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「子ども総合基本法案」の紹介

子ども・子育てプロジェクトチーム座長
つながる本部事務総長代行/衆院議員

大西 健介

 皆さんにご意見をいただくにあたって、先の通常国会(第204回国会)に提出した「子ども総合基本法案」について紹介させていただきます。
 私たちはまず、子ども政策の基本として、「子どもの最善の利益を図る」ことを理念の中心に掲げました。
 あわせて、一元的に子ども政策を推進する組織も必要ですが、子どもを権利の主体と捉えて、その権利を擁護するため、子どもコミッショナー(イギリス)や子どもオンブット(ノルウェー)のような、「子どもの権利利益を擁護する独立機関」の設置を掲げています。
 また、妊娠・出産・子育て、それから未就学児にとどまらず、小学・中学・高校・大学生、場合によっては若者に至るまで、「子どもから若者まで切れ目のない支援」をこの法律で進めていくこととしています。
 与党は「こども庁」の設置と言いながら、一方で高所得者の児童手当の特例給付を廃止する法律を先の国会で成立させました。私たちは「児童手当・児童扶養手当の拡充」を掲げました。親の収入に関わらず全ての子どもたちを児童手当の対象とすべきとし、さらに民主党政権時に小学生までだった児童手当の支給期間を中学校卒業までに延長しましたが、高校生は食費や衣服代、塾の費用など家計の負担が大きいことから、児童手当の支給期間については高校卒業まで延長することを今回掲げました。コロナ禍において拡充された児童扶養手当についても、平時からふたり親世帯への支援が必要だと考えています。
 イギリスやフランスなどと比べて半分程度と言われている子どもに関わる予算を、端的に言うと倍増していくことを、私たちは目指したいと思っています。
 以上が法律案のポイントで、パッケージとしての我々の考え方を示させていただきました。現場でのお取り組みなどから様々なご助言やご提言をいただき、この法律案をブラッシュアップしていきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。

各団体からのヒアリング

少子化対策ではなく、子ども・家族支援策を

日本大学教授
末冨 芳 さん

 7月に、『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』(光文社新書)という本を出しました。ゴールは親子に優しい体制、対策を提言しており、少子化対策ではなく、子ども・家族支援策が大事だとしています。私からは総論的なお話しをさせていただきたいと思います。
 何より大事なのは、今回立憲民主党が提出した法律案にもございますが、子どもの権利を実現するための法制度というのが、基本であるべきだということです。普遍主義ですべての子どもを大事にした政策が行われなければいけません。それが子どもの権利を尊重するという国の政策として当たり前のことだからです。あわせて、広い財源というものが必要になるということです。
 その中で具体的にお願いしたいことは3点あります。1点目が、与野党合意に基づく子ども・家族対策と財源確保です。特に教育の無償化と児童手当での所得制限の改善策です。2点目めは、子ども・教育への投資というのは国の生き残りと成長の基本とされていますが、日本ではあまりにも危機感がなさ過ぎると思っています。十分な予算が必要です。3点目は、子どもを差別・分断する制度をやめていただきたいということです。普遍主義をベースとした低所得層、中間所得層への支援をお願いしたいと思います。
 最後に、子どもの貧困対策も子どもの権利を実現するための大切な施策ですので、その財源と必要な人材を確保していくという方針を明示していただいて、子どもや子育てをする親にとって安全で、安心な日本なんだという実感が持てる公約と政策を実現していただきたいと思っております。

全ての子どもたちに漏れのない支援を

公益財団法人あすのば代表理事
小河 光治 さん

 全ての子どもの権利を守り、支援の拡充とさらに困窮する子どもたちには手厚い支援をしていただきたいということが、私が申し上げたいことです。
 民主党政権下で初めて子どもの貧困率を発表していただき、それが「子どもの貧困対策法」の制定につながりました。「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークの皆さんや市民が一つになってこの法律の制定を求め、党派を超えて議員立法で成立していただいてこの6月で8年となりました。それをさらに進めるための法律を皆さんが作ろうとしています。これも党派を超えてぜひお願いをしたいと思っています。普遍的な子どものための法律を、1日も早い実現を願っております。
 コロナ禍においては、子どもの貧困をはじめ多くの課題をあぶり出したと思いますが、私たちあすのばは昨年1年間に約8000人の子どもたちに3億円の給付金をお届けしました。「子どもの貧困対策法」を根拠にして、児童扶養手当では第2子以降の給付額が加算されたり、婚姻歴のないひとり親に公平な税制ができたり、今回もふたり親を含めて給付されました。さらに、児童手当を高校までに広げていただきたいこと、児童扶養手当をさらに加算していただく、あるいは児童手当に低所得世帯への加算をしていただくというような形で、より手厚い支援をぜひお願いしたいと思っております。
 全ての子どもたちに対して、漏れのないように支援をしていただくことが、あすのばでの6年間の活動の中で本当に大切だということをつくづく思っています。

公益財団法人あすのば

最大の原因は子ども関連予算が少ないこと

NPO法人キッズドア理事長
渡辺 由美⼦ さん

 キッズドアでは、子どもの貧困問題は非常に大変な状況だということを言い続けてきたつもりですけれども、抜本的な改革がされず、さらにコロナ禍もあり非正規で働き、子どもを育てている方々などは本当に厳しい状況になっています。
 ゴールデンウィークに食料支援を2000世帯に行い、その方々からお礼のはがきが届きました。中には、役所に相談に行き、自分と子ども3人の1ヵ月の食費が1万5000円だと伝えたら、「削れませんか」と言われたと。他にも、大学を受験したいと思っても、2万円近い大学共通テストの受験料が負担できなかったと。こういった声にぜひ応えていただきたいと思っております。
 全国2400世帯の方々とつながって、そのお声を聞きながら事業を進めていますが、夏休みに給食がなくなるということで非常に心配しております。6月から7月に行った調査の結果では、私たちが支援している家庭は、年収200万円未満が65%で、300万円未満は88%です。夏休み中の食事に関して聞くと、「不安がある」という方が87%です。昨年は1人10万円の特別定額給付金がありましたが、今年はありません。ぜひこういった方への緊急支援をと思います。そもそもこのような調査をNPOが実施しなければならないこと自体おかしなことだと思います。
 最大の原因は子ども関連の予算が少ないということで、家族政策と教育費の支出を足してもGDP比4.2%と大変少ないのが現状です。アメリカは子育て家庭へ10年で90兆円の減税を進めています。こういった政策が必要だと思っています。

NPO法人キッズドア

「参加」「外国ルーツ」「ジェンダー」の視点と具体化を

SDG4教育キャンペーン2021事務局
八木 亜紀子 さん

 「SDG4教育キャンペーン」は「教育協力NGOネットワーク(JNNE)」が主催する政策提言キャンペーンです。SDGsでは、2030年までにすべての子どもが質の高い就学前教育、初等教育、中等教育を受け、成人識字率を改善することを目標に掲げており、その達成に向けた取組みを進めています。
 今回の子ども総合基本法案は、まず子どもの権利条約に基づいているということが本当に素晴らしいと思っており、ぜひ推し進めていただきたいと思います。その上で、3点提言をさせていただきます。
 1点目は子どもの参加です。子どもの意見表明権というのが非常に大事だというのは同意するのですけれども、どのように意見表明権を行使するのか。子どもコミッショナーが例にあがっていましたが、その方法であるとか、意見表明をした子どもの保障であるとか、さらに具体的な取り組みが明確になるといいなと思います。
 2点目は、「全ての子ども」とありますが、外国にルーツを持つ子どもたち、無国籍の子どもたち、外国人学校などいろいろ排除されている分野がありますので、外国にルーツをもつ子どももその対象とするようお願いします。
 3点目はジェンダー・多様性です。日本の学校において、教員というのはロールモデルとなるのですが、非常に多様性が少ないということで、校長・副校長に占める女性の割合を増やすなど、その環境を整えることをお願いしたいと思います。
 最後に、教育・子ども分野への予算配分が非常に少ない、これはODAも同様です。ぜひ、それを変えていただきたい。まずは日本のこと、そして海外の教育・子ども分野にも広げていただきたいと思っています。

教育協力NGOネットワーク(JNNE)

子どもたちを性犯罪から守る

認定NPO法人フローレンス代表室長
前田 晃平 さん

 子どものための法律の中で本当に大切なことの一つは、子どもは社会で育てていくということだと認識しています。本日は、保育・教育現場の性犯罪ゼロについてお話しをさせていただければと思います。
 子どもを預けた先の学校や保育園が性犯罪の温床になっています。法務省の調査ですが、小児わいせつや小児性犯罪といわれる類のものは、成人に対する性犯罪などと比べて極めて再犯率が高く、その常習性も指摘されています。昨年6月にも、ベビーシッターが子ども2人に対する性犯罪で逮捕されるという事件がありました。こういったことが起こると、怖くて預けられなくなってしまいますし、子どものときに負ってしまった傷というのは生涯にわたってそうそう消えるものではなく、子どもの一生に本当に深刻な影響を及ぼしてしまいます。
 その対策として、日本版DBS※で、性犯罪の前科のある人への規制が必要ではないかと思います。現状では、前科があったとしても、教育や保育の現場に就職できてしまい、一つの職場でアウトになったとしても、次の職場で同じことを繰り返すというようなことが言われています。性犯罪歴がある人は子どもと関わる職場に就業できない、就業する際は無犯罪証明書の提出を義務付けるといった法律が必要だろうと思っています。
 先の通常国会で、性犯罪者をキックアウトするような法律が制定されましたが、残念ながら教育現場にとどまっているのが現状です。行政の都合で縦割りで論じるのではなく、子どもを包括的に守る仕組みが必要です。

※DBS(Disclosure and Barring Service):前歴開示及び前歴者就業制限機構とされ英国司法省管轄の犯歴証明管理及び発行システム。

認定NPO法人フローレンス

 

 


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