の資料等をもとに要約、抜粋し掲載しました。


《COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策関連》

事業・サービス・予算関連

  • 生活介護など通所施設における基準緩和を

 障がい者等の通所施設などでは、利用者の最低定員や職員等の人員数が基準等により規定されている。COVID-19の感染拡大を回避するための3密対策を実施しつつ、必要とする当事者が利用しやすい施設、サービスとなるよう、人員基準や設備基準などの緩和を検討し実施すること。

  • 入院加療等におけるヘルパー利用を

 重度訪問介護利用の障がい者の一部(区分6)は医療機関に入院中でもその利用が可能である。しかし、COVID-19以外の入院加療となった場合にヘルパーの入室を拒否する事案が発生している。介助が必要な重度障がい者は、本人に日ごろから接して慣れたヘルパーによる介助が必要であるため、外部のヘルパーを一律に拒否することなく対応すること。

  • 在宅勤務等における重度訪問介護の利用を

 COVID-19感染拡大によりテレワーク等が実施され在宅勤務が拡大した。しかし、就業先などで受けられる介護者等の利用が、在宅勤務では利用できないケースもある。重度障がい者によっては在宅ワークの際に介助者が不可欠な人も存在するため、在宅勤務での重度訪問介護の利用を認め実施すること。

  • 在宅での医療・介助体制の構築と実施を

 日常的に介助が必要な障がい児・者が、COVID-19に感染して自宅療養となった場合や、介護を担っていた家族が感染して入院し介助ができなくなったなどの場合、「在宅医療チーム」や「在宅介護応援チーム」などによる派遣等の仕組みをつくり、在宅で適切な医療と介護サービスを受けられるような体制を構築し、実施すること。

  • 障がい者への自立生活サービス等の維持・継続のための制度の改善を

 障がい者への介助派遣サービスをはじめとした日常生活支援サービスは必要不可欠なサービスであり、COVID-19の感染拡大による緊急事態状況下でも維持される必要がある。障がい者への自立生活等のサービスが継続して運営されるためには、介助者などのケアワーカーに感染予防の知識を伝えるとともに、医療現場と同様に保護具などの提供が必要であることから、ケアワーカーの報酬額の拡充や特別手当の支給など大幅な制度改善を図ること。

  • セクシュアル及びリプロダクティブヘルスの利用を

 COVID-19の感染拡大による緊急事態状況下においても、セクシュアル及びリプロダクティブヘルスに関わるサービスは不可欠であり、差別を受けずサービス利用できるようにすること。

  • 視覚障がい者へのハード面・ソフト面での支援を

 視覚障がい者は、COVID-19の感染拡大の影響によるソーシャル・ディスタンスの確保や3密を回避することが困難なことが多く、ハード面・ソフト面での支援策を検討し実施すること。

  • 障がい者・女性に対するDV等の対策を

 COVID-19の感染拡大による緊急事態状況下における、障がいのある女性を含む脆弱な立場の人に向けられるジェンダーに基づく暴力への対応と、防止に関連する施策は不可欠であり、相談、避難等の各段階において、障がい者への対応を行うこと。

  • 手話通訳、要約筆記者等への取組み支援を

 COVID-19感染拡大により、障がい者への対面でのコミュニケーションを支援する手話通訳者や要約筆記者等の意思疎通支援者は、安全対策や経済的な補償のない中で活動を継続している。その意思疎通支援者等の活動への支援策を検討し実施すること。

  • 雇用調整助成金の再度の延長を

 COVID-19感染拡大の影響により、従業員の雇用維持を図るためなどとして「雇用調整助成金」の特例措置が実施されている。その期間が2021年2月末までに延長されたが、今後もCOVID-19感染拡大の影響が収まらない場合はさらに延長すること。

  • 財源の確保と生活に必要なサービスが途切れない社会の実現を

 COVID-19の緊急事態での資金的な支援だけではなく、生活に必要なサービスや「障害者差別解消法」に基づく合理的配慮等の実施のための財源の確保などが必要であり、その実施のための政策、制度の見直しを進めること。

  • 包括的な感染予防対応のための加算の創設を

 障がい者や高齢者が生活の場において安心して住み続けるためには、適切な感染防止対策が必要であることから、各制度における報酬上の加算を行い、専門家チームの創設や教育の徹底や必要な機材の購入や人材の確保を行うため包括的な感染予防対応のための加算の創設すること。

  • 手話通訳者等を「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」の対象に

 対面で手話通訳を行う場合、近距離での通訳業務を行っている。盲ろう通訳・介助員と同様に手話通訳者を「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」の慰労金支給の対象に含めること。

  • 遠隔手話通訳の安定的・継続的な運用を

 手話通訳派遣事業は「障害者総合支援法」で市町村の必須事業と位置付けられているが、2020年度補正予算では都道府県への措置となっているとともに、次年度以降の予算措置が不明確なためその導入を躊躇するケースもある。COVID-19対策をはじめ災害時等にも活用できるよう意思疎通支援事業における遠隔手話通訳事業について独立かつ恒久的な予算措置を行うこと。

  • 障がい当事者団体のオンライン会議等への要約筆記等の支援を

 中途失聴・難聴者など聴覚障がいの当事者団体などがインターネット上での集まり・会議などを開催、実施する場合、その要約筆記利用を「障害者総合支援法」の意思疎通支援事業としてオンラインでの開催、実施も加えること。
 また、手話通訳の遠隔利用サービスと同様、医療機関での受診時など難聴者等が要約筆記支援を必要とする場合に、遠隔での要約筆記サービスの提供を派遣制度に加えること。

  • クラスター発生施設への直接的な支援を

 クラスターが発生した施設に対しては、施設職員の不足などが生じることから、利用者への対応のために人員を派遣するなど自治体が中心となり地域で応援できるネットワークを構築し、直接的な支援を実施すること。

医療政策関連

  • 障がい者・高齢者等への適切な医療の提供を

 重度障がい者や高齢者に対する入院拒否や、治療を後回しするなど、差別的な対応がないよう監視するとともに、差別なく検査や治療にアクセスできるようにすること。また、その対策としても医療機関や介護事業所等へのより一層の支援を行うこと。

  • オンライン診療における遠隔手話通訳を

 手話通訳を介したオンライン受診のためのシステムを早急に構築するとともに、オンライン診療と遠隔手話通訳との連携などにより、ろう者も手話通訳者も安心して受診ができる環境の整備を進めること。

教育政策関連

  • オンライン授業時における情報保障を

 聴覚に障がいをもつ子どもたちは、手話言語や文字などの視覚的な情報保障により授業に参加し、学習の機会を得ることができる。COVID-19感染拡大によりオンライン授業等が進められ、またGIGAスクール構想におけるオンライン学習においてきこえない子どもの学びを保障するためのシステムの活用などを進め学びの保障を行うこと。

情報政策関連

  • 政府情報等はアクセシブルに

 政府や自治体など公的な機関が発信するCOVID-19に関する支援施策をはじめ関係する各種情報はアクセシブルであること。また、ICTを使った情報発信、講座開催等を実施する際には、情報アクセシビリティが確保され、情報格差の拡大につながることのないようにすること。

  • アクセシブルな情報環境の整備を

 COVID-19関連に限らず、TVのニュース番組や自治体のWEBサイト等は、視覚障がい者にとってアクセシブルな環境となっていないため、必要な情報の入手が困難である。TV各局や自治体等でのアクセシブルな情報環境の整備を進めるため、必要な制度等の検討とその整備を進めること。

  • ICT化におけるアクセシブルな環境の整備を

 社会状況が変化し、テレワークやICカード決済の推進等、様々な分野でICT化が進められており、COVID-19の感染拡大と緊急事態宣言などによりさらに促進されてきている。しかし、ICT化によるシステムや機器等は、視覚障害者にとってアクセシブルな環境となっていないため、利用できないものが多く、その対策のための制度等の検討とそのシステムや機器の開発などを進めること。

  • COVID-19にかかる相談窓口でのFAX対応を

 COVID-19にかかる相談窓口において、多くの自治体では「聴覚に障害のある方等、電話での相談が難しい方はこちら」などとしてFAXやLINEなどでの相談が可能となっているが、保健所の連絡は電話番号のみとなっていることから、電話と共にFAXでの対応を可能としその番号も連絡先に記載すること。

  • 政府・自治体の記者会見、動画配信等での字幕による情報の提供を

 きこえない人の中には、手話がわからない人も多くいるため、政府や自治体など、公的な機関による会見等においては、手話通訳だけではなく字幕による文字情報の配信、提供を徹底すること。

  • 複合差別の視点を持った障がい女性など当事者の参加・参画を

 COVID-19感染拡大への対応やその復興に関わる政策討議の場には、必ず複合差別の視点を持った障がい女性をはじめとする当事者の参加・参画を進めること。

  • 誰もが安心して利用できる避難所の整備を

 避難所ではCOVID-19の感染リスクが高くなると考え、自宅での待機を選択した被災者もおり、避難所での感染防止策を進めるとともに避難所の増設やバリアフリー化など誰もが安心して利用できる避難所の整備を進めること。

  • 当事者団体等の活動への支援を

 障がい当事者団体をはじめとした市民活動団体の多くは会費収入・寄付金収入等で活動資金を確保している。多くの団体は、COVID-19感染拡大により会員や寄附が減少しており、「家賃支援給付金」や「持続化給付金」などを活用しているケースも少なくないが、活動停止や場合により解散する団体も出てくる可能性が高いため、当事者団体をはじめ市民活動団体への活動継続への支援策の検討を進め実施すること。

《「障害者差別解消法」「障害者基本法」関連政策など》

  • 「障害者差別解消法」の見直しに向けて

 2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され4年半が経過した。内閣府「障害者政策委員会」により2020年6月に「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見」がまとめられ、同年12月には「障害者差別解消法の施行3年後見直しの検討の方向性について」「障害者差別解消法の改正に盛り込む事項」(※障害者差別解消法の改正に盛り込む事項(案)参照)などが示されている。①法の対象範囲に家族・関係者を含めること、②民間事業者の合理的配慮を義務化すること、③障がい女性の複合差別について規定すること、④ワンストップ相談窓口と担当課長連絡会議を創設すること、などを重点項目として、2021年の通常国会で法律を改正すること。

  • 「障害者基本法」の改正を

 「障害者差別解消法」の改正に伴い、2011年以降見直されていない「障害者基本法」の改正を進めること。

  • 「生殖補助医療法案」の第3条4項の削除を

 「生殖補助医療等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案」(生殖補助医療法案)第3条4項に、「生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれ、かつ、育つことができるよう必要な配慮がなされるものとする」と規定されており、“心身ともに健やかでなければ存在する意義がない”という障がい者の存在を否定する旧優生保護法を想起させ優生思想に連なる文言であることから、その第3条4項を削除すること。

※「障がい・難病PT」による声明は生殖補助医療法案の成立にあたり、優生思想に反対する声明をご覧ください。

  • 当事者参加の意見交換会、勉強会の開催を

 真の共生社会の実現に向けて、当事者抜きに当事者のことを決めることのないよう、障がい当事者をはじめとした参加・参画のもとに継続した意見交換会や勉強会を党として行うこと。

立憲民主党広報紙号外「障がい福祉3法案」

立憲民主党機関紙号外「障がい・福祉3法案」.pdf

立憲民主党広報紙号外「バリアフリー法案」

立憲民主党機関紙号外「バリアーフリー法案」.pdf

 

 


前頁< ヒアリング・第1部(前半) ヒアリング・第2部(前半) >次頁

  はじめに
  ヒアリング・第1部(前半)
      ・辻元清美つながる本部長代行と福山哲郎副本部長からのあいさつ
      ・各団体からのヒアリング(第1部)
  ヒアリング・第1部(後半)
      ・国政報告
      ・【第1部各団体からの意見・提案内容】
  ヒアリング・第2部(前半)
      ・各団体からのヒアリング(第2部)
  ヒアリング・第2部(後半)
      ・【第2部各団体からの意見・提案内容】
  意見交換
      ・意見交換
      ・【各種政策提案・意見等】
  資料編
      ・障害者差別解消法の改正に盛り込む事項(案)
      ・バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(最終とりまとめ)(概要)・抜粋
      ・生殖補助医療法案の成立にあたり、優生思想に反対する声明
      ・参加団体・資料提供団体等一覧