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ヒアリング・第2部(後半)

 

きょうされん 常務理事  赤松英知さん
発達障害当事者協会 運営委員  嘉津山具子さん
全国「精神病」者集団 運営委員  桐原尚之さん
一般社団法人 日本難病・疾病団体協議会 常務理事  辻邦夫さん
認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク 専務理事  福島慎吾さん
特定非営利活動法人 日本失語症協議会 理事長  園田尚美さん

コメント
障がい・難病PT 副座長  小宮山泰子  衆議院議員


【第2部各団体からの意見・提案内容】

 ※当日の資料等をもとに要約、抜粋し掲載しました。


《COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策関連》

事業・サービス・予算関連

  • 介助者が感染した場合の措置を

 自宅で生活する障がい者の介助者である家族等がCOVID-19に感染した場合、継続して介助等必要な支援を受けることができるための措置を講じること。

  • 自宅待機となった障がい者等への生活支援を

 COVID-19濃厚接触者で自宅待機を行う障がい者とその家族等に対し、在宅療養時と同様に食事の提供等の生活支援を行うこと。

  • 地域生活支援事業の事業者を緊急包括支援事業の対象に

 「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援事業(障害福祉サービス等分)」における「障害福祉サービス施設・事業所等」に、「障害者総合支援法」に基づく地域生活支援事業の事業者を加え、その周知を行うこと。

  • 当事者会への公的な支援を

 発達障がい者にとって当事者会は悩みや自分らしさを打ち明けることができ、QOL(生活の質)が向上し生活力が高まる。COVID-19感染拡大の影響などにより、いわゆるひきこもり状態になりやすく、居場所や当事者会への参加は社会とのつながりを維持するために有効であり、そのような取組みへの公的な支援を行うこと。

  • 軽度知的障がい者や発達障がい者への支援策を

 COVID-19感染拡大の影響により発達障がい者のリストラが増加し、就労移行支援等の利用者が急増している。また、リストラ等により軽度知的障がいや発達障がいと判明するケースが増えており、その支援策を早急に検討し、実施すること。

  • コミュニケーション能力全般に困難がある失語症者の生活の確保、支援を

 COVID-19感染拡大の影響により、各地で失語症当事者参加の集会やサロンなどコミュニケーションの場がなくなり、失語症意思疎通支援者の養成・派遣事業が多くの都道府県で中止とされ、外出制限などのニュースが理解できないことやマスク越しの対話やリモート中心となりコミュニケーションがとりにくいといった課題が生じている。情報社会の中、コミュニケーション能力全般に困難がある失語症者の生活上の支援、確保を行うこと。

  • 障がい者の生活保障制度の創設を

 COVID-19感染拡大は就労支援事業所等の生産活動を直撃し、そこで働く人の工賃や賃金に大きな影響を与えており、障がい者の生活保障として就労移行支援や就労継続支援、生活介護、地域活動支援センター等で働く人の工賃・賃金の個別補償制度の創設を検討し、実施すること。
 また、「障害者優先調達推進法」に基づき、国や自治体等公共的な機関による作業所等への仕事や販売先の確保と規模の拡大を行うこと。

  • 感染者が発生した事業所の消毒等を公費負担に

 COVID-19感染者が発生した事業所等の消毒などは、その費用を公費の負担で行うこと。

  • 障がい者報酬のあり方の見直しを

 COVID-19感染拡大は、報酬の日払い制が障がい者就労支援事業所をはじめ関連の事業所等の経営に大きな影響を与えており、人件費や固定費、一般管理費等に係る報酬は月払いとし、利用者の個別支援に関する費用にかかる報酬は日払いにするなど、報酬のあり方を見直し、実施すること。

医療政策関連

  • COVID-19にかかる行政検査の対象の拡充を

 「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査に関するQ&Aについて」(厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡(8月18日付)(その2))で、「感染者が多数発生している地域やクラスターが発生している地域では、医療施設、高齢者施設等に勤務する者や新規入院・新規入所者等については、当該施設で感染者がいない場合であっても、行政検査の対象としてもよい」としている。ここで示されている「医療施設、高齢者施設等」に「障害者総合支援法」に基づくすべての事業にかかる施設を含むこととし、PCR 検査を拡充するとともに、関係機関等への事務連絡の周知と徹底を行うこと。

  • COVID-19を発症した障がい者への専門病院での治療体制の整備を

 自宅やグループホーム等で生活する障がい者がCOVID-19に感染した場合、在宅療養では介助等を通じて家族等への二次感染につながるため、COVID-19専門病院の空床保障を行えるだけの病床確保を国の責任で行い、適切な治療が受けられる体制を整備すること。また、障がい特性等により慣れた支援者等の介助、付き添いなどが必要な場合は、感染防止策等を講じたうえでその実施を認めること。

周知・理解

  • マスク着用による感覚過敏症状の周知、理解を

 COVID-19の感染拡大によりマスクの着用が呼びかけられ、進められているが、発達障がい者の中またそれ以外の人でも感覚過敏でマスクの着用が困難な人が存在している。マスク着用によりじんましん症状が現われたり、呼吸困難になるなどの人も存在することについて、国や自治体により周知等行い、理解を進めること。

《障がい者政策関連》

事業・サービス・予算関連

  • 通院介助の利用拡充を

 「障害者総合支援法」にもとづく居宅介護における通院等介助は、自宅の発着が条件とされており、勤務先から通院先までの利用ができないことから、自宅発着条件を削除するなどその利用を拡充すること。

  • 重度訪問介護の利用・適用拡大を

 重度訪問介護は、長期入院者等の退院後の地域生活の資源としてきわめて重要であるが、多くの精神障がい者は、障がい支援区分4未満・行動障害10点未満であり重度訪問介護の利用ができない。行動障害10点の撤廃と、重度訪問介護の利用・適用の拡大を行うこと。また、通勤、勤務中、通学、修学中の利用が認められていない重度訪問介護を、「通年かつ長期にわたる外出」に制限せず利用の拡大を行うこと。

  • 筋ジストロフィー病棟からの在宅移行を

 筋ジストロフィー患者と重症心身障がい児・者が入院するいわゆる筋ジストロフィー病棟から、在宅移行への実態調査等の実施によりその把握を行うとともに、地域生活のための基盤整備を進めること。

  • 医療的ケアの必要な子どもへの支援を

 障害福祉サービスに訪問看護を新たに位置付け、現在、必要な障害福祉制度の利用に結びついていない医療依存度の高い医療的ケアの必要な子ども等への支援を確保すること。また、いわゆる“歩ける医療的ケア児”への障害福祉サービスの利用促進を図るため、有効かつきめ細やかな報酬加算等を検討し、実施すること。

  • 家族支援の拡充を

 医療的ケアの必要な子どものピアサポート3)や親の会など、当事者による体験的知識を活かした相談支援を重点化した障害福祉サービス等の報酬の改定を行うこと。また、医療型短期入所サービスなどレスパイト4)やショートステイのサービス拠点の確保と、その報酬を現状の1.5倍程度の水準に引き上げるとともに、医療的ケアの必要な子どもとその家族を対象とした、有効かつきめ細やかな報酬の加算を検討し、実施すること。

3) ピアサポート:厚生労働省では、ピアサポートを「自ら障害や疾病の経験を持ち、その経験を生かしながら、他の障害や疾病のある障害者 のための支援を行うもの」としている。
4) レスパイト:レスパイト(respite)とは、「休息」「息抜き」「小休止」などがその意味とされている。

  • 障がい者手帳制度の見直しを

 失語症は、「話すこと」「聞いて理解すること」などの全般的コミュニケーション能力に関わる日常生活を送るうえで最重要手段である能力に障がいを負う大変重いものであるにも関わらず、現行の「身体障害者手帳制度」の「音声・言語障害」として上限の「2種3級、4級」のみしか存在していない。失語症を十分理解している専門家等の参加による検討会議等を設置し適切な障がい者等級の審査、認定について検討し障がい者手帳制度の見直しを行うこと。また、重度の失語症者であっても本人の氏名が言えたことから4級とされたとの事例もあり、失語症を理解した専門的な医師による診断、あるいは失語症専門医制度を設けるなど、適正な障害等級審査を実施すること。

  • 地域に根差した機能回復訓練施設の設置を

 失語症当事者の支援は、機能訓練専門である言語聴覚士を配置し、当事者の年齢・生活に応じた社会参加に必要なグループや個人での言語機能訓練を、地域に根差した機能回復訓練施設の設置を進め行うこと。言語聴覚士等によるサービスについてはその報酬加算等について検討し、実施すること。また、訓練施設では当事者や家族、支援者等からの相談等を実施すること。

  • コミュニケーションが困難な人への介護認定を

 失語症については、介護保険認定調査で認知症を伴わない失語症のある方々への調査も含まれているが、脳卒中の後遺症の場合のみ介護保険第2号被保険者として認定されているケースがある。要介護認定項目に、認知症ではない意思疎通の困難な失語症に関する項目を導入し、コミュニケーションが困難な人への介護認定を行うこと。また、介護保険認定調査員が正しく失語症等による障がいを理解し、適切に認定の審査等が実施されるようにすること。

  • 失語症者の就労支援、職場復帰のしくみづくりを

 言語機能支援と就労支援が一体的に提供されるような仕組みの構築や、支援機関と雇用者と連携した失語症者の能力や特性に合わせた職務の選択、十分な期間による職場の疑似体験など、失語症者の就労支援、職場復帰のしくみづくりを進めること。

  • 言語聴覚士の障がい福祉サービス等報酬加算を

 「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定」において作業療法士の加算が認められるようになった。失語症者に対しては、言語聴覚士が介して適切に調整を図ることが必要であり、就労移行支援事業所での言語聴覚士の福祉専門職員配置等加算を行い、失語症者の就労支援のサポート体制を進めること。

  • 失語症単独での障害年金1級認定を

 2015年に障害年金制度の見直しにより失語症者の診断書の改定などが行われたが、障害年金等級において失語症単独では「2級以下」が現状である。「障害年金の認定(言語機能の障害)に関する専門家会合」で単独で1級が相当であるとの意見があったことからも、失語症単独での障害年金1級認定を検討し、認定すること。また、失語症者は就労が困難なことから、「稼得能力の欠如」に着目した障害年金制度に是正すること。

  • 失語症を理解した医師や認定調査員による実施を

 失語症を理解していない調査員による調査により、障害者総合支援法における障害支援区分認定調査等手続きが行われるケースも少なくなく、失語症を理解した医師や調査員のもとに意見書の作成や調査の実施が行われるようにすること。
また、調査員の教育の徹底や、言語聴覚士など失語症に精通した専門職が認定手続に関与するなど、その仕組みを見直すこと。意思疎通支援者の養成・派遣事業の周知徹底と能力・資質の向上を失語症者のコミュニケーション支援として、2018年度より意思疎通支援者の養成・派遣事業が都道府県により開始されつつある。全都道府県でその事業が実施されるよう再度通知を発布するなどその周知を行うこと。また、失語症意思疎通支援者の能力・資質向上や育成等が必要であり、教育・養成・育成機会等の実施、拡充などを進めること。

  • ピアサポート加算の拡充を

 2021年度の障害福祉サービス等報酬改定の検討が厚生労働省で進められており、ピアサポートへの加算の導入が示されているが、重度訪問介護をはじめとする訪問系サービスや就労支援系のサービスなど、全ての障がい福祉サービスに適用すること。また、加算要件である研修の受講は、地域包括ケア補助金と地域生活支援事業を財源とした研修のみを加算要件とはせず、医療介護総合確保基金や地方公共団体独自の予算を財源とした研修も加算要件の対象にすること。さらに、ピアサポーター研修の想定するピアサポーターは、事業所に雇われた精神障がい者に限定されており、当事者団体がピアサポーターに含まれるよう、その範囲を見直すこと。

医療政策関連

  • 発達障がいを診断できる専門医師の育成を

 発達障がいを診断できる医師が不足しており、またその支援のためのショートケアを実施する医療機関が極めて少ない。診断がなされなければ「障害者手帳」の所得もできず、障がい者枠での就労支援も受けられず、通級指導学級等での就学もできないことから、診断可能な医師の育成等を早急に進めること。
 また、診断がつかない(分からない)いわゆるグレーゾーンのケースが急増しており、障がい者に対する配慮がなされないためにリストラされるケースもあることから、専門医の育成など早急に対応、対策を進めること。

  • 精神病床における長期入院の定義の見直しを

 現行の医療計画における基準病床算定式では、1年以上入院を長期入院と定義しているが、多くの精神障がい者は、入院して2ヵ月であっても非常に長期間であると感じている。そのことから、基準病床算定式における長期入院の定義は、現行の1年以上から半年以上へと見直すこと。

  • 精神病棟における早期退院率の目標値の見直しを

 「第6期障害福祉計画」の基本指針に定める目標値として精神病棟における「早期退院率1年以内92%」とされているが、これでは新規入院者の約15人に1人が新たに1年以上長期入院となる。長期入院は原則として不要であるので、その目標値の見直しを行うこと。

  • 医療体制の維持、継続と必要な支援を

 指定難病ならびに小児慢性疾病の患者は約100万人、長期慢性疾患等の患者を含めると数百万人とも言われており、COVID-19感染拡大の影響による医療体制の逼迫を避けるため、早急に感染対策を強化しすべての患者が必要な時に必要な医療が必ず受けられる体制を維持すること。また、その対策を実施することによる経済的影響を受ける人々への救済策の拡充の検討、実施、保健所を含めた医療体制(資金、人員等含む)の確保を行うこと。

教育政策関連

  • 通常の学級に在籍する子どもたちへの支援を

 特別支援教育支援員(介助員)制度だけでは、多様な子どものニーズや校外学習などに対応できないことも多く、学校内や宿泊をともなう修学旅行、林間学校などを含む校外学習時においても、医療的ケアの必要な子ども等へ障害福祉サービスの居宅介護や重度訪問介護、医療保険による訪問看護を利用できるように見直すこと。
 また、教育機会を保証するためには通学等の移動の保障が必要であり、重度訪問介護や移動支援を利用できるようにし、ヘルパー自身が運転する車による通学支援なども含めて利用の拡充を進めること。

「障害者差別解消法」の見直し関連

  • 差別の定義・概念の見直しを

 「障害者差別解消法」における差別の定義・概念の明確化を図り実効性のあるものにし、反対解釈の濫用など恣意的な解釈を防ぐための基本方針やガイドラインを策定し、運用すること。

  • 合理的配慮の提供を促す環境整備を

 「合理的配慮」は、当事者の個別ニードをもとにしたものであり、前例がないことなどを理由として上限や制限を設けることのないように規定し、運用するとともに、その適用については当事者及びその家族の完全参加と同意を条件とすること。
また、国や自治体、公的な機関においては、民間事業者・主におけるものよりも高い次元のもの、より当事者の求めるものが保証されるように行い、均衡を失した又は過重な負担を理由にして合理的配慮の提供を拒むまた提供できない場合には、書面にてその理由と根拠等を開示、公表するしくみとすること。

  • 民間事業者・主による合理的配慮の法的義務を

 「障害者雇用促進法」においては、民間事業主に対する合理的配慮の提供はすでに法的義務となっており、「障害者差別解消法」においても民間事業主に対する合理的配慮の提供を法的義務とするよう見直すこと。

  • 相談・紛争解決の体制整備を

 障がい者差別に関する相談窓口を明確化し、ワンストップ化するとともに、第三者機関による調整・助言・指導や不服申立て等の救済制度を設けること。

  • 「障害者差別解消支援地域協議会」の活性化を

 「障害者差別解消支援地域協議会」を活性化するため、情報やノウハウ等を収集し、その提供を行うこと。

  • 「障害者差別解消法」見直しに係るすべての情報の公開を

 「障害者政策委員会」等において障害者差別解消法の見直しの検討がなされているが、政府で実施する同法の見直しにかかる障がい者団体ヒアリングについては、障がい者団体の意見書と議事録をすべて公開とすること。

当事者の参加・参画

  • 幅広い当事者によって構成された団体の関係者を構成員に

 政府が設置している「障害者政策委員会」の構成員には、精神障がいをもつ有識者やピアサポーターの職能研修機関に所属する精神障がい者は参加しているが、幅広い精神障がい当事者によって構成された団体に所属する当事者は参加していない。障がい者政策を精神障がい当事者の観点からチェックし作成していくために、幅広い精神障がい当事者によって構成された団体に所属する当事者を構成員とすること。

 

 


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目次

  はじめに
  ヒアリング・第1部(前半)
      ・辻元清美つながる本部長代行と福山哲郎副本部長からのあいさつ
      ・各団体からのヒアリング(第1部)
  ヒアリング・第1部(後半)
      ・国政報告
      ・【第1部各団体からの意見・提案内容】
  ヒアリング・第2部(前半)
      ・各団体からのヒアリング(第2部)
  ヒアリング・第2部(後半)
      ・【第2部各団体からの意見・提案内容】
  意見交換
      ・意見交換
      ・【各種政策提案・意見等】
  資料編
      ・障害者差別解消法の改正に盛り込む事項(案)
      ・バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について(最終とりまとめ)(概要)・抜粋
      ・生殖補助医療法案の成立にあたり、優生思想に反対する声明
      ・参加団体・資料提供団体等一覧