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各団体からのヒアリング

子どもの権利条約一般原則の明文化を

日本教職員組合 教育文化局長
原 ひとみ さん

 子ども総合基本法は子どものいじめの問題や不登校、貧困の問題などの解決のための根拠となり、子どものストレスや教職員のストレスなど、学校現場、学校システムそのものも変えていけるような法律にしていただきたいです。
 子どもの権利条約の一般原則を明文化し、子どもの権利保障の基本理念を法律とするべきであり、国連子どもの権利委員会から出されている総括所見や一般的意見を重視して、それを反映させたものにしていってもらいたいです。
 子ども総合基本法では、子どもそのものに焦点を当て、また子どもの育ちを支えるためのおとなに焦点を当てていってはどうかと思います。そのためにも、基本理念に「子どもの参画」ということをきちんと記述した方がいいと考えます。また、法律そのものも子どもにも誰でもが理解できる、平易な文言を使うなどの配慮が必要ではないかと思います。
 それから、特に教育や司法などでは子どもの権利条約の理念がなかなか反映されていないのではないかという指摘もありますので、既存の法律の見直しを進めていく必要があると思います。
 また、少子化対策についてはとても大事なことではあるのですが、別法で検討する課題だというふうに考えています。
 子ども省など新しい行政機関については、これまで十分機能してこなかった府省庁連携について改めて総括的、包括的に検証した上で、慎重に作っていく必要があるのではないかと思います。

日本教職員組合

高校生への教育支援の拡充を

日本高等学校教職員組合 中央執行委員長
吉川 正智 さん

 教育予算につきましては、本当に日本は世界各国と比べて低いので、ぜひ教育予算を増やして、我々の立場から言えば人件費にもあてていただきたいと考えております。教育にかかる費用、児童手当につきまして、対象を高校生までにということは賛成で、定時制高校に対しても年齢ではなく卒業するまでということでお願いできればと思います。
 また、経済的理由によって大学等へ進学できない生徒がいます。将来どうするかと聞くと「うちはお金がないので就職します」と言う生徒がいるのです。そうした点からも大学の無償化も必要だと思っています。そこに一歩でも近づくようにお願いしたいです。
 いじめ等を防ぐためには、子ども1人に対するおとなの目がより多くあれば、より手厚くなるのかなと思っておりますので、教員の数を増やしていただく必要があると思います。我々としては全日制高校で30人学級というところを目指して要望しているところです。学校看護師やスクールサポートスタッフ等の外部人材なども人を増やしていただきたいと思います。
 特別支援学校については、教室不足の問題があります。特に知的障がいの特別支援学校では生徒が増えておりますので、喫緊の課題となっております。一つの教室をカーテンで仕切ったり、廊下で授業をしていたり、そのような現状がありますので、その対策について求めているところです。
 高校退学者に対しては、なかなか目の届かないようなところがありますので、どういう状態なのかを把握し、国として、地域として支援していけるような形にしていくことが必要だと思います。

日本高等学校教職員組合

多様な学び・フリースクールの無償化を

多様な学び保障法を実現する会共同代表
喜多 明人 さん

 法律案の第二章、第5節「教育を受ける権利を保障するための施策」という部分に焦点を当てて、私なりに意見を述べさせていただきます。
 現在、ダイバーシティ、多様性の尊重という時代にあっては、学校教育を含めて、多様性の確保、尊重が求められています。学校外も含めて、多様な学びという子どもたちの自発的な学びを前提にした教育の再編を考えていく時代に来ているのではないかと思います。2016年に成立しました「普通教育機会確保法」を法的根拠として、学校外の多様な教育、学びに公的支援をお願いできればと思います。
 教育を受ける権利の平等保障から言えば、義務教育段階の学校外の普通教育についても、憲法第26条2項の精神にのっとり、義務教育の無償制が実施されなければいけない。つまり、フリースクールに対して全く公的支援、経済的支援がない中で、義務教育でありながら高額の授業料を取らざるを得ない。これが保護者にとって大変な負担になっております。従って学校にも行けないけれども、フリースクールにも行けないということが起こっています。
 この法律案を再構成するには、それを支える権利の理念も再検討が必要だと思います。法律案の第1条では子どもの権利条約の理念にも依拠したものだということが示されていますが、第二章の第5節は憲法26条(教育を受ける権利)に基づいた理念であって、子どもの権利条約で言えば第28条(教育への権利)に基づき明文化されたものへと条文の再構築が必要なのではないかと思います。

多様な学び保障法を実現する会

子どもの声を聞き反映するしくみを

広げよう!子どもの権利条約キャンペーン共同代表/
認定NPO法人国際子ども権利センター(C-Rights)代表理事

甲斐田 万智子 さん

 子どもの権利をどう実現していくか、子どもの意見表明権をどのように保障していくかという視点からご提言させて頂きます。
 子どもの貧困、虐待、体罰、いじめ、性的搾取などの問題や、自尊感情も低く、自殺率も高いという状況で、これらを解決していく際に子ども自身が声を上げられていないことが大きな課題なのではないかと私たちは考えています。この現状を大きく変えていく法律が必要であり、その法律によっておとなが子どもの意見を聞くことを当たり前にして、その重要性を認識していけるような社会になってほしいと考えています。
 そのためには、子どもの声を専門に聞く子どもコミッショナー、子どもの担当部署が必要だと考えており、子どもの権利保障のための人材を確保していく。その予算も大事だと考えています。そして、「子どもの権利が保障されているかを確認する仕組みをつくる」。「法律や政策・条例を子どもと共につくる」。そのためにも人材と予算が必要で、子ども総合基本法をもとにそれを実践していくことが大切です。
 これまであまりにも子ども不在で物事が決められてきました。この法律にはぜひ子どものことは子どもも意見を言えるんだ、ということを明示した形で法律を作っていただきたいと考えています。
 ネパールでは子どもの声を聞く制度というものが各自治体に組み込まれています。子どもが重要と思う問題について声を上げその声を反映します。その事業の10%から15%を国が予算をつけなければならないこととしています。
 子どもは権利の主体であり、その権利を行使できる仕組みを法律に盛り込み、ぜひ子どもたちの声を聴くことがあたり前の社会にしていただきたいと思います。

広げよう!子どもの権利条約キャンペーン
認定NPO法人国際子ども権利センター(C-Rights)

子どもが参加・参画するしくみを

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン国内事業部
西崎 萌 さん

 子どもに関する法律や新たな行政機関、子どもの権利擁護機関を作る際には、①子どもの権利条約の一般原則・差別の禁止、②子どもの最善の利益・生命生存発達の権利・子どもの意見の尊重、③意見表明、④子どもの参加の4つを基盤としていただければと思います。
 皆さん、自分に関わりのあることを、自分を抜きには決めて欲しくないですよね。子どもも同じで、子どもには意見を表明する権利があります。効果的で意味のある質の高い子ども参加という仕組みが必要です。子どもの参加とは、自分自身に直接的あるいは間接的に関わりのある全ての事柄において、子どもが適切かつ十分に情報を与えられ、意見を表明し、かつ尊重され、積極的に関与することです。
 一度きりのイベントを開催するというのではなく、子どもの声を聞く仕組みと、十分な資金や人材を確保して、継続的な活動にしていただく必要があります。そして、その声を十分に考慮して政策施策に反映していくこと、その結果を必ず子どもたちにフィードバックしていくことも重要となります。これは必ずしも出てきた意見全部を取り入れるということではありません。難しい場合には、なぜ難しいのか、どうしたら実現できそうかなどということもとても大事になります。
 また、新しい省庁が創設された際には、子ども会議や子ども議会など、子どもの声を行政に反映するしくみを作ってほしいと思います。
 子どもの権利は、子ども自身が権利の主体であり、声をあげていいんだと思えるようになること。そして周りのおとな、社会が子どもの意見を聞くことが重要であるということが広がるように法律に含めていただきたいと思います。

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

障がいを持った私たちが、もっともっと安心して学べる日本にしてください

佐野 夢果 さん

 インクルーシブ教育の会の一木玲子先生からのご紹介で参加させていただいています。静岡県掛川市に住んでいる中学3年生の受験生です。「子ども」と「当事者」という立場からお話させていただきたいと思います。
 私は小中学校の間、特別支援学校ではなく地域の学校に通ってきましたが、その中でたくさんの経験をして、仲間を作ることで今の私があって、夢に向かうことができています。今一番感じることは障がいのない人とインクルーシブ※な環境で育つことがとても大切なことだということです。
 私の周りのお友達や先生は、固定概念にとらわれないアイディアマンが多くて、私が小学1年生のときなどは、車いすで入れない砂場に友達が段ボールを持ってきて敷いてくれたり、学校行事の川遊びのときにも、濡れてもいいからということで、災害用の車椅子を持ち出して、川で水遊びをしたりした楽しい思い出があります。
 お互い、日々一緒にいる仲間から感じたり学ぶことが一番だと思っています。その思い出は一生の宝物だし、だからこそ私は今、高校に受験をすることを決めました。
 車いすを使用している私には、バリアフリー設備があって安心して通える学校が少ないため、限られた選択肢の中でどう生きていくかをいつも考えています。もっともっと安心して学べ、障がいのない友だちと同じように選択できる日本になって欲しいと強く感じています。希望している高校に入学でき、豊かで楽しい学校生活を送れるようにサポートをお願いしたいです。
 もちろん受験があるので私も勉強を一生懸命頑張っています。
 私は小中学校では、介助員さんのサポートを受けて学校生活を送ってきました。義務教育は終わりますが、私にも学ぶ権利はあります。ぜひ、高校にも介助員制度を作ってもらえたらと思っています。
 そして通学の問題です。雨が降ったり、親が体調を崩したから行けないのはつらいです。名古屋市のように通学に使える移動のサポート制度があればいいなと思います。
 最後になりますが、全ての子どもたちが自分の選択肢の中で、笑顔で暮らせるような社会になってほしいなと感じています。

※インクルーシブ教育
個人が必要とする様々な調整=「合理的配慮」のもと、障がいを持つ者と持たない者が地域の普通学級でともに学ぶこと。

インクルーシブ教育の会
連絡先:ichiki.reiko.2017@gmail.com

 

 


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