参院本会議で28日、政府提出の「航空法等の一部を改正する法律案」(航空法改正案)の趣旨説明がおこなわれ、「立憲民主・社民」会派を代表して、青木愛議員が質問に立ちました。

(1)「航空ネットワーク確保のための方針の策定・支援」について

 冒頭、青木議員は新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、今年2月に破産した格安航空会社エアアジア・ジャパン、航空大手ANAホールディングスとJALグループなどの業績が低迷している事例を挙げ、「いまだに収束の目途が立っておらず、航空関連産業は未曽有の危機に直面している」と現状を分析しました。

 続いて、国土交通省が航空・空港関連企業の経営基盤を強化するとともに、国民の移動の基礎的インフラである航空ネットワークを適切に維持するため、2020年10月に「コロナ時代の航空・空港の経営基盤強化に向けた支援施策パッケージ」をとりまとめ、航空会社に対しては、2021年度において、空港使用料や航空機燃料税の更なる減免として1,200億円を、また空港会社に対しては、空港施設の整備に対する無利子貸付や財政投融資を活用した融資などを行なうものだと説明。
 そのうえで、航空運送事業の基盤強化に関する方針の目的と中身、また、昨年10月の支援施策パッケージとの関係について、赤羽国土交通大臣に確認しました。

 青木議員は「航空会社が、国の支援を受けるためには、国が定めた方針を踏まえて、事業基盤強化計画を策定し、同計画の実施状況を定期的に国へ報告することが求められているが、民間航空会社の事業計画に対し、国の関与を過度に強めるものであってはならない。特にコロナ禍において雇用が犠牲になることも避けなければならない」と赤羽大臣に要請しました。

 空港における水際対策の強化について、「5月2日の報道では、政府が3月末から行なっている全入国者への入国後14日間の位置確認をめぐり、誓約した場所での待機が確認できない人が、1日300人を超えていることが、厚生労働省などへの取材で判明した。変異株の影響が顕在化している中で、このような事例の発生は、看過することが出来ない」と政府のずさんな水際対策を強く批判しました。検疫・水際対策を所管する田村厚生労働大臣と赤羽大臣に、水際対策の強化・徹底を求め、両大臣の見解をただしました。

(2)「保安検査等の確実な実施に向けた制度整備」について

 今回の改正案で、初めて保安検査が義務化されることになり、保安検査員が旅客による検査拒否に対して、今後は法的根拠をもとに厳格に対応できるようになると説明。青木議員は「国がテロ等の危害行為防止のための基本方針を策定する役割を示したことは、航空保安の強化につながる前進だ」と一定の評価を示したうえで、赤羽大臣に「 なぜ、今まで、航空機への搭乗前の保安検査が義務づけされていなかったのか」ただしました。

 一方、「航空保安の責任主体が民間の航空事業者であるという根本的な問題は解決に至っていない」と問題提起し、海外の事例として、アメリカやドイツ、ニュージーランドでは国が、ドイツ以外のヨーロッパや中国や韓国などでは空港会社が主体的に責任を負っていることを挙げ、日本のように民間の航空会社が航空保安の責任を負っている国はほとんどないと説明しました。

 そのうえで、「日本では、民間の航空会社が、民間の警備会社に航空保安検査を委託しており、全くの民間任せだ。国家の安全保障にかかわる保安検査は、国が責任を負うべきだ」と述べ、航空保安に係る国の責任について、また、地方公共団体、空港管理者、航空運送事業者、保安検査会社等の役割分担の見直しについて、赤羽国土交通大臣の見解をただしました。

 航空保安に関する財源のあり方について、「現状では、保安検査に係る費用は、全体の2分の1を航空会社、2分の1を空港管理者が負担しており、保安検査を委託する警備会社への支払いも、その中から支出している。保安検査費用を航空会社に負担させる国は、海外ではほとんどない」と問題提起しました。また、「ボディースキャナーなど高性能な保安検査機器を導入する際は、航空会社の負担分の2分の1を国が補助することになっているものの、チケット代金に含まれた105円の保安料は国に納められており、財源的にも、国はほとんど責任を負っていない」と指摘しました。
 そのうえで、「テロ・ハイジャック対策を国家レベルの課題ととらえ、多様化・巧妙化する犯罪を未然に防ぐためには、国が主体的に予算措置を始めとした対策を講じるべきだ」と赤羽大臣に進言しました。現場で働く保安検査員の処遇改善について、「長時間労働、低賃金、旅客のクレーム対応等、保安検査員にとってはたいへん厳しいにあり、そのため、離職率が高い」と現状を説明し、赤羽大臣に今後の処遇改善の方針について、見解をただしました。

 青木議員は「日本では国の安全に関わる保安検査は民間任せ、財源も民間任せで、国の主体的な責任ある姿勢が見られない。コロナの水際対策が中途半端であることの要因のひとつに、このような保安体制に対する国の姿勢があるのではないか」と水際対策を徹底できない政府の問題点を指摘しました。

(3)「無人航空機のレベル4実現に向けた制度整備」について

 青木議員はドローン(無人航空機)の利活用が飛躍的に拡大しており、国民生活の利便性の向上や、多くの産業の生産性向上に寄与するものとして、大きな期待が寄せられている一方で、ドローンが落下して人や物に傷害を与える事件や、空港周辺でドローンの飛行が確認されるなど、ドローンに関連した事故が発生していると説明。「ドローンの利活用を進めることは必要と考えるが、その危険性を十分に理解し、安全対策に万全を期し、事故を未然に防がなければならない」と問題提起しました。

 今回の法改正でレベル4が解禁され、市街地や住宅街など人がいる上空を補助者なしで目視外で飛行することが可能になることについて「飛行の安全性の確保はいかに図られるか」赤羽大臣に確認しました。また、個人のプライバシーにも注意が必要で、住宅の上空やマンションの傍を飛行する場合、住宅や住民を搭載されたカメラで撮影することが技術的に可能となると指摘し、「ドローンによる第三者のプライバシーの侵害を、如何にして防ぐか」赤羽大臣に確認しました。

 また、多くの愛好者が楽しんできたラジコン飛行機(無線操縦の模型飛行機)への法改正の影響について、「ラジコンをドローンと同じ枠組みで規制を強化すると、長年引き継がれてきたモノづくりの心が縮こまるだけでなく、ラジコン飛行機を趣味とする文化自体が消滅してしまうのではないか」と懸念を示しました。青木議員は趣味として楽しんでいるラジコン愛好者に対しては、手続きの簡素化や負担の軽減などの配慮するよう、赤羽大臣に検討を求めて質問を終えました。

航空法等改正案質問(予定稿).pdf

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