2026(令和8)年度税制改正についての提言
― 物価高に負けない「暮らし」と「中小企業」の底上げで、日本経済の好循環を生み出す ―
2025(令和7)年12月5日
立憲民主党 税制調査会
基本的考え方 : 広く「生活者」や「中小企業」が元気になる「底上げ型経済成長」の実現
現在、日本経済は、全体として「緩やかに回復している」(※1)とされるが、円安・物価高の長期化により、大多数の国民の暮らしや日本経済の基盤である中小企業は、むしろますます厳しい状況に置かれている。個人消費はGDPの5割強を占め、中小企業は雇用の約7割を支えている。「暮らし」と「中小企業」を抜きにして、日本の経済・社会の本格的な再生はあり得ない。
我が国では「失われた30年」の間に格差の拡大が進んだが、その大きな要因は、実質賃金の低迷と非正規雇用の増加にある。この間、日本の労働生産性は、主要先進国と同様に30%程度上昇してきた一方で、その果実は、企業の内部留保と対外投資に振り向けられてきた。つまり、課題は、労働分配率と国内投資の不十分さにあり、これがボトルネックとなって、日本経済の成長を阻んできた。
この長期停滞を打開し、日本の経済・社会に活力を取り戻すためには、
- (1) 減税や控除の拡充等により賃金・所得の向上を支える
- (2) 企業が賃上げしやすい環境を強化するため、現行の「賃上げ促進税制」を抜本的に見直し、企業利益が労働分配や中小企業の価格転嫁に回りやすい新たな仕組みを創設するとともに、中小企業におけるDX投資を大胆に促進する
- (3) 所得・資産格差をはじめ様々な「歪み」を生じさせている各種の不公平な税制を是正し、成長の「壁」を取り払う
――ことを柱とした税制改革を実行する必要がある。
この「暮らし」と「中小企業」の底上げを中心とした税制改革により、労働法制や社会保障制度の改革と併せて、若者をはじめ、生活者の賃金・所得の向上と“じぶん時間”(可処分時間)の増大を実現し、個人消費が伸び、企業の売上増と国内投資を呼び込む好循環が経済を牽引する「底上げ型経済成長」へと結びつけていく。こうした政策は、共働き世帯を含む若い世代が子育てをしやすい環境整備にも繋がり、加速する少子化傾向に歯止めをかけ、将来の労働力確保にも資するものである。
こうした基本的考え方の下、立憲民主党は、2026(令和8)年度の税制改正に際し、政権を担い得る野党第一党の税制調査会として、あるべき社会ビジョンとしての税制を提言する。
- ※1 内閣府「月例経済報告(令和7年11月)」の基調判断より。
第1の柱 : 暮らし応援、賃金・所得の向上 ―物価高を乗り越える
世界的な資源価格の高騰、歴史的な円安の進行等により、食料品をはじめとする物価の高騰が長期化する一方、賃金・所得は十分に増加せず、実質賃金は依然として低迷を続けている。こうした状況を打開するため、減税や控除の拡充等を適切に実施することにより、暮らしを支え、賃金・所得の向上を図る。
[ 効果的・集中的な減税、不合理な税負担の解消 ]
- 2026年10月1日より、飲食料品にかかる消費税を臨時・時限的に0%とすること(※2)。減税終了後は、中低所得者の消費税負担を恒久的に軽減する「給付付き税額控除」(※3)に移行すること。
- ガソリン・軽油に係る暫定税率(当分の間税率)については、与野党合意(※4)に基づき、各種の課題に対応した上で、円滑・確実に廃止すること。
- 「防衛増税」について、2026年から実施される法人税・たばこ税の増税、検討事項とされている所得税の増税のいずれも撤回すること。
- ※2 立憲民主党は「食料品消費税ゼロ法案」(飲食料品に係る消費税の税率を引き下げて零とする臨時特例の創設及び給付付き税額控除の導入に関する法律案,第219回国会衆法第1号)を10月31日に提出している。
- ※3 「給付付き税額控除」の制度設計については、公党間の合意に基づき、政党間協議において議論を進め、結論を得ることを目指すものとする。
- ※4 「ガソリン税及び軽油引取税の暫定税率の廃止について」(2025年11月5日)
[ 子ども・子育てを税制面から支援 ―チルドレン・ファーストの税制へ ]
- 高校生年代(16歳~18歳)の扶養控除については、児童手当が子育て支援の観点から十分な額とならない限り、現行の扶養控除を存続させること(※5)。
- 子育て世帯を切れ目なく支援する観点から、1年限りの措置とされている「子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充」(※6)について、恒久化すること。
- 共働き世帯やひとり親世帯等における子育てと仕事の両立を支援するため、ベビーシッターやホームヘルパー等の利用費を所得控除の対象とするなど、税制上の支援措置を講じること。
- 企業による子育て支援を後押しするため、企業が支給する子育て関係の手当(家族手当、扶養手当、育児手当など)について、非課税化すること。
- ※5 政府・与党では、昨年10月から児童手当の支給対象を高校生年代にまで拡充したことを踏まえ、16歳~18歳までの扶養親族に適用される扶養控除の縮小を検討している。
- ※6 2025(令和7)年度税制改正により、2026(令和8)年分の所得税に限り、23歳未満の扶養親族を有する場合、一般生命保険料控除の適用限度額を2万円引き上げることとされた(通常は4万円)。
[ 若者・現役世代を税制面から支援 ―インフレ時代への対応 ]
- 所得税のいわゆる「年収の壁」問題については、今後も物価上昇率に応じて基礎控除の額を引き上げるなど、適切な措置を講じること。また、2025(令和7)年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が引き上げられたことを踏まえ、青色申告特別控除も同額引き上げること(※7)。併せて、「就労促進支援給付」の実施により、収入の逆転が生じるという点でより深刻な社会保険の「130万円のガケ」の解消も一体的に行うものとすること(※8)。
- NISA(少額投資非課税制度)については、家計資産の海外流出が進み、円安要因ともなっている現状に鑑み、資産形成と日本企業の成長の両立を期する観点から、投資先を国内株等に限定する「国内成長投資枠」を創設すること。
- NISAの「つみたて投資枠」における投資可能年齢(現行18歳以上)の引き下げについては、その政策目的や効果を丁寧に検討すること。
- 若年層の生活の安定化を図るため、貸与型奨学金の返還額を所得控除の対象とする「奨学金減税」を実施すること。
- 企業が支給する食事手当・通勤手当の非課税限度額(※9)について、この間の物価上昇を適正に反映した額に引き上げること。会社都合による転勤先から帰省する際の旅費(帰省手当)については、実費支給とした上で、非課税とすること。
- ※7 2018(平成30)年度税制改正で給与所得控除の最低保障額が65万円から55万円に引き下げられた際は、青色申告特別控除も併せて65万円から55万円に引き下げられた。一方で、2025(令和7)年度税制改正では、給与所得控除の最低保障額が引き上げられたものの、青色申告特別控除の額は据え置かれたままとなっている。
- ※8 立憲民主党が提出している「就労支援給付制度の導入に関する法律案」(第215回国会衆法第2号)の内容に基づく提言。
- ※9 マイカー通勤等の場合の非課税限度額については、11月19日に政令が改正され、既に引き上げが行われたが、公共交通機関を利用している者に対する通勤手当の非課税限度額は現状15万円のまま据え置かれている。
[ 暮らしと住まいの安心を支えるための税制措置 ]
- 住宅ローン減税については、資材高による住宅価格の高騰、政策金利引き上げによる住宅ローン金利の上昇などに鑑み、面積要件の緩和、中古住宅に対する支援強化、控除率の引き上げなどを行った上で、延長すること。併せて、中低所得者の住宅負担軽減のため、家賃補助制度を導入すること。
- 近年の災害の激甚化・多発化を踏まえ、災害による損失については、担税力の喪失を最大限に勘案する観点から、雑損控除から独立した「災害損失控除」を創設した上で、人的控除の後に控除するものとすること(※10)。
- 近年、大規模地震が頻発化していることに加えて、南海トラフ地震・首都直下型地震の発生が予想される中で、地震保険の重要性はますます高まっていることから、地震保険料控除制度について拡充・充実を図ること。
- 物価の高騰等により、遺族の生活資金の確保は今後厳しさを増すと考えられることから、死亡保険金の相続税非課税限度額を引き上げること。
- 企業年金等の積立金に係る特別法人税については、公的年金制度を補完する企業年金制度の持続性や、労働者の権利である受給権の保全に支障をきたす恐れがあることから、廃止、少なくとも課税停止期間の延長を行うこと。
- ※10 現状、災害による損失は雑損控除で勘案されている。雑損控除は人的控除に先立って控除することとされているが、被災者は長期間にわたり災害の影響を受け続けるため、その間、他の者と比べて担税力が失われることになるわけであるから、災害による損失は、雑損控除から独立させて、他の者にも適用される控除を適用した上で勘案する方が公平である。なお、「所得税法等の一部を改正する法律案」(第217回国会閣法第1号)に対する附帯決議においては、災害損失に係る控除について、この提言の内容を含め、「必要な検討を行い、その実現に努めること」とされている。
第2の柱 : 中小企業を強力支援 ―生産性向上・成長力強化
中小企業は、日本企業全体の99.7%を占め、雇用の約7割を支えている、いわば日本経済の基盤であり、成長力の源泉である。しかしながら、長期化する円安・物価高、米国の関税措置、人手不足の波が押し寄せ、本来の力を発揮できていない。この苦境を乗り越え、潜在成長率の向上を実現するため、中小企業を中心に税制面から強力に支援し、DX投資等を促進する。
[ 中小企業関連税制の利便性向上 ―現場で“使える”税制へ ]
- 中小企業関連税制については、複雑な制度や煩雑な手続きにより、税務上の否認リスクが高まるなど、現場で“使えない”税制となっている実態に鑑み、国税当局を含めたガイドラインの創設など、必要な措置を強力に講じることで、現場で“使える”税制への転換を図ること。
- 「賃上げ促進税制」については、赤字企業の割合が高い中小企業において賃上げのための有効な手段となっていないことから全面的に見直し、これによる税収増をより有効な施策(新たに正規雇用者を雇い入れた中小企業の社会保険料負担の軽減(※11)など)の財源に充当するとともに、労働分配率の向上や中小受託者(下請け)の価格転嫁に後ろ向きな大企業等に対して法人税を上乗せするなど、賃上げの実効性を強化する「シン・賃上げ促進税制」を創設すること。
- 事業承継税制については、円滑な事業承継が地域の中小企業における死活的・永続的な課題となっていることに鑑み、現行の特例措置を恒久化すること。少なくとも、特例承継計画の提出期限を延長すること。
- インボイス制度(適格請求書等保存方式)については廃止することとした上で、廃止が実現するまでの間は、現行の負担軽減措置(※12)を延長すること。
- 印紙税制度については、同様の内容でも電子文書の場合は課税されない、金額が同じであっても契約の種類により税額が異なり、契約書作成時に大きな負担となるなど、さまざまな不合理・不公平な現象が生じており、生産性の向上を阻害していると考えられることから、廃止すること。
- ※11 立憲民主党が提出している「社会保険料・事業者負担軽減法案」(中小企業正規労働者雇入臨時助成金の支給に関する法律案,第217回国会衆法第11号)の内容に基づく提言。
- ※12 インボイス発行事業者となる小規模事業者に対して行われている負担軽減措置で、「2割特例」(仕入税額の実額にかかわらず、売上税額の2割を納めれば良いとする特例)、「8割控除」(免税事業者からの仕入れについても仕入税額の8割を控除可能とする特例)、「少額特例」(少額=税込1万円未満の課税仕入れについてインボイスの保存を不要とする特例)などの措置を指す。
[ 中小・中堅企業関連税制の抜本強化、DX投資の促進 ]
- 中小企業のDXを促進するため、陳腐化の早い資産(IT機器やソフトウェア等)を対象に、上限なく即時償却を認める「IT導入枠」を創設すること。
- 中小企業の少額減価償却資産特例については、この間の物価上昇や製品の高機能化・高付加価値化による価格上昇を踏まえ、取得価額(現行30万円未満)・年間取得合計額(現行300万円以下)の要件を引き上げること。
- 中小企業技術基盤強化税制(中小企業向け研究開発税制)については、繰越控除措置の復活、控除率・控除上限の引き上げ、「専ら要件」の改善(※13)、及び「中堅企業向け研究開発税制」の創設等を実施した上で、延長すること。
- 米国の関税措置等による不確実性の増大、各国における国内投資促進政策の大幅拡充などの諸情勢を踏まえ、日本企業の国際競争力を維持するため、時限的に即時償却や税額控除を認める大胆な投資促進税制を導入すること。
- 中小企業者等の法人税率の軽減措置(15%)については恒久化すること。
- 中小・中堅企業関連税制について、生産性向上・成長力強化の観点から必要かつ効果的であるものと認められるものについては、延長・拡充・恒久化を図ること。
- ※13 中小企業では、一人の従業員が研究開発とそれ以外の業務を兼務することが多いが、本税制の対象となる人件費は、研究開発業務に「専ら」従事することが求められており、結果、“使えない”税制となっている。例えば、研究開発に従事する従業員の給与の一定割合を試験研究費と見なすなど、運用面での改善を図るべきである。
[ 国際競争が激化する自動車産業の活性化 ]
- 自動車税・軽自動車税の環境性能割については廃止すること。
- 自動車関係諸税については、自動車の保有者・利用者の負担軽減と地方財源の確保の両立を図りながら、現行の複雑・過重な税制の見直しを図ること。
- 自動車産業の脱炭素化を推進し、国際競争力の維持・強化を図るべく、電動車の普及や脱炭素化に資する自動車開発等を支援する税制上の措置を講じること(※14)。
- 当面の措置として、エコカー減税・グリーン化特例については、国内自動車産業を振興し、生産台数を維持する観点から、延長を含め、所要の措置を講じること。
- ※14 立憲民主党が提出している「自動車産業脱炭素化推進法案」(自動車産業における脱炭素化の推進に関する法律案,第217回国会衆法第54号)の内容に基づく提言。
[ 「国の基」 : 農林水産業の支援 ]
- 燃油価格が高止まりしている現状に鑑み、農林漁業用軽油に係る石油石炭税に上乗せされている地球温暖化対策税分を還付する措置について、適用期限を延長すること。
- 農業の担い手を確保・育成するため、農協等が認定新規就農者(※15)に貸し出すために機械装置等を取得した際の固定資産税の軽減措置について、適用期限を延長すること。
- 現在一律7年とされている農業用機械の法定耐用年数については、使用実態に即した耐用年数の設定や耐用年数短縮制度の柔軟化・簡素化を図ること。
- 山林所得に係る森林計画特別控除(※16)について、適用期限を延長すること。
- ※15 市町村が認定した「青年等就農計画」に沿って農業を営む者のこと。新たに農業経営を営もうとする者で、青年(原則18歳以上45歳未満)、特定の知識・技能を有する中高年齢者(65歳未満)等の要件を満たす者が対象となる。
- ※16 「森林経営計画」に基づいて立木を伐採または譲渡した場合に受けられる控除のこと。
[ 企業の地域・社会貢献の促進 ]
- 地域活性化を推し進める観点から、地方拠点強化税制(オフィス減税、雇用促進税制)については、オフィス減税の税額控除率・特別償却率の引き上げ、中古物件の購入・改修の対象化、雇用促進税制の転勤者要件の緩和など、制度を拡充した上で、適用期限を延長すること。
- 企業の社会貢献を促進する観点から、NPO等に対して行う寄付金の損金算入上限額引き上げ、みなし譲渡所得税の非課税特例の拡充・運用改善、遺贈寄附制度の適正化などを図ること。
第3の柱 : 公平・納得の税制改革 ―成長を阻む「歪み」を正す
日本の税制には、経済・社会の変容等に伴って、様々な「歪み」が生じており、これが税制に対する信頼を損ない、また、日本経済の成長を阻んでいる。公平・納得の税制改革に取り組み、この「歪み」を是正することで、成長の「壁」を取り払う。
[ 応能負担原則の回復・強化 ]
- 所得税については、応能負担を求める観点から、勤労意欲の減退等の懸念に十分配慮しつつ、累進性の強化を図ること。
- 所得格差の拡大・固定化を是正する取り組みが依然として不十分であることに鑑み、いわゆる「1億円の壁」の解消に向けた金融所得課税改革を実施すること。具体的には、金融市場の動向も注視しつつ、当面は分離課税のまま超過累進税率を導入することとし、中長期的には総合課税化すること。また、現行の「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」措置(※17)の対象を拡大するなどして対応すること。なお、中間層増税を避けるため、一律の税率引き上げは行わないこと。併せて、暗号資産に対する課税については、見直しを検討すること。
- 法人税については、効果のない租税特別措置の廃止、受取配当等益金不算入制度の見直しなどにより、法人の収益に応じて応分の負担を求める税制に改革すること。
- 「租特透明化法」を改正し、巨額の租特が適用されている企業を実名で公表すること、期限が到来した租特は原則廃止し、例外的に延長・拡充する際は、合理性や減収分の財源確保状況等について検証した上で実施することなどを法定化し、租税特別措置について、補助金制度とのバランスも踏まえ、更なる透明化・適正化を実現すること(※18)。
- 資産格差が拡大・固定化している現状に鑑み、税率構造や非課税措置の見直しなどにより、相続税・贈与税の累進性を高めること。
- ※17 2023(令和5)年度税制改正により導入され、今年分の所得から適用される措置で、金融所得を含む合計所得金額が約30億円に達する者について、追加の所得税負担を求めるもの。富裕層に対する「ミニマム課税」とも言われる。
- ※18 立憲民主党が提出している「租特透明化法改正案」(租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律及び地方税法の一部を改正する法律案,第217回国会衆法第52号)の内容に基づく提言。
[ 事業・労働等の現場における不合理の是正 ]
- 役員給与の減額改定が財務の健全性を維持する目的で行われたような場合は、恣意的な課税所得の調整である場合を除き、減額前の超過分について、損金算入を認めること(※19)。
- 医療機関の控除対象外消費税問題を抜本的に解決するため、診療報酬への補填を維持した上で、新たな税制上の措置を早期に講じること。
- 退職所得控除については、「サラリーマン増税」を回避しながら、働き方の多様化、雇用の流動化に対応するため、現状、勤続年数が20年を超えると40万円から70万円に引き上がる控除額について、勤続1年あたり一律60万円とすること。
- 所得税法第56条については、恣意的な所得分散を防止するため、対価の授受を行う親族の双方が正規の簿記の原則に従った帳簿を備え付け、契約によって支払いの事実や適正な対価であることを明確にすること等の要件を付した上で、廃止を含め、見直しを行うこと。
- ※19 現在は、年の途中に役員給与を減額した場合、減額前の超過分の役員給与については、原則として損金算入が認められておらず、企業が財務体質の健全化を図る際の障壁となっている。
[ 国際化の進展に対応するための税制措置 ]
- 巨大IT企業などの多国籍企業による租税回避行為が横行していることに鑑み、「経済のデジタル化に伴う課税上の課題に対する合意」に基づく多国間条約の早期策定に尽力すること。
- オーバーツーリズム対策や観光立国推進のための財源を確保するため、国際観光旅客税(出国税)については、各国の水準も勘案しながら税率を引き上げるとともに、使途の適正化・透明化を図ること。
- 外国人旅行者向けの消費税免税制度については、円安によりインバウンド消費が堅調に推移する一方で、オーバーツーリズム対策の必要性が高まっていること等を踏まえて、必要な見直しを図ること。
- 土地等の取得等の動向を踏まえ、国土の適切な利用・管理を確保する観点から、土地・建物の取得・利用・管理に係る課税の在り方について検討を行い、所要の措置を講じること(※20)。
- ※20 立憲民主党が提出している「不動産取得実態調査法案」(国土の適切な利用及び管理を確保するための施策の推進に関する法律案,第219回国会衆法第7号)の内容に基づく提言。
[ 地方財源の安定確保、地方税の偏在是正 ]
- 地方交付税等の一般財源総額を確保・充実するとともに、地方の財源不足については、地方交付税の法定率引き上げを含めた抜本的な改革を行うこと。
- 行政サービスの地域間格差が顕在化していることを踏まえ、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築すること。また、地方の財政需要の増大に鑑み、国・地方の税源配分を見直すこと。
- 地方財政に影響を及ぼす税制改正の検討に際しては、「国と地方の協議の場」等を通じ、地方の意見を十分反映するとともに、安定的な代替財源の確保をはじめ、地方の財政運営に支障が生じないようにすること。
- ネット銀行の普及により、都道府県民税利子割の税収が東京都に集中している問題については、総務省の「中間整理」(※21)の内容も踏まえながら、是正のために必要な措置を講じること。
- 「ふるさと納税」については、種々の問題が指摘されていることから、抜本的な見直しを図るとともに、激甚災害指定が行われた被災自治体に対する寄附については上限額を引き上げるなど、本来の趣旨に沿った制度とすること。
- ※21 総務省の地方財政審議会「地方税制のあり方に関する検討会」が7月31日に取りまとめ・公表した「道府県民税利子割に関する中間整理」を指す。この「中間整理」では、住所地課税をただちに実現することは困難とした上で、利子等の発生源である預貯金との相関がある住所地ベースの所得に関する課税データなどを基準として再配分する「清算制度」の導入が提言されている。
[ 納税環境の整備 ]
- 納税者の権利利益を保護するとともに、税務行政の適正かつ円滑な運営を確保するため、「納税者権利憲章」を制定すること(※22)。
- 扶養親族の変更、保険料控除証明書の到達遅延などにより、翌年に年末調整のやり直しが必要になる場合があることに鑑み、年末調整の実施時期を1カ月後ろ倒しすること。併せて、所得税の確定申告期限について、現行の3月15日から3月31日に延長すること。
- 所得捕捉率の向上、税務手続きの簡素化など、マイナンバー制度の導入が税制において果たしている効果について検証すること。
- ※22 「所得税法等の一部を改正する法律案」(第217回国会閣法第1号)に対する附帯決議においては、立憲民主党の意見を反映して、「税務行政において納税者の権利利益の保護を図り、税務行政に対する国民の信頼醸成や適正を確保するため、納税者権利憲章の策定を含め納税環境整備について検討を行い、その実現に努めること」と記載されている。
ガソリン・軽油の暫定税率廃止パッケージ ※予算措置も含む
ガソリン・軽油の暫定税率については、その円滑・確実な廃止に向けて、予算措置、地方への財政措置等も含め、必要な措置を一体的に講じること。
- 与野党合意並びに「ガソリン暫定税率廃止法」に基づき、ガソリンは12月31日、軽油は来年4月1日に、円滑・確実に暫定税率が廃止されるようにすること。
- 暫定税率廃止の財源確保に際しては、与野党合意を誠実に履行し、増税ありきではなく、まずは歳出改革や税外収入の活用を図ること。また同様に、走行距離課税の導入をはじめとする自動車関係諸税の見直しは行わないこと。
- ガソリン税に係る沖縄県の負担軽減措置については、暫定税率廃止後も、現行の水準を維持すること(※23)。併せて、負担軽減措置の根拠法令である沖縄復帰特措法に係る政令の期限(2027年5月14日)を延長すること。
- 軽油引取税の暫定税率廃止後も、運輸事業振興助成交付金を維持すること(※24)。また、特別徴収義務者交付金(※25)についても現行水準を維持すること。
- 軽油引取税の暫定税率廃止後も、農林漁業、鉄道・船舶、自衛隊等の用に供する軽油の免税制度については堅持すること。また、免税軽油については、補助金終了後、同額分(最大17.1円/L)の負担増が生じる(※26)ことに鑑み、激変緩和措置など、必要な支援措置を講じること。
- 暫定税率のない灯油・重油・航空機燃料に対する補助金については、今後冬季に入り需要が増大すること、航空業界を取り巻く環境が依然として厳しい状況にあること等に鑑み、当分の間、継続すること(※27)。
- 政治的な事情により、補助金の拡充や暫定税率廃止への切替えまでの期間が圧縮されたことに伴って生じるガソリンスタンドの差損(※28)等については、必要な財政支援措置等を的確に講じること。
- ガソリン・軽油の暫定税率廃止を踏まえて、LPガスに対する課税の在り方など、関連する税制・制度についても検証を進め、適正化を図ること。
- ※23 片山さつき財務大臣は「…政府としても、沖縄復帰特措法の趣旨を踏まえ、軽減措置を継続してまいりたいと考えております。また、この軽減措置は令和9年5月14日に適用期限を迎えますが、今回の法案審議や地元からの要望、沖縄県内の離島のガソリン価格の状況、更には令和6年度与党税制改正大綱を踏まえ、軽減措置の令和9年5月以降の継続について、丁寧に検討を行ってまいります」と答弁している(11月27日 参議院財政金融委員会)。
- ※24 片山さつき財務大臣は「…この交付金を所管している総務省及び国土交通省において、与野党合意も踏まえて、この交付金を維持する上での課題を含めて適切な検討がなされ、しっかり必要な対応が取られるものと考えております」と、制度の維持を前提とした答弁をしている(11月21日 衆議院財務金融委員会)。
- ※25 軽油引取税の特別徴収義務者(納税義務者に代わって税金を徴収・納税する者)については、免税軽油の取り扱いなど、一般的な特別徴収事務と異なる特別の事情があることに鑑み、都道府県が軽油引取税の納入額の2.5%を目途として交付金を交付している。暫定税率が廃止されると、その分、軽油引取税の納入額は減少するため、何も手当てをしない場合、事務負担は変わらないにもかかわらず、交付金が減額される事態が生じる。
- ※26 免税軽油については、元々、暫定税率を含め、軽油引取税が課されていないが、今回、普通の軽油と同様に、最大17.1円/Lの補助金が適用されることになる。したがって、補助金が終了して暫定税率廃止に切り替わると、補助金の分だけ価格が引き上がることになり、負担増が生じることになる。
- ※27 現在、政府が実施している補助金(「燃料油価格定額引下げ措置」)については、「当面、当分の間税率…の扱いについて結論を得て実施するまでの間、…定額の価格引下げ措置を実施する」(資源エネルギー庁資料)とされており、ガソリン・軽油の暫定税率の廃止が実施されることになった以上、暫定税率のない灯油・重油・航空機燃料に対する補助金についても終了することが規定されている。
- ※28 低額の補助金が適用された在庫を抱えたまま次の補助金引き上げ日を迎えた場合、高値の在庫を安く売らざるを得ない事態が生じ、差損が発生することが想定される。
