厚生労働省が初めて「就活セクハラ」について調査し、2021年4月30日にその結果が公表されました(※1)。

2017年度、18年度、19年度に卒業した学生のうち、4人に1人が就職活動中やインターン中に何らかのセクシュアル・ハラスメントを受けていたことが判明しました。男女差はほとんどなく、男性26.0%、女性25.1%でした。

何度も被害を受けた人は全体の3.7%で、志望先企業の規模別では、従業員300人以上の大企業ほど「何度も繰り返して経験した」という回答が多くなっています。

被害の内容は、「性的な冗談やからかい」(40.4%)が最も高く、「食事やデートへの執拗な誘い」(27.5%)、「性的な事実関係に関する質問」(26.3%)と続いています。

被害を受けたあと、「何もしなかった」(24.7%)という人がもっとも多く、その理由として「何をしても解決にならないと思ったから」(47.6%)と答えた人がもっとも多くなっています。

昨年6月に施行された「女性活躍・ハラスメント規制法」の指針(※2)で、企業に就業規則でパワハラを禁止し、相談窓口を設置するよう義務付けています(大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から)。しかし、雇用関係にないとされる就活生やインターン生、教育実習生、フリーランスの人などに対する防止策の義務付けは見送られてしまいました(ただし、採用内定者は措置義務の対象となります(※3))。

2019年6月、ILO(国際労働機関)創立100周年記念総会で「仕事の世界における暴力とハラスメント禁止条約」(※4)が採択されました(日本政府も賛成)。このハラスメント禁止条約は、ハラスメントの「全面禁止」を求めており、その対象も「職場に関わる人全般」と幅広いものです。ILO条約の批准に向けて、その基準を満たす包括的で総合的な規制法の制定が求められています。

立憲民主党等は、「業務等における性的加害言動の禁止等に関する法律案」(セクハラ禁止法案)を衆院に提出し、制定を目指し与党に働きかけています。この法案では、(1)セクハラ禁止の明記(就活生、フリーランス、教育実習生等も含む)(2)事業者の責務(3)国、地方公共団体の施策としてのセクハラ被害従業者等に対する支援を盛り込んでいます。

(※1)「令和2年度 厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査報告書」

(※2)リーフレット「職場におけるハラスメント防止対策が強化されます!」

(※2)「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(厚生労働省告示第5号)

(※3)石橋通宏参院議員の質問(第200回国会 参議院厚生労働委員会 第7号 令和元年11月28日)

(※4)「仕事の世界における暴力とハラスメント 暴力とハラスメント根絶に向けた国際労働基準」(国際労働機関(ILO)駐日事務所)